呪物語   作:マクガフィン

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なでこジョーズ

 

 

 001

 

 

「U・S・J!」

 

 

 だいたい四年前くらいに大阪に出来た遊園地でございます。もちろん、私は初めて来ました。

 

 そう、業界の繁忙期、夏真っ盛りの八月中旬に私達の学年はあろう事か遊園地漫遊でございます。

 

 というのも、任務の方面がだいたい同じ、近畿地方だった為(この仕事をやっているとだいたい日本地図単位で遠近を測るようになります。昔は街から出るだけでも大事でしたのに……)、皆で協力して近畿地方の悪人・悪霊をあくせくとしばき倒して時間を捻出したのです。

 

「全く、業界の上層部は任務の割り振りが適当すぎて困るね。悟には時間ばかりかかる弱小呪霊掃討、撫子には四級レベルのお祓い任務、硝子は京都校のバックアップで、私は護衛や拠点防衛ばかり。肝心の強敵は京都校の先輩方が相手にしようとしていて非合理的だったね」

 

「まぁ、プライドもあるんじゃね?そりゃ、自分のお膝元くらい外様の術師に頼らず治めていたいでしょ」

 

「んなプライド奴らには高杉晋作。てかプライドといえば撫子こそもうちょい買い込むべきっしょ。特級呪霊ばっか相手にしてんのに未だに三級のザコ扱いで、ゴミみたいな仕事振られてるし」

 

「ブランド物とかよく分からないし、私は安い女でいいよ。簡単じゃないお仕事は振られなくても向こうから振り込んできて、振り回されているし」

 

 五条君は事あるごとに家の力を使って私を一級、あわよくば特級に繰り上げようとしますが、そこは臥煙さんが頑張ってくれているみたいで私の地位は未だ三級で留まっています。

 

 軽く感謝を述べようとすると、酷い言葉遊び、いえ只の寒いオヤジギャグになってしまうのはよろしくありませんが、お陰様で漫画家修行の方は順調に進んでおります。

 

 等級が上がるとお仕事が増えるんですよねぇ。四級から三級に上がった時は正直、有意な差はありませんでしたが、これは四級術師という地位があまりにも低すぎる事に由来します。

 

 何というか、大して業界にいた訳でもない私の肌感ですが、四級術師という肩書きは、自動車の免許証に近い感じがします。

 

 一応、呪いに関われますよ!といったレベルで本当に最低限過ぎる資格なのです。正直、呪いや怪異にある程度の関わりがあれば誰でも取れます。

 

 対して、三級術師はというと、一応、毎日車を運転していますよ〜という事を示すくらいの資格です。

 

 こちらもその喩えから分かるようにごまんといるありふれた資格でございまして、私の周囲的には四と三の違いはあって無いようなものです。

 

 なので臥煙さんも、三までは許容、というかあんまり不自然にならないように仕事をこなしていったら三級にはする腹づもりはあったように思えます。

 

「取り敢えずどうするよ。スパイダーマン?E.T.?それとも初手ジョーズ?」

 

「悟は濡れないから、初手ジョーズなんていう下手な案を出せるんだろうね。私はいいとして、撫子と硝子を濡れたまま歩かせるというのは紳士的じゃない」

 

「この制服、濡れたくらいで体が冷える程ヤワじゃないでしょ」

 

「一応、呪物なんだっけ?」

 

 そういえば言及が遅れました。制服でございます。

 

 学生らしく制服で遊園地に来たのです。しかしその経緯は仕事帰りの格好でそのまま来たというものなので少し歪ですね。

 

 言及と言えば、デザインについても今まで言い及んでいませんでしたね。呪術高専は制服改造し放題というぶっ飛んだ校則を掲げている為、拘束は一切ありませんとも。

 

 夏油君はボンタンにしていますし、硝子ちゃんはスカートをタイトスカートにしました。

 

 五条君は意外にも無改造でございます。一番弄くり回しそうなものですが、私に彼の感性を理解するのは難し過ぎるのでしょう。

 

 で、あとは私ですね。私自身はぶっちゃけジャージで良かったのですが、式神の撫子衆、特に媚び撫子がブチ切れまして、4対1でなるべく制服を着る羽目になったのですとも。

 

 デザインは揉めに揉め、迷走して露出が増えたりスカートの丈が上下したりした果てに、結局紺を基調としたセーラー服になりました。

 

 羽織るためだけに存在する上着を羽織らされたり(おと撫子案)、靴がロングブーツになったり(媚び撫子案)、その靴に鉄板が仕込まれたり(逆撫子案)、袖が巫女服の大きなソレになったり(神撫子案)を全て採用させられた為か見た目がかなり渋滞しており、街を歩くと現役女子高生の制服姿なのにコスプレ扱いでございます。

 

「学生証ぅ〜?!」

 

 ……そんな見た目が悪かったのでしょうか?私達は学生料金で入場しようとした所、あっさり入場ゲートで不審者扱いですとも。

 

