概ねOVAみたいな事してるのでOVAみてね!
「このままじゃ屋敷が氷漬けになっちまう! だったら、この雪を逆手にとって盛大に遊んでマナを使い切らせようぜ!」
というスバルの一声が、朝の大広間に響き渡る。
ラムは待ってましたと言わんばかりに同意して、雪祭りの準備を始める事にした。
余りにも食い気味だったせいか若干スバルは引き気味だったけど、この寒さを一刻も早く止めてほしいというラムの血走った目に怯えて、スバルは参加者を募るために足早に村へと駆け出していってくれた。
その間にラムは屋敷の玄関で受け入れの準備を進める。
訪れる村人たちに貸し出すためのスコップや防寒具、温かい羽織り物を、手際よく種類ごとに分けて並べていった。
「……ふぅ、これで大体の準備は終わったわね」
高く積まれた毛布の山と整然と並んだ道具類を確認して、満足げな息を吐く。
その直後、鼻の奥が急激にむず痒く……
「くしゅんっ!」
「ラムお姉さん、さっきからくしゃみばっかりして……まさか風邪かしらぁ?」
くしゃみをすると、隣から声をかけてきたのはメィリィだった。
メィリィをあの極寒の座敷牢に放置すれば確実に凍死してしまうため、ラムが常に監視につくという絶対条件で、ロズワールから一時的な外出許可を取り付けているのだった。
「まさかそんな筈は……」
「
「なあに、心配してくれてるの? ラムは有能メイドだから、これ位じゃ……っくしゅん!」
「……ラムお姉さんって病弱?私なんかもう、ピンピンしてるけどお」
子供は風の子元気の子……って事!?
凍死寸前のメィリィを温めていたと思ったら、いつの間にか心配される側になっているのは何となく腑に落ちない。
そんな事を思っていると、スバルに引率されたアーラム村の住人たちが楽しげな声を上げながら屋敷の庭へと続々と集まってきたので、メィリィと並んで訪れた人々に毛布や雪かき用の道具を順番に支給していく。すると、
「あ、ラムお姉ちゃん!!」
と、真っ先に駆け寄ってきペトラに続いて、何人もの子供たちがわらわらと集まってきた。
「おはよう皆。突然の開催だったのに集まってくれてありがとう」
「ううん、こんな季節に雪が見れるなんてとっても嬉しい! ……あれ?」
そういってニコニコと笑うペトラの視線が、手持ち無沙汰にしているメィリィへと向けられた。
「最近見かけないと思ったら、メィリィちゃんも久しぶり! こんなところで何してるの?」
「え、ええっと……それはあ……」
「あっ!!もしかしてラムお姉ちゃんのお手伝い? メィリィちゃんも屋敷の新しいメイドさんになったの!?」
「え、そうなのー?」
「………さあて、どうかしらあ」
目を輝かせる子供たちに一斉に囲まれ、メィリィは必死に引き攣った笑顔を浮かべている。まさか領地を混乱に陥れようとした魔獣使いな暗殺者だなんて、無邪気な子供たちに正直に説明できるはずもないので仕方ない。
メィリィはラムの服の裾をこっそりと引っぱって『なんとかして!』と言ったような視線を送ってくる。
……困ってるメィリィ、ちょっと面白可愛いね。
普段のメスガキ感から、おこちゃま感が強くなっていてとても愛らしい。そのつるつるのキュートなおでこをなでなでしたくなる。
「ふ、ふふ」
「……ちょっとラムお姉さん?」
「ああ、ごめんなさい。……皆、メィリィは今メイド見習いとして厳しく指導している最中なの。他の人にも道具を配らなきゃいけないから、お話はまた後にしてちょうだい」
小さく笑いかけたラムに対して、ぴくぴくと眉を顰めるメィリィ。
仕方がないので適当な嘘を並べると、今度はペトラが不服そうに頬を膨らませた。
「えー、ずるい。それなら、私も手伝う! 毛布とかスコップを配れば良いんだよね!」
「え?え、ええ、そうだけど……」
「分かった!」
