姉様には転生者説があるらしい。   作:あいあむぬーぶ

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スバル君は過酷な目に合えば合うほど味する


8:盗品蔵の襲撃

「大ネズミに」

「毒」

「スケルトンに」

「落とし穴」

「我らが貴きドラゴン様に」

「クソったれ」

 

 小屋の扉がノックされ、カウンターにいたロム爺が扉の前へと向かうと、合言葉の確認を行う。そして合言葉の確認が終わると、ガチャリ、と扉が開かれた。

 

 そこに現れたのは金髪の少女―――フェルトと呼ばれる子供だった。

 俺たちは簡単な自己紹介を終えると、エミリアがフェルトに詰め寄る。

 

「お願い、あの徽章を返して。あれはすごーく大事なものなの!」

「やだね。大体そんな大事なものならもっと大切に持っとけってんだ。アンタその小箱を大事そうに抱えてたから盗み間違えるかと思ったじゃねーか」

「こ、これも大事なものなの!盗っちゃダメなんだからね!!」

 

 エミリアはさっとスカートの一部を守るようなポーズを取る。よく見るとそこから小さな箱が顔を覗かせており、ラムはちょっとだけ呆れたように眉間を押えていた。

 

「なぁラム。エミリアたんって何を持ってたの?」

「……ラムがあげたプレゼント」

「あぁ………納得した」

 

 エミリアからラムに向けた矢印の大きさは鈍感でもなければ簡単に気付けるほどに大きい。

 ……まだ短い付き合いだけど、プレゼントをもらった瞬間のエミリアの浮かれっぷりが目に浮かぶ。

 

「リア、そこまでにしましょう。盗品とはいえ、交渉の余地はあるはずよ」

 

 あちらで行われていた言い争い(?)が白熱する前に、ラムが冷静な声で仲裁に割り込んだ。

 

「なんだよ。アンタら、これを買い戻す金でもあるってのか?」

「ええ。その徽章、依頼主はいくらで買い取るつもりなの?」

 

 フェルトの強気な態度を受け流し、具体的な取引の話へと切り替える。

 

「聖金貨10枚だ。これでも相当な破格なんだぜ?」

「……なら、私は聖金貨15枚で買い取るわ」

 

 すかさずエミリアが一歩前に進み出て、迷うことなく高い金額を提示した。

 

「じゅ、15枚!? ―――だったら、依頼主と競わせればもっと高く……」

「盗品を持ち主の目の前で競りにかけようだなんて、ずいぶんといい度胸ね。強硬手段に出られても文句は言えないわよ」

「う”っ……そ、それは……」

 

 ラムが鋭い視線をフェルトに送る。

 フェルトは視線を泳がせていると、ロム爺は肩を竦めて『ま、仕方ないわな』と言ったような表情を浮かべた。

 ……まあ、確かに盗んだ相手が金を払う、と言ってくれてるだけ最大の譲歩ではあるか。

 

「わ、わかったよ! そこまで言うならアンタらに売ってやるよ!」

「良かった、これで交渉成立ね。ありがとうフェルト!」

「ありがとうはちょっと違う気はするけどな……まぁ、徽章が戻ってきたんなら良いのか……?」

 

 エミリアの笑顔に思わず首を捻ってしまったが……嬉しそうなのでOKです。

 

 そんな中、ラムはいつの間にか一歩引いた位置に立っていた。扉の脇。外と中を繋ぐその境目に背を預けるようにしている。視線は会話ではなく、別の何かへ向けていた。

 

 ―――そういえばラムにはそう言う索敵系の能力があるんだっけか。

 

 そんな事を思い返した直後、ほんの僅かにラムの瞳が細められた。冷静に、だけど僅かな緊張感を持った声色で口を開く。

 

「誰かが来るわ」

「多分あたしの依頼主だ。悪いけど、今回の依頼は無かったことになったって伝えねーとな」

 

 溜息を吐きながらフェルトは扉を開く。そこに入ってきたのは、泣きぼくろが特徴の、黒いドレスを着た美女だった。ラムはそれを見て、明らかに緊張したような表情を見せたまま、扉の前からエミリアの近くへと立ち直す。

 

 ―――ラムの奴、何をそんなに警戒してるんだ?

