全てのピースが揃っていく
※皆さん誤字修正ありがとうございます。ぼろぼろ誤字が出てきます。
3回どころか話によっては4回くらい見直してるのにおかしいなあ(´༎ຶོρ༎ຶོ`)
「――どうしたよ、兄ちゃん。急に呆けた面して」
「――!」
気がつけば、いつも通り厳つい顔立ちの中年―――カドモンに声をかけられ、目が覚める。
殺された瞬間の気分の悪さはまだ胸の奥に残っていたが、それでも俺はかつて無いほどの活力に漲っていた。
「は、ははっ!運命様、上等だ!」
―――ラム、俺もぜってぇ諦めねえ。必ずお前たちを救って見せる。
まさに今、俺の胸の奥にはケツイが漲っていた。俺ははカドモンの言葉を無視して前のめりに問いかける。
「なあおっちゃん、衛兵の詰所ってどこだ?」
カドモンは眉をひそめ、値踏みするように見てきた。
「は?リンガも買わねぇで道だけ聞く気かよ」
「いや、まあ――って、いや今はマジでそれどころじゃなくてだな」
言い訳を探すが言葉がうまくまとまらない。しかし、すぐにラムとこの男、カドモンの関係を思い出し、口を開いた。
「………ラムを助けるために必要なんだ」
思いついたまま口にすると、カドモンの表情がわずかに変わった。軽口を叩くような雰囲気が消え、真剣な目で見返してくる。
「ラム……メイドの嬢ちゃんの事か?」
「ああ」
「……あの嬢ちゃんに、何かあんのか?」
「いや、詳しいことは言えねぇんだけど……その、ちょっとヤバくて」
もごもごと歯切れの悪い説明しかできない自分にもどかしく思いながら。カドモンを見つめる。するとカドモンはしばらく黙ってから、すぐに奥から地図を取り出した。
「……ここからまっすぐ行って、突き当たりを右だ。そのままずっと進んでいけば、右手側にでかい建物があるから見りゃ分かる」
「……!助かる!」
「事情は聞かねぇが、あの子のピンチなら助けてやってくれ」
「ああ……当たり前だ」
俺は頭を下げると同時に走り出す。背中越しに「借りだからな!今度はラムちゃんと一緒にリンガでも買いに来い!」と叫ぶ声が聞こえたが、それを聞いたときにはもう距離が離れていた。
ラムの名前を出しただけで、あの男が態度を変えた。その事実が、あいつが普段色んな人に対してどれだけ信頼を積み重ねてきたのかを物語っているようで、胸の奥が少しだけ熱くなった。
詰所に着く頃には既に息が上がっていたが、足を止める気はなかった。扉を押し開けて中に入り、周囲の視線を無視して一人の衛兵に声をかける。
「すまん、ラインハルトって人いるか?」
「ラインハルト様か?今日は非番だ、ここにはいないぞ」
「げぇ!マジかよ!」
返ってきた答えに思考が一瞬止まる。初手からラインハルトを連れて行くという、期待していた必勝ルートがあっさり潰された。
「非番って、どこ行ったか分かんねぇのか?」
「そこまでは知らん、戻る時間も決まっていない」
あっさりとした返答に思わず頭を抱えたくなる。ここで会えないとなると、ラインハルトをどこかで見つけ出さなくてはいけない。
「マジかよ……」
吐き出した声は思ったよりも弱かった。それでも立ち止まっている暇はないと自分に言い聞かせ、無理やり頭を切り替える。
「……もし戻ってきたら、ナツキ・スバルって男がここに来たって伝えてくれ。ちょっと助けて欲しい事があるから、ここに残っててほしいって」
「……分かった、伝えておこう」
「日が暮れる前ぐらいに俺もまたここに来るから!」
若干怪訝な表情をされたが、流石に無下にはされないだろうと短いやり取りを終える。それから俺は外へ出て王都を走り回った。とにかく、少しでもラインハルトと合流できる確率を高める必要がある。
息を切らしながら、王都中を走る、走る、走る―――
しかし、どれだけ走り回っても目当てのラインハルトどころか、エミリアやラムの姿さえ見つけることができず、時間だけが削れていく事になってしまった。
「くそ……どこ行ったんだよ……!」
焦りが募る。
王都は広すぎた、人も多すぎた、その中から狙った相手を見つけ出せるほど偶然は味方してくれなかった。
