姉様には転生者説があるらしい。   作:あいあむぬーぶ

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名前あげていいのか分からないですが、毎話怒涛の誤字修正してくださる方がいて本当に助かってますありがとうございます。

そして自分の誤字脱字に戦慄してしまう


14:おしごと開始!

 

 

 

 

「……わざわざ使用人として雇ってもらわなくても食客とかもっといろいろあったでしょうに」

 

 朝食の後、スバルの制服を用意するために衣装室へ移動してスバルの採寸を行っていた。

 レムは静かにスバルの周りをぐるぐるとメジャーで測っていき、胸囲や肩幅、腕の長さなどを細かくメモしていく。

 

「それはそうなんだけどさ、客人扱いじゃ多分ラムはずっと敬語のままじゃん?使用人になっちまえばそこの壁も無くなると思ったんだよ。これって天才の発想じゃね?」

 

 指パッチンをしてスバルは調子に乗った様子だけど、対照的にラムは小さくため息を吐いた。

 

 ……ラムたちはいつの間にそんな仲になったのやら。

 

 正直、これはあまりよく無い兆候ではある。ラムは『死に戻り』、そしてスバルという男について知っているからこそ、スバルの若干歪な距離感を理解してあげる事が出来る。

 だけど、ラム以外の相手にそんな事を言ったら最悪ストーカーか何かと勘違いされてもおかしくはないし、酷いすれ違いが起これば、最悪原作でいうエミリアとスバルの見るも無残な喧嘩のシーンのようなものに発展してしまう可能性だってある。

 

 あくまでこの世界でのラムとスバルの関係は本当に二言三言程度しか話したことのない関係、という事を、軽い冗談を交えて和ませながら(?)釘を刺しておこう。

 

「ふぅ……何が天才かよく分からないけど、()()()()()()()()()()()()()にさえこれ程モテてしまうなんて、ラムはなんて罪な女なのかしらね」

 

「あ………」

 

 ………その滅茶苦茶ショック受けたみたいな顔やめて?

 いつもの(原作の)スバルみたいにちょっとウザいくらいでツッコんでくれないと、シリアスというか凄い気まずい空気になる、というか罪悪感で心が痛い。

 

「……確かに姉様は、少し罪な姉様だと思います」

 

「え?」

 

 そして何故かレムにはジト目でツッコミを入れられてしまう始末。

 お姉ちゃん何か悪いことした?

 

 しかしここは流石のナツキ・スバル。空気を換えるようにすぐに再び言葉を発し始めた。

 

「そ……そういえば、レムとは食事の時はあんまり会話できなかったな。改めてナツキ・スバルだ。宜しくな」

「……はい、よろしくお願いします」

 

 にこやかに話しかけたスバルに対し、レムはメジャーを動かしながら短くそっけない返事をした。

 スバルは少しだけ顔を引きつらせてこちらを向く。

 

「なぁラムちー。もしかしてレムりんってラムちー以上にクールな妹だったりする?」

 

「そんなことはないわ。レムは可愛くて、明るくて、そしてとても可愛い妹よ。バルスの顔が気に食わないんじゃないの?」

 

「ひでぇこと言うな!普通に傷つく!」

 

「っていうか、ラムちーって何?人に変なあだ名付けないでもらえる?」

 

「バルスも大概じゃねぇ!?」

 

 いいじゃないバルス。SNSでトレンド入りするぐらい有名な呪文の名前なんだから。

 

 そんなこんなで採寸を終え、その後は各種部屋の案内、窓拭き、そして洗濯。やがてお昼が近くなってきたので仕込みのために再び厨房へと戻ってきた。

 

「おぉー、なかなか大きい厨房だな。こういうのってどういう仕組みで動いてんの?IHとかガスコンロじゃないんだろうけど」

 

「火の魔鉱石よ。使う時にはマナに働きかけて発熱させるの。バルスは……まだ使えないでしょうし、とりあえず野菜の皮むきからやって頂戴」

 

「おっけー任せてくれ。俺の華麗なるナイフ捌きで……あだだっ!」

 

 不器用に削り出すスバルの指にナイフが突き刺さり、ブシューっと血が噴き出す。あまりの不器用さに思わずため息を吐く。

 

「……レム、悪いんだけどバルスの手を治療してくれる?」

 

「はい、姉様」

 

 レムは頷き、スバルに手を差し出すように促すと魔法で治療を開始する。淡い光の輝きと共に、傷口がみるみる塞がって綺麗な状態へと戻っていった。

 

「レムは治癒魔法が得意なのか?」

 

