クソボケ激メロ術師の現代伝奇バトルでハーレム構築スローライフ希求譚 作:所羅門ヒトリモン
まぁ、落ち着こう。
とりあえずここはいったん、秋水の思考回路をトレースしてみよう。
いくら前世の記憶があるからといえ、十七歳の少年が三十四歳の成人女性に男女交際の提案を申し出るとか、いきなりインモラルになりすぎだ。
精神的な年齢では釣り合いが取れていて、且つ、いい塩梅の恋愛対象にはなるけれど。
第三者の目線からしたら、秋水は十七歳だ。
それなのにお相手である豊葉側が、二つ返事ですんなりOKを出してしまったら、ここはもう恋愛小説すっ飛ばして官能小説の世界である。
めくるめくる淫靡な日々の幕開けである。
一方は若い肉体を持て余した男。
ボディパラメータはそれぞれ、
T179 B97.9 W75.3 H83.7 D17※通常時
未だ成長途上で、精悍な顔つき、細身寄りながらも平均よりかは余裕で厚みのあるバキバキのカラダ、世界水準でも有数の男性機能を持ち。
もう一方は、熟れた肉体を持て余した女。
ボディパラメータはそれぞれ、
T170 B120.0(Qcup)W58 H92
二次元の世界でさえ数を減らす、驚愕の数値を誇った豊満艶麗の未亡人。
しかも、美女。
二十代と間違えられかねない若さを維持。
どう考えても、何も起こらないはずがなく……
したがって、ふたりがそれぞれ〝その瞬間〟に至った経緯を、まずは時系列順に振り返ってみよう。
千歳が可哀想にも驚愕の悲鳴をあげるコトになったのは、ひとつひとつの理由を紐解いていけば仕方のない事情によるものだ。たぶん。
事の発端は、調伏の儀の翌日。
早朝、秋水の携帯端末に一通の連絡が届いたコトに端を発する。
「ふむ」
送り元は汐坐の伝奇術師協会。
連絡内容は昨日の今日なので、当然、鳶瀬山家に関してだ。
式神の術式を持つ術師は珍しい。
正確には、調伏した式神を持つ術師は珍しい。
大抵は【呪い】止まりで式神を扱えず、希少な術式を持って生まれていても、デメリットしか味わえずに人生を終えてしまう。
協会はそのため、世界的にも
姦姦蛇螺クラスのA.N.O.M.A.L.Y.となると、本当に式神として扱えるのか?
特に今回の場合、青墨秋水という第三者が代理調伏を行った形になる。
過去の記録と事例から、代理調伏そのものはほぼほぼ問題ないはずだ、という認識が大半なものの。
念には念を入れて、式神の初回召喚時には秋水も立ち会ってもらいたい。
要はそういう話だった。
これは秋水の調伏成否を疑っているだとか。
鳶瀬山家に対する負い目があって、間に秋水を挟んでおきたい……などというヘタレた事情でもない。
……いや、後者のほうは多少あるかもしれないが、それにしたって最大の理由ではないだろう。
単に、最悪の場合を想定しているだけだ。
過去には調伏の儀式の最中、A.N.O.M.A.L.Y.側がわざと調伏されたテイを装い。
諸手を挙げて喜んでいた術師を、「さぁ式神の召喚だ!」の段階で騙し討ちして殺した事件もある。
姦姦蛇螺がその手のタイプではない、とは協会には判断できない。
〝他にも様々な要因があるが、協会はこれを一番恐れています〟
メッセージには赤裸々な一文が添えられていた。
A.N.O.M.A.L.Y.はその特性上、人々に知れ渡れば知れ渡るだけ脅威度を増していく。
知名度が高まれば発生頻度も高くなるし、ひとつの街にひとつでも〝おかしなものが顕れた〟となれば、連鎖的に他のA.N.O.M.A.L.Y.も出現しやすくなる。
するとどうなるか?
