どうも、常夏鳳梨です。
今回はオルクセン王国史を愛する王国民ならば、誰しもが食べてみたいと願う料理──もとい、グーラッシュに関するお話。
日本の香りが漂う秋津洲のことだから、きっとグラーシュも魔改造しているんだろうなぁ。
なんて思っていたら、ガチでグーラッシュが食べたくなった件。
「.....腹が減った」
オルクセン連邦が本格的に冬の時期を迎えた頃、首都であるヴィルトシュヴァインを散策していた──と言うよりかは、その日のヴィルトシュヴァインの国際商業展示場の外にて、そんなことをポツリと呟いていた。
彼女がついさっきまで居た国際商業展示場では、ブーフ・マルクトというイベントが行われていた。
このブーフ・マルクトというイベントは、いわゆる自主制作した本を売買する市場のようなものなのだが──それはいわゆる建前で、実際のところは大衆向けからマニアックな方面の専門書はもちろんのこと、同人誌と呼ばれる薄い本に手作りのフィギュアやゲーム。
挙げ句の果てには、各々好きなモノになりきるコスプレをした者が会場内を歩いたり、他のブーフ・マルクト参加者と共に記念の写真撮影をしたりと、割とオタク向けのイベントとして人気を博していた。
しかも、そこには何故かディネルースの愛すべき夫ことグスタフのオンリーイベントの会場まで設置されていたため、それをSNS経由で知った彼女は興味本位でやって来たのである。
ただし、そのオンリーイベントでは女体化したグスタフのパネルやイラスト集やら、グスタフが生きた時代を舞台にした同人誌(不健全なモノも含む)やら、ゆるいキャラクター化したグスタフのグッズやらが売られていたため、ディネルースがポカーンとしていたのは言うまでもない。
けれども、どんな形であっても今もなお国民から自分の夫が──グスタフが愛されているのだと感じた彼女は、それはそれで嬉しく感じていたとか。
なお、言わずもがなディネルースはそのオンリーイベントにて爆買いしたようで、後々そのイベントの参加者から【爆買い姉さん】として噂されることになるのだが、それはまた別の話である。
「それに、ついうっかり買いすぎてしまったな」
今は亡き夫が主役のイベントなだけに、思わず苦笑いしながらそう呟くディネルース。
ただ、その顔には後悔と反省の感情は全く浮かんではいなかった。
何故ならば、オルクセンという国が王国ではなく連邦となった今もなお、国民達がグスタフ・ファルケンハインという王を愛していたことを肌身で感じられたため、彼女がそうなるのも無理はなかった。
ちなみに、ディネルースも流石に色々と買いすぎた自覚はあったようで、今度来る時は元アンファングリア旅団の仲間を呼ぼうかな?とも思ったとか。
そして、背伸びをしつつベンチから立ち上がった彼女の目に映ったのは──ブーフ・マルクトの会場から帰るであろうオタク達が続々と来店している喫茶店であった。
その光景を見たディネルースは、そういえばとばかりにお腹を空かせていたことを思い出したようで
「いらっしゃいませ」
彼女が我に帰る頃には、吸い込まれるように喫茶店に入店した後に席に座った後だった。
そのためか、彼女はどれだけお腹が空いていたんだ?という具合で勝手に恥ずかしくなったのか、顔を隠すように革製のカバーのメニュー表を開いていた。
そんな感じで開いたメニュー表には、定番のコーヒーやケーキなどが書かれていたものの、今回のディネルースは既にガッツリとしたモノを食べたい気分だったのか、必死になってメニュー表を覗き込んでいたのである。
ただし、店が店なので中々そういったメニューが見つからなかった──わけではなかった。
「....オムグーラッシュ?」
メニュー表と見つめ合う形で格闘していたディネルースの目に止まったのは、【オムグーラッシュ】という料理だった。
グーラッシュとは、パプリカと牛肉などの材料を使ったシチューのような料理で、オルクセンでは兵食としても食べられていた程にポピュラーな料理であった。
だがしかし、グーラッシュという言葉の前にオムという単語が付いているということは、オムレツと一緒に出てくるのだろうか?
