思えば今まで学園要素一ミリもなかったな…
第一話 入学、ダンジョン学園!
キャリーバックを手で固定し電車に揺られること三時間。事前に送られてきた真新しい制服に身を包んだ俺は、窓を流れる景色を眺めていた。
「ちょっとアンタ、さっきの話聞いてたの?…その顔、マジで気づいてなかったのね…チッ」
「えー、せっかく盛り上がってたのに…。」
「お前らが横で勝手に話してるだけだろ…早く起きたから眠いんだよ。」
いつの間にこんなに仲良くなったのか。リリカと紗良は俺を挟むように両隣に座って、さっきから話し続けていた。まぁ、テンション上がるのも無理はないが…。
「同じ制服の人、増えてきましたね。」
「そりゃそうでしょ。何てったって、この電車があそことの数少ない入場手段だもの。」
春休みが明け四月、新学期シーズンでどこの学生もそわそわしてる中、この列車の中ではその空気がさらに強い。理由は単純、俺たちは今まさに、国立ダンジョン学園に入学するための移動中の車内なのだから。
「それにしても、皆受かってよかったですね~。」
「とか言ってるけど、アタシに泣きついてきたの忘れないから。」
「うっ…。で、でも、一ノ瀬君も入試前は忙しそうだったじゃないですか…!」
「追い込みでダンジョン潜ってただけだ。第一、あれ中学の内容の総復習だったし、最低限の教養を確かめるだけのものだっただろ。」
そう、一応国立ダンジョン学園には一応入学条件があり、一つは冒険者であること、もう一つは入試に受かることだ。…とはいえ、別に難しいことはない。だってこの学園の本質は冒険者の支援であり、学力は最低限あればいい。俺の場合、中学の内容は前世の分があるのですこし復習するだけで楽々通ることができた。紗良は…思い返せば、昔から英語が苦手だったしな。
「今更終わったことを掘り返すのもなんですし、話題を変えましょうか!」
「いや、お前が始めたんじゃ...」
「一ノ瀬君は部活とか決めてるんですか!!」
「ごり押しするな。…まぁ、俺はまだ決めてないけど。」
そういうのは後々、ジョブ次第で決めるつもりだ。ジョブは将来の方針を固める最後の指針であり、それが無い状態で万が一合わないところに入ったら…俺の学園生活は目も当てられないことになるだろう。流石にそれは絶対に避けたいし。
俺のそんな考えをよそに、2人はどちらも入りたい部活を決めているらしくまた俺を挟んで話を再開する。いい加減どっちか俺と席変われよ…周りの視線がとても痛い…
そうして涙目になりながらも浮き足立つような時間は過ぎていき…しばらくして紗良は外を見ると一瞬固まり、次の瞬間にはガタッと手をついて目が釘付けになる。周りの人もなんだなんだと窓の外を見始め、俺も紗良の頭を押しのけて覗き込み…息を呑んだ。
島なのだろうか、海岸から伸びる長い長い橋の向こうに浮かぶ都市、中央には一際大きな建物が鎮座しており、さっきまでうるさかった周りの生徒も総じて口を閉じて釘付けになっていた。
「あれが…学園都市、ポータリア…。」
♦︎
ダンジョン学園都市:ポータリア
人工島の上に作られたこの都市は、国際ダンジョン連盟が主導となり作り上げた、まさしく冒険者のための施設である。
中央の国立ダンジョン学園を中心として、実際に交通インフラはもちろん、チェーン店、個人店も経営されており、街としての機能は申し分なく稼働している。経済としても独自の通貨を用いており、すべてはここだけで完結する、まさしく最先端の都市といえるだろう。
列車はぐんぐんと橋の上に敷かれたレールを通り、だんだん速度を落としてポータリアに隣接している駅のホームへと入っていく。
『次は~、終点、終点、ポータリア、ポータリア、です。下車の際お忘れ物の無いよう、ご確認ください。』
アナウンスとともに残った利用客…ほとんど俺たちと同じ新入生…はぞろぞろと各々のキャリーケースやカバンを持ってホームへと降り立っていき、俺たちもそれに続くように列車から降りた。
「ここが学園都市…!雑誌で見たのと同じ、すごくお洒落なところですね~!」
「能天気すぎでしょ、はぁ、子供じゃないんだから…」
「おいおい、走るなよ、ただでさえ人多いんだからすぐぶつかるぞ。」
早速走り回っている馬鹿をリリカと引き擦りながら駅を出る。内陸と変わらなく見えるような街並みが広がり、学園への道が大通りで吹き抜けになっていてここからでもその大きさが見て取れる。まんまと設計者の思惑に嵌った一部の生徒たちは、各々のスマホでこのインパクトをデータに刻み込んでいた。それから幾分か大人しくなった紗良は事前に渡されていた生徒用のパンフレットを開き、今後の予定を確認している。
「この後は、バスで学園まで行くらしいですよ。今日は混雑にならないように、新入生用のバスを出してくれているんだとか。」