人間の生きやすい世界が、減っていくのだ。
既存秩序をめちゃくちゃにされ、数多の異界法則が乱気流のように溢れる空想と迷信の地獄。
──手を繋いで歩いていたはずの我が子が、まばたきしたら神隠しに遭っていた。
──ある日とつぜん不思議の国が出現し、市民が全員ナンセンスでカオスな迷宮に囚われ廃人化した。
──絶滅したはずの恐竜や古生物が街を闊歩し、博物館からは展示されていた化石が意思を持ち始めた。
──車を運転中、どうしても不自然な道路標識の指示に逆らえなくなって、事故を引き起こした。
そんなものが、瞬く間に人間世界を脅かしていく。
世界各地に設立された協会は、ゆえに一般人からは極力A.N.O.M.A.L.Y.を隠匿することに努めている。
各国各当局も、A.N.O.M.A.L.Y.関連の事象はすべて、厳格な情報統制を以って管理されなければならないと定めた。
もっとも、それは完璧には不可能なので。
術師の存在同様、最低限の知識は一般人にも周知されている。
日本はその国民性もあって、六割くらいの国民は「へ〜、そういうのがあるんだ〜」と言った感じだ。
この安全神話を維持するため。
協会に所属する伝奇術師は、必ず"人払い"と"認識阻害"の呪具を携帯するようにも義務付けられている。
秋水は自前の術式でどうにかできるので不携帯だが、老爺からはもちろん口酸っぱくそのあたりを叩き込まれていた。
「……これも縁かな?」
協会の要請を断る理由は無く。
また、鳶瀬山家の面々に個人的な興味もあった。
昨日の結婚相談は、協会の運営するサーバーがシステムダウンしてしまったとかでアプリ上なんの進展も無い。
社会に出れば、出会いの機会なんてのは加齢とともに減っていく一方だ。
前世の教訓から、秋水は「動くのなら自分からだ」と意識を改革していた。
そして、まだるっこしい恋愛などはやってられない性分になっていた。
なぜなら中身が三十歳だから。
もはや自分にとっても相手にとっても、時間の無駄にしかならないような恋愛は望んでいない。
いまの肉体年齢が思春期真っ盛りでも、そのへんの価値観は揺るがなかった。
具体的に言えば、無理なら無理だと最初に明確にしておきたかった。
そうしたら、秋水もすっぱり諦め、以降はそういう意識で関係性を固定する。
妹の夏乃が聞けば、「ロマンスの情緒が欠片もありませんわー!」と激昂しただろう。
だが秋水は、もう疲れている人間だった。
自分の人生を無益に消費するコトに、他人よりも激しい抵抗を持ってしまう人間だった。
恋愛はひとりで完結しない。
相手には必ず自分と同じ以上に、異性に求める条件がある。
それを最初に提示して欲しい。
秋水も提示するから。
よって姦姦蛇螺の初回召喚を見届けたら、交際の提案を持ちかけよう。
候補者は最初から二名だった。
鳶瀬山豊葉。
鳶瀬山依穂。
自分がいま高校生である事実はうっちゃり、狙いは大人であるふたりだけ。
高校生のうちは子どもであると判断し、千歳や千景、八千代、八千花は初めから対象外だった。
立派だが、いろいろズレた考えの男だった。
ズレた思考の持ち主でなければ、そもそも労働を嫌って戦闘に走るコトも無いので、残当と言わざるを得ないのだが。
ともあれ。
秋水はそうした思考のもと、再度鳶瀬山神社に来訪した。
姦姦蛇螺の初回式神召喚。
さて、問題が浮き彫りになったのはこの時からだ。
式神の召喚。
それ自体は何も問題無かった。
念のための安全策として、疑似的な禁足地化を行う禁足術。
協会の専門要員が、鳶瀬山神社の境内に注連縄の呪具結界を展開し、幾重にも人払いを重ねた後。
結界の中心で緊張しながらも、一家は六人全員揃って霊力回路を起動した。
伝奇術師の身体には、エネルギーサーキットがある。
すべての術師は霊力回路に霊力を通すことで、己が術式を成立させる。
だいたいは肌の上でライン状に可視光化され、発熱を伴う。
そのため、通常の巫女業務とは異なる退魔巫女としての正装なのか。
六人の美女たちは、一風変わった巫女装束に着替えていた。
「伝奇正装に似ていますね」
「やっぱり、分かるのね」
「私たちはその段階に到達してはいないけど」
「伝奇詠唱と同じで、衣服も物語に近づけておけば」
「より術式の質は高くなる」
このあたりの理屈は、一般的な魔術理論と同じだった。
類感呪術。
似ているものには相互作用があり、要するにちょっとしたバフ。
RPGでいう装備品によるステータスアップだ。
ちなみに伝奇正装には、自身を一種の物語世界住人とする効果があるため、変身時には自動で一般人への認識阻害効果を発揮するサブメリットもある。
先ほど軽く触れた秋水の呪具の不携帯云々は、これに拠るところが大きい。
しかし、鳶瀬山家が着用して現れた巫女装束は、伝奇正装ではない。
秋水は、ちょっと目のやり場に困った。
鳶瀬山家の面々は、恐らく姦姦蛇螺を意識して衣装を用意したのだろう。
だが、巫女の緋袴はどれもチャイナドレスみたいにスリットが入っていて、異性にはかなり目に毒なむっちりとした真白い生足が公開されてしまっている。
蛇の下半身を模している。
それは理解できたが、秋水は改めてこのとき、再認識した。
(ヤバいな。高校生までは子どもだって、それはいまでも思うんだけど……)
これ、本当に子どもか?
