クソボケ激メロ術師の現代伝奇バトルでハーレム構築スローライフ希求譚   作:所羅門ヒトリモン

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第16話「背徳的な後日談と新たな日常」

 

 

 蟻道鈴昌による誘拐事件から、一週間が経った。

 あれから、秋水の日常は大きな変化を迎えている。

 

 基本的な生活はこれまで通り。

 汐坐の筆頭術師としてA.N.O.M.A.L.Y.を片付け、他人よりも多めの報酬を得る。

 実力に裏打ちされた余暇を満喫し、美味しいものを食べて親しい間柄の人物と笑い合う。

 

 およそ一週間前まで、それはほとんど妹をメインに使われていた『自由』だったが。

 

 今現在の秋水は鳶瀬山家の面々とも、その有り余る時間を共有するようになった。

 

 一家六人、全員ともに恋人のような関係性で。

 デートはローテーションだったり、時に双子セットで同時にだったり。

 互いの好きなものを教え合い、同じ楽しみを分かち合いながら着実に心の距離を近づけている。

 

 その間、秋水はひそかに警戒を続けてもいたのだが。

 

「思っていたより、反発が少ないな」

「反発?」

「ほら。あんなふうに偉そうな声明を出せば、何かしら反発があると思ってたんだが」

「ああ。それでしたら、お兄様に楯突くおバカさんはいないと思いますわよ?」

「なんで?」

「まず、お兄様に突っかかっても良い事がありませんし」

 

 協会が行った〝その後の情報・印象操作〟の成功もある。

 真相はそれとなくボカされているものの、どういうことがあったのかを推測できるヒントは小出しに公開されていて。

 且つ、秋水の私刑宣言は協会による一種のプロパガンダと思われるよう誘導されていた。

 

 ネットでは実際、その効果を確認されている掲示板などもあった。

 

 もちろん、すべてがすべて期待通りの反応が得られているワケではないし。

 なかには「いくら筆頭でも、今回の一件はいささか幼稚すぎるのでは?」

 

「力ある者の言葉には責任が伴います」

「先代同様、傲慢な暴君となるか……」

「いえいえ。やはりまだまだ、お若いのでしょうよ」

「これが協会の作為であるかはともかく」

「お立場に相応しい振る舞い方など含めて」

「是非とも、お側でお支えさせていただきたいものですねぇ」

 

 と、背景に思惑を感じさせる〝敢えての否定的な反応〟もあった。

 

 とはいえ、そのあたりは夏乃然り協会然り、常日頃から警戒している連中である。

 協会がもろもろ手を回すのは普段通りでもあった。

 

 見ようによっては、秋水の勝手を協会が泥を被ってでもフォローして回っているように見えるが。

 そもそも、青墨秋水の治安維持機構としての能力には、それだけのリソースを割く価値があると認められている。

 

 社会秩序の安寧。

 その維持に不可欠である歯車。

 

 一個人が明確に、警察や軍隊といった概念に相当するものと認識されているのだ。

 

 言い方を変えれば、アクション映画の主人公にありがちな設定である〝元特殊部隊所属の〜〟と同じだ。

 近年ではジ〇イソン・ステイサムがその代表格に近い俳優だが、作中内で彼を敵に回したマフィアやテロ組織は常に壊滅する。

 

 キアヌ・リ〇ヴス演じたジョン・ウィ〇クも、これに近い。

 ジョ〇・ウィックの場合は元凄腕の殺し屋、という設定だが。

 やはり作中内で彼を敵に回した人間、組織はことごとく壊滅している。

 

 言うなれば、協会は青墨秋水をそうした存在と認識していた。

 

 協会が把握している秋水のスペックだが、例えば『不動明王火界咒・火生三昧倶利伽羅剣』だけでも、一都市を容易に滅ぼす──蒸発させる事が可能だ。

 

 卒塔婆祈角を一撃で鎮圧可能な大火炎。

 刀剣状に燃え立ち、天候すら変え得るアレなる咒式は、通常の伝奇術師(一段階目)が霊力を枯渇させ回路を焼き切る覚悟で、初めて同等の威力を出せるかどうかといった代物。

 

 秋水はそれを乱発できる。

 

 しかも、秋水にとっては基本技のひとつに過ぎない。

 

 敵に回したくないのだ。

 

 スーパーマンが闇堕ちしたら、誰がその責任を取れるのか?

