姉様には転生者説があるらしい。   作:あいあむぬーぶ

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第2章、開幕!
※アンケートをしているので、どちらが読みやすいか宜しければ回答お願いします!
 2章では試験的に台詞と台詞の間に改行を入れてみます。
 暫くアンケートを取った後どっちかに寄せたいと思います!


2章:ロズワール邸宅の大騒動
13:ロズワール邸の朝


 

 

「それじゃあ、私達はらじお体操?って言うのをやってくるけど、くれぐれも無理しないようにね?」

 

「分かってます、エミリア様」

 

 スバルに自己紹介をした後すぐ、エミリアが部屋にやってきた。エミリアは物凄く心配したような顔をしながら、今日は仕事を休むよう口酸っぱく言ってきた。

 だけどラムは鬼族だし、肉体的なダメージは殆ど残っていない。夜の間にロズワールからマナも補給してもらっているっぽいので、かなり血を流したせいで貧血気味ではあるけど、仕事をする分にはさほど影響はない。

 

 二人が去っていったのを確認してからネグリジェを脱いで、慣れた手付きでメイド服へ着替える。鏡の前で軽く身だしなみを整えてから部屋を出ると、朝の静かな廊下を歩いて厨房へ向かった。

 

「おはようレム」

 

「おはようございます姉様。お身体の方は大丈夫ですか?」

 

「大丈夫よレム。……エミリア様にも言われたけど、皆してラムの事を虚弱体質の病人みたいに扱わないでくれる?」

 

 

「心配にもなります!傷は治癒魔法で塞いだとはいえ、あんなにボロボロになって……」

 

 レムの心配そうな顔に若干の罪悪感を感じる。

 エルザは本当に強敵だった。簡単に乗り越えられる壁だとは思ってなかったものの、エルザの策略にまんまとハメられて大きな隙を作ってしまったのはラムの失態だった。

 

 しかも―――スバルの様子を見るに、ラムは()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 スバルは何度死に戻りをしたのか。少なくとも、2回か、あるいは3回か……正確な数はラムの視点では知る事は出来ない。

 

 あるいは、どこまで死に戻りについてスバルと対話できるのか、試してみるのも手かもしれない。こっちから切り出した場合は嫉妬の魔女的にはOK!みたいな可能性だってある。

 

 ………と考えたのが、既に何回目かでない事を祈りたい。

 

「悪かったわ。もう無茶はしないから」

 

「……絶対嘘です」

 

「……」

 

 信頼度、下落してて泣ける。

 仕方がないので頬を膨らませたままのレムの頭を優しく撫でて誤魔化すことにした。

 

「……もういいです。姉様は昔からそうですから。その代わりレムがしっかりと見張っておくことにします」

 

 レムは呆れ顔だったけど、暫く撫でていると満更でもなさそうな表情になり、それ以上は何も言わなくなった。

 

「さ、さてと。それじゃあ早速調理しましょうか」

 

「はい、姉様」

 

 パンに卵、野菜、それから肉に果物等々。基本的にはレムが丁寧に食材の下処理を行い、ラムがそれを調理していく。何年も一緒に料理をしているので今更細かい指示がなくともてきぱきと連携が取れていた。

 

 ……そういえば、スバルはマヨネーズが好物だったような気がする。折角だから作ってあげてもいいかもしれない。

 

「レム、マヨネーズを作ってもらえる?」

 

「分かりました」

 

 実は、ラムが前世の記憶を思い出してから、レムに地球の調味料をあらかたレクチャー済み。既にレムはマヨネーズやケチャップ等、一通りの調味料を作ることができる。

 

 その間にラムは蒸かし芋もセッティングをして、その後サラダや肉類、スープの作成に取り掛かる。飴色になるまで炒めたアニオン(玉ねぎ)を使ったスープの味を整え、匙で少し掬って口へ運ぶ。

 

「ん、これ位かしら。レムも味見してみてくれる?」

 

 レムは差し出された匙を受け取り、一口飲むとにっこりと笑顔を浮かべた。

 

「とても美味しいです姉様。流石は姉様です!」

 

「ふふん、それほどでもあるわ」

 

 レムがそう言うなら問題ない。完成した料理を見渡しながら、ラムは満足気にドヤ顔をキメた。

 

「それじゃあ、後はラムが運ぶから、レムはエミリア様達を呼んできて頂戴」

 

「庭ですか?」

 

