闇エルフのお忍びグルメ   作:常夏鳳梨

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副題:コーヒーが香る居場所

どうも、常夏鳳梨です。
今回は甘くて美味しくて、コーヒーにも合うスイーツが登場します!!
ついでに言えば、捏造設定マシマシです。
というか、コーヒー文化のある国のスイーツが美味しそうに見えるのは何でだろ?
ちなみに、センチュリースター風マッドケーキの元ネタはミシシッピマッドケーキです!!


センチュリースター風マッドケーキ

ディネルースが【闇ドングリ】名義でSNSを始めたのは、つい数ヶ月前のことであった。

星歴1025年現在の星欧大陸では、SNSと呼ばれるモノは人間どころか魔種族にまで浸透しており、その利用者数は増加の一途を辿っていた。

 

何気ない些細なことを呟くだけで、ネットを介して多くの人と繋がることが出来るSNSは、瞬く間にこの世界を生きる人々の生活の一部となっていき、やがて新たな日常の一幕となった。

それは言うなれば、新たな時代の幕開けであった。

 

まだ電話どころかコンピュータですら開発されていない時代を知るディネルースは、部下経由でSNSの存在感を知った時はとても驚いていた。

けれども、スマホの画面越しに映し出されているSNSの投稿を見て、次第にやってみたいと思ったようで、オルクセン連邦の美味しい料理を食べ歩くアカウントをこっそりと立ち上げた。

そのアカウントこそ、グルメ系SNS垢こと【闇ドングリ】なのである。

 

彼女のSNS垢である【闇ドングリ】というアカウントは、オルクセン連邦の国民はもちろんのこと、キャメロットやグロワールなどの国外の垢からもフォローされるようになり、今現在ではそこそこの数のフォロワー数を持つアカウントに成長していた。

ただし、身バレしたら面倒なことになることは彼女自身も分かっていたため、そこら辺のことを注意しつつSNSをしていた模様。

 

「ふぅむ──今はこんな喫茶店もあるのか」

 

そして、今日も