 

 そんなワケで、協会は秋水に好意的且つ協力的である。

 だいたい、A.N.O.M.A.L.Y.の脅威から日々の平和を守ってもらっているのに、恩返しのひとつもしないで何が大人か。

 

「……まぁ、わたくしとしてはお兄様には、もっともぉ〜っと! A.N.O.M.A.L.Y.と戦う頻度を減らしてもらいたいところではありますが!」

 

 欲を言えば、協会はもっと気合を入れて強い術師を揃えるべきだと夏乃は考えているが。

 

「文脈が繋がってなくないか?」

「ともかく! この世の森羅万象はお兄様に都合よく動くべきなのですから、なーにも不思議じゃありませんわ!」

「え、コワ……」

 

 そんなこんなで、秋水の愛する日常は今日も守られている。

 本人の実力と周囲の意思。

 

 裏では協会の懸念通り、いろいろ不穏な動きがあったりなかったりするかもだったが。

 

 結局、それらも最後に秋水に辿り着いてしまえば、そこで運命おしまい物語おしまいなのかもしれない。

 蟻道鈴昌が最後に目撃した黒龍鎧の剣士が、待ち構えているのだから。

 

 ある意味で、汐坐の安全神話とは秋水を指すのかもしれなかった。

 

 本人は自分を「戦闘能力Tierでたぶん上位に入るくらいだろ?」としか認識していなくて、実際その認識は上澄みを見れば正しいものではあって……

 

 ただ、大抵の人間からすれば、そんなのは天井組にしか分からない違いでしかなく……

 

 自身の実力を「最強ではない」と正確に認識できる秋水。

 秋水の実力を「最強である」と誤認している周囲。

 

 開き過ぎている実力がゆえの、悲しい誤解が生じているのが玉に瑕だった。

 

 それはともかく。

 

 今回の後日談で最も大事な話は、実はここからだ。

 

 騒動の後で、鳶瀬山家にはとある問題が生じた。

 

 ──『絶対服従の契約首輪』

 

 術師と式神との間に結ばれる咒式印。

 これが豊葉と依穂を中心に、ある〝ペナルティ〟を発動させてしまったのだ。

 

「ん……ぁっ」

「秋水くん……おね、がいっ」

「もう……もうっ、がまんできないわ」

 

 それは一日に一度、必ず主人からの()()を必要とした。

 豊葉と依穂から呪いが発症し、瞬く間に四人の娘たちとハルミにも伝播していった。

 

 行動を強制する呪い。

 

 神聖な神社の奉納殿で、彼女たちは揃って罰を受け入れている。

 状態は常に二段階目。

 狐の耳と尾を生やした神巫の巫女装束。

 ハルミに関しては女神装束の伝奇正装で。

 

 彼女たちは日に一度、必ず秋水との()()を必要とした。

 

「キス……キスして?」

「キス、キスしよ?」

「「キスゥ……キスゥ……!」」

「クッ、妾ともあろうものが……!」

 

 頬を染め、恥じらいに身悶えつつも秋水の唇に迫る美女たち。

 その理由は単純だ。

 

 秋水はヒナギクの力を介して調伏の儀式に片をつけた。

 ヒナギクは地獄の官女であり、運命の赤い糸を司っている。

 

「だったら、仮にも運命の恋人に裏切りの刃を向けた罪は、今後、二度とあんなコトをしないと誓う意味も込めて、よりいっそうの服従と愛の宣誓で以って償われて然るべきでしょう?」

「強火だな」

「恋愛だもの」

 

 強火でなければ意味がない。

 ヒナギクの恋愛観は少し古めで、だからこそ重たかった。

 

 したがって、式神の叛逆防止に適用されるペナルティも、今回の場合は〝誓いのキス〟となったのだ。

 

「キスをしなかったら?」

「死ぬわ。そんな女に生きる意味があるの?」

 

 同じ男を好くのは構わない。

 しかし、一度そうと決めたのなら、その想いを裏切ってはいけない。

 裏切るなら死ね。

 ヒナギクもまた、A.N.O.M.A.L.Y.である。

 

「妾はトバッチリなんじゃが!?」

 

 なお、鳶瀬山家一同はともかくハルミに関しては、べつに秋水に好意があるワケではないので同情に値した。

 ヒナギクは鼻で笑い飛ばした。

 

「元はといえば、この巫女一家の血筋を呪ったオマエが悪いのよ」

「ぐぬっ」

「トバッチリのトバッチリ。因果応報ね? ──秋水の何が気に入らないの」

「ヒッ! お、おいご主人様! こやつ怖すぎないかや!?」

「ヒナギクは可愛いよ」

「秋水……♥」

「クソボケが!」

 

