森下藍に振り回される話   作:アルラトゥ

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 暴力事件はAクラスの出番はないので軽く触れるだけで飛ばします。割と駆け足気味かもしれません。


第1話

 

 中間テストが終わり、Aクラスはちょっとした騒ぎになった。

 殆どの坂柳派の生徒が、全教科満点を取ったのだ。これに葛城派の戸塚という生徒筆頭に数人が何か不正をしただの騒いでいたが、1年一学期の中間テストの問題は例年同じ問題だったので、過去問を入手しその問題と答えを暗記しただけだ。

ちなみに、森下がまた昼飯を奢ることを対価に過去問を差し出そうとしてきたが、丁重に断った。単純に頭がいい自覚があるので、過去問に頼らなくても問題ないと判断したからだ。結果的には満点や1、2問間違えた程度だったのでポイントの節約になってよかった。

 

 6月になっても後ろの席の変人からのいたずらを受けながらも楽しい日々を過ごしていた。

 里中や司城、町田や清水たち男子と遊びに出たり、西川や六角、白石に福岡たち女子とも遊びに出たり……こうして思い返すと、遊んでばかりだな。

 自分とは別の派閥の生徒に対してピリピリし始めているので、そこに気をつけてさえいれば楽しい日々だった。

 

 しかし7月始め、プライベートポイントが振り込まれなかった。

 

 「すまないが、とあるトラブルにより1年全体でプライベートポイントの支給が遅れている。トラブルが解決され次第ポイントは振り込まれる手筈となっているので、安心してほしい」

 

 真嶋先生はそう言い、一学年4クラスのクラスポイントを発表した。俺達Aクラスは1004ポイントと、順当に増えている。最初の支給日にクラスポイントが0ポイントだったことでポイントが支給されなかったDクラスも87ポイントと増えていた。支給されるポイント自体は1万もないが、2ヶ月間ポイントが貰えなかった彼らにとってはとても喜ばしいものだっただろう。トラブルさえなければだが。

 

 そして次の日、真嶋先生はCクラスとDクラスの間で暴力事件があったことを俺達に伝えた。

 とはいえこれに関しては、俺達Aクラスには関係ないことだったので関わることは無かった。

 

 時は進んで夏休み、1年生は坂柳を除いて全員が船の上にいた。

 豪華客船だ。船の中には様々な施設があり、多数のクラスメイトが施設に行こうと誘ってくれたので、順番に施設を巡り、楽しい船上生活を満喫していたところで、アナウンスが鳴った。

 

 『生徒の皆様にお知らせします。お時間がありましたら、是非デッキにお集まりください。間もなく島が見えて参ります。暫くの間、非常に意義ある景色をご覧頂けるでしょう』

 

 「──それでは参りましょう渡会桐人」

 「別にいいけど、急に現れるなよ……。驚くから」

 「せめて驚いた反応くらいしてから言ってもらえませんか。まぁそれはともかく、早く行きますよ渡会桐人。意義ある景色……何か含みのある言葉ですので、きっとこの後何かがあるのでしょう。恐らくは、本格的なクラス間闘争が」

 

 森下に連れられ、俺達は甲板に出た。

 

 「クラス間闘争というのは俺も同意見だよ。けど坂柳は体調を考慮して欠席してるよな。つまり今回のクラス間闘争は葛城が仕切ることになるんじゃないか?」

 「ほぼ確実にそうなるでしょう。坂柳派としては面白くありませんが、リーダーが不在である以上は仕方ないことです。しかし、渡会桐人が仕切るのなら言うことを聞くことを考えてもいいですが」

 「俺はリーダーになって人を引っ張るよりも、リーダーを支える方が性に合ってるんだ。……というか考えるだけかよ」

 「私見では、リーダーとしての能力はあるように思えますが?」

 「俺に対して高評価だな。……目的は?」

 「無人島から帰ってからで良いのでまたスペシャル定食を──」

 「そればっかだなお前……」

 

 殆ど森下との雑談に費やしてしまったが、意義ある景色というのは、なんとなく理解できた。

 

 そして──

 

 「ではこれより──本年度最初の特別試験を行いたいと思う」

 

 

 

 

 

 無人島特別試験。

 簡潔に言えば今日から8月7日の正午の1週間、各クラス毎に無人島で生活する試験。

 試験専用のポイントが各クラス300ずつ支給され、最低限のテントや衛生用品以外はこのポイントを消費して購入する。

 試験終了時に残っていたポイントはクラスポイントへと変換され、夏休み明けに反映される。

 

 真嶋先生から1年全体に説明されたのはこんなところだ。そして各クラスは分かれ、担任教師が説明を引き継ぐ形となった。

 

