クソボケ激メロ術師の現代伝奇バトルでハーレム構築スローライフ希求譚   作:所羅門ヒトリモン

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第20話「文明守護者の眠らない夜」

 

 

 二十二時四十分。

 

「えっと、これとこれと、それをください」

「はい、お買い上げありがとうございまーす」

 

 秋水は外環封鎖線沿いに設営された仮設補給拠点のコンビニで、お菓子を買っていた。

 

 場所は『霊導SAベース』

 

 元は旧中央自動車道のサービスエリアだった施設である。

 すっかり晴れた初夏の夜。

 遠くからは深夜だと言うのに、蝉の鳴く声が聞こえていた。

 それと一緒に、ブロロロ、と走る車両が何台か出入りを繰り返す。

 

 一般の利用客では、もちろんない。

 

 第七次中央山域魔境化抑制作戦の関係者たちだ。

 霊導SAベースの利用者は限られている。

 

 術師、結界技師、観測員、そのほか国家認可企業職員。

 

 人類圏の維持に従事する様々な大人が、夜も遅いというのに働いている。

 なので、言うなればここは外環封鎖線の前線基地だった。

 

「お疲れ様です!」

「あ、お疲れ様です」

 

 すれ違いの見知らぬ大人に挨拶され、挨拶を返す。

 そうしながら、秋水はコンビニのビニール袋を片手にテクテク宿泊所へ戻った。

 

 割といつものことではあるが、市外任務は長丁場になることが多い。

 

 作戦の終了時、もう夜も遅いということもあって、秋水は今夜、この霊導SAベースで休むことになった。

 禹歩(うほ)を使えば簡単に汐坐に帰れるのだが、まぁ、仕事上の付き合いみたいなものである。

 

 宿泊所にはすでに、皐月姫と鈴鹿が入りこんでいるし。

 

 自分が在籍している協会とは別の協会の話や、同じ筆頭職を預かっている術師同士での会話は意外と面白いのだ。

 

 そんなこんなで、家(夏乃)には一報を入れて。

 ついでに打ち上げ用の、食べ物や飲み物なんかを調達して来た次第だった。

 

「あっ、おかえりぃ。わざわざおおきにやで、青墨はん」

「めんどいのに、ごめんね……? お使いなんて、サッツーのカラカラくんにやらせればいいのにね……」

「カラカラくん……あ、骸骨()のこと? 店員さん仰天してまうわ!」

「全然大丈夫です。このくらい、好きでやってますから」

 

 出迎えてくれた二人が、それぞれ「いい子やねぇ」「信じられない……」と対照的なリアクションを返す。

 先ほどは頬に強い赤みが差していたが、ちょっと時間を置いたおかげで少し酔いが冷めて来ているようだ。

 

「は? ちょっと沙織、何が信じられへんの?」

「だって、私たちは筆頭だよ……? 身近な雑用くらい、式神とか使用人にやってもらえばいいじゃん……」

「……呆れた。ほんにこの娘は、ぐうたらやわぁ」

 

 青墨はんの爪の垢でも煎じて、飲んだらええ。

 皐月姫は嘆息混じりに肩を竦める。

 一方で、鈴鹿はどんどんダラァ……と弛緩した体勢になった。

 

 宿泊所の秋水の部屋で、畳の上のテーブルにぐでぇと上半身を乗せ、とても突き出たカットシャツの膨らみをセルフ枕にしている。

 

「いいね、それ……しゅうすいの爪の垢なら……たしかに飲みたいかも……しゅうすい、お姉さんに指ちゅぱちゅぱさせて……?」

「アホか! 酔いすぎやで沙織ぃ!」

 

 皐月姫がすぐさまツッコミを入れた。

 すると鈴鹿は「冗談だも〜ん」と本気なのかどうなのか、他人には絶妙に分からない平坦な声音で、ネクタイを外した。

 

 胸元を緩め、「ふぅ」と再セッティングする。

 

 恐らく、顎の収まりが気に入らなかったんだろう……ロケットおっぱいの谷間が覗き、秋水はやや気まずくなった。

 

 ので、常識人の皐月姫に期待を寄せ、同性として注意を促してもらおうと思うが──

 