 案の定、私達四人は仲良く止められて、裏口へご案内です。相変わらず、呪術高専の学生証は役に立ちません。

 

「やっぱり悟の見た目が良くないよ、カツラくらいは被るべきだね」

 

「んなこといったら傑だって胡散臭い上に不良チックなカッコしてんだろ。ボンタンっていつの時代のセンスだよ」

 

 

 

「───いえ、手荷物検査の結果、そちらの女性の鞄からタバコが見つかりまして……」

 

 

 

 あっ。

 

 

 

「硝子……」

 

「いつかこうなるとは思っていたが……」

 

 

 五条君と夏油君は、スッ、と目を閉じてすべてを諦めた顔になりました。

 

 しかし、友達に前科が付くのを黙って見逃せる私ではありません。

 

 

「はい、この制服はコスプレですとも、そうですとも!私達はいい歳して制服デートしようとしていた痛いオバサンです!」

 

 

 

 002

 

 

 

「撫子オバサン、次は何食べます?」

 

「こらこら、硝子おばさん。それはさっき乗ったでしょう」

 

 

 恥も外聞もかなぐり捨てた結果、私達女性陣は現役男子高校生を遊園地に呼んで、制服コスプレして歩き回るオバサンという痛いなんてレベルでは済まされない設定を背負う羽目になりました。

 

 硝子ちゃんはこの設定が余程ツボったみたいで、今もケラケラ笑いながらオバサンロールプレイを楽しんでいます。

 

「というかあの自白で突破出来たのが釈然としないよ。タバコ持ってた硝子ちゃんはさておき、私、そんなに老けてたかなぁ」

 

「実際の老け、というよりも、状況の痛さ加減で納得したんじゃないかい。何かを隠そうとする人は当然、恥ずかしいから隠す。だから逆説的に隠されたものが恥ずかしいものだと納得しやすいんだ」

 

「ココ大阪だし、オチがあったのも良かったんじゃね?」

 

「アトラクションに乗る前に落とされる必要あったかなぁ」

 

 という訳で、出オチを喰らいましたが無事入場出来た私達はそれなりに無難に楽しく巡りましたとも。

 

 私としても良い勉強になりました。アメリカの映画がテーマの遊園地ですが、その映画群の原作にはいわゆるアメコミ、と呼ばれるものがあることもあるのです。

 

 そう、コミック、漫画です。

 

 私は基本的に日本の漫画を好みますが、こと創作の世界に於いては引き出しの数が物を言います。自身の好みに籠っていては、きっと込み入って詰まってしまいます。

 

「スパイダーマンにスヌーピー、E.T.も良かったね。あんまり遊園地に行ったことの無い私だけど、ここが一流のソレだっていうのは分かるよ」

 

「そりゃ、バブル期に乱造されたようなテーマパーク共とはちげぇわな。そっちの方は呪霊の住処になるようなレベルで閑古鳥が鳴いてるし」

 

「ここ十年は業界の仕事場所の多くが、バブル期の廃墟や負の遺産だからね。業界人は遊園地や華美な建物にいい印象は無いだろうね」

 

 任務をこなしていますと、日本にこんな建物あったんだ、という建物と沢山出くわします。大体廃墟なのが玉に瑕ですが、その由来がバブル期とやらにあるそうで。

 

 一体どんな時代だったんでしょうか、バブル期。

 

「地方に一個はあるよね〜、謎遊園地。お金がある時代にお金かけて作ったのにチープな感じがするのは不思議。で、次どこ行くよ」

 

「今いるのがハリウッドエリアだから……箸休めにシアターでも行かない?絶叫マシンに疲れた訳じゃないけど、屋外と列には少し疲れちゃった」

 

 私は、怪異や化け物よりも人間の方が苦手なタイプの人間ですので、パーソナルスペースを無視して並べられるデパートや遊園地なんかは一人で行くと一時間で目を回してしまいます。今回、比較的マシなのはやはり信頼に足る友人が3人も近くにいるからでしょうね。

 

「ったく、軟弱だな、撫子。しゃーね、ジョーズとジュラシックは後にしてシアター観るか。傑〜、何やってるか知ってる?」

 

「いや?私はこういう場では敢えて調べすぎない事にしているんだ。特に初めての場合はね」

 

「単に調べていないだけなのに、夏油君らしい真面目な感じがするのは不思議だね」

 

 

 

 003

 

 

 演目は、セサミストリート、───の筈でした。

 

 

「またかよ」

 

「折角の休日なのに、本当に勘弁して欲しいね」

 

「スケジュールが空いてたらやってこないといけない決まりでもあるの」

 

 友人達はひたすらブーイングを飛ばします。私も大体おんなじ気持ちですが、呼び寄せているのが私自身であるという疑惑がある以上、軽率な非難は控えておきましょう。

 

 

『黙れ黙れ黙れ!さっきから情報収集の為に黙って聞いてたら、舐めやがって。餓鬼ども、貴様らの死地はこのUSJになるんだよ!』

 