「ええ。今頃スバルが妙な体操でも教えているんじゃないかしら」

 

「……分かりました」

 

 レムは『スバル』という名前に僅かに顔を強張らせた。注視していないと気付けないような些細な変化だったけど、姉であるラムはそれを見逃さなかった。

 自分の内心が悟られたと思ったのか、レムは少しだけ気まずそうにしながらそそくさと厨房を後にする。仕方ないので、その事についてはあとでお話することにして、今はカートに料理を載せて大広間へと移動する事にした。

 

 大広間のドアを開けると、既にロズワールがテーブルについていた。ラムの事を見ると、ニコリと胡散臭い笑みを浮かべて口を開いた。

 

「おはようラム。身体の具合はどうかーぁな?」

 

「おはようございますロズワール様。特に問題は有りません。業務にも支障は出ないかと思います」

 

「今日ぐらいはゆっくり休んだって私も怒らないんだけーぇどねぇ」

 

「……それ、レムにもエミリア様にも言われました。ラムはそんなに体調が悪そうに見えますか?」

 

「ははは。君はもうすこーしだけ自分の事を客観視した方が良いかもしれなーぁいね」

 

「……」

 

 ぐさり。とロズワールの言葉が胸に突き刺さる。反論できずにいると、ロズワールは苦笑いを浮かべながら言葉をつづけた。

 

「ま、お姉ちゃんの意地、ってやつなのかもしれないけーぇどもね。周りの皆も君と同じぐらい君の事を心配しているんだよ。あ、もちろん私もーぉね」

 

「……そうですか」

 

 ホントかよ。

 

 と思わなくもないけど、ロズワールとしても己が野望を叶える駒としては心配している可能性もあるので、あながち嘘ではないかもしれない。

 

 原作のラムはロズワールにゾッコンラブだったけど、一体どういう所を好きになったんだろう。前世の記憶を思い出したとはいえ、ラムはラムなので、これからロズワールに対して愛情を持つ可能性だってある。

 ……ラムはもしかしてダメ男を好きになってしまう素質がある?

 いやまさかね。

 

 あり得ない想像にぶんぶんと頭を振った後、テーブルに料理を並べていく。すると大広間のドアがコンコンとノックされた。

 

「失礼します、ロズワール様。エミリア様たちをお連れしました」

 

 レムの声とともに扉が開き、エミリアとスバルが姿を現した。その後ろからは、やれやれといった顔をした見慣れた縦ロールの少女―――ベアトリスと、彼女の頭にべったりとくっついたパックの姿もある。

 

「全く、この男は本当にしつこいかしら!」

 

「こんな可愛いマスコット枠構い倒さねぇ方がおかしい!」

 

「ちょっと二人とも……あ、おはようロズワール。朝からちょっと騒がしくなっちゃってごめんなさい。スバルがベアトリスの部屋に迷い込んじゃって……」

 

「ベティの髪をひっぱるなんて、お前はなんて失礼な奴かしら!」

 

「だってバネみたいにビョーンってなっておもしろ……可愛いし!」

 

「全然隠せてないのよ!」

 

「……って感じなの。おったまげたでしょ。スバルったら何度追い出されても直ぐに禁書庫を見つけちゃうのよ」

 

 エミリアが苦笑いしながら説明する。どうやら朝からスバルは原作通り『扉渡り』を破って禁書庫へ突撃したらしい。

 

「おはよう。昨夜はよく眠れたかーぁな?」

 

ロズワールが優雅に微笑みかけると、スバルは目を丸くして彼をビシッと指差した。

 

「……え、ピエロ? 朝からすげぇ濃いキャラ出てきたな! エミリアたん、この人誰?」

 

「ちょっとスバル、指を差すのは失礼よ。この屋敷の主のロズワール・L・メイザース辺境伯よ」

 

「辺境伯…? ははは、朝から何かのジョーク?」

 

 エミリアが慌ててスバルの腕を下ろさせるが、時すでに遅し。スバルは全く物怖じする様子もなくロズワールに近づき、あろうことかその肩をバンバンと叩いた。

 

 ……コミュニケーションを積極的に行う姿は褒められるところだけど、この行き過ぎた無礼は後で叩きなおしておいた方が良さそうだ。このままだと社会(王都)に出た時に恥をかくことになる可能性がある。

 

 「ははぁ、元気があってよろしいーぃね」

 