千歳も千景も、八千代も八千花も。
女性にしては高身長な体格もあって、恵体の二文字が脳裏に氾濫する。
彼女たちは境内にいる唯一の男性の視線を感じてか、もじもじと恥ずかしそうに内股を閉じて歩いており。
ふたりの母親との対比によって、四人ともいずれああなるのかも、と否応なく想像を膨らませた。
というか、現時点でもすでに成熟した女体を誇っている。
秋水のなかのズレた良識が、まるでテンプシーロールを受けたようによろけるのが分かった。
それはともかく。
協会の人間による開始の合図。
六人が意識を集中させて手を繋ぎ合うと、境内には程なくして稲妻が奔った。
稲妻が消え、霊的圧力が増大し、協会の人間が一気に顔を青ざめさせると。
その
「……異形じゃ、ない?」
「クハッ!」
誰もが固唾を呑んで少女に注目し、誰かひとりが疑問を堪えきれなかった。
そこにいたのは、普通のヒトガタだったからだ。
腕が六本あるワケでも、下半身が大蛇であるワケでもない。
白銀の長髪と紅い眼をした巫女服の少女。
切り込みが多いデザインなのは、古代の巫女装束だからだろうか?
それとも、少女が発する刃のような気配が、服の内側から発露している表れか。
特徴的だったのは、髪色や霊的プレッシャーそれだけではない。
細かな鈴がたくさん繋がった紐飾り。
それらは肉体の自由を戒めるかのように、少女の胸囲と両腕、二本の太もも、それぞれを縛っていた。
余談だが、こちらも爆乳だった。
また、頭部には狐の耳。
腰の後ろ、恐らくは尾骨の上あたりからは、こちらも狐と思しい尻尾が生えていた。
露出された足には、巻きつかれるかのようにして蛇の鱗のようなアザがある。
想定とは違ったA.N.O.M.A.L.Y.の出現。
しかし、秋水には状況が分かっていた。
「姦姦蛇螺のルーツが、豊穣の蛇神であるなら、狐神との関連も当然だな」
「……筆頭。と、おっしゃいますと?」
「ウカノミタマ。今だとお稲荷さんと習合されて、すっかり狐のイメージが強いだろうが」
元を辿れば、ウカノミタマは蛇の神である。
漢字で表記すると、稲魂。
あるいは宇迦之御魂神か、倉稲魂命。
宇迦は穀物を意味する古語で、そこから転じて穀物を保存する倉の意味でもある。
記紀神話では食物神を指して「
「だが、それを言うなら宇迦も宇賀だ」
「なるほど、宇賀神!」
「そう。福の神の一種で、弁財天とも類似した神性を持つ『人頭蛇身』」
この神もまた、ウカノミタマに由来すると考えられ。
今日では宇賀弁財天とも呼ばれている。
儀式の最中では、使い魔のような分霊としてその特徴が顕れていた。
「日本では蛇神信仰のあと、狐神信仰が主流になったからな」
蛇神が担っていた豊穣の権能は、そのまま狐神に引き継がれた。
伏見稲荷大社の本殿の近くでは、龍神がともに祀られていたりもするらしい。
「零落した神なら、習合によって多少姿を変えていても不思議はない」
「ククク……賢しらな口よ。なんと忌々しい」
「生意気な口を利くな、ハルミ」
「チッ……分かっておるわ、ご主人様め」
姦姦蛇螺──否、式神名ハルミは拗ねたように顔を背けた。
反抗的な態度と言葉を使っているが、秋水には分かった。
調伏済みのA.N.O.M.A.L.Y.は、術師に絶対服従である。
主人に害意を抱き、仇を為すコトはできない。
加えて、秋水が調伏をしたのもある。
智慧の利剣・火血刀。
あれは姦姦蛇螺から過剰な怨念を削ぎ落とし、怒りと憎しみに曇っていた眼をクリアに濯いでいる。
そのため、姦姦蛇螺の現在は限りなくA.N.O.M.A.L.Y.化する以前の、フラットな状態に近いはずだった。
にもかかわらず、つっけんどんな感じなのは……
「貴方、不貞腐れているのかしら……?」