 

 ええ、呪霊でございます。等級はもう分かりますよね、術式持ちの特級ですとも。時計頭の人型ですので、少し言葉で遊んで時計塔の呪霊とでも呼びましょうか。

 

 

「で、撫子、どうする?こいつ祓った後はジョーズかジュラシックか?」

 

「うーん、B級レベルの安っぽい敵だし、ここは一流の怪物であるジョーズで口直ししたいな。ああ、そうだ、夏油君の口直しは何がいいかな」

 

「ふむ、シアターの匂いのせいかな、キャラメルポップコーンが食べたくなったよ」

 

「ん、じゃあ屑共、施設壊れん内にさっさと祓っとけ」

 

 

『───貴様ら、その驕り、高く付くぞ。……確かに、術式の格・存在としての格は貴様らの方が上だ。それは事実だ、認めようとも』

 

 

「おっ、なんだ、話が早いジャーン。じゃあとっとと傑のポケモンになっとけ」

 

「待て、悟。何か様子がおかしい。すぐに───」

 

 

『しかしな、呪術師よ。所詮、我ら呪いも貴様ら術師も日陰者、知名度や認知度で競い合うには限度がある』

 

 

『縫い目の女に勧められた時は気が進まなかったが……映画というのは、良いな。その虚構を見た人間、皆の恐怖が、悲鳴が、同一のイメージに集中するんだから』

 

 

『貴様ら人間のお陰で、かの怪物達は産まれ堕ちる』

 

 

『改めて言おう、所詮日陰者の我らが存在の格を競い合うのは無意味であると』

 

 

『妖怪や都市伝説の恐怖なんぞ、彼らのユニバーサル(普遍的・万人共通)さには遠く及ばない』

 

 

『さあ、矮小な呪術師達よ、舞台を仰げ!これが恐怖の最先端、本物の怪物だ!』

 

 

 

 瞬間、シアターを突き破ってサメの怪物が現れました───話の流れ的に間違いありません。

 

 それは、巨匠スティーヴン・スピルバーグ監督が作り上げた歴史に名を刻む怪物

 

 数多あるサメ映画における原初の一

 

 ───『JAWS』の登壇です。

 

 

 004

 

 

『ふはははぁ、さぁ『JAWS』こいつらを殺───なんだ、こっちじゃない、敵はあい───ぎゃゃゃぁぁぁッ!』

 

「まぁ、お約束だよね」

 

 

 

 時計塔の呪霊が能力すら開示せず、頭から齧られてお亡くなりになった状況からいつものお仕事フェイズは幕を開けました。

 

 今回の業務は、サメ狩り。しかも相手は映画における怪物という役割を被ったサメ。きっとかなりの無敵性を有している筈です。

 

 その辺のB級映画レベルのサメならこちらもやりようはあったのですが、相手はサメの中でも一流中の一流の怪物ですので───

 

 

「術式が使えん、というか呪力が全く感じられん。詰みか」

 

 そう、無粋な超能力の類は全没収。あくまでサメが最強のサメ映画世界観が強制されます。

 

「私も同様だ。呪霊の出し入れも出来そうにない。まぁ、この瞬間に私に溜め込まれた呪霊が暴走を起こさない事だけは不幸中の幸いだ」

 

「反転術式は使えるぞ、ほんとに役立たずになった屑共。でもアウトプットで呪霊を祓う事だけが的確に縛られてる」

 

「やっぱり、サメ映画のルールだね。あくまでサメが一方的かつ最強の加害者で人間は哀れな被害者。きっとそのルールを強制する『領域』だと思う。硝子ちゃんの反転術式による回復が縛られてないのは……まぁ映画あるあるのご都合超回復要素かなぁ」

  

 『JAWS』から逃げ、シアターからの脱出を図りながら私達は状況の推察から始めます。

 

 バトル漫画の定番です。

 

 この手のルール強制系のギミックボスは、そのギミックの中で斃せるように出来ています。呪術的にも、これ程の有利を相手に与える結界ならば、利益の差し引き的に致命的な弱点もある筈です。

 

「てか、領域にしてはなんか変じゃね?結界の外殻が見当たらねぇ。領域に付与された術式の効果で呪力が感じられなくなる前に、術式を付与する為の結界が貼られる筈だから、順番的にそっちは見えてないとおかしいんよ」

 

「……それに妙な事は、もう一つある」

 

 夏油君が、シアターの出口のドアを開けました。

 

「外に出られる事だ」

 

 外には、阿鼻叫喚、本物の絶叫が響き渡るUSJが広がっていました。

 

 

 005

 

 

 ヴェロキラプトルに、プテラノドン

 

 バックドラフトに、西部劇の悪役ガンマン達

 

 残念ながら、どれもホンモノでございます。

 

 遊園地に大量にいた筈の善良な一般市民の方々は最初からいなかったかのように消え失せて、代わりに怪異・怪異・怪異。

 