ペトラが元気よく返事をすると、用意していた毛布や道具の山を次々と奪い取っていく。その後、そんなペトラの様子を見た他の子供たちも乗っかっていって、あっという間に他の村人たちに道具を配り始めてしまった。
「……ラムお姉さん、村の子供たちにすっごく好かれているわねえ。わざわざ面倒なことを引き受けちゃって」
「そうね。皆優しくて良い子達ばっかりよ。でも、あなただってラムのこと手伝ってくれたじゃない」
「成り行きよお、成り行き……」
「ありがとう、メィリィ」
「っ……」
ぽん、と雪のついたメィリィの頭を撫でると、耳を赤くしてそっぽを向いた。
……そんなこんなで、アーラム村の住人たちを巻き込んだ盛大な雪祭りはつつがなく進行し、大盛況のまま夕暮れを迎えて終了した。
パックが溜め込んでいたマナを存分に発散したことで異常な寒波は嘘のように引き、気温も少しずつ回復を初めている。
雪祭りの最中、メィリィもペトラたちに押し切られる形で一緒に不格好な雪像作りを手伝わされていたのだが、それなりに疲労したのか隣でがっくりと肩を下していた。
「まったくあの子たちは……本当に元気なんだからあ」
「ふふっ、満更でもなさそうだったじゃない」
「べ……別にそんな事ないけどお?」
軽くツッコミを入れると、メィリィはすぐに否定する言葉を投げ返してくる。
この様子だと充分に楽しめたみたいで良かった。
子供なんだから、もっとはしゃいで雪合戦とかしてもらっても良かったんだけど。
………ちなみに、レムと一緒に作り上げた『偉大なる姉様の雪像』は、胸のサイズだけがレム仕様になっていて、『嘘を付いている』としてロズワールとスバルから評価を下げられた。
△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼
「……で、大人しく鍵付きの別室に閉じ込められてあげたのに、どうしてまた私は呼び出されてるのかしらあ?」
外での用も完全に済んだメィリィは、ロズワールとの約束通り牢に収監される事になったのだが、流石に地下はまだ寒いという事で特別に別室に鍵を付けて閉じ込める、という方法を取られることになっていた。
しかしそれからものの二時間程度で再び呼び戻されたものだから、メィリィは面倒くさそうに眉を顰めている。
というのも、雪祭りが終わった後、原作の流れ通りスバルからの提案で夜の打ち上げと言う名の晩餐会を行うことになったのだが、ラム達で腕を振るって最高のご馳走を用意したので、折角ならメィリィにも食べてもらいたいと思っての提案だった。
「バルスが打ち上げパーティをするって言っていたから、折角ならメィリィにも参加してもらおうかと思って。あなただって準備を手伝ったんだから、その権利ぐらいはあるでしょう?」
「ラムお姉さんってば甘すぎるわあ。大体、他の人はどうなのよお。敵と一緒に食事を囲っていられるわけえ?」
メィリィに心底呆れたように溜息を吐かれる。
『……そんなにダメだった?』と言うように他の皆を見渡すと、半ば諦めのような溜息と苦笑いに包まれていた。
「……姉様は優しすぎます。ちなみに、レムのこれは呆れの比重の方が多いので、姉様にはきちんと反省してもらいたいです」
「ま、まあ、メィリィは魔獣使いなんだろ?つまりこの周辺は結界もあるし、魔獣が居なければ安全……だよな、エミリアたん!」
「そ、そうね。一人だけのけものにするのも良くないし、私は賛成!」
「……ベティはどっちでもいいかしら。その代わり自分でちゃんと責任をもつのよ」
「はっはっは。ラムの子供好きは今に始まった事じゃなーぁいからね。今晩ぐらいは許可してあげよーぉうじゃないか」
「…………」
皆の生暖かい、仕方のない人を見るような目が突き刺さる。
……やめてそんな目でラムを見ないで!