いきなり出てきた【オムグーラッシュ】という言葉に対し、ディネルースは戸惑いつつもその料理が魅力的に感じたようで、迷う云々よりもとりあえずは頼もうと思ったのか、そのまま店員を呼ぶとこう言った。
「とりあえず........この【オムグーラッシュ】と言うのを注文しても良いかな?」
それから約数分もの間、ディネルースはグーラッシュを注文したからなのかは分からないが、先に頼んでいたアイスティーを一口飲むと少しだけ瞼を閉じたかと思えば、それと同時にかつてのことを思い出していた。
彼女が属していた旅団にまだアンファングリア旅団という名が与えられる前──少なくとも、ベレリアンド戦争を想定した軍事演習が行われた時、彼女はグスタフや側近達と共にオークサイズのグーラッシュを食べたことがあった。
その当時の彼女は、オルクセンという国の風通しの良さやオークの膨大な量の食事に対し、カルチャーショックを受けたとばかりに驚いていたのは今は昔の話。
百年以上もオルクセンに暮らし始めたからか、ディネルースはそういったことには慣れてはいたのだが、グスタフの崩御や女王として即位したこともあって、グーラッシュを口にするのは軍の演習に参加した時ぐらいであった。
ただし、今も昔もグーラッシュはあくまで兵食として食べていたからか、こうしてプライベートで食べるのは彼女的には久々だった模様。
その一方で、女王として即位してからは卵料理をよく食べるようになったらしく、ここ数十年はオムレツや茹で卵に非常に馴染みがある一方で、庶民的な卵料理を口にする機会が減っていたため、思わずオムグーラッシュに飛びついていたのである。
「.....やはり、私は根っからの庶民だな」
ポツリとそう呟いた後、アイスティーをもう一口飲むディネルース。
その際、自身が飲んでいたアイスティーがマウリア産の紅茶だと気がついたのか、ここの喫茶店は紅茶のこだわっているのだとディネルースが思いつつ、料理の到着を待っていた。
やがて、彼女の前に待望の【オムグーラッシュ】が現れたのだが──
「これは....!?」
オムはオムでも、秋津洲で言うところの洋食と呼ばれる料理の一つであるオムライスだったため、ディネルースは思わず目を丸くしていた。
何だったら、そのオムライスの上にグーラッシュがソースのように掛かっていたためか、彼女は思わずこう思った。
これは、グスタフが見たら飛びついただろうな──と。
と言うのも、彼女はグスタフと共に外交として秋津洲に訪れた際、彼が『オムライスが食べたかった』──ということをショボンとした様子で呟いていたのを知っていたので、自然とそう思っていたのである。
何だったら、彼が母国であるオルクセンの料理を愛していたことも知っていたので、何ともいえない懐かしい気持ちになったとか。
【オムグーラッシュ】
秋津洲からインスパイアされた魔改造料理
この二つが合わないはずがない!!
「......いただくとするか」
そういうわけで、スプーンを手に取ったディネルースはグーラッシュ部分とオムライス部分を一緒に掬うと、それらをそのまま口に運ぶ形で食べたところ、その体全体にまるで稲妻が走ったかのような衝撃を受けていた。
そう、オムライスとグーラッシュが合わないはずがなかったのだ!!
濃厚なグーラッシュの味付けも魅力的ではあったが、オムライスの薄焼き卵の部分とケチャップライスの部分もまた美味であり、それぞれの美味しさが喧嘩することなく交わっていたため、ディネルースの食べる手は止まらなくなっていた。
更に言えば、グーラッシュをソースとして使っていることもあってか、ケチャップライスには具材が入っていないという配慮が施されており、それを感じ取った彼女は何と素晴らしい料理なのだろうかと感心していた。
その結果、ディネルースはものの見事に【オムグラージュ】の虜になっていたのだった。
そして、彼女がある程度の量の【オムグーラッシュ】を食べ進めていた時、SNS経由で秋津洲ではビーフシチューをオムライスに乗せることを思い出したのか、もしかするとこれは秋津洲インスパイアなのでは?察していた。
しかしながら、それはそれなので【オムグーラッシュ】を食べるのを再開したディネルースは、あっという間にその【オムグーラッシュ】を完食した後、紅茶を飲みながらスマホを弄っていた。
ちょうどその時、彼女の目に入ってきたのは──ブーフ・マルクトにて、高笑いをしながら爆買いをするシュヴェーリンの動画で、それがどういうわけかSNSに流れてきたため、当たり前だが彼女は思わず吹いてしまったとか。
「シュ、シュヴェーリンw」
笑いをこえながら、声を漏らすかのようにそう呟くディネルース。
かつては歴戦の猛将ではあったものの、今ではただのサブカル大好きおじさんと化していたシュヴェーリンに対し、彼女は彼らしいと思っていた。
しかし、SNSをやってるだけにどこか他人事とは思えなかったようで、自分も身バレしないように気をつけないと──的な感じで気を引き締めるかのようにそう思い始めていた、
そうこうしているうちに、アンファングリア旅団のOB達が所属しているSNSチャットでは、早速シュヴェーリンの話題が出ていたようで
:姉様!!シュヴェーリン様がブーフ・マルクトで大暴れしているんですけどぉ!?
:シュヴェーリン殿は相変わらずだなぁ──
というコメントが続々と届いていた。
それを見たディネルースは今度はクスッと笑うと、やはり来年のブーフ・マルクトには彼女達も連れていこうかな?と思っていたとか。
そして、彼女はそのグループチャットに軽く返信した後、代金を払って店を後にしたのだが──その際、空模様が美しかったがためにディネルースは大きく目を見開いていた。
あぁ、今日もまた良い一日だったな。
そう思いつつ、王宮へと帰るディネルース。
その後──来年の夏と冬に開催されたブーフ・マルクトにて、アンファングリア旅団の面々を引き連れる形にて、イベントを満喫した彼女なのだった。
@YamiDonguri
今日はオムグーラッシュなる料理を食べたよ!!
恐るべし、オムグーラッシュ....
#オルクセン飯
【本日のメニュー】
☆オムグーラッシュ