 どういう訳か、お昼前に入った筈のシアターから出たら時間帯は夜、それも明らかに深夜になっており、鉄板のシチュエーション・夜の遊園地というロケーションに早変わり。

 

 そう、まるで映画でも観ているような───

 

「どーしよ」

 

「ユニバって、ガトリングガンとかねぇの?メリケン映画だったら銃と超科学にアメリカ軍を足して最強」

 

「ある訳がないだろう、ユニバである前に日本だからね。こう考えてみるとある種、国というのも領域だ。法律という名のルールを領域内にいる全てに強制させるのだから」

 

「なる、だからアメリカ映画の領域を日本で張れば最強と。呪術的にズルじゃね、それ。反撃の手段を与えるっていう縛りの元、ユニバ全部を実質必死必殺領域にしてるのに、ニッポンという国の性質によってその反撃手段が封じられてるし」

 

「多分、作った人……多分、あの時計塔の呪霊はそこまで考えついてないから、その差し引きで釣り合ったんじゃないかな。だからきっと偶々こうなった、またはそうなるように誘導した人がいるかのどっちかだよ」

 

 呪いや怪異というのは、あくまで本人の主観でしか無いあやふやなものですので、使用者によってはこういった半ば詐欺じみたことも起こるらしいです。

 

 前に、差し引きは厳格、と講釈を垂れた気もしますが、それは世界観の違いで説明できます。

 

 私達呪術師は、呪いをかっちりと認識しています。実在するものとして、定量的に。

 

 不可解な現象に業界用語というラベルをつけて分類し、呪力という理屈を通して理解しています。

 

 故に自分で決めたルールに、自分で縛られてしまうのです。そんな感じのルールを共有する人や呪霊が集まって出来たのが、今の呪術界と呼ばれるものなのでしょう。

 

 しかし、呪術・怪異の本質は

 

 

 『怪しく異なるもの』

 

 

 そう、物理法則や社会規範、そういったルールの外にある外法で無法こそが彼ら・私達の本質だった筈です。

 

 ですがそんなルールの外さえ、結局そこに理性と知性がある以上、規格化されて整頓されて、そして矮小化してしまいます。

 

 例えそれが怪異自身の事であったとしても理解されてしまった怪異や呪術というのは、恐ろしくなくなってしまいますから。

 

 ……この状況を作り出したであろう黒幕の意図が、少し分かった気がします。

 

 きっと、ルールで凝り固まってしまった自身では、もう造れなくなってしまった文字通りの怪異を生み出す為の試みです。

 

 現に、呪術界というルールの上では最強の五条君と夏油君をこうして危機に陥れているので、その試みはこの上無いくらい成功していると言えるでしょう。

 

 ───しかしながら、まだ付け入る隙くらいはありますとも。

 

「おっ、撫子がなんか思いついた顔した。こういう訳わかんねぇ状況をなんとかすることがウリの俺らのポンコツブレイン」

 

 

 006

 

 

 n界目の人外魔境でございます。しかも今回は少し趣向を変えて、能力縛りがありますとも。

 

「勝つ為には、結構移動しないといけないとはね。よりによって『一番遠い場所』に行く羽目になるとは」

 

「スタートがハリウッドエリアというのが中々に出来過ぎてて『脚本』としては良い感じだけど、私が監督だったら道中で一人殺すよ」

 

「じゃあ、ここは鼻につくハンサム役の悟が死ぬのが良いだろうね」

 

「ざけんなよ、傑こそ、ぜってー中盤に裏切る卑怯なアジア人枠だろ」

 

「『JAWS』……サメ映画だったら水着のバカ女が食われるのが定番なんだけどね」

 

「今は夏真っ盛りだけど、繁忙期のせいで水着回はないからね、硝子ちゃん」

 

 だから安心とも言えないのが、サメ映画の恐ろしさなのですが。

 

「まぁ、死んだら終盤に秘密兵器持って再登場すりゃいいっしょ。んじゃま、行きますか」

 

 その五条君の言葉を最後に、私達はユニバ巡りを再開しました。

 

 普通に歩けば、10分程で端から端まで巡れる敷地ですが、至るところにハリウッド産の化け物が溢れかえっているこの現状ですので、突破は困難を極めるでしょう。

 

 ───いえ、そうでなくては困ります。

 

 

「あっ、シュワちゃん……じゃない方のターミネーターだ。ロボット部分剥き出し」

 

「ガトリング持ってね」

 

「というか腕がガトリングガンそのものだね、悟」

 

「逃げろ〜」

 

 

 初めて聞くホンモノの銃声がガトリングガンなのは我ながら数奇な人生を歩んでいますね。勿論、全て躱せる訳もなく左肩と脇腹に鉛玉を叩き込まれ死ぬ程痛いです。

 

 という訳で、初手分断でございます。

 

 五条君と夏油君は北へ、私と硝子ちゃんは東へ。まぁ、どちらかが辿り着きさえすれば、この物語は終わります。

 

「撫子、だいじょぶ?」

 