 とは言え、ロズワールはなんてことないように笑い飛ばしていた。懐が広いと考えるべきか、腹の底が見えないと考えるべきか……

 

「さぁ、料理が冷めないうちに朝食にしようじゃーぁないか。昨日の話も聞きたいしねぇ」

 

「おおっ! すげぇ美味そうな匂い! 俺、マジで腹ペコだったんだよな!」

 

 スバルは用意された席に座ると、目の前に並べられた朝食を見て目を輝かせた。一口スープを飲み、蒸かし芋を頬張った瞬間、スバルの顔がカッと見開かれる。

 

「うっま!? なんだこれ、普通の蒸かしイモだよな? 俺の世界で食ったイモより美味いぞ! この屋敷には専属の三ツ星シェフでもいるのか!?」

 

「ふふっ、これを作ったのはラムとレムよ。二人ともお料理がすごーく上手で、私もいつも楽しみにしているの。王都のご飯よりもずーっと美味しいんだから」

 

「お褒めにあずかり光栄です」

 

 エミリアが自慢げに胸を張る。嬉しいしかわいい。撫でくりまわしたい。

 

「へぇぇそうなのか……てかマヨネーズまであるじゃん。こっちの世界にもあるんだなマヨネーズ。うわぁ、こりゃ胃袋掴まれるわ……」

 

 無邪気に称賛を送りながらスバルは次々に食事を口に運んでいく。美味しいと言われて悪い気はしない。

 しかし隣のレムは、スバルに対して無言でペコリと会釈をするだけで、その視線には明確な警戒の色が張り付いていた。

 

 それからしばらくしてお皿の大半が空になった後、ロズワールがティーカップを置き、静かに口を開いた。

 

 

「さて……そろそろ昨日王都で何があったのか、詳しく聞かせてもらえるかーぁな?」

 

「ん……? あー……」

 

 ロズワールに視線を向けられたスバルは言い淀む。

 それは当然、彼自身の秘密―――『死に戻り』について触れられない以上、当然その内容は不透明なものになる。

 

「ええっと……俺も盗まれたものがあって、スリの子供……フェルトを追って例の盗品蔵へ向かったんだ。そこでエミリアたんとラムに遭遇して……」

 

「そこに腸狩りのエルザが現れ、取引相手が危険な殺し屋だと判明した。 ……というわけだーぁね」

 

「そ……そうそう!んで、フェルトと一緒にラインハルトを呼びに行ったり、エミリアが襲われてるのを助けたりしたって感じだな」

 

 スバルがたどたどしく説明をするが、正直言って物凄く不自然な説明だった。偶然と言えばそれまでであるが、余りにも出来過ぎたエピソード。ロズワールはニコニコと表情を変えないままだったが、それ以外は皆疑いの眼差しを向けていた。

 

 ……いやエミリアはなんか普通に信じてそうかもしれない。皆の様子をキョトンとした表情で眺めながらカットしたリンガを頬張っていた。癒されるね。

 

「ふむ。……ところで、スバルくんとラムはどういう関係なーぁのかな?聞いた話によると、初対面ではないらしいそーぉうじゃないか」

 

「……」

 

 ロズワールの問いかけに、隣に控えていたレムの視線がスッと更に鋭くなった。 明確な敵意……というほどではないが、姉に近づく素性の知れない男への強い警戒心のようなものをヒシヒシと感じる。

 

「え、あ、ああ……関係?って言うと、難しいな……」

 

「そういえば、二人は知り合いなのよね。どうやって知り合ったのか、私もすごーく気になっていたの」

 

 口に含んだリンガをごくんと飲み込むと、エミリアまで身を乗り出してくる。

 

 ……いつの間にそういう事になったのやら。スバルが言いくるめたのか、もしくはエミリアが勘違いしているのか……多分、気絶している間にそういう話になったのかもしれない。

 

 スバルが余計な事を言い出したら意味不明なぐらい拗れた話になるかもしれないので、少しだけアシストしてあげることにした。

 

「……以前、王都へ出向いた際に見かけただけです。迷子になっていたこの人を、少しだけ案内したことがありましたので」

 

「え? ……それだけ?」

 

 淡々と事実無根の嘘を並べると、エミリアは若干納得いかないような顔で首を傾げた。

 

「ええ。別に親しい間柄ではないので、盗品蔵での再会は全くの偶然です」

 

「……そっか。なんだかすごく息が合っていたから、てっきりもっと深い仲なのかと思っちゃった」

 