「よ、よーし! みんなグラスの中身は行き渡ったな!?いやー、一時は屋敷中がカッチカチになって本気で凍え死ぬかと思ったけど! パックの魔力発散も無事に終わって、第一回・ロズワール邸雪まつりも大・大・大成功!という事で、メィリィも寒い中協力してくれてサンキューな!今日のところは身分も立場も無礼講だ! 屋敷の備蓄が底を突く勢いで、飲んで食って騒ぎまくろうぜ!それじゃあ、雪まつりの大成功と、俺たちの輝かしい明日に祝して……
ラムが微妙な顔をしていると、スバルは気を利かせて早々に晩餐のスタートの音頭を取りだした。メィリィという捕虜を除いてこの中で一番身分の低いバルスが何言ってんだ、というツッコミをする気も起らなかったので、大人しく杯を掲げる事にした。
乾杯が済むと、テーブルの上には豪華な料理がビュッフェの様に並べられているので、スバルは早速料理の一つを自分の皿に盛り付けて食べ始めた。
「おおっ……このお肉の料理、ガッツリしててすっげぇ美味いな! 噛めば噛むほど肉汁が溢れてくるぜ……頑張った甲斐があったな」
「本当ね……ソースの味がしっかりしていて、とっても美味しいわ。皆料理の腕がまた上がったんじゃないかしら」
「ありがとうございますエミリア様。姉様とスバルくん一緒に、いつも以上に頑張って作った甲斐がありました」
「ちなみにスバルは何を手伝ったの?」
「その肉の脇にある草を盛った」
「……それは殆ど戦力外なのよ。ベティでもできるかしら」
スバルは堂々と草宣言して、ベアトリスが呆れた顔を浮かべる。
その様子を眺めながら、ラムの隣に座っていたメィリィも一口、料理を口に運んだ。
「……ん、これ本当に美味しいわあ」
「おっ、それが気に入ったならこっちも美味いぞ! ほれ、こっちのグラタンもいけ!」
「ちょ、ちょっと待ってよぉ! そんなに一気に食べられないわぁ!」
次々と自分のお皿に料理を盛ってくるスバルに対し、メィリィは慌てて声を上げる。原作からして結構仲良くやっていたようだけど、この世界ではメィリィ自体の行動が未遂で終わったのもあって、スバルの距離感も普通の子供を相手にするような近さだった。
流石コミュニケーションで体当たりしていくタイプの男。
「育ち盛りなんだからいっぱい食え! ラムとレムが愛情込めて作ったんだからな!俺も
「……だから、お前のそれは殆ど戦力外なのよ」
……メィリィも皆と楽しそうにやれそうで良かった。
少しだけ安心しながら、邸宅の床下から発見した高級ワインの栓を抜き、自分のグラスに並々と注ぐ。するとそれを見ていたエミリアが興味を示してグラスを覗き込んできた。
「ねえラム、それってワインよね? 美味しいの?」
「はい、とても美味しいですよ。エミリア様。年代物ですからそんじょそこらの代物とは訳が違います」
「そうなんだ……なんだかすごーく美味しそう。私も飲んでみたい」
「姉様、レムも飲んでみたいです!」
エミリアに続いてレムまでも興味を示す。別に一人占めするつもりは無かったので二人のグラスに注いであげると、二人はグイッと気前よく一気飲みをしてしまった。
「これ、フルーツの味がして美味しい……レム、こっちも飲んでみましょ?」
「良いですね。……ん、こっちは何だか渋みが強いです。あ、こっちには透き通った色のものがありますよ」
「本当ね……ん、とっても甘い!こっちは逆に全然渋みが無くて飲みやすいかも……」
「……」
キャッキャウフフと仲良くお酒を飲み比べしていくレムとエミリア。
きらら枠みたいな空間が形成されているのを肴にのむお酒は最高に美味しい。
ニヤニヤと笑みを浮かべながら暫く放置していたら、二人は次々にお酒を飲みほしていく。その様子を眺めながらスバルが若干引いたような表情で呟いた。
「……だ、大丈夫かあれ。俺も酒は飲んだことないけど、べろべろに酔っ払うんじゃ……」
「ははは。吐かないよーぉうにだけしてもらいたいねぇ。勿体ないし」
「……そろそろ止めますか。レム、エミリア様、そろそろそれ位に……」
二人を静止するために手を伸ばす。すると、ぐるんと二人の首が回ってこちらを振り向き、二人して掴みかかって……いやタックルしてきた。
「らむぅ~!」
「姉様ぁ~!」
「グエェ」
そのまま地面に転がり、膝立ち状態の二人に見下ろされる形になってしまう。二人の顔は真っ赤に染まり、既に酔っ払いが出来上がっていた。
「姉様はぁ……姉様は何人たらしこむつもりなんれすかぁ……」
「たらし……? いたっ、痛いわよレム、どうして太ももに噛みつくの? エミリア様、レムを何とかしてください」
「……やだ」