「も、モーマンタイだよ、硝子ちゃん。治療ありがと」

 

 東側はユニバーサルワンダーランドという、子供向けエリアという事もあってか危険な怪異がいなかった為、こうして一息つく事が叶いました。

 

 五条君と夏油君が行った北側は……ニューヨークエリアですね。

 

「さらば、屑共。悪く無かった」

 

 私も硝子ちゃんと共に2秒くらい手を合わせました。いやぁ、流石に無理でしょ、なんて言ったって『ニューヨークエリア』ですよ。

 

 そう、あのニューヨークです。

 

 ハリウッド映画においてはド派手に破壊されるためだけに存在している便利舞台です。絶対に無能力の一般市民は爆散します。

 

「……建物が崩れる音が聞こえる、『JAWS』は私達を追ってるみたいだね」

 

「うーん、目的地に向かうには『アミティビレッジ』を通らないといけなくて、そこは『JAWS』のホームグラウンドで……私達もかなり死にそうだね」

 

 アミティビレッジ。

 

 映画『JAWS』の舞台となった漁村アミティを再現したエリア。

 

 『JAWS』に追い回されてむざむざ彼?のホームグラウンドに逃げ込む羽目になるとは、凄まじい詰み具合です。

 

 しかしながら、ストーリーとしては良いピンチ具合。多分、観ている分にはドキドキハラハラ出来る具合でしょう。

 

 やっぱり、物語は聞き手に限りますね〜、当事者なんてたまったものではありません。

 

 

 007

 

 

 でーれん───でーれん

 

 

 私は起こっている事を形容するとき、あまり擬音語やオノマトペを使わないタイプなのですが、今回ばかりは使わざるをえませんとも。

 

 

 でーれんで──でーれん───でーれん

 

 

 いやぁ、有名な調べですよね、これ。

 

 

 でーれん─でーれん

 

 

 音楽なんて齧った事もなくて、強いて言えば小学校の同級生にリコーダーを舐められたくらいしか接点の無い私でも、これがよく出来ているというのは分かります。

 

 

 でーれん─でーれん─でーれんでーれんでーれんでーれん

 でーれんでーれんでーれんでーれんでーれんでーれん

 でれんでれんでれんでれんでれん───

 

 

 

「「きゃぁぁぁぁ」」

 

 

 今回一発目の悲鳴でございます。できれば普通にアトラクションに乗ってあげたかったなぁ。

 

 乗っかった船がひと咬みで半壊した為、上がった悲鳴でございます。

 

 (JAWS)という渾名は伊達ではありませんね。勘弁してください。

 

 そう、目的地に向かう為にアミティビレッジを通過しなければならなかった私達は、無論、陸路を通って行こうと試みました。

 

 が、なんと陸路自体が無くなっているという理不尽ぶり。

 

 その差し引きとして、アトラクション用の船はある程度自由航行が可能になっていたといった具合です。

 

 やっぱり、ズルは出来ませんよねぇ。

 

 という訳で、私と硝子ちゃんはイヤイヤながらサメが潜んでいる事が分かりきっている水辺を進む羽目になったのです。

 

 で、その結果はりんごが木から落ちるように明らかです。

 

「……エンジンは無事、でも対岸にはつけないくらいに浸水が早いね」

 

「───うん、じゃあ、一回戻ろっか」

 

「正気?ホントにあの作戦やんの?私的には撫子だけ死地に送るよりは、無様でも二人で逃げ続けて半端な感じで死にたいんだけど。物語的じゃないけど、人間的ではあるでしょ」

 

「照れる事言ってくれるね、硝子ちゃん。いやぁ、その誘いもある意味正しいし、魅力的だけど、……私の夢がね、それを赦してくれないんだよね」

 

 

 

 人間、やりたい事をやればいい。

 

 なりたいものになればいい。

 

 

 

 人として終わった筈の私を、人に戻した呪い。

 

 楽さだとか楽しさだとか、人間関係的な正しさだとか、そういった合理や感情を優先するなら、私は神様を止めるべきじゃ無かったのです。

 

 やりたい事をやる為に、神を捨て、人に戻った代償ですとも。

 

 払い続けましょう、そして祓い続けましょうとも。

 

 

 008

 

 

 水着回は無いという私の発言を鵜呑みにした読者諸君、お前達は一人残らず騙された。この件からお前達が得るべき教訓は、会話の間で適当に発せられたメタ発言など、ペテン以下の聞くに値しないうわ言だという事だ。

 

 

 ……ふふん、貝木さんの真似してみました。

 

 という訳でまたしても千石撫子は水着です。

 

 しかし、今回はスクール水着なんていう野暮ったい装束ではありませんとも。

 

 

「JAWSの、サメ映画のポスターに載ってるような派手且つ露出の多いビキニ姿だね〜。あっ、また胸大きくなった?」

 

「うーん、ブラは最近変えたね。……じゃなくて、はい、『発煙筒』だよ、硝子ちゃん。パーク内の車探したらあったからこっちは書く必要は無かったね。じゃあ、よろしくね」

 