「レムは水系統の魔法が得意なので」

 

「へぇ……治癒の魔法は水属性なんだな。ファンタジーものだと光か水が定番だし納得だ」

 

 うんうんと納得しているスバルに、ラムは横から口を挟む。

 

「よく見ていなさいバルス。まずこうやってナイフを当てて……皮をむく物の方を回転させるのよ。ナイフの方を動かして切ろうとすると、引っ掛かった時に危ないから」

 

「おおー、すげぇ手際だなラム。 これは夫を尻に敷くタイプの良妻になりそうだ」

 

「ハッ、どうせなら足の下に敷くわよ」

 

「夫の立場がねぇ!! けどなんかイメージ付くわ……そんなにツンツンしてると、行き遅れちゃうぜ?」

 

「は?」

 

 こいつ言ったな?

 

 ギロリとスバルを睨みつけると、わざとらしく怯えながらレムの方へとスライドして逃げていった。

 

 前世では恋人の一人も居らず、仕事一筋(短命)。

 今世でも嫁の貰い手はぶっちゃけ現れそうにない。寧ろ今世の方がツノナシという欠点がある分、誰も貰ってくれない可能性の方が高い。

 

 ……人生で一度でもいいから、甘酸っぱい青春というものを送ってみたい人生だった。ない物ねだりしたってしょうがないけど。

 

「………別にいいし、仕事一筋、カッコいいじゃない」

 

「声、震えてんぞ………」

 

 ふ、震えてないし。

 

「なぁレムりん。そこんとこどうなの?妹として心配にならない?」

 

「姉様は完璧なので、引く手数多だと思います。寧ろ足の下に敷かれて喜ぶべきかと」

 

「レムはよく分かっているわね……こんな美少女が行き遅れる訳、ないもの」

 

「ああ……この姉妹がどういう感じなのかよくわかった気がするなー……」

 

 スバルが顔を引きつらせながら納得した声を上げた。

 

 もし、万が一にでも行き遅れる事があったらレムと結婚しよ。

 スバルにはあげませんうちの子は。

 

 

 

△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼

 

 

 

 昼食を終え、ラムは別の仕事があるので二人と別れて自室に戻る。ベッドに腰を下ろしてから静かに目を閉じた。

 

 千里眼。

 

 ラムの持つ千里眼は、周囲の生き物の視線を同化する能力だ。小鳥から獣へ、視線を次々と伝っていくことで、遠く離れた場所の景色を自分の目で見ることができる。

 

 視界が森を抜け、アーラム村へと到達する。そこで村の子供たちに混じって遊ぶ、青い髪の少女の姿を捉えた。

 

 ―――魔獣使いのメィリィ。リゼロの原作にて魔獣ウルガルムを従えて村を襲った影の黒幕だ。

 

 さらに視線を森の奥へ向けると、木々の影に蠢く魔獣の姿が明らかに増えていることを確認できる。

 

「ここは原作通りね」

 

 小さく息を吐き、千里眼を解除して目を開けた。

 

 このまま原作通りに進むと起こる問題は二つ。

 

 一つ目は、レムとスバルの不和。

 これはスバルのもつ『魔女の臭い』によってレムの警戒心が跳ねあがり、スバルを殺してしまうというものだ。レムにとって魔女教徒は故郷を襲った敵であり、姉の角を折った仇なので、過敏に反応してしまうのも仕方がないのかもしれない。

 とはいえ、こちらに関してはラムが目を光らせておけば恐らく問題ないだろう。原作でもレムがスバルを殺してしまったのは明確に不信による暴走が原因であり、それを除けば心根が優しいレムは普通にスバルの事を心配したりしていた。魔女の臭いがする=マジ無理殺す!という短絡的すぎる事もないはずだ。

 

 そして二つ目は魔獣騒動。

 これは魔獣使いのメィリィによる襲撃であり、原作ではスバルが噛まれて呪いを掛けられたり、村の子供達が魔獣に襲われたりする事件になっていた。

 最終的にスバルの頑張りと時間稼ぎによってロズワールが外出から帰還し、魔獣を焼き払う事で解決したという顛末だったけど、わざわざ綱渡りする必要もない。良い感じの頃合いを見てメィリィを捕らえてしまうのが手っ取り早い。

 

「……今度こそ、うまくいくと良いのだけど」

 

 現状、スバルの無邪気で新鮮な様子を見る限り、彼にとってはこの屋敷での生活はまだ()()()()()()に見える。王都ではすでに何度か『死に戻り』を経験させてしまった分、これ以上スバルに痛い思いをさせないようにしたい。

 