 

 この場はただの交渉の場。しかし、ラムのその様子を見て自分も少しだけ緊張を感じてしまう。

 

「あー……姉ちゃん。来てもらってわり―んだけど、徽章は売れそうにねえや。持ち主に見つかっちゃってさ。額もあんたが提示したもの以上に出してくれるってんで、そっちに売ることにしたんだ」

「ふぅん……そう。しくじったのね、あなた」

「しくじったって……まあ、そうなんだけどさ」

 

 フェルトがバツが悪そうに頭を掻く、仕事に失敗したのは否定できなかったため、フェルトは反論が出来ないようだった。

 

 俺がその様子を見ながら、まあまあと話しに割って入ろうと思った直後。

 

―――フェルトは急に、横からの突風に吹き飛ばされた。

 

「な、なんだ!?」

「ッ、てぇ……何すんだよ!メイドの姉ちゃん!」

 

 皆が驚いていると、さっきまでフェルトが立っていた場所を目掛けてククリナイフを振りぬいた女が、少し驚いたような表情で立っていた。

 

「あら……良い反応ね、メイドさん。私の殺気が漏れていたのかしら?」

 

 黒ドレスの女は、なんてことない表情で会話を続ける。その様子が余りにも自然で、俺は全く動き出せずに呆気に取られていた。

 

「お、おい、どーいうことだよ!腹いせに皆殺しにでもしようってのか?!」

 

 フェルトが叫び、黒いドレスの女に指を突きつけて怒鳴る。しかし、彼女はさも当然といったかのように言ってのけた。

 

「ええ、そうよ。予定を変更することにしたの。この場にいる関係者は皆殺し。徽章はその上で回収することにするわ」

「は……?」

 

 ―――殺す?何言ってんだ?この女は。

 

 現実離れしたその言葉が飲みこめない。フェルトもその殺意に当てられてか、震えながら後退りしていた。その様子を見たロム爺が巨大な棍棒を握りしめて前に出て、エミリアは黒ドレスの女を睨みつけながら口を開いた。

 

「させると思うか?」

「そんなのラムが許さないわよ」

 

 一触即発の空気が漂い、間もなくこの場は戦場になる。ビビッて下がりそうになる足を奮い立たせ、俺は一歩前に出て叫ぶ。

 

「そっちがその気ならやってやるぜコノヤロー!!」

「あら、あなたも戦うの?いち、にい、さん、よん……」

「ボクもいるよ」

「5人ね。ふふ、面白いわ」

 

 黒ドレスの女はエミリア、ラム、ロム爺、パック、そしてスバルの5人を一瞥した後、まるでキスをするようなリップ音を鳴らしながら舌なめずりをした。

 

「バルスはフェルトを連れて逃げなさい」

「ラム、男には戦わなきゃいけない時があんだよ!」

 

 ラムの言葉にスバルは反論する。スバルの小さなプライドが、女の子にこの場を任せて逃げるという選択肢を奪っていた。

 ラムは少しだけ顔を顰めた後、口論する時間がもったいないと感じたのか、

 

「……好きにしなさい。死んでも知らないわよ」

 

 と冷たく言い放った。全く期待されていない事がひしひしと伝わって来て、若干腹立たしい気持ちになる。

 

「ま、待てよ。アタシだって戦う―――」

「あなたは逃げて助けを呼んできなさい。これ以上足手まといを増やされても困るわ」

「そうだぜフェルト。ここは俺たちに任せて……ってやっぱ俺もその枠に入ってんだな!」

「っ……」

 

 ぴしゃり、と言い切るラムに、フェルトは悔しそうな表情を浮かべる。そして涙をぐっとこらえて扉の方へ走り出した。

 

「させると思う?」

 

 黒ドレスの女が床をを踏み抜き、目にも止まらないスピードでフェルトを目掛けて飛び掛かる。その手に握ったククリナイフを振りかざし―――

 

「ぬううう!!それはこっちの台詞じゃ!!」

 