「おぉ、そうじゃとも。妾は不貞腐れておるのよ。これが不貞腐れずにおられるかや? のぅ、鳶瀬山の」
「っ」
「そこなクソガキならばともかく、妾は今後、おぬしらの走狗でもある」
これを嘆かずにおられるかや? と。
ハルミはうんざりした様子で首を回し、鳶瀬山家を
「どいつもこいつも、乳ばかりデカく育った
「「「「んなっ!?」」」」
「否定はしないわ」
「でも、誰のせいで私たちがそうなったのかは、オマエにだけは咎めさせない」
娘たちがセクハラ発言に顔色を変えるなか。
母親たちはさすがに強かった。
秋水は言葉なく豊葉と依穂を魅力的に思った。
ハルミは「フン」と鼻を鳴らし、「好きに恨むがいい」と返すだけだった。
もはや何をどうしても式神である事実は変わらないので、何を言っても無様なだけだと諦めたのかもしれない。
「じゃが、事実は事実じゃ。妾は式神の身に落ちたが、それはおぬしらも同じコト」
「ん?」
秋水が困惑したのは、この瞬間である。
ハルミの発言を耳にして、誰よりその意図を掴めず困惑したのは秋水だった。
「? どういうコトだ?」
「私たちも、式神だって言いたいの?」
「古代人特有の、比喩か何かかしら?」
「──待って。もしかしてだけど……」
「察しのいいのがおるのぅ? その通りじゃ」
まさか、と秋水はハッとした。
ニヤリ、とハルミが悪辣な笑みを形作った。
「妾は
「あの瞬間、オマエは鳶瀬山家全員でもあった……?」
「おぉ、そうじゃとも。もちろんじゃ。姦姦蛇螺とはそも、そういうお話」
人食いの大蛇も。
大蛇に食われた巫女も。
どちらもが姦姦蛇螺であって、時に姦姦蛇螺ではない。
怪談の結末で、語り手はそう話している。
だから助かったのだとも。
ゆえに、
「そぅれっ! 妾に刻まれた契約の印! 首を囲うこの輪っか!」
「「「「「「!」」」」」」
「おぬしらの首にも、そっくり顕れる頃合いよのぅ!」
式神の初回召喚は無事に完了した。
しかし、それは召喚に立ち会ったすべての人間に、予想外の結果をももたらした。
姦姦蛇螺ことハルミは、鳶瀬山家の退魔巫女全員の式神であるのと同時に、青墨秋水の式神でもあり。
鳶瀬山豊葉。
鳶瀬山依穂。
鳶瀬山千歳。
鳶瀬山千景。
鳶瀬山八千代。
鳶瀬山八千花。
以上六名もまた、青墨秋水の式神として呪的結合が確認されてしまったのである。
絶対服従の咒式印。
契約首輪となって顕れたそれは、伝奇術師の霊力回路を変異させて発光しながら浮かび上がり。
ほのかに白く、薄くピンク色で縁取られ、西洋の魔法陣にも似ていた。
それらは次第に、チェーン状のラインを垂らして。
虚空を蛇のように泳ぐと。
一気に秋水の両手首に巻きつき、霊力回路と溶け合った。
無論、ハルミからもそれは同じだ。
ハルミの場合、最も線は多かったが。
秋水は独特の感覚から、「なぜ?」と困惑した。
夏乃の式神であるヒナギクの霊力。
秋水はその残滓を感じ取ったのだ。
「これは……ヒナギクの?」
「そうじゃ! あのおっかない娘、"運命"を所掌しておるじゃろう! おかげで容易かったわ」
「夏乃のときは、こんなコトにはならなかった」
「ふぅむ? それは察するに、血縁かや?」
「妹だ」
「ハン! だったら知れたコト」
最初から強い結びつきを持つ者なら、縁結びの必要は無い。
「ぬかったの、ご主人様? 妾らA.N.O.M.A.L.Y.の力をイタズラに利用するから、こうなるのじゃ」
「……………………」
つまり、昨日の調伏の瞬間、二つの予期しない要因が紛れ込んでいた。
ひとつは、姦姦蛇螺の偏在性質とでも呼ぶべき特異性。
千歳に憑依し肉体を乗っ取っていたあの時、姦姦蛇螺は同時に他の鳶瀬山家でもあった。
これは鳶瀬山家が、もともと強固な霊的親和性を備えている事情も絡んで来る。