 ……とりあえずはレムにスバルの安全性を説いてあげる必要がありそうだ。

 さっきまでのやり取りを見るに、レムがスバルを見る視線は明らかに警戒心を持っていた。

 スバル本人は相変わらず空気が読めていないのか、「レムりんの淹れたお茶、最高に美味いぜ!」とかなんとか言いながら笑いかけていたが、その度にレムは微かに眉をひそめていた。

 

 エミリアはレムの若干嫌そうな表情を察して苦笑いしているが、スバルは「これもメイドさんとの重要なコミュニケーションだから!」と謎の持論を展開するあまりの無敵っぷり。

 

 ……これはもうシンプルにウザがられてるのか、魔女の臭いのせいなのかよくわからない。

 

 ラムは胃の痛くなる思いでその光景を見守りながら、どうにかしてこの最悪なフラグを折らなければと頭を悩ませていた。

 

 

 

△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼

 

 

 

 と言うわけで夜。

 一日の仕事を終えたラムは、レムの部屋を訪れていた。

 

「レム。今日は一日中いつもと違う様子だったけど、どうしたの?」

 

 理由は分かっているけどあえて尋ねる。レムは少しだけ俯いて、思い詰めたような顔で口を開いた。

 

「あの人……スバル君から、魔女の臭いがします。あの人は何なんですか?」

 

 レムの瞳には、はっきりとした嫌悪と不信感が渦巻いていた。故郷の鬼の村を滅ぼした魔女教徒への憎悪。レムが抱える根深いトラウマを知っているからこそ、ラムは静かに妹の肩へ手を置いた。

 

「……バルスは怪しい人間じゃないと思うわよ。ただちょっと頭の足りない男の子にすぎないわ」

 

「ですが、あの臭いは間違いありません! もしも、あんな得体の知れない男のせいで姉様に何かあれば……!」

 

「レム」

 

 語気を強めるレムを宥めるように、今度はその水色の髪を優しく撫でる。

 妹が自分を心配してくれる気持ちは痛いほど分かるけど、あの間の抜けたスバルに限ってその懸念は絶対にあり得ない。

 今だってたぶん、エミリアとの異世界生活に思いを馳せながらワクワクして眠れない夜を過ごしているに違いないのだから。

 

「心配してくれるのは嬉しいわ。ありがとう……でも大丈夫よ。もし彼が本当に危険な男なら、ロズワール様やこのラムが気づかないはずがないでしょう?」

 

「それは……そうです、けど」

 

「それに、バルスはエミリア様の命の恩人でもあるわ。もう少しだけ、様子を見てあげてちょうだい。バルスを見限るのは、ラムが泣かされるような事があってからでも遅くはないわ」

 

 ラムが微笑みかけると、レムはしぶしぶといった様子で頷いた。

 

「……それでは遅すぎる気はしますけど、姉様がそこまで言うのでしたら、分かりました」

 

「ん、いい子ね」

 

 もう一度レムの頭を撫でてあげると、気持ちよさそうに目を細める。しかし、レムはまだ引っかかる事があったのか、すぐにまた微妙な顔になってラムに問いを投げてきた。

 

「それにしても……スバルくんと姉様って、なんだか少し距離が近くありませんか? 本当に、あまり親しい間柄ではないんですよね?」

 

「え……ええ。姉様がレムに嘘を吐くわけないじゃない。バルスは……まあ、弄りがいのある男だったから、つい熱が入ってしまうのかも」

 

「……それは良いんですけど、レムは姉様の事が心配になります。さっきとは別の意味で……」

 

「別の意味……?」

 

「なんでもありません」

 

 ぷい、と小さく頬を膨らませるレム。

 可愛いんだけど、これはまだスバルへ魔女教関連の疑いは晴れていない、という事なのかもしれない。

 

 今はこれ以上言っても仕方がないので、今日はこれ位にしてレムの部屋を出る事にした。妹の強固な不信感を前に自分の言葉がどれだけ響いたのか……正直あんまり自信はないけれど、その辺りはスバルに対するレムの好感度に依るものもあるので、スバルにも頑張ってもらいたい。

 

 そんな事を思っていると、いつの間にかずっしりとした倦怠感が全身を襲っていた。

 

「ふう……少し、無理をしすぎたかしら」

 

 鬼族としての力の源である『角』を失っているこの体は、定期的にマナを注いでもらわなければ命を繋ぐことすらできない欠陥品だ。エルザとの戦闘で無理をし過ぎた反動も相まって、明確な疲労として表れ始めている。

 