「気軽に言ってくれるよ、全く」

 

 

 そう、水着は描きました。

 

 術式は使えない筈じゃ?というツッコミはごもっともです。

 

 ですが、出来たものは出来ました。

 

 そう、ご都合主義、という奴です。

 

 着想としては、この領域内に於いて、硝子ちゃんの反転術式による回復のみ禁じられていなかった事から思いついた作戦です。

 

 この領域は、『呪術を禁ずる領域』ではなく『サメ映画の世界観を強制する領域』である事が今回のキモですとも。

 

 そうすれば、硝子ちゃんの反転術式が封じられなかった理由も分かります。

 

 映画的には、サメに齧られた傷が原因で、一般的かつ医学的に筋が通っている治療を施すけどゆっくり、ゆーっくり弱っていって、痛みに苦しみながら死亡、そしてエンディングでは……何というか、あまりにつまらないのです。

 

 それでしたら、『サメに派手に噛まれた!』というシーンはありつつも『なんやかんや動けはする』というご都合主義があった方が画は動きます。

 

 別にその治療方法が、呪術の秘奥である反転術式であれ、政府が開発した新薬であれ、アメリカ軍式の高度な治癒技術であれ、物語の大筋にとっては全く重要ではありません。

 

 そう、このルールさえ判れば、後は求められる画や緊張感を考慮しつつ、私達が勝てるような展開を作っていけば良いのです。

 

 

 ───ですので、ここは水着です。

 

 

 自分で言うのも自意識過剰気味で嫌なのですが、一応、私が水着を着れば、サービスシーン且つアクションシーンに該当出来る筈です、多分。おまけに『JAWS』のポスター画は、泳いでいる水着の女性と鮫、という構図。これはもう狙うしかありません。

 

 映画的にも、ヒロインのお色気シーンで登場する衣装に、術式は縛られてる筈だ、というみみっちぃ言いがかりをつける筈がありません。理屈より展開の美味しさが当然のように優先されます。

 

 という訳で、たんまりと尺を稼いでやりましょう。

 

 別に船なんて操縦した事ありませんし、泳ぎも得意ではありませんが、無駄に露出の多い……ぶっちゃけるならエロい水着を着ましたので、一動作一動作、クネクネしてれば鮫が襲ってくるまでの猶予はある筈です。

 

 ちなみにポロリは厳禁ですね。多分、見えちゃいけないものが見える前にサメの口の中に退場することになります。これはあちらに有利に働くご都合主義です。

 

 

「うっふーん」

 

 

 そう適当ぶっこきながら、私はさっきまでは無かったのに、いつの間にか現れたジェットスキーのエンジンをかけました。

 

 

 

 009

 

 

 

『千石撫子vs JAWS』

 

 

 ゴミみたいなタイトルです。特に千石撫子を先に持ってきている辺りとか。何様なんでしょう、千石撫子。

 

 そして誰が撮るんでしょう、誰が観るんでしょう、こんなZ級映画。

 

 漫画でも描きたくありませんし、プロットさえ文字に起こしたくありません。

 

 しかし、残念ながらこの話は、私という長期連載で起こってしまった展開であり、下手を打つとこのタイトルで最終回になります。

 

 100万%打ち切り漫画です。私達の冒険はこれからだ!

 

 

「う、腕がぁぁぁ」

 

 

 そんなふざけた思考をしていたら、右腕が持っていかれました。

 

 勿論、利き腕です。

 

 連載をする前に利き腕ごと打ち切られた漫画家は流石に世界を探しても私ぐらいでしょう。

 

 

 ───泣くな撫子、男だろう。

 

 

 ……ショック過ぎて、脳内に赤髪の海賊が放った名台詞が過ぎりました。

 

 いえ、私が食われた側ですし、左腕じゃなくて右腕ですし、引用元が洋画じゃなくてジャンプ漫画ですし、私は女の子ですし、何もかもしっちゃかめっちゃかですが、腕がたったさっき取れてしまった人間のモノローグですのでどうかご容赦くださいな。

 

 

「や、安いもんだよ、腕の一本や二本くらい」

 

 

 そう、私に出来る事は、時間いっぱいサメに齧られる事だけ。

 

 後は硝子ちゃんに託しました。あと、領域のご都合主義のお陰か、耐えられない程の痛みではありません。ぶっちゃけ、メンタルのダメージが一番大きいくらいです。

 

 私がペースト状になって胃袋にインするのが先か、硝子ちゃんが話のオチを連れてくるのが先かのデスマッチです。

 

 

 ───でーれん

 

 

「せめて足に」

 

 

 でーれん──でーれん

 

 

「いや、足もやだな。脇腹とかで勘弁してください。バトル漫画的には実質ノーダメですから」

 

 

 でーれんで─でーれん─でーれん

 

 

「いやいや、脇腹もイヤ。というか腕返して、お願い、返してよ」

 