気付けば、空はもう徐々に夕方の色に染まり始めていた。このままではまた同じ時間帯に突入する、その事実が背中を押す。
「……クソ、先に行くしかねぇか」
歯を食いしばり、方向を変える。目指すのは貧民街の盗品蔵。
―――前回の時間軸、フェルトは俺と同じく、その場に残って戦う選択肢を取った。その結果ラムがフェルトを庇う形で死んでいた。
戦闘に役立つとは思われてなかったかもしれないが、それでもあの場を背に逃げ出す程度の勇気をフェルトに与えられていたのかもしれない。
やっぱり、俺にもできることはある
薄暗くなり始めた道を抜け、目的の建物の前に立つ。息を整える暇もなく、すぐに扉をノックすると、ロム爺が合言葉を始めた。
「大ネズミに」
「……合言葉だよな。ええーっと……毒!」
「スケルトンに」
「落とし穴!」
「我らが貴きドラゴン様に」
「クソッたれ!」
記憶を頼りに口にする。すると扉の向こうから気配が動く。少しの間を置いて、重い音を立てて扉が開いた。
中に入った瞬間、見慣れた顔が目に入る。フェルトとロム爺、既にその二人の姿を見て俺はほっと肩の力を抜いた。
「ふー……よかった、間に合ったか」
「あん?何が間に合ったんだよ兄ちゃん……っていうか誰?ロム爺の知り合いか?」
「いや……見ない顔じゃな」
二人は怪訝そうな顔でこちらを見ている。まだ、始まっていない。その事実に安堵しながらも、同時に頭の中では素早く次の展開を組み立てていた。
―――ラム達と腸狩り、どっちが此処に先に到着するんだ?
そもそもあの二人がこの盗品蔵にたどり着かないという可能性が一瞬よぎったが、その可能性は間違いなくないだろう。なぜならラムは最初に会ったとき、カドモンにフェルトの人相を伝え、そこから貧民街の情報を得て貧民街の盗品蔵を知った様な素振りを見せていた。それなのに前の時間軸では、自分から貧民街に行くと言い出していた。
つまりラムは最初から徽章が行きつく場所を知っていた上で、あえてそう動いたということになる。ならどうしてエミリアと一緒に徽章のありかを追うフリなどしていたのか、あるいは何か他に探しているものでもあったのか……その意図までは読めないが、ここに来る理由は十分にある。
「……話がある」
「話ぃ?」
怪訝そうな顔を続けるフェルトに、徽章についての交渉を始める。俺はエミリアのように金を提示することもできないので、自分の持っていた携帯電話で物々交換できないか交渉をする事にした。するとロム爺から「この
それから間もなくして。
「ラム、ここで合ってるの?」
「……ええ、間違いないと思うわ」
―――あの二人の声が聞こえた。
「来た……!」
腸狩りじゃなくてあの二人が先だ!
もし腸狩りが先だった場合、あの二人がここにきてくれるまで何とか楽しいトークタイムで時間を稼ぐつもりだったが、ここは運が良かった。
「おっ、おい!待てよ兄ちゃん何を勝手に……!」
フェルトの制止を無視して、勢いよく椅子を立ち、扉の方へと向かう。扉を開けると、エミリアとラムの顔があった。ちらり、とラム見ると彼女は目を丸くした後、僅かに安堵したように溜息を吐いた。
―――もしかして、街中に俺の姿がなくて心配してくれてたりして。
……なんて考えに口元が若干緩むも、繰り広げられるエミリアとフェルトの口論の声に引き戻された。
「げえっ!姉ちゃんたち、こんな所まで追っかけてきたのかよ」
「げぇっ、とは失礼ね!貴方が盗んだもの、すごーく大切なものなんだから返して!」
「やなこった!第一、盗まれるアンタが不用心過ぎるんじゃねーのか?」
「そ、それは……、いや、そもそも盗むのはいけない事なのよ!」
「二人とも待った待った!今はこんな事してる場合じゃねえんだって!」
腸狩りが襲ってくるタイミングは、正確には分からない。だから今からでも警戒する必要が―――
「その男の言う通りよ。今はこんな事をしている場合じゃない―――パック様!」
「――!?」
代わりにラムが声を上げる。するとパックがすぐさま防御を展開し、ガキン!という鋼のぶつかり合う音が鳴り響いた。
―――まさか、もう来たのか!?はえーよ!