エミリアに助けをお願いすると、ふるふると首を振ってから睨みつけてきた。ぷくっと頬を膨らせた後、ラムの首元にしがみ付いて……いや締め付けるように腕を回してきた。
「”リア”じゃなきゃやだぁ! ね、いいでしょラムぅ……」
「え、エミリアさま、くびが……」
「やぁだ!いじわるしないで」
「ギブ……ギブ……」
バルス、助けて、HELP ME。
そんな視線を送ると、スバルが『しょうがねえなあ』といった表情で何とかレムとエミリアを引きはがす。二人はスバルをラムと勘違いしたままお腹と首をしっかりとホールドして締めあげている。
「い、いでででで……!! 天国と地獄が同時に襲い掛かってくる……!! ほら二人とも、もうおねんねしよう。ゴートゥーザベッド、オーケー!?」
「はぁはぁ……バルス、そのままベッドインしたら地獄だけ見せてやるわよ」
「しねぇよ!仮にベッドにインしても待ってるのは本物のプロレスだよ!」
スバルが必死にツッコミを入れながらも二人を何とか担ぎ上げて部屋の扉から出ていく。その背中を眺めながらケラケラと笑っていると、ベアトリスが小さくため息を吐いた。
「全く、騒がしいったらありゃしないかしら」
「そうですね……でも、ラムは嫌いじゃありませんよ。ベアトリス様は嫌でしたか?」
「……別に、嫌とは言っていないのよ」
「それは良かったです」
小さく笑みを浮かべると、ベアトリスがぷい、とそっぽを向く。その姿に再び口角が緩むのを感じていると、メィリィがラムの服の裾を軽く引っ張って来た。
「ねえラムお姉さん、なんだか私も暑くなってきたわぁ。外で少し涼みたいのだけれど、いいかしらあ?」
「外か……ロズワール様、よろしいでしょうか?」
「構わないよ。ただぁし、逃げ出さないよーぉうに、しっかり見張っておきなさい」
「ありがとうございます。それじゃメィリィ、行きましょう?」
「はぁーい」
頷くメィリィの小さな手をしっかりと繋ぎ、ラム達は夜の庭が見えるバルコニーに出る事にした。
△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼
POV:メィリィ
「んーっ! まだまだ外は涼しくて気持ちいいわあ」
「ロズワール様は許可してくださったけれど、あまり長居はしないわよ?」
冷たい夜風を全身に浴びながら、隣に立つお姉さんに気になっていた事を尋ねてみる。
まるで捕虜ではないような扱いを受けているけど、いつまでもこうしているわけにもいかないだろう。
「ねえお姉さん。私はこれからどうなるのかしらぁ?」
「……逆に聞くけれど、メィリィはこれからどうしたい?」
「逆にって……うーん、そうねえ。このまま逃がしてもらうって言うのは?」
「残念だけど、それは難しいわね」
お姉さんはあっさりと首を横に振った。……さすがに領地を危険に晒そうとした暗殺者を野放しにするほど抜けてはいないか、と逆に安心してしまう。
改めて考えると……これからどうするべきか、いまいちピンとこない。
「私は……どうしようかしらあ。任務に失敗しちゃったから、『ママ』に見つかったら死ぬよりも恐ろしい目に遭わされちゃうかもしれないしい?」
何てことないように言って見せたが、本当の所は震えが止まらなくなるぐらい恐ろしい目に遭わされる可能性がある。
ママの”躾”は、精神が壊れてしまいそうになる位に残酷で、絶望的。
自分でもよくあの”躾”をされて精神が保っていられたなと自画自賛してしまうほどだった。
「『ママ』……っていうのは?」
「さあて、だれかしら?教えてあげなあい。 ……とにかく、私は道具として育てられただけだもの、利用価値がなくなったら処分されちゃうかも。だったらここで隠れながらわこのままお姉さんの妹になっちゃおうかしら……なあんてね?」
そんな事を言い出したら、あのレムという青髪の妹が本気で嫌がりそうだな、と思いながら冗談のつもりで言ってみた。
するとお姉さんは顎に手を当てて、
「……それもいいかもしれないわね。ここに住むつもりなら、私と一緒にメイドをやってもらうことになるけど」
などと言い出した。
流石に何を言っているんだと、思わず目を何度も瞬かせてしまう。
「ちょ、ちょっと待って。本気で言ってるのぉ?」
「本気よ。可愛い妹が増えるなら大歓迎だわ」
お姉さんはふっと小さく笑った。その言葉が本気で言っているんだと分かって、私は露骨に顔を顰める。
……アーラム村に潜入する前、私はエルザからお姉さんの情報をある程度仕入れていた。
王都で剣聖にやられてボロボロになっていたエルザは、少しだけ高揚した表情でお姉さんの事を語っていた。
短剣使いだとか、風を自在に操るとか―――冷静に見えて、その中身は甘い少女だとか。