 

 でーれん─でーれん─でーれんでーれんでーれんでーれん

 でーれんでーれんでーれんでーれんでーれんでーれん

 でれんでれんでれんでれんでれん───

 

 

「返して───」

 

 

 てってーてってーてれれれーれれっれっれ───

 

 

 高らかなファンファーレと共に今回のオチがご登壇しました。

 

 

 010

 

 

 ティラノサウルス。

 

 

 説明不要ですね。知らない人は多分、おじいちゃん、おばあちゃんくらいでしょう。

 

 はい、現在時流に乗りまくっている大人気モンスターでございます。

 

 その人気の起爆剤となったのは、やっぱりスティーヴン・スピルバーグ監督制作の傑作映画『ジュラシックパーク』です。

 

 そのオチをこの三流映画に流用させていただいたのが、今回の種明かしです。

 

 12年前の映画なので、ささっとネタバレにならない程度のネタばらしで説明すると、終盤の名シーンに、小型肉食恐竜(確かヴェロキラプトル?)に囲まれてピンチになった主人公一行の所に、ティラノサウルスが壁をぶち抜いてご登壇して、ピンチを結果的に助けてくれる、というオチがあります。

 

 敵対していた怪物を倒して貰う手法としては、これ以上ありませんとも。

 

 幸運にも、ここUSJには、ジュラシックパークをモチーフにしたアトラクションがありましたので、USJ全体が人外魔境になった時点で、存在を確信。あとはあの手この手で、ティラノサウルスがいるであろうエリア、ジュラシックパークを目指したのです。

 

 あとあと、理屈は忘れたのですが、ティラノサウルスは何故か発煙筒で誘導可能な描写がシリーズを通して為されていますので、その役はヘビースモーカーの硝子ちゃんにお願いしました。

 

 

 結果は大成功───といけば良かったんでしょうけど。

 

 

「うん、サメ映画領域が恐竜映画領域と拮抗して打ち消しあって、呪力が戻ったのはいいよ。でも、それって、映画の展開、って縛りが消えて呪霊と呪術師って構図に戻ったって事だよね」

 

 

『ティラノサウルス vs JAWS vs 千石撫子』

 

 開演でございます。

 

 

「ふざけんな!」

 

 

 

 011

 

 

 という訳で、ティラノサウルスとJAWS相手に格闘する羽目になりました。

 

 というか既にJAWSには右脚を、ティラノサウルスには左腕を齧られてます。

 

 流石巨匠が生み出したキングオブモンスター、目にも止まらぬ動きと圧倒的力です。

 

 しかしながら、こちらにも呪力が戻っています。もう、逃げ惑うだけではありませんとも。

 

 

「みんな喰らうよね、呪力毒」

 

 

 ゴキブリにドラゴン、サメにティラノサウルス。

 

 思えばたくさん食べられてきました。女の子が食べられるという表現をする時、エッチな意味じゃなくて、文字通りになってしまうのは悲しい限りです。

 

 2匹が慌てて口を離します。その隙を逃す程、私は甘くありません、甘くなくなったのです。

 

「右腕の、恨みぃ!」

 

 JAWSには踵落とし、ティラノサウルスにはアッパーを叩き込みます。

 

 見た所、2匹とも見た目以上の能力は無いようです。

 

 まぁ、サメが竜巻起こしたり、ティラノサウルスが炎吐いてきたりしたら三流もいいところですから。

 

 搦め手無しの純粋なパワー勝負。

 

 望む所です。

 

 ハリウッド映画ばりの殺陣をご覧にいれましょう。

 

 

 ───私以外の方々が

 

 

「おーい、撫子!生きてる?」

 

 聞き馴染みのある軽薄な声色と共に、デロリアン(結構昔のアメリカの車です)がティラノサウルスとJAWSの間に突っ込んできました。

 

「人生初運転が、無免許タイムマシンになるとはね。分からないものだ」

 

 えぇ、五条君と夏油君です。美味しいタイミングでの登場ですとも。

 

「二人とも……よく生きてたね。呪力・術式無しの二人とかガタイと顔だけのチンピラだから、ぶっちゃけ、分断されてニューヨークエリア行った時はご冥福を祈っていたよ」

 

「ざけんな、って言いてぇ所だが、まぁマジで呪力無しでJAWS相手にしてた撫子に言われたらしゃーねーか」

 

「ニューヨークはニューヨークで世界観が違ったんだよ。あっちはスパイダーマンなんかを始めとする、超人な個人が許容される世界観だったからね。私達はのびのびと術式を使って暴れたとも。で、状況は?」

 

「いやぁ、JAWSのサメ映画領域を攻略する為に、ティラノサウルスにオチを作って貰おうとしたんだけど、恐竜映画領域とサメ映画領域が拮抗しちゃって、2体の特級呪霊と千石撫子だけが残りました……」

 

「ったく、頭痛くなってきた。無量空所ってこんな感じなのかね」

 