「エル・フーラ!」
ラムは間髪を容れずに襲撃者に向けて魔法を放つ。鋭い突風は、襲撃者―――エルザの頬を薄く切り、入り口の材木を切断した。
「なかなかどうして、紙一重のタイミングだったね。流石はラムだよ」
「お褒めにあずかり光栄です。……残念ながら、仕留めるまではいかなかったようだけど」
腸狩りは頬から流れる血液をぺろりと舐めて恍惚そうに微笑んでいる。
「徽章を買い取るのがアンタの仕事だったはずだ。ここを血の海にしようってんなら、話が違うじゃねーか!」
「持ち主まで持ってこられては商談なんてとてもできないわ。だから予定を変更することにしたの。この場にいる関係者は皆殺し。徽章はその上で回収することにするわ」
フェルトは殺気に当てられて蛇に睨まれたリスのように萎縮すると、ロム爺とエミリアがそれぞれ言葉を返した。
「させるとでも?」
「こっちは5対1なんだから。貴方に勝ち目はないわよ!」
「………!?」
そのエミリアの発言にラムが露骨に驚いたような顔をしている。エミリアは俺の戦闘力について何も知らないから仕方がないのだが、ラムの表情を見て若干悲しくもなってくる。
俺、全く戦力として期待されてねぇ!
……だけどそれは事実だし、そのラムの心配も杞憂に終わる。なぜなら―――
「悪いエミリアたん!俺は頭数に入れないでくれ!」
「ええっ!?なんで……っていうか私の名前……じゃなくてどういう事!?」
不敵にサムズアップをしながら答える。
……ついエミリアの名前を呼んでしまったが、この際細かい事は勢いに任せてごまかしてしまうことにした。
「俺はフェルトと一緒に助けを呼んでくる!だからここで持ちこたえて居てくれ!」
「……自信満々に何を言うかと思ったら、なんと情けない奴じゃ!!」
「お、おい兄ちゃん、馬鹿言うなよ、あたしは―――」
フェルトは俺を睨みつける。その気持ちが痛いほどわかった。
そしてフェルトにとってはロム爺がそうなのだろう。家族か、仲間意識かは分からないが、少なくとも大切に思い合う間柄なのは分かる。
だからこそ、フェルトも俺のように戦い、そして死んでいった。
それなら、今ここで俺ができる事はフェルトをここから逃がす事だ。
「良いから!こう言うのには適材適所って言葉があるんだよ。少しでもここの皆を……あの爺さんを助けたいなら、俺たちも全力で助けを呼ぼうぜ」
「っ……」
敵から逃げるのではなく、
俺だって、皆を救いたい。
いや、絶対に皆を救って見せる、必ず間に合わせて見せる。
フェルトを見つめると、その覚悟が伝わったのか、やれやれと肩を竦めた。
「はっ……なんだよそれ、カッコわりー」
その瞬間、腸狩りが目にも止まらないスピードで、フェルトと俺目掛けて飛び掛かる。
「させると思う?」
「ぬううう!!それはこっちの台詞じゃ!!」
ロム爺が叫ぶと、彼女のククリナイフを大きな棍棒で防いだ。しかし、数度打ち合うだけで直ぐにその均衡は崩れ去る。
「ぐうううっ……!」
「ふふ。力はあるけど速さが足りない。残念だけど私には止まって見えるわ」
「ロム爺……!!」
フェルトが悲鳴を上げるその瞬間、ラムはこちらへ視線を向けた。
―――行きなさい。
口にはしていないが、その目はまるで俺を信頼しているかのような視線に胸が熱くなる。
俺は僅かに頷き返すとフェルトの手をひいて盗品蔵の扉を飛び出した。
フェルトは少しだけ抵抗を見せたが、暴風の様に腸狩りに飛び掛かるラムを見て、少しだけ冷静さを取り戻した。
「っ……でも兄ちゃんどうすんだよ!あてはあんのか!?」
「ある!あの殺人鬼を一瞬で倒せちまうような秘密兵器がなぁ!」
「マジかよ!そんな奴と知り合いなのか兄ちゃんすげぇな!」
「いや、向こうは俺の事知らない」
フェルトは思い切りズッコケそうになる。慌ててそれを支えると、再びフェルトは抗議の声をあげた。
「なんだよ!じゃあ来てくれるとも限らないじゃねーかぁ!」
「大丈夫だ俺を信じろ!あの男は―――ラインハルトは必ず来てくれる……たぶん」
「必ずとたぶんを一緒に使うなぁ!」
……などと言い合いながら走るフェルトの顔は、それでも先ほどよりは幾分かマシな顔をしていた。腸狩りの殺気に当てられて、やっぱり不安だったに違いない。
そのまま先ほど昼間に立ち寄った衛兵の詰所に駆け込み、俺は大きく息を吸った。
「ライ……ハル……コヒュ、ゼェ、ハァ………」
「兄ちゃん体力なさすぎだ!! ……ラインハルトってやつは居るか!? 頼む助けてくれ!」