 足元がふらつきそうになるのを気力で抑え込み、冷たい壁に手をつきながら歩みを進めた。大きく深呼吸をして乱れた呼吸を整え、ラムは執務室の重厚な扉の前で立ち止まった。

 

「失礼します」

 

「やぁ、ラム。今日はご苦労だったねぇ。あの少年と、レムの様子はどうだったかーぁな?」

 

 中へ入ると部屋は薄暗く、月明かりだけが怪しく灯っている。豪奢な執務机に肘を突いたロズワールは、面白がるような笑みを浮かべてこちらを見据えていた。

 

「バルスの方は特に問題はないように見えます。一日様子を見ましたが、ただの無知な少年のようです。ただ、レムの方は……」

 

「危うい、かーぁな。姉である君がきちんと舵を取るようにね」

 

「……分かっています」

 

 万が一、なんてことがあれば、エミリアとロズワール陣営の不和は確実。原作の流れは崩壊して、この先どうなってしまうかもわからない。

 

「もちろん彼の事も、もう少し見定めるように。何処かの陣営の間者という可能性だって十分あり得る。例えば彼がとんでもない役者で、今回の事は自作自演だった、なぁーんて事もあり得るからね」

 

「まさか。そんな事はあの男に可能だとは思いませんが……分かりました」

 

 小さくため息を吐きながら頷くと、ロズワールの膝元へと身を寄せる。ロズワールは指先をラムの額に当てると、白色のマナを注入し始めた。

 

「……んっ、く……あっ……」

 

 身体の奥底に、マナが注ぎ込まれていく。数年経ってもこの感覚には慣れることができず、どうしても変な声が漏れてしまう。

 

 ………ちなみに、まったくもっていやらしい感覚とか、そういうのではない。どっちかって言うと痛い寄りのムズムズ、ゾワゾワと言った感じだ。

 他人のマナが入ってくる感覚は、言うなれば自分で脇腹を触る分には良いけど、他人に脇腹を突かれるとくすぐったくて笑ってしまう、と言ったような……ちょっと違うか。

 

 ともかく、毎度のことながら口を押えても我慢できずに漏れてしまう声に、毎回羞恥で顔を熱くしてしまう。

 

「こほん……失礼、いたしました」

 

「こちらとしてはもう慣れたことだから気にする必要はなーぁいよ。さぁ、もう少しだけ我慢しておくれ」

 

 さらりと言うと、ロズワールは再びゆっくりとマナを流し込み始めた。

 ラムが痴態を晒した所で、ロズワールはエキドナにゾッコンラブなので、そう言った点はある意味安心してマナの補給をお願いできる相手なのかもしれない。

 

 以前ユリウスには―――いや今はこの話はよそう。

 考えただけでも悶えそうになる。

 

 

 

△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼

 

 

 

 マナの補給を終え、逃げるように執務室を後にする。一日の疲労感と、羞恥の火照りを冷ますために外で涼もうか、などと考えながら廊下を歩いていたその時、角を曲がってきたスバルとばっちり鉢合わせてしまった。

 

「っ!?」

 

「おっ、ラムちーじゃん。こんな時間に……って、お前顔真っ赤だぞ? それに、そこってロズっちの部屋じゃ……あ!?」

 

 スバルは突然大声を張り上げて固まる。

 

「あ、って何? ……ちょ、ちょっと待ちなさい。勝手に変な誤解をしないで、いやらしい」

 

「いやらしいってお前……! やっぱいやらしい事して………い、いや、やっぱいいや。その……お邪魔しましたァ!! 俺は何も見てないし聞いてないからぁぁぁ!!」

 

 スバルはあきらかに勘違いした顔になり、そのまま脱兎のごとく自分の部屋へと逃げ込んでしまった。

 対してラムは、あんぐりと口を開けて固まってしまう。しかしすぐに声を張り上げた。

 

「ちょっと!!待ちなさいバルス!!!!」

 

 叫び声も虚しく、スバルは足を止めることなく自室へと逃げ去っていく。残されたラムは、ただ呆然とその背中を見送るしか無かった。

 

「~~~~っ!」

 

 自分の顔が今、茹でダコのように真っ赤に染まっているのが鏡を見なくてもよく分かる。

 

 こんなことならいっそ、風の魔法であいつの足をすくってでも止めるべきだったと激しく後悔するのであった。




スバル君、目ギンギンで眠れなくて眠れませんでした……

レムにも釘刺ししたし、順調だな!

台詞の改行について、どっちが良いですか?

  • 台詞と台詞の間の改行無し(1章)
  • 台詞と台詞の間に改行有り(2章)
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