 狐の耳をぺたんと倒したり、ブルリと震えさせたり。

 ハルミには大層哀れなコトだったが、しかし、決着はすでに着いている。

 調伏の儀式は今さら、無かったコトにはならない。

 よって、ハルミは意外とウブな反応を見せつつも、結局は従う他に無いのだった。

 

 ちなみに、ペナルティの発動理由それ自体は、豊葉と依穂の罪悪感がキッカケだ。

 

 蟻道の術式で操られていたとはいえ、秋水に襲いかかってしまった事実。

 後になって、秋水が出した例の声明文を受け、そんな行動を取らせてしまった申し訳なさ。

 

 さらに女の深い心の内奥にまでメスを入れれば、〝なのに喜んでしまっている自分がいてごめんなさい!〟

 

 豊葉は呻いた。

 

「秋水くんには、ただでさえ【呪い】から助けてもらっているのに……」

 

 このうえ、さらに大々的に矢面に立ってもらうなんて。

 ドキドキと弾む心臓から、熱い血流が全身に行き渡って肌を紅潮とさせた。

 霊力回路に知らず知らず、娘と変わらない年頃の少年への愛がジュンジュン染み渡った。

 

 首輪が浮かび、申し訳なさと確かな喜びから来る()()が、自然と豊葉を秋水の前で(かしず)かせた。

 

「私……誓うわ。もうオバさんかもしれないけれど、秋水くんが望んでくれるなら……この身も心も、秋水くんだけの女になります。だから……お願いっ! キスしてぇ!」

「私だって誓うわっ! 秋水くんがあの日、私たちの前で誓ってくれたように! その想いに報いたいの! キスさせてっ? キスさせてくださいっ」

 

 呼応するように、依穂も叫んだ。

 姉の隣で倣うように同じ体勢を作って、彼女もまた後悔と期待から来る衝動に身を縛られていた。

 

 その肌は発汗している。

 依穂は緊張から、いつも直前に飲酒をしていた。

 だがそれが、余計に感情のタガを壊して女としての本音を曝け出す。

 綺麗な三つ指をつき、神に仕えるべき巫女がひとりの男に対して、

 

「大人のデートもさせて欲しいの……何でもしてあげるわ!」

 

 色を叫ぶ。

 頭を下げて懇願する。

 すると首輪が浮かび、ふたりの同調によって退魔巫女たちの霊力回路は、さらに桜色を強めた。

 

 エネルギーサーキットが徐々に形状を変え、ライトラインの質と本数が変えられていく。

 

 鳶瀬山家のそれは、今まで脚部を中心に浮かび上がっていたのに。

 次第に全身に、豊満な胸部を中心にして曲線を描いたものも広がり始めて……

 

 神巫の巫女装束にも、変化が顕れた。

 

 というか、内側の肉体に少なくない変化が顕れた。

 

 大きくなったのだ。

 

 何がとは言わないが、全体的に数値が増して。

 視覚的に、一目で分かる程度には膨らんで。

 なのに伝奇正装の布面積は変わらないから、露出された素肌からさらに霊力回路の光が妖しく覗き……

 

 汗の垂れる首筋から鎖骨、鎖骨から深く長い谷間へ流れていく雫の筋は、花のようなハート模様の内側に呑まれて行った。

 

「「エッチなことだったら、私たちだって何でもするわ」」

 

 そこに八千代と八千花が、すかさず依穂の左に来る形で膝を並べた。

 彼女たちも同じように変化を起こしていて、初夏にもかかわらず吐く息が白くなるほど熱っぽかった。

 

「っ、んっ……お母さんたちを助けてくれて、ありがとう」

「ハァ……ハァ……私たちを助けてくれて、ありがとう」

「諦めてばかりだった人生に、はじめて秋水くんが意味をくれたの……」

「絶対に手に入らないって思っていたものを、秋水くんが与えてくれたの……」

 

 ともに長髪を結い上げた美人双子姉妹が、それぞれ潤んだ瞳で秋水を見上げて染み入るように宣言する。

 

 八千代と八千花は、肩から上衣をわずかにズリ下げ言った。

 

「私の人生、ぜんぶ秋水くんの色で塗り替えてください……私の好きなものも喜びも、これからはぜんぶ秋水くんだけで上書きされたいの……!」

「私の人生、ぜんぶ秋水くんの熱であたためてください……私の切なさも寂しさも、これからはぜんぶ秋水くんの体温だけで癒されたいの……!」

 

 だからお願いします。

 

「「お母さんと一緒に、私たち双子ともキスして……」」

 

 激しい懇願ではない。

 しかし、心にしかと滑り込んでくるかのような、髪の後ろを引っ張る誘い文句。

 