息絶え絶えで涎を垂らす男と、貧民街では少し有名なスリの少女が並ぶ。詰所の衛兵たちはやや怪訝そうな表情を浮かべていたが、その奥から一人、燃えるような赤髪の騎士が現れた。
「僕を呼んだかい? ……ああ、君がナツキ・スバルかな?」
「違う、ナツキ、スバルは、俺だ」
「失礼、確かに男の子だと聞いていたね……それで、僕に何か用かな?」
ちらり、とラインハルトがこちらを値踏みするような目線を向ける。ゆっくりと息を整える俺の代わりにフェルトが叫んだ。
「た、助けてくれ。黒いドレスの、ナイフを持った女に襲われて、ロム爺が……このままじゃ殺されちまう!」
「黒いドレスの、ナイフを持った女……?」
「頼むよぉ…!アタシに払えるもんだったらなんでも払うから!」
ラインハルトが考え込む様子を見て、フェルトは懇願する。するとラインハルトは苦笑いを浮かべながら言った。
「あんまり女の子がそういう事を言うものじゃないよ。……って、すまない。僕が考えていたのはその女性についてだ。少しその特徴に心当たりがあってね」
「そう、なのか……?」
「黒髪に黒い装束。そしてくの字に折れた北国特有の刀剣―――『腸狩り』と呼ばれている危険人物として、王都でも有名なんだ。ただの傭兵という話ではあるけど」
説明しながら、ラインハルトは俺の呼吸が整ってきているのを見てから頷く。
「……説明している場合じゃないね。すぐに向かおう」
「頼むぜ、ラインハルト。場所は貧民街の奥にある盗品蔵だ。今も皆が戦ってる……できるだけ急いでほしい」
「分かったよ。……後で君の名前も聞かせてもらうよ」
フッと爽やかに笑うラインハルト。そういえば、この世界だとまだ自己紹介をして無かったな、と思い返すころには、ラインハルトは詰所の外へ出て、遥か上空へと飛び去って行った後だった。
「兄ちゃん、アタシらも戻るぞ!」
「――――――また走んのかぁ!!」
筋トレばっかじゃなくて、体力ももっとつけときゃよかったぜちくしょう!!!!
△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼
それからは――――本当に一瞬だった。
やはりラインハルトは圧倒的で、エルザと呼ばれた腸狩りの女をたった一太刀から放たれた極光で葬り去る。
少し離れたところでは、エミリア達は瓦礫の影に隠れてその衝撃から身を守っていたようだ。
―――良かった。みんな無事だった。
ついにここまでたどり着いた。安堵に足の力が抜けそうになるもののぐっとこらえて、エミリア達の下へ行く。
すると、そこにはエミリアの膝に頭をもたれ、肩から脇腹にかけて真っ赤に血を染めたラムの姿があった。
「ラム!!!」
俺は再び絶望感に襲われ、慌ててラムのもとへと駆け寄る。
嘘だ、これでもまだ、間に合わねぇってのか?まさか、ラムはまた死んで―――
「こら!怪我人に触らないの! ……大丈夫よ、私が治癒魔法をかけたから、一命はとりとめたわ。それにラムはすごーく丈夫だから、心配しないで」
エミリアは優しく―――いや、明らかに強がって微笑みを浮かべる。今だって、本当は不安で一杯の筈なのに。
もしかしたらその言葉は俺を安心させるための言葉でもあり、エミリア自身にも向けた言葉だったのかもしれない。
「すまんな……儂が足手まといになったばかりにこの嬢ちゃんが……」
「あぁー……」
今度はそのパターンか……
何度ループを繰り返しても、ラムは誰かを庇ってしまう。その優しさに称賛を送るべきか、それとも腸狩りのエルザの悪辣さに驚嘆するべきか。
―――なんにせよ、生きていてよかった。
改めてラムの顔を見下ろす。その額にはじっとりと玉のような汗が浮かんでいたが、確かに規則正しい呼吸を繰り返していた。
「……そういえば、あなたにもお礼を言わなくっちゃ。ラムの知り合いなんでしょ?」
「え? ……あ、ああ。そうとも言うしそうじゃないとも……なんで?」
急に知り合い認定されていて流石に驚く。この時間軸でそんなイベントあったっけ……?と頭を捻らせると、エミリアはちょっとだけ嫉妬するように頬を膨らませて言った。
「……だって、あなたとラムが目配せだけで会話してたんだもの。それになんだか息ぴったりだったし……」
「……目配せ……って、マジ一瞬だよ?よく見てたね……」
「わ、私だってラムの事よーく見てるんだから」
何故か対抗するように、ぷくっと頬を膨らませるエミリア。
エルザと相対した一瞬の出来事。自分でも覚えていないが、多分2回ぐらいは目配せした気がする。
……エミリアたんって意外と嫉妬深かったりする?