「まったく。アンタのそういうところが、たまに羨ましくなるわ」

「え」

「ん? どないしたん? 青墨はん」

「……いえ。國塚さんも、そっち側に立つんですかと」

「あはは。かんにんな? うちもちょっと、今日はお疲れやさかい」

 

 見苦しかったら、ごめんねぇ? と続けて。

 あろうことか、鈴鹿の正面に座る形で、皐月姫まで同じような体勢になってしまう。

 

 アルコールが入っているせいで、二人ともいつもより開放的なのかもしれない。

 

 皐月姫は上着の(あわせ)を解いて、上半身はボディラインがやたらとハッキリするピチピチインナーだけになってしまう。

 

 ──あ、その服って下、そうなってたんだ……

 

 とか、思うのも束の間。

 もちもちしたお饅頭みたいな柔肌が、無防備にも輪郭を露わにして視覚的なストレスがやばい。

 

 デカすぎんだろ……

 

「……」

 

 何考えてんだ? と秋水は若干キレそうになった。

 爆乳はいつ見ても見慣れない。なぜだろう? 妹のせいか。

 

 が、相手はどちらも、それなりに長い付き合いのある筆頭術師である。

 常識的に考えても、女子大生なら高校生なんて恋愛の対象外に違いない。

 

 少なくとも、秋水は歳下は妹がチラつくため基本的にナシでしかなかった。

 妹とはかけ離れた存在だったら、ひょっとするとアリかもしれない。

 

 ともあれ、自分はそういう目で見られていない。

 そう捉えて、さっさと自分も座布団に座った。

 

「にしても、青墨はんはほんに気が利くねぇ。うちら、筆頭やで?」

「何がです?」

「ふつー、私たちみたいな人間は……〝夜は危ないから〟とかそういう理由で……気遣われたりしない……」

「ああ。たしかに、それはそうかもしれませんね」

 

 テーブルの上に調達品を広げながら、秋水は首肯を返す。

 

「せやでせやで? この前なんかうち、深夜にちぃと治安悪い繁華街で任務があってな? オペレーターの子、だぁれも心配してくれへんかったわ」

「あるあるだね……私もこの前、キャバクラに潜入任務があったんだけど……ふふふ、同じだった」

「それも、あるあるやね。うちらとて女の子やのに」

「キャバクラに発生するA.N.O.M.A.L.Y.なんて、いるんですか?」

「うんにゃ。性根の腐りはった野良術師やねぇ」

「ああ、なるほど」

 

 伝奇術師は時に、ハニトラ的な諜報要員として野良術師の狩りに要請される。

 秋水はまだ経験が無いが、これは男女共通の話で、何がなんでも捕まえたい野良術師がいる場合には、筆頭クラスでもそういう仕事を割り振られる事があるらしい。ほんとか? ほんとなのか……

 

 筆頭術師ならそりゃ、たしかに最終的には暴力で決着をつけられるだろう。

 

 相手、人間だし。

 

「だから、なんなん?」

「え?」

「青墨はん、なんなん?」

「私たちのこと女の子扱いして……どうしちゃうつもりなの?」

「どうしちゃうも何も……」

 

 べつに、どうもしないんですけど? とは返さず。

 秋水は少し返答すべき言葉を見繕う。

 

 夜遅い時間、霊導SAベース内とはいえ二人を宿泊所に留まらせ、自分がコンビニに買い出しに向かったのは何故か?

 

 酔っ払いに絡まれ、多少めんどくさいとか思ったのは否定できない。

 自分は飲めないのに、酒のつまみになるようなお菓子を買うのも、元成人男性として空しいものを覚えた。

 

 それでも。

 

「まぁ、國塚さんと沙織さんだったからじゃないですか?」

「「ん?」」

「俺だって、誰にでも気を遣うワケじゃないですよ。絡み酒には素直にめんどくさいって思いますし」

「「うぐっ」」

「ただまぁ、人間って結局のところ、好きな相手のためだったらどんな不利益も被っちゃったりする生き物だと思うんで」

 

 親が子どものために自分を身代わりにしたり。

 友人が親友のために大金を貸してあげたり。

 世の中にはまぁ、そういう話が往々にして転がっている。

 