そのエルザの見立ては、座敷牢に囚われてから今日まで接してきて間違いないと思った。お姉さんが私を見る目には、敵意らしいものが一切見当たらない。
暖炉で私を抱きかかえながら眠っていたのもそうだし、雪祭りの間だって私が本気でお姉さんの事を殺そうと思ったら、そのチャンスはいくらでもあったように思える。
本当に、底抜けのお人よし。
「……お姉さんって馬鹿なの?私が本気でお姉さんを殺すつもりで、取り入ろうとしているだけとか考えない訳?」
「メィリィ?」
「……」
私にとってお姉さんがその甘さに足を取られようとどうでもいいし、むしろ好都合だというのに、何故か心の内にイライラとした感情が湧き上がって、気が付けば棘のある声色になっていた。
お姉さんは暫く私の様子に首を傾げていたものの、うーん、と答えを探す様に声を漏らす。そしてぽつりと、よく分からない事を口にした。
「……メィリィには、普通に生きて欲しいのよ」
「はぁ?何を言って―――」
瞬間、お姉さんの顔を見て言葉が詰まる。その表情はどこか苦しそうにも、寂しそうに見えたけど、私にはその理由が分からなかった。
私が困惑した表情を浮かべていると、お姉さんはぽつぽつと、ゆっくり言葉を続ける。
「……暖かいお部屋で、大好きな家族とお腹いっぱいご飯を食べて……辛い事や悲しい事があっても、一緒に支え合って……そうやって優しい大人になったら、大好きな人と結婚して、新しい家族を作っていくの」
「……それが普通? そんなの、どう考えても『恵まれた』生き方じゃなあい?」
私が指摘すると、お姉さんは諦めたように小さく「…そうね」と呟いた。
「それでも……それが普通だって思いたいじゃない。そうじゃないと……
「……あの子?」
……私はお姉さんの過去を知らない。それは、誰の事を言っているんだろう。ただの直感だけど、あの青髪の妹の事を言っているようには思えなかった。
お姉さんは空を眺めながら、星空よりも先の何処かを見ているようだったが、その瞳は星の光を映して僅かに潤んでいるように見えた。
どうしてだろう。放っておくと、そのままお姉さんが何処かへ消えて無くなってしまうような気がして、私はお姉さんの手を強く握りしめた。
「……はぁ。お姉さんって、本当によく分からない人ねえ」
「ラムはいつもミステリアスだもの……でも、女の子は少しぐらいミステリアスな方が深みが出るらしいわよ」
「えぇ、それホントぉ……?」
突然冗談を挟んできて思わずツッコミを入れてしまったが、再び顔を見ればいつも通りの表情に戻っているのを見て、内心でほっとしてしまう自分がいることに気づく。
「ま、さっきの事はゆっくり考えさせてもらうわぁ。どうせ此処にいれば美味しいご飯には困らなさそうだしい?」
「そう? ……っくしゅん! はぁ……そういう事なら、そろそろ体も冷えてきた頃だし中に戻りましょう」
「別にそこまで寒くはないと思うけど……?」
言葉を返したところで、お姉さんの手がやたらと熱い事に気づく。お酒で体温が上がったのかとも考えたけど、よく観察してみれば、僅かに発汗もしていた。
「……ねえ、お姉さんの手、すっごく熱いんだけれどお。本当に風邪でも引いたんじゃなあい?」
「まさか」
指摘をすると、お姉さんは『冗談でしょ』とでも言うように声を漏らした。お姉さんはそのまま踵を返して歩き出そうとしたが、その足取りはひどくおぼつかない。
そしてその背中を付いて行こうとした瞬間―――お姉さんはズッコケるように足をもつれさせて転倒した。
「きゃあっ……!?」
手を握っていた私まで引っ張られ、驚きながらも一緒に膝をついてしまう。
お姉さんは私から手を放し、ゆっくりと立ち上がろうとする。しかし身体に力が入らなかったのか、バルコニー溶け残っていた雪の上に倒れこんでしまった。
「ちょっ……ちょっと!お姉さん!?」
叫び声を上げて、大慌てで雪の上に倒れ込んだ身体を抱き起す。さっきまでは暗くて分からなかったが、お姉さんの顔は真っ赤に染まっていた。
肩を揺すっても、苦しそうに荒い息を吐くだけで返事がない。今なら監視の目もないし、このまま一人で逃げ出せるかもしれない―――しかし、そんな考えは頭の中にこれっぽっちも思い浮かばなかった。
「誰か来てぇ! ラムお姉さんが倒れたわぁ!」
自分でも驚くほど必死な声を張り上げながら、屋敷の中にいる皆に向かって叫んでいた。
鬼だって風邪を引く。
そういう事にしておいて下さい_(:3 」∠)_
1話当たりの文字数、どれぐらいが良いですか?(3章書いてたら9000文字連発してしまったので分割しようか悩み中
-
4000~7000文字(分割する)
-
7000~10000文字(分割しない)
-
全然気にした事無いからどっちでもいい