 ロム爺がそれを大きな棍棒で防いだ。

 しかし、戦闘能力は圧倒的に黒ドレスの女が上。数度打ち合っただけでロム爺は黒ドレスの女のスピードについて行くことができずに切りつけられる。

 

「ロム爺……!!」

 

 フェルトは悲鳴を上げる。転倒した勢いで椅子をなぎ倒すロム爺の傷は深いが、致命的なダメージではないようだった。しかし―――

 

「とどめよ」

 

 容赦のない女の追撃。ロム爺の心臓をめがけてククリナイフが振り下ろされる、その瞬間。

 ラムが信じられない速度で二人の間に割り込み、その手に持った短剣でエルザのナイフを防いだ。

 

 ―――やばい、こいつら速すぎる。反応が、全く追いつかない。

 

「行きなさい!!」

「っ……!」

 

 呆然と眺めていると、ラムがもう一度フェルトに逃げるように叫ぶ。フェルトはそのまま扉の外へ走っていく事に成功したが、最早この場から背を向けて逃げ出すチャンスは恐らくさっきのが最後だっただろう。

 

 そこからは激しい攻防が繰り広げられた。否、激しい攻防が繰り広げられているのを()()()()()

 

 黒ドレスの女の斬撃をラムが短剣で防ぎ、カウンターのように放たれた風の刃(フーラ)がエルザを襲う。黒ドレスの女は難なくそれを躱し、その隙を狙うようにパックとエミリアの氷魔法が潰しにかかる。

 

 俺が何か手を貸せるんじゃないか、などと思ったのは余りにも思い上がりで、この戦いに全く介入出来る気がしていなかった。そしてそれはもう一人、隣でじっと目を凝らし、額に脂汗をにじませていたロム爺もそうだろう。

 

「……なあ、俺たちこのままでいいのか?」

「当り前じゃ。悔しいが、儂ではあの女には手も足も出ん。おぬしもさっきのタイミングで逃げればよかったものを……」

「だ、だから、男の意地ってもんがあったんだよ……」

 

 バツが悪そうに言うと、ロム爺は「まあ、分からんでもないがな」と僅かに同調してくれた。フェルトを逃がすためとは言え身を挺したロム爺に対して、僅かに敬意の念が浮かぶ。

 

 そうこうしている内に戦いは更に大きく動いた。ラムの短剣から風の爆発が巻き起こり、黒ドレスの女に大きなダメージを与えたからだ。黒ドレスの女の足元は氷で縫い付けられ、最早勝負はついたようにも見える。

 

「やったか…?!」

「ロム爺!それフラグだから!」

 

 思わずツッコミを入れながら様子を見る。確かにこのままいけば優勢で終わる事が出来るかもしれない、しかし同時に嫌な予感がしていた。

 

 直後、黒ドレスの女が舞いを踊るかのように上体を大きく勢いづけ、ラムの喉元を狙う。凍った足元からは血か滴り落ち―――

 

「っ……!」

 

 ラムの防御を超えて、その視界を潰した。黒ドレスの女は間髪入れずにもう片方の足を振りぬき、ラムを蹴り飛ばす。

 

「ラム!」

 

 思わず俺が叫ぶと、黒ドレスの女はニヤリと口角を釣り上げる。

 その瞬間――――女と目が合った。

 

 ぞわりと何か底知れない黒い予感。それが何なのかを考えるよりも先に、黒ドレスの女はククリナイフを小さなナイフに持ち替え、それを俺に投げ飛ばした。

 

 たった一瞬のモーション。

 それだけで瞬きをする間もなく、いくつもの投擲ナイフが俺の眼前に迫った。

 

 ―――は? 俺、死ぬ?