もうひとつは、ヒナギクの権能。
地獄の判官であり官女でもあり、運命の赤い糸をも司るA.N.O.M.A.L.Y.の力。
秋水はそれを以って、調伏剣を研ぎ上げていた。
姦姦蛇螺は恐らく、敢えてその事実に相乗りしたのだ。
「えーっと……」
協会の監督員が、沈黙に染まった当事者たちをオロオロ見回して、言葉を探った。
探り、何を咄嗟に思い当たったのか。
「協会としては、調伏の儀式が無かったコトになるのは避けたいので……」
契約の解除は勘弁して欲しい。
「とりあえず、当初の目的は無事に完了できたということでもありますのでぇ……」
あとは当事者たちの間で、話をしてください。
投げっぱなしジャーマン。
見ようによっては、「ウチらシーラね!」とも受け取れる態度で、そそくさと撤収して行った。
「これ以上とくに用が無いなら、妾も寝る」
実体化を解き、合計七人の霊力回路に分散しながら溶けゆくハルミ。
鳶瀬山家の退魔巫女たちは、先ほどからずっとだんまりで。
秋水もなんと声を発せばいいのか、すぐには思い至らなかった。
神社の境内には、そうして深い静けさだけがしばらく残されたのだ。
ピュ〜、と。
季節外れな木枯らしまで吹いたような気がした。
やがて、口火を切ったのはもちろん秋水。
「責任を果たします」
「「「「「「ッ!?」」」」」」
女たちは全員、顔を真っ赤にしてたじろいだ。
後半に続く。
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tips
◆霊力回路
伝奇術師の肉体に備わったエネルギーサーキット。
空想を現実に変え、迷信を真実にし、架空の物語を既存秩序にうわ被せする必須仮想器官。
術式というコードが書かれたプログラムのようなもの。
素膚の表面近くに発光しながら浮かび上がる。
何らかの理由で霊的・呪的に干渉を受けると、非常に影響されやすい。
◆絶対服従の咒式印
絶対服従の契約首輪とも。
本来は調伏されたA.N.O.M.A.L.Y.の霊核近くに浮かぶ紋様。
伝奇術師がこれを刻印されると、一部霊力回路が変質して形状を変える。
チェーン状のラインが伸びたのは、今回ヒナギクなるA.N.O.M.A.L.Y.の力を利用しての調伏だったがため。
運命の赤い糸が、鎖として可視化された。
◆とある協会の監督員たちの一言集
「これ外部に漏らしたら、めっちゃ荒れるんだろうなぁ……ウッ胃が!」
「私、羨ましくてやってられないっすよ……」
「なにあれ? ペット? ペットプレイなの?」
「アプリはまだ鯖落ちしたままだし」
「本部に戻ったら問い合わせ止まらないし」
「かと言って筆頭と直接お話するのは恥ずかしいし……」
「いいなぁ、鳶瀬山さんたち」
「正直、最近のTL小説の主人公みたいな立場だよねぇ」
「不幸だった私が、最強激メロ王子様に助けられて的な?」
「でもこれ、退魔四家から絶対横槍入るよ?」
「うーん、そうなんだよなぁ」
「協会の立場としては、いろいろ負い目もあるからさぁ」
「あんまり、彼女たちの邪魔とかしたくないんだけど」
「くそぉ、十年前の世代、やっぱ負の遺産が多すぎる!」
「だからこそ、現状の筆頭がめっちゃありがたや〜なワケで」
「うぅぅっ! 筆頭と写真撮りたかったな!」
「やめなー」
「それ禁止のやつ」
「霊視局のヤツらはいいよねぇ」
「異動したい」
「あ、でも最近ガチストーカー化してたヤツが洗浄室送りになったって」
「なにそれ?」
「なんでも、視界が全部真っ赤に染まって、それ以外は何にも見えなくなったんだって」
「……うわぁ」
「夏乃ちゃん様の式神でしょ、それ」
「夏乃ちゃん様ご自身かもよ?」
「紅の伝奇姫、こわすぎ」