そういってる傍から大きなバスが駅に横付けされ、案内係らしき人物の導きで俺たちはバスに乗り込み、学園へと移動した。バスが近づくにつれ、その大きさはより顕著になっていく。スタジアムやドームとは比べ物にならないその大きさは、連盟の力の入れようを感じさせる。降りると案内役の人が玄関の前に立ちアナウンスを再開した。
「荷物については、入ってすぐ左にあるロッカーにしまっておいてください。そして、最後に。この玄関をくぐっても…驚かないでくださいね?」
今までと違う、少し崩した悪戯っぽい笑みを浮かべ彼女は悠々と玄関を通っていき、俺たち生徒が後に続くと...体が軽くなったような感覚とともに周りの奴らは皆驚きの声を上げ始める。なんのこっちゃわからない俺は横でつまらなそうにしているリリカに聞く。
「どうなってるんだ...?」
「あれ、アンタ知らないの?この学園の仕様。普通これが目玉なはずなんだけど...。いいわ、見せてあげる。」
「は、見せる?」
リリカは突然何もないところに手をかざして…見覚えのありすぎる半透明の板が生成される。
「は、いや、お前、それ…ステータスウィンドウ!?ダンジョンの中でしか出せないんじゃ…。」
「そこの生徒さん、いいリアクションですね。そう、我が国立ダンジョン学園はこの校舎そのものが
「へぇ…とんでもないな。」
この超人のような力をダンジョンの外でも使えるって、思い切ったことをするものだ。こんなのやりたい放題で…いや、違うか。やりたい放題なのは学園側も同じだ。いくら一生徒、いや、一冒険者が暴れたところで、より強い力を持つ者を何人も抱えていれば、抑止力としてはそこらの警備員より優秀だもんな。
♦
俺たち新入生一行は自身のロッカーに各々荷物をしまうと、体育館らしき場所...とはいえ中はドームかと見間違うほど大きい…に入る。既にこのバカでかい空間には在校生たちが所狭しと座っており、不自然に空いている中央のスペースに促されるまま俺たちは座っていった。
在校生たちの好奇の、というよりどこか見定めるような、獲物を狙うような目線が一人一人をつむじからつま先まで這いまわり、自然に周りの新入生たちは背筋を正す。両端に座った二人はといえば...片方は足を組んでふんぞり返り、もう片方は目を輝かせて見知らぬ在校生に手を振ったりしていた。
「お前ら、こんな時も相変わらずだな...。」
「はぁ?何を気にすることがあるわけ、せっかく期待してたのに、ほとんど凡人とかわらないじゃない。」
「いや、でもレベルはお前とトントンだと思うぞ?」
「レベルを気にする奴は三流、いや、ど底辺よ。肩書きなんて見飽きたわ、大事なのは何を成し遂げたか、よ。」
「…耳が痛いお言葉で。」
こいつは根本から俺と違う人種だな。高みを見ているというか、物事の理解が深いというか、どう育てばそんな脳みそになるのか皆目見当もつかない。精神年齢で言えば俺の方が二倍近くのはずなんだが…やはり天才肌なのだろう。
そんな惨めな気持ちになりながら、もう片側の口からマシンガンを連射してくる紗良に手刀を入れていると、突如として照明が消え暗転する。そして一番奥にあるステージにスポットライトが当たり…何もなかったはずの空間異一人の女性が現れた。
きっちりとしたスーツに透き通るような長く美しい銀、いや、白髪か?妖艶さも感じさせる美女はどこかけだるげな操作でマイクを握ると、手をポンポンと数回当てた後話し始める。
「あー、あー、聞こえてる?あら、珍しく
その言葉とともに、地面を揺らすほどの在校生たちの歓声が上がり、ついてこれていない俺たちはただそれを受け止めることしかできなかった。取り残された感覚に周りを見渡すと神妙そうな面持ちで学園長を見つめるリリカの姿があった。
「何か気になるのか?」
「...知ってはいたけど、バケモノね。」
「まぁ、そりゃそうだろ。じゃなかったらあそこにいないだろうし。」
「そういう意味で言ったんじゃないわよ、まぁ、今のあんたにはわからない次元の話ね、ごめんなさい。」
「最後ナチュラルに煽ったな?」
「あ、また二人だけの世界作らないでくださいよ!私だっ…」
ドオオォォォォォォォォォォォォォォォン!!!!
先ほどまで学園長がいた場所に巨大な火柱が立ち上り、体育館全体が静まり返る。火柱が収まると中から一人の女性がゆったりと歩き出てくる、一歩ごとの増すその存在感は俺たちの動きを止めるのに十分だった。
燃えるような深紅の髪と爬虫類のように瞳孔が縦に割れた瞳、制服の下に抑え込まれている圧倒的なスタイル、そして何より...頭から生えた二本のねじれた角に、鱗に覆われた尻尾、まるでこの空間を支配するように大きく広げられた翼。まさしく竜としか言い表しようのない人間離れした美少女は、マイクも使わず全員の脳に語り掛けるような棘ついた声で話し始める。
「歓迎するぞ、諸君。あんなババァの話なんぞ聞くより、有意義な時間を約束するとしよう。吾は生徒会長、
彼女は牙を見せるようにニヤリと笑い、言い放つ。
「龍だ。」
ということで新章開幕です。
筆が乗ってきたので一週間以内には出す…かも。
モチベになるので感想と評価お願いします!