 

 エミリアやパックの魔法も、もはや間に合わない。世界がスローモーションになるような錯覚が起きる。そして俺の体中は穴だらけになり、死ぬ。

 瞬間的な恐怖に、俺のできる事は、固く目を閉じる事だけたった。

 

 しかしその瞬間はいつまでたっても訪れない。それどころか、ふわりと甘い香りと共に何かが自分にもたれかかってくる。

 

 ゆっくりと瞼を開ける。するとそこには。

 

「ラム……?」

 

 眼前に居たのは、ラムだった。

 俺に覆いかぶさるような形で、ぐったりとしているラムのその背中は2本のナイフが。そして脇腹と首にナイフが突き刺さっている。

 

「ラム……!!」

「あら……本当に速いのね、あなた」

 

 エミリアの悲痛な叫び声、そして同時に感心したような、のんびりとしたエルザの声。

 しかし目の前でごぼごぼと血を吐き出すラムを呆然と眺めていた俺の耳には最早何も入っていなかった。

 

 ―――ラム?なんで俺を庇ったんだ? 俺がここにいたから。俺が、足手まといだから?

 

 ラムが、死ぬ。

 その現実が、じわじわと脳の奥に染み込んでくる。

 

 ―――本当は俺が皆を助けたくてこの場に残ったのに。俺は何をしてんだ? あそこで大人しくラムのいう事を聞いて、フェルトと逃げていればこんなことにはならなかったんじゃないのか? だめだ。やめろ。やめろやめろやめろ。考えるな。それにまだ助かるかもしれない。エミリアがいる、回復魔法なら、もしかしたらこの怪我だって治せるかもしれない。

 

 俺は半ば縋るような思いで、エミリアの方を見た。

 

「リア、目の前に集中して……!」

「……っ、……」

 

 既に形成は逆転していた。エミリアの視線は既に目の前の女などではなく、今にも動かなくなりそうなラムを向いていた。

 パックが叫び声を上げるが、最早エミリアの動きは精細を欠いたままだった。

 

「……ラ、ラム、ごめん。俺……俺のせいで……」

 

 ぼたぼたと、後悔の涙が零れ、ラムの顔を濡らした。するとピクリとラムの指先が震え、閉じていた瞼がゆっくりと震えながら開いた。

 

「ラム……!」

「………」

 

 驚愕する俺とは対照的に、ゆっくりとラムの指先が俺の頬を撫でた。

 

「……ごめん、ね」

 

 どこまでも力の抜けた、か細い声。今にも途切れてしまいそうなほど弱々しいが、それは叱責でも、呆れでもなく、小さな謝罪だった。

 不思議とその響きは柔らかくて―――まるで泣いている弟をあやすように、優しく包み込むような声音だった。「そんな顔をしないで」とでも言いたげな、困ったような、けれどどこか微笑んでいるような気配すら滲んでいる。

 

 頬に触れる指先にはもうほとんど力が入っていない。ゆっくりと、確実にラムは死んでいく。

 そしてついに、ラムの指先からふっと力が失われた。俺は落ちそうになるその手を、繋ぎ止めるように反射的に掴んだ。

 

 ―――死なないでくれ。

 願うようにその小さな手を握りしめる。しかし、奇跡は起きない。ラムの瞳から光が消えた。指先が完全に動かなくなる。揺すってみても、反応はない。

 

「おい、ラム……?」

 

 もう一度。今度は強く体をゆするが返事はない。しかし既に呼吸はなく、その瞼は開かれたまま、動くこともなかった。

 さっきまでそこにいた。普通に喋って、あんな風に笑って、少し気まずい瞬間はあったけど、それでも仲直りして――――それが、こんな簡単に終わるはずがない。

 

「起きろよ……おい、起きろって……!」

 

 声が裏返る。視界がチカチカする。何度呼んでも、何度揺すっても、返事はない。叫びは虚しく蔵の中に響くだけだった。

 

 唯一残されていた温もりも、ゆっくりと消えていく。

 

「……っ、あぁ……あああ……っ……」

 

 喉の奥から漏れるのは、言葉にならない嗚咽だった。

 

 

 ……それからどれくらいそうしていたのか、自分でもわからない。ただ、涙だけが流れ続けて―――ふと、妙な静けさに気づいた。

 

 音が、ない。

 さっきまであれだけ騒がしかった空間が、嘘みたいに静まり返っている。

 ゆっくりと顔を上げる。視界の端に、倒れている影。銀色の髪。そして床に広がる血溜まり。

 

「エミ……リア……?」

 

 呼びかけても返事はない。その向こう、巨体が崩れ落ちている。

 