 それを受けて、残ったふたりも意を決した。

 

 先に唇を開いたのは、千景だ。

 

「わ、私は八千代と八千花みたいに、エッチなことに自信は無いけど……それでも、秋水くんが好き! 秋水くんの力になって、助けられてばかりじゃなくて守られてばかりじゃなくて……傍で支えられる女になりたい!」

 

 事件のせいで、鳶瀬山家は全員が二段階目に至った。

 だがそれは、自分たちの意思で掴み取った功績ではなく。

 千景はそれが、悔しくてたまらなかった。

 

「だから……誓わせて? 私は絶対、秋水くんの隣にふさわしい女になるから……春には一緒にお花見をして、夏には同じアイスを食べて、秋にはうちの庭で池に映ったお月様を見て、冬には手に息を吐きかけ合いながら、雪を見よう?」

 

 同じ一年を過ごしたい。

 ゆく年も来る年も。

 千景は青墨秋水との永遠を望んでいる。

 

「そのためにキスが必要なら……私は喜んでこの唇を捧げます。どうか私に、恋をください……」

 

 それはとてもロマンチックで、とても純粋な告白だった。

 少女趣味らしい千景の、純粋だからこそ極めて繊細で傷つきやすい宣誓で。

 

 ならばそれを間近で耳にした千歳は。

 

 家族と秋水を出会わせるキッカケとなった少女は。

 

「……ごめんね、皆」

「「「「「ぁ」」」」」

 

 言葉など要さなかった。

 ただ行動を以って、最初の口付け(ファーストキス)を奪った。

 あっけに取られていた秋水の首の後ろへ、バッ! と両手を回して飛びついて。

 

 互いの歯と歯が、ぶつかり合うほどの不恰好で稚拙なキスだったが。

 

 鳶瀬山千歳はもう堪え切れなかった。

 母親たちの罪悪感と複雑な歓喜。

 そこから始まった感情の共有と共感。

 

 主人に逆らった式神に課せられるペナルティなんて、すべては瑣末事。

 

 ──だって、そうだ。

 

 私が出会った。

 私が声をかけた。

 私が知った。

 私が始めた。

 

 いまさら秋水に誓いを立てる必要なんて無かった。

 

 純粋な恋心も、性的な欲求も。

 なにせ鳶瀬山千歳はすでに、打ち明けている。

 恥を覚悟で大胆に大見得切った後。

 

 だから、遅い。

 そんなんじゃ、先に行っちゃうんだから。

 

 千歳はやはり、運命的に速かった。

 

「……んっ、ぷはぁ! ……どう、秋水くん?」

「っ……どう、とは?」

「お姉ちゃんとキスした気持ち、よかった?」

「────」

「かーわぃ♥」

 

 その後、千歳の後を慌てて追うように女たちが秋水の唇に群がったのは、言うまでもない。

 

 巻き込まれたハルミは後に、「妾もはじめてじゃったのに……」と顔を覆っていたという。

 

 

 これが、青墨秋水の背徳的な後日談。

 

 そして、キスの後には決まって、全員一緒に好きなお菓子を食べる時間を設けるようになったそうだ。

 

 今日、彼女たちが秋水と一緒に舌鼓を打っているのは、

 

 千歳は抹茶のバスクチーズケーキ。

 千景は桜餡のドーナツ。

 八千代は日向夏のクリームデニッシュ。

 八千花は白桃のレアチーズクレームダンジュ。

 豊葉は北海道産のミルク饅頭。

 依穂はたっぷりカスタードクリームパイ。

 

 秋水は彼女たちの好物を、すべて「あ〜ん」されたりしながら新たな日常を満喫している。

 

「ベネ」

 

 ────────────────────

 

 tips

 

 ◆青墨秋水を主人とした式神契約の特性

 ヒナギクなるA.N.O.M.A.L.Y.の力を介した場合、式神側が主人に対して叛逆ないし背信に近い行為や、またそれに関連した罪悪感などを覚えた際には、ペナルティに〝誓いのキス〟が必要となる。

 これは一回につき、一日一回から一日二回、三回と増えていくものである。

 ペナルティ発動時には、式神側は霊力回路を恋愛回路に変質させ、好きな人限定でのみ異性への諸々がサイズアップ&ボリュームアップする。

 全身淫紋に似て非なるもの。

 

 





【ニトロ】
【ガソリン1】
【ガソリン2】

 いったんここまでです。
 燃料をくれた方々、ありがとうございます。

 続きについては活動報告で。
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