 まずは体温や脈拍、人の動きを探知するセンサー、GPS、緊急ボタンまで備えた高性能な腕時計を配布され、それを試験期間中は外さないこと。許可なく腕時計を外せばペナルティがあると伝えられた。

 

 次にペナルティの内容。

 著しく体調を崩したり、大怪我をし続行が難しいと判断された者はマイナス30ポイント。及びその者はリタイアとなる。

 環境を汚染する行為を発見した場合。マイナス20ポイント。

 毎日午前8時、午後8時に行う点呼に不在の場合。一人に付きマイナス5ポイント。

 他クラスへの暴力行為、略奪行為、器物破損などを行った場合。生徒の所属するクラスは即失格とし、対象者のプライベートポイントの全没収。

 

 その後も真嶋先生は説明を続けるが、要約すると担任教師は各クラスが拠点とするベースキャンプでクラスと共に行動し、点呼もベースキャンプで行うこと。簡易トイレの説明もしたが、主に女子から嫌そうな声が上がった。

 

 そして試験に重要なさらなる追加ルールも伝えられた。

 島の各所にスポットとされる箇所が複数設けられており、それらには占有権が存在する。

 スポットは占有権を獲得したクラスのみに利用することができ、占有して8時間後に効力を失う。

 他クラスが専用したスポットを許可なく使用すると50クラスポイントのペナルティ。

 スポットを占有するたびに1ポイントのボーナスを獲得し、このポイントは試験期間中には使えず、試験終了後にクラスポイントとして加算される。

 スポットを占有するには専用のキーカードが必要であり、キーカードを使用できるのはクラスから選んだリーダーに限定される。正当な理由なくリーダーを変更することは出来ない。

 最終日の点呼の際、他クラスのリーダーを当てる権利が発生する。

 リーダーを当てる毎に50ポイントを得られ、リーダーを当てられた場合、マイナス50ポイント。ボーナスポイントも没収となる。また、リーダー以外の人物を指名した場合、マイナス50ポイントのペナルティを受ける。

 

 長い説明だったが、これが無人島特別試験のルールだ。

 

 「──まず、俺から言わせてほしいことがある」

 

 葛城がクラス全体に声を掛けた。

 

 「今回の特別試験では、体調の問題から坂柳が欠席している。坂柳がいない以上、坂柳派は指揮を取る者がいないと思って構わないな?」

 「──ああ、いいよ。体調不良は仕方ないからねぇ」

 

 坂柳派を代表して、橋本が答えた。

 坂柳の欠席によりAクラスは270のポイントでスタートすることになったが、橋本も言った通り体調不良は仕方ないことだ。これで坂柳を責めるのは不当だろう。

 

 「では、今回の特別試験では俺が仕切るということに問題はあるか?」

 「……まぁ坂柳派としては当然不満だけど、坂柳から『もし私が参加できない状況でクラス間闘争が行われたら、坂柳派は葛城くんの指示に従うように』なんて言われてるんでね、おとなしく従うさ。他の坂柳派もいいな?」

 

 敵対派閥の指示に従うのはいい気はしないだろうが、坂柳が従うように言っているのなら仕方ない。そんな雰囲気が坂柳派から感じる。

 

 「了解した。渡会、お前も中立の立場ではあるが、今回は俺の指示に従ってくれるか?」

 「勿論。同じクラスの生徒として協力するよ」

 「感謝する。では早速だが移動を開始したい。先ほど、ベースキャンプ地に最適な場所を船の上から確認した。その場所をAクラスのベースキャンプ地にしたい」

 

 こうして、Aクラスの移動は始まった。




高度育成高等学校学生データベース

氏名:渡会 桐人 わたらい きりと
クラス:1年Aクラス
誕生日:8月14日

評価
学力:A-
知性:B+
判断力:B
身体能力:A
協調性:A+

面接官からのコメント
学力、身体能力共に高水準と非常に高いポテンシャルを持つ。小学校の頃より高い協調性を発揮しクラスや学年でもよく名前が上がっていた。中学生になり更に協調性は磨かれ、1年時に小学校からの友人と共に生徒会に所属し、後にその友人は生徒会会長、本人は生徒会副会長として学校の様々な行事に貢献していた。以上の事から、Aクラスが適性と判断する。

担任メモ
クラスの中心人物として、日々クラスメイトたちに囲まれて過ごしています。懸念事項として、後ろの席の生徒にいたずら・ちょっかいをかけられることが多いですが、本人は多少気にしている程度でその生徒とも共に過ごしている姿を見かけています。これからも経過観察を続けていきます。
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