「ロム爺……?」

 

 同じだ。どちらも、ピクリとも動かない。理解が、追いつかない。いや――理解したくない。

 

「なんで……こうなるんだよ……」

 

 その問いに、静かな声が答えた。

 

「その子は、優しすぎたわね。いいえ、甘いというべきかしら」

「はぁ……?」

 

 ゆっくりと顔を上げる。黒いドレスの女が、血に濡れた刃を指先で弄びながら立っていた。その視線が、俺の腕の中へと落ちる。

 

「気づいていなかったの? その子、ずっと足手まといのあなた達を庇うように戦っていたのに」

 

「……っ!」

 

「だからあなたには助けられたわ。お陰様で大きな隙を作ることができた。まだ奥の手いくつか持っていそうだったけれど、それを出す前に死んでしまうんじゃとんだ間抜けだわ」

 

 女はくすくすと面白そうに、ラムを蔑む。

 ……心が軋む。脳の血管が千切れそうなほど頭に血がのぼる。分かっている。この女が言っていることは間違っていない。俺がそうさせてしまったから。

 

―――だからこそ。

 

「……黙れよ」

 

 絞り出すような声。何を言ったところで、何も変わらないのは分かっている。それでも、言葉は止まらない。

 

「それでも……あいつは―――」

 

 こんな俺を守ってくれた。あいつにとっては価値なんてないはずの俺を、身を挺してまで守った。その事実だけがどうしようもなく胸を締め付ける。涙が止まらない。

 

 言ってやる、言ってやる言ってやる言ってやる。この子がどれだけ優しいか、お前みたいなクソやろうが分かったような気で語っていいような子じゃ―――

 

「別にいいわ」

「―――」

 

 面倒くさい、と言ったように一閃。瞬く間に首から血がどばどばとあふれ出し、気が遠くなる。

 

「あなたには興味がない―――それに、まだこの子の中身を開けていないもの。ふふ、どんなモノが出てくるのか楽しみだわ。本当は生きたままが良かったのだけれど……まあ、仕方ないわね」

 

 既に黒いドレスの言葉は遠くなり。俺は力なく床に倒れこんだ。

 

―――ラム。エミリア。

 

 自分達が大変な時でさえ、思わず誰かを助けるために手を伸ばしてしまうような……優しすぎる女の子達。俺みたいな、ろくでもない人間を、本気で守ろうとしてくれた。

 

 血の味が口の中に広がる。

 

「俺が……必ず―――」

 

 その先の言葉を言い終えるより早く、世界は真っ暗になった。

 

△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼

 

POV:ラム

 

 

 ―――痛い。

 ―――苦しい。

 ―――怖い。

 

 ドクドクと血は流れ落ち、ラムの命が流れ出していくのが分かる。

 戦うものとしていつも覚悟はしているけれど、やっぱりこの瞬間は誰しもが一度しか味わうことのないから慣れることは出来ない。

 

 ()()()()()()()()()()()()()

 

 「……ラ、ラム、ごめん。俺……俺のせいで……」

 

 スバルが涙を流して謝罪を口にする。その表情には様々な後悔の色がありありと滲んでいる。

 

 考えるよりも先に体が動いていた。

 ラムがここで倒れれば、すぐにでも戦況は劣勢に傾いてしまう事は分かっていたのに。それでもスバルを―――弟によく似たこの少年を庇わないという選択肢は取れなかった。

 

 ―――きっと、スバルはこれから原作と同じように『死に戻り』をして、誰にも打ち明けられない苦しみを味わい、少しずつ壊れながら皆を救っていく孤独の戦いをしていくのだろうか。

 もっと上手くやれれば、彼にそんな苦しみを背負わせることは無かったかもしれないという事実が、ラム()にとって何よりも辛かった。

 

「……ごめん、ね」

 

 だから、どうか自分(スバル)の事を責めないで欲しい。どうか苦しまないで欲しい。

 ラムにはもう、それを伝えるだけの体力はない。

 ただ、心の中で小さな祈りを捧げるしかなかった。




リゼロ、死亡シーン何度も見れるの凄い味して大好き
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