「………、まあ……そうなんだよな。ははは…」

 

 エミリアは「なあんだ」と言ったような様子で引き下がるが、スバルはどこか寂しそうな苦笑いを浮かべていた。

 

 実際、ラムとスバルが()()()()()交わした会話は、盗品蔵での二言三言程度。変に友人だと主張して、スバルの側からボロを出されるよりはこれ位の関係性の方が都合が良い。

 

 もちろん、スバルの心情は察するところはある。だけどラムからしても、別の周回でどんな会話をしたのか知る由もないので仕方がない。今はとにかく、これ以上深く追及されるのを避けるべきだ。

 

「迷子ねぇ……。ルグニカの王都で迷子になるということは、スバルくんはこの国の人間ではないのかな?」

 

「ああ、日本から来たんだ。だからこの辺りのことは全然わかんなくてさ」

 

「ニホン……?」

 

「あ、いや、えっと。ニホンっていうのは……地球の小さな島国なんだけど……」

 

 それからもいくつかの質問と、しどろもどろのスバルの説明が続く。ロズワール邸宅の平和なシーンの筈なのに綱渡りをしている様な感覚になってかなり心臓に悪い。

 

 どうか怪しまれるような事は言わないで頂戴……とラムは心の中で祈るのであった。

 

 

 

△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼

 

 

 

 その後、ロズワールは原作通り、メイザース領の現状や、エミリアが探していた徽章の重要性―――彼女が次期国王の候補者であるという事実を説明していく。

 

 ちなみに、無事にフェルトの徽章云々の話はきちんと回収されていたらしい。徽章を拾ったフェルトがラインハルトに連れていかれた、と言う話がスバルから出ていた。

 原作と違う点と言えば、スバルがそのシーンを見ていたという事ぐらいか。ラムの頑張りに対する数少ない功績の一つともいえるのかもしれない。

 

 ……あれ、少なすぎて涙が出てきそう。

 

 しかも、その話をすっかり忘れていたので、一歩間違えればラムの行動がバタフライエフェクトというやつを引き起こして、結果的にフェルトが王選に参加しないという話の流れになる可能性もあった。危険なヒヤリハットすぎる。うろ覚えな上に、アニメで見ていた範囲だと結構フェルトについての話が無かった気がするから、どこでどんな影響が出てくるのか読めたものではない。

 

 本当に危なかった……と内心で安堵していると、スバルが思い出したように視線をこちらに向けてきた。

 

「ところでさ、朝から気になってたんだけど」

 

「……何でしょうか?お客様」

 

「ラム、なんで俺にずっと敬語なの?」

 

 なんで、と言われても……

 

「お客様はお客様ですから。ご無礼を働いては主の顔に泥を塗るというものです。ラムにも立場がある、という事を弁えてください。お・客・様」

 

「うわー……なんかすげぇ壁を感じる!」

 

 冷ややかな目で見下ろすと、スバルは大げさに嘆く。しかしその隣でエミリアも「ううっ……」と気まずそうな表情をしていた。

 ……地味にダブルキルしてしまったけど、言ってる事は間違ってない。

 パックがそのエミリアの頭をぽんぽんと撫でながら「どんまいリア、次があるさ」と慰めていたからそれで何とか機嫌を取ってもらおう。

 

「ハハハ! 仲が良いのは結構なことだーぁね。それでスバルくん、エミリア様を救ってくれた君には何かしらの報償を与えたい。何か望みはあるかーぁな?」

 

「報償か……」

 

 スバルは顎に手を当てて少し考え込む。

 お金、身分、あるいは元の世界へ帰る手がかり。この世界で彼は何を望むのだろうかと見守っていると、スバルは顔を上げてこちらをちらりと横目で見た後、にっと笑って宣言した。

 

「それじゃあ……この屋敷で、俺を住み込みで雇ってくれないか?もちろん正式にな!」

 

 ―――こうして、原作通りにナツキ・スバルは、ロズワール邸の使用人として採用されることになったのだった。




また一章分を吐き出すまで毎日18時に投稿するのでよろしくお願いしますm(__)m

1話当たりの文字数、どれぐらいが良いですか?(3章書いてたら9000文字連発してしまったので分割しようか悩み中

  • 4000~7000文字(分割する)
  • 7000~10000文字(分割しない)
  • 全然気にした事無いからどっちでもいい
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