なんて考えていると、エミリアは再び怪訝そうな顔をした。
「しかも私の名前。知ってるってことはラムから聞いたんでしょ」
あ……やべえ、強引に有耶無耶にしてたの忘れてた。
『悪いエミリアたん!俺は頭数に入れないでくれ!』……と、確かに口にしてしまったような気がする。なんて説明しようか頭で悩ませていると。
ガラ……と僅かに瓦礫が崩れる音がする。
―――そうだ、もう一つイベントが残ってやがった!!
前回はやられたが、今回はあいつの魂胆は読めている。そして徽章関連なら狙いはエミリアだ。
「此処まで来て……させるかよぉぉぉ!!!!」
俺は落ちていたロム爺の棍棒を掴み、エミリアの前に立ち塞がった。そして守るは腹!!
次の瞬間、エルザのナイフは読み通りの場所に一閃された。スパッとロム爺の棍棒が両断され、ズシンとその重さが地面に落ちる。しかし、俺の腹にダメージは無し。
「防ぎ切ったああああ!!!!ヘルプミーラインハルトォォォ!!!」
「チッ……」
俺がすかさず声を張り上げると、エルザは珍しく余裕のない表情で舌打ちをして素早く逃走を図った。それを逃がすまいとラインハルトが追いすがるも、エルザは投擲ナイフをこちらへ投げつけることでラインハルトの足を止め、闇夜に紛れて逃げ去って行ってしまった。
「っ……逃がしてしまったか。すまない、まさかまだ生き残っていようとは」
「気にする必要はねぇよ。ここの皆に衝撃が及ばないように気遣ってくれたんだろ」
「!……そこまでお見通しとは。言い訳にしかならないが、その通りなんだ。君は高い洞察力を持っているんだね」
「へへ……ま、まあな」
前の周で全部お前から聞いたことなんだけどな……と若干目を逸らす。ラインハルトの真っすぐな目線が余りにも痛かったので、俺は話を切り替えるように突然指を天に突き上げた。
「こほん……それじゃいよいよ自己紹介。俺の名前はナツキ・スバル! 色々と言いたいことも聞きたいことも山ほどあるのはわかっちゃいるが、皆とりあえずこれだけは覚えて行ってくれ!」
「スバル……改めて僕も自己紹介をしよう。僕はラインハルト。呼び捨てで構わないよ、スバル」
「やっぱ凄い距離の詰め方……」
もしかして爽やかイケメンの人心掌握術なのか?と思っていると、エミリアはラムに膝枕をした姿勢のまま話に入ってくる。
「ラムからもう聞いていると思うけど、私も自己紹介をしておくね。私はエミリア。私を―――私達を助けてくれてありがとう」
にこり、とエミリアが笑う。
―――こっちこそ、『ありがとう』だ。
俺は、君たちの笑顔を守りたかった。途中で心が砕けそうにもなった。だけど今この瞬間、俺は生まれてから一番満ち足りた気持ちになっていた。
ラムに視線を落とす。
君が何を知っているのか、君が何を想っているのか、俺には分からない。
だけど君は、
「なあラム。俺は―――君の知っている俺になれたかな?」
スバルは小さく問いかける。月明かりに照らされたラムの表情は、どこか満足そうに笑っているように見えた。
というわけで、1章が無事完結です!思った以上に長くなってわろた。
また2章の書きだめに入るので、またそのうち投稿します。
(と言っても実は殆どできてる模様)
一杯添削したけどなんかミスってたらおしえてね
あと高評価とか感想してもらえたら励みになりますので、しょうがねぇなぁ~?してやっても良いぞ って方は是非お願いしますm(_)m
それでは!!