「となると、私の呪霊操術で同時に取り込む、もしくは全くの同時に祓う必要があるね。片方だけを祓えば、残った方の映画領域に再び呑まれる。だから同時に祓うか、同時に取り込むしかない」

 

 そう言って、五条君と夏油君がティラノサウルスとJAWSに相対します。

 

 まぁ、vs千石撫子よりはぜんぜん様になっていますとも。

 

 

 012

 

 

「ハァ〜、あん時は流石に疲れたわ」

 

「今回ばかりは本当にね。暫く遊園地には行きたくないかな」

 

「暫定犯人も黒幕も取り逃してるし、踏んだり蹴ったり」

 

 はい、今回の顛末です。

 

 JAWSとティラノサウルスをド派手なアクションで撃破し、無事夏油君が美味しく頂いたところ、突然、遊園地全体にかかっていた映画領域が解けました。

 

 この領域が解けた事により、やっと外部が事態を感知。警察も業界人もわんさか来ましたが、倒すべき呪霊は一体もいなくなっており、ただ使い終わった映画セットのように荒れ果てたUSJが残るばかり。

 

 で、当然、私達も事件の当事者として色々調べてみるのですが、分かった事と言えば、あの最初に出てきた『時計塔の呪霊』がUSJ全体に張られた映画領域の主であり、JAWSやティラノサウルスはその映画領域ありきで、彼らの世界観を強制する能力が発動していたという事。

 

 JAWSに齧られた『時計塔の呪霊』はあくまで式神でしかなく、本体は別にいたということ。

 

 ───そしてその本体は何者かに祓われる・もしくは持ち去られていたという事。

 

 いやぁ、中々に不吉ですね。遊園地やそれに準ずるものさえあれば、"同じ事がもう一回出来るのですから"

 

 今回はシアターに入った段階で、呪霊の生得領域でたまに起こる時間のズレや何者かによる多人数に対する暗示により、被害者は私達だけで死人は出ませんでしたが、人がほぼ満員の遊園地で同じ規模の事件が起こったなら、それこそ本物のパニックホラーになってしまいます。

 

 後、被害といえば私の右腕ですが、本当に安いものでした。

 

 具体的に言えばコピー用紙一枚分。

 

 はい、髪を描き直し、ヘアースタイルを変えた時と同様の手法です。

 

 私は自ら紙に封じられた後、硝子ちゃんに腕を描いて貰いました。

 

「死にさえしなければ、コピー用紙一枚とペン一つで腕が吹っ飛ぼうが足が吹っ飛ぼうが、何回でも全回復出来るのはやべぇだろ」

 

「いやいや、私なんかをわざわざ描いてくれる物好きがいなかったら成立しないし、描くのにそれなりに時間もかかるから」

 

「それなりに時間が掛かったと言えば、USJの描き直し作業、お疲れ様、撫子。大仕事だったろ」

 

「一週間かかったよ、夏場の屋外作業だから暑いし、遊園地の建物って普通の風景とは訳が違うからね」

 

「わざわざ、被害補填まで撫子がやる必要あった?無償労働だったでしょ。ていうか今回に限っては、一般人として普通に遊びに行ったら偶々巻き込まれただけだから私達も完全な被害者だし」

 

 

 偶然。

 

 

 良くも悪くも、今回の事件はそれが大きく現れています。

 

 そう、黒幕を取り逃したとは言え、今回の一件は何もかもが黒幕の方───またしても『羂索』さんです───の思い通りになったという訳では無いのです。

 

 USJで行われていた一連の呪術……五条君の推測では大衆のイメージを用いた仮想怨霊系の呪霊を作り出す実験、すなわち海外産の概念を用いて日本で呪霊を作り出す試み、は未だ制作途中であり、その途中で偶々交通事故的に私達が突っ込んできたので、化け物(特級)の数がJAWSとティラノサウルスしかいなかった、という訳です。これ、あと1匹少なかったら逆に詰んでいたので、まさしく絶妙なタイミングでした。

 

 この事件、ちゃんと最後まで準備されていたら、とんでもない規模の呪術テロになっていたと業界は大騒ぎですとも。故に今回ばかりは私達は勲章ものの活躍らしいです。

 

「いやぁ、それはそうなんだけどね?ほら、私、入場の時に年齢詐称してたじゃん。ちょっとそれが後ろめたかったから罪滅ぼしにと」

 

「別に多めに金払ってるんだし、呪霊も祓ったんだし良くね、撫子オバサン」

 

「……あっ、サメ映画領域で腕持っていかれたのって、おばさん設定を付与した状態でUSJに入場したからかも。じゃあ、あの領域での私って───」

 

「ヒロイン気取りで露出の多い水着を着た痛い人、という事になるね。そりゃあ速攻で鮫に齧られるよ」

 

 ……またしても自意識過剰にも悲劇のヒロインを気取って痛い目に遭いました。

 

 いい加減、こんな感じの下手を打つのはやめたいものです。

 

 

 

 

 

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