「べつに、それだけですよ」

「「……」」

 

 秋水は霊養羊羹や、鬼火印のエナジードリンクを手に取り平然と告げた。

 

「ここのコンビニなので、術師向けの商品が多かったです」

 

 どれ欲しいですか? と何事もないかのように続けていく。

 

「……ぁ、それな? う〜ん……うちはじゃあ、このポテトチップスにしようかなぁ? って、なんやねんこれ……畑の精霊が作りましたってホンマかいな? 胡散臭いわぁ」

「じゃあ……私は心霊ソーダのアイスクリーム……北海道産ミルク使用で乳脂肪分多め……」

 

 皐月姫も鈴鹿も、それに応じて平然と飲み会を続行するが……

 

(え〜!? ちょっとなんなん!? なんやの、ほんに!? 青墨はん、うちのことごっつ好きやん! 大好きやん! ほな結婚か……)

(すきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすき)

 

 裏では二人とも、内心超大興奮状態であった!

 大人である二人は、そんな感情をちっとも表には出さないが。

 

 青墨秋水と長い付き合いがあるとは、これすなわち。

 

 こうしたクソボケムーブを喰らい続けて、乙女心を刺激され続けるのと同義なのだった。

 

 皐月姫はテーブルの上で、お菓子を吟味するふりをしながら秋水の手や筋ばった筋肉の動きを無意識のうちに観察し。

 鈴鹿は顔を横向きに突っ伏すことで、あたかもおねむな空気感を醸し出しながらも、ジィ……と秋水の顔をガン見していた。

 

(あきまへん、手が好きや……うちこの手で、いいこいいこされて撫でくりまわして欲しい……)

(顔がいい……顔が良すぎるよ……包み込んで、埋めながら、添い寝したい……)

 

 なんて、そんな二人の心情など露知らず。

 秋水は「そうだ」と新たな話題を提供する。

 

「そういえばまだ、恒例のスコア比べがまだでしたね」

「「む」」

 

 皐月姫も鈴鹿も、その言葉にちょっとだけ居住まいを直した。

 

 

 

 

 

 スコア比べ。

 三人が市外任務に参加した際、いつからか恒例行事になったA.N.O.M.A.L.Y.の撃破記録ボーナス数勝負である。

 

 ただ、作戦内での記録を競うワケではなく。

 作戦当日の前月分、各自がそれぞれの市内で解決したケース数を競うものだ。

 

 中央山域での戦闘では、正直A.N.O.M.A.L.Y.が数えきれない。

 

 よって、三人の筆頭はそれぞれ前月分の自分の給与明細から、報酬手当ての金額を比較することで勝負をしていた。

 

 年齢は少々離れているが、働き盛りの若者が同年代と稼ぎを比べあって、勝った負けたを論じ合うのは下世話ながらも楽しい話題なのである。

 職位も同格であり、稼ぎにそれほど差が出ないことも大きい理由だった。

 

「ッかぁ〜! 負けた! 青墨はん、百万行っとるん!?」

「サッツーよわ〜い……八十万も行ってないなんて、サボりすぎ……?」

「ぐぐぐ……A.N.O.M.A.L.Y.の発生率が低いのは、良いことやろ〜……!」

「京洛市は古くからの結界が優れていますからね。そのぶん、ハンデがありますよ」

「しゅうすい、やさしい……でもサッツーの負け」

「沙織! アンタいくらなん!?」

「九十三万円……惜しかった」

「キィィ!」

 

 最下位になった皐月姫が、悔しげな声を上げながら缶チューハイを一気飲みする。

 梅酒が好きらしい。

 今夜はもう同じのを、四本開けていた。

 

 なお、一般社会人の感覚からすれば、皐月姫の額でも充分にすごいことである。

 

 伝奇術師の給与は、等級によって基本給が定まり、A.N.O.M.A.L.Y.の退治数や各種手当によって報酬が上乗せされる仕組みだ。

 

 三等級術師は額面年収目安、400〜600万。

 二等級術師は額面年収目安、600〜900万。

 一等級術師は額面年収目安、900〜1500万。

 準特等級術師は額面年収目安、1500〜3000万。

 特等級術師は額面年収目安、3000〜8000万。

 

 国が公開している平均の額がこれくらいで、ただし通常、これだけの額が個人の手取りになるわけではない。

 術師には特殊な負担制度が存在し、強大な術式を持った強い術師であればあるだけ、『公共事業補償料』なる〝ぶっ壊し税〟が増大する。

 

 術師が戦闘で建築物や公共設備に被害を出した場合、その補修費用は国と協会が共同負担する形になるのだが、その財源は伝奇術師の全員から徴収される。

 

 自賠責保険や労災保険に近い。

 

 なので、筆頭ともなるとこの〝ぶっ壊し税〟は相当なもので、先日起きた神代本町公会堂での事件でも、秋水は被害額を引かれている(最初から弁償するつもりで暴れたので、特に後悔はしていない)。

 

 そして、いま三人が比較しているのは、基本給ではなく追加報酬手当の額だった。

 

 伝奇術師には複数種類の手当が存在し、

 

・危険手当:A.N.O.M.A.L.Y.脅威レベルに応じ支給

・出動手当:緊急招集対応に応じ支給

・異界手当:異界内部作戦参加に応じ支給

・夜間手当:深夜活動補助

・霊障手当:呪詛・穢れ暴露補償

・封印維持手当:特定危険物・危険区域管理担当向け

・家族手当:配偶者・子ども支援

・遺族保障積立:殉職対策

・血統保全手当:希少術式保持家系向け

・辺境勤務手当:魔境圏勤務者向け

 

 国と協会は伝奇術師を、人類文明を維持するための公共インフラ職としても扱っている。

 

 一般人から見れば、超常犯罪対策官、怪異災害対策官、退魔師等を兼ねた存在であり、その本質は〝退治屋〟であることに違いはないものの。

 術師は危険なA.N.O.M.A.L.Y.を退治・解決する専門職であると同時に、文明に不可欠な社会システムでもあるのだ。

 

 その割に、追加報酬手当に該当する危険手当額が低いように思われがちなのは、言っては悪いが予算不足が原因である。

 

 大A.N.O.M.A.L.Y.時代における日本社会・経済・国家運営は、魔境化する日本列島のなかで、どれだけインフラを維持できるかに諸問題がかかっている。

 

 汐坐市、京洛市、珠凪市のような大都市圏では、地下霊脈と結界設備が都市機能の一部となって市民の生活を支えているが、大結界は浄化装置ではなく排斥と抑制のための代物。

 

 今回の掃討戦も、日本中の各都市から押し出された穢れ、澱み、思念、怪異、異界などが、人の少ない土地へ蓄積する仕組みになっているから必要になった。

 

 現在の日本列島では、主に三つの区分が存在している。

 

 ①都市圏:人口・産業集中地域

 ②緩衝圏:地方都市・農村地帯

 ③魔境圏:山岳・森林・過疎地域

 

 人が減れば結界の維持も困難を極め、結界が弱まればA.N.O.M.A.L.Y.が増える。

 A.N.O.M.A.L.Y.が増えれば、さらに人は減っていく。

 悪循環によって、魔境化は進行する。

 

 早い話、この新たな世界における日本という国は、そんな国難を抱えつつも大半の国民に〝安全神話〟を信じさせている異常な国で。

 

 ただ、先立つものが無ければどうにもならないため、経済事情が芳しくない。

 

 国家予算の相当部分が、霊脈安定路、結界中継塔、霊障医療施設、異界避難区画、神祇庁、国際A.N.O.M.A.L.Y.研究所などの維持費へ投入されている。

 

 したがって、退治屋部門だけに無制限の予算を投入することはできないのだ。

 

(物流の在り方も、世界的に変化を余儀なくされたし)

 

 特に陸運、長距離トラックでの輸送なんかは激減した。

 言うまでもなく、魔境化によるせいだ。

 世界は今や、海運と空輸を主力にし、鉄道や陸運は補助的な役割に置き換えられている。

 

 もちろん、それでもという声はある。

 

 伝奇術師は命をかけているのだから、もっと高級取りであるべきだと。

 そうで無ければ、術師人口の増加も見込めないと。

 

 しかし、社会維持に必要な職業ほど、歩合制には向かない。

 

 警察官、消防士、海上保安官、自衛官、有害鳥獣駆除業者。

 

 こういった職業の人たちは、同じように危険な仕事をしているが。

 事件の解決数や駆除件数ごとに、毎度必ずしも莫大な賞金を受け取っているワケではない。

 

 文明ある以上、A.N.O.M.A.L.Y.は日常的に発生する。

 

 ならば国は、協会は、それらの退治・討伐・解決を公共事業として運営するしかなかった。

 

 それでもなお、伝奇術師に危険手当が常設されているのは、それだけ国が伝奇術師を求めている証なんだろう。

 

 秋水はまだ成人前なので、老爺が残した後見人によって、そのあたりは夏乃の分も込みで厳格に管理されているのだが……まぁ、管理された上で充分以上、生活に困らない自由な金を使えているので、今それはどうでもいい。

 

 つまりだ。

 

「よくよく考えると、俺ってすごく場違いな気がしますね……」

「はい?」

「???」

 

 生まれながらのお嬢様と、人を動かすことが当たり前になっている大一族の跡取り娘。

 皐月姫と鈴鹿が最低でも年収3000万だと思うと、秋水は自分が同じ世界に存在していい人間とは思えなくなりそうだった。

 

「それは……〝俺のほうが強いぜ〟的な意味、かな……?」

「カッチーン。だとしたら、聞き捨てなりまへんわ。青墨はん、先々月で勝負や!」

「あいや、誤解なんですけど」

「一番稼いでおいて、意味分からないこと言っちゃだめ、だよ……」

「……沙織さんも意外と負けず嫌いですよね」

 

 秋水は携帯端末を操作して、給与明細アプリから先々月の危険手当を確認した。

 姦姦蛇螺の分が無くなったため、先々月では鈴鹿が勝利者だった。

 

「ぶい」

「また負けてもぅた……」

「京洛市ですから」

「ハッ! うち気づいたんやけど、これって永遠にうち勝てんくない?」

「そこに気がつくとは、サッツー賢くなったね……」

「グーパンチ!」

「おっぱいバリアー……」

「な、なんやねんそれ」

「……クッションで防げば痛くないと思ったけど、ふつうにいたかった……」

「あ! ごめんなぁ、女の子の大事なところやさかい、かんにん、かんにんっ」

「なーんて……うそだよ〜」

「沙織ィ!」

 

 ふたりがじゃれ合い、秋水は知らず知らず頬を緩めていた。

 

 眼福で、てぇてぇ。

 

 そんな折、携帯端末に着信がかかる。

 夜も更ける頃だというのに、さては出動要請か? と勘繰ると。

 画面に映っていたのは、まさに読み通りで『オペ子』の三文字だった。

 しかし、いつもとはバイブレーションの種類が違う。

 

 目配せで離席を断り、秋水はとりあえずドアを開けて廊下に出た。

 

「もしもし」

『夜分遅くに申し訳ありません、筆頭。お休みになられていましたか?』

「いえ、大丈夫ですよ。そちらも、こんな遅くまで残業ですか」

『ハハハ。作戦の事後処理で少し……』

「それで? どうなさいました?」

『あ、すみません。一応、最優先で連絡しなくてはと思いまして』

 

 オペ子は軽く謝りながら、「出動要請ではないです」と先に断言した。

 

『情報の共有になります』

「共有」

『蟻道鈴昌の尋問中に、至急、筆頭のお耳に入れなくてはならないことが発覚したためです』

「……」

 

 不愉快な男の名前に数瞬イラっとしつつも、秋水は無言で続きを促す。

 オペ子は言った。

 

『──〝二段階目のA.N.O.M.A.L.Y.〟が、汐坐市内に持ち込まれました』

「持ち込まれた?」

『呪物の類だそうです』

「いつですか?」

『まだ推定になりますが、恐らく第六次の作戦時と思われます』

「俺が市外に出てた時か……」

『まだ詳しいことは尋問中です。ただ、ある旧家がその呪物を不正に所持している疑いが出ています』

「疑い?」

『筆頭に捕縛される前日に、蟻道鈴昌が接触していた……可能性を示唆しているんです』

「可能性を示唆?」

『申し訳ありません。あらかじめ自身の記憶に、なんらかの隠蔽工作を図っていたらしく……尋問には非常に協力的なのですが……』

「……ああ、俺の強制改心剣を食らった後でも、真相を自白させられないんですね」

『はい』

「そうですか」

 

 つくづく、計画性の高い野良術師だ。

 

「分かりました。で、その旧家というのは?」

『──蔭木(かげき)家。およそ十年前、鳶瀬山家と婚姻関係にあった家です」

「ふむ」

『……えっと、つまり豊葉さんと依穂さんにとって、夫だった方たちの生家になります』

「なるほど」

 

 携帯端末越しでも、オペ子のハラハラした様子が伝わってくる。

 秋水は神妙に納得した。

 

 これはたしかに、自分に真っ先に連絡されるべき情報だ。

 

『それと、もうひとつあって恐縮なのですが……』

「なんです?」

『妹様──あっ、夏乃様が、退魔四家から接触を受けたようです』

「目白押しですね」

 

 秋水が少し汐坐の外に出ただけで、どんどんイベントが発生している。

 

「どこですか? まさか、全部?」

『いえ。孔雀堂(くじゃくどう)家です。南汐坐湾岸地帯に、まるで帝国を築くかのようにして権勢を誇っている、あの──』

「妹はどう?」

『手紙を受け取り、〝前向きに検討している〟とだけ……』

「なんですかそれ?」

 

 苦笑し、眉尻を下げる。

 よく分からなかったが、とりあえず明日になれば詳細が分かってくるだろう。

 オペ子からの用件は以上だった。

 

 携帯端末をしまい、秋水は宿泊部屋に戻る。

 

「と」

「「Zzz……」」

 

 皐月姫と鈴鹿は、仲良く肩を寄せ合って眠っていた。

 じゃれ合っているうちに、きっと疲れて眠たくなってしまったのだろう。

 

「可愛い人たちだな、本当に」

 

 そして、とてつもなく無防備なお姉さんたちだ。

 秋水は仕方がないので、掛け布団だけ二人に被せたあと、自分は別の空いてる宿泊部屋に泊まることにした。

 

 

 

 

 

 なお、そんな秋水の後ろ姿を見て、狸寝入りだった二人は困惑していた。

 

「……なぁ、沙織。うちら、女の子として魅力ないん?」

「サッツーはともかく……私は違う……」

「殺すぞ」

 

 半眼になって、皐月姫は鈴鹿を睨む。

 が、鈴鹿は本気にしない。

 二人は仲が良いので、秋水と関係を持つときは二人一緒だと決めているほどだ。

 

 そのために、わざわざ二人肩を寄せ合って、ご馳走を演出していた。

 

「青墨はん、うちらのこと可愛いって言うとったなぁ。なのに、なんでなん?」

「分からない……おかしい……しゅうすいは私たちを女の子扱いしてくれるのに、どうして手を出して来ないんだろう……」

「普通、こんだけのべっぴんさんが隙を晒しとったら、少しはその気になるもんやろ」

「やっぱ夜這い文化がダメな気がする……レイープっぽいもん」

「いやいや。夜這いは立派な日本文化やん?」

 

 皐月姫は生まれ育った家庭環境に問題がある。

 鈴鹿はそう思ったものの、だるかったので指摘はしなかった。

 

「ん〜……まぁ、もう、おっぱい出すくらいしないとダメなのかもしれないね……?」

「ん? せやったら、うちの完全勝利やん」

「寝言……?」

「アンタに言われとうないわ。いや、ほら」

 

 皐月姫は自分のおっぱいを下から持ち上げ、むんずっ、と揺らした。

 だっぷっ、だっぷっ、と。

 ふたつの丸みが重量感たっぷりに弾んだ。

 

「うちのほうが、おっぱい大きいやさかい」

 

 127.5センチのTカップやも〜ん、と。

 もったいぶることなくバストサイズ・マウントが行われる。

 

「は? うるさ……死ねば?」

「効いてて草やわ」

 

 というか、鈴鹿も112.5センチのNカップなので、常人に比べれば遥かに恵まれたバストを誇っている。

 これは二人の間で通説となっている仮説なのだが、特等に至れるほどの優れた女性術師は、豊富な霊力を備えていることが多く。

 

 たっぷりと備わった霊力の多くは、きっと豊満な乳房にパンパンに詰まっているのだ。

 

 もちろん、酒の席での戯言。

 真相は定かではない与太の類い。

 

 しかし二人とも、実際にたしかな実力を併せ持つのも事実であり、他にも同様の条件を満たす特等の顔見知りが何人かいた。

 

 鈴鹿が負けじと、自分のおっぱいを両手で挟み込む。

 

「……形は私のほうが上だけどね?」

「なんやと?」

「……なに? なんなら、久しぶりに見比べてみる? 触る?」

「いい度胸や。大は小を兼ねるって、思い知らしたるで」

 

 売られた喧嘩は買う性分なのか。

 はたまた、気心知れた同性同士だからなのか。

 皐月姫は特に躊躇わずに、お触りを行った。

 

「あっ、やんっ♡ そんなっ……サッツーのえっち……♡」

「!? ほんっにっこの女! なぁに喘いどんねん! アホちゃう!?」

「サッツーのも……触らせて?」

「エッロ! なんかやらしっ! やらしい沙織っ! かんにん!」

 

 夜はそうして、今度こそ更けていった。

 

 

 

 ────────────────────

 

 tips

 

 ◆伝奇術師の等級制度について

 

 特等:国家級戦力相当

 準特等:都市級戦力相当

 一等:支部主力相当

 二等:中堅相当

 三等:新人・見習い相当

 

 筆頭は特等から選出され、一都市に必ずしも一人の筆頭がいるわけではない。

 大体は、一等まで。よくて準特等。

 また、準特等からは伝奇術師協会総本部にある『特等評議会』での認定が必須になる。

 総本部には『筆頭会議院』があり、一応、全国の筆頭術師が集まっての会議が開催可能になっている。

 最近はリモートが主流なので、すっかり伽藍堂になった。

 そのことを寂しがっている総本部勤の筆頭がいるらしい。

 

 ◆術師向けコンビニ商品の紹介1

 

 《霊養羊羹》

 一切れ500キロカロリーのミステリアス羊羹。

 

 《鬼火エナジードリンク》

 100mlあたり660キロカロリーのエナドリ。

 鬼火色のドクターペッパーらしきもの。

 カラーバリエーションは数種類。

 液体なのに、炎のように揺らめく。

 ネットではマジモンの魔剤と呼ばれている。

 

 《心霊ソーダのアイスクリーム》

 一個当たり1600キロカロリー。

 ソーダ味のソルベが混ぜ込まれたミルクアイスクリーム。

 北海道産ミルクを使用し、乳脂肪分が多い。

 パッケージの一部には、北海道の筆頭術師の写真が使われている。

 

 

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エロゲ転生〜やり込んだ知識でハーレム無双〜(なお特殊性癖)(作者:星野林(旧ゆっくり霊沙))(オリジナル現代/冒険・バトル)

やり込んだエロゲに転生してしまった主人公。▼抜きゲー世界であるが、バトルもあるので、死なない、詰まない様にしながらエロく生きたいと思います。▼なお初っ端から周回用アイテムを回収する模様。▼カクヨムとマルチ投稿▼諸事情により未完▼本当に申し訳ない。▼理由は活動報告にて


総合評価:4987/評価:8.24/未完:130話/更新日時:2026年06月01日(月) 18:00 小説情報

人の生き様大好き系上位存在が蔓延る世界に生まれ落ちた生存本能極振り転生者(作者:せぞんのう)(オリジナルファンタジー/冒険・バトル)

その世界には人間の輝きが大好きな悪魔が無数にいた。▼死を経験したことで生存本能に意識を極振りした転生者のルセラは、悪魔を利用してでも生き残ることを画策する。▼しかしその姿は悪魔たちにとって、性癖ど真ん中をぶち抜く行為だった。▼しかも生き残るためにあらゆることをやってのけるこの異常者の行動は悪魔の想像の遥か斜め上を行く所業ばかり。▼やがて、生存本能極振り転生者…


総合評価:10049/評価:8.88/連載:10話/更新日時:2026年05月08日(金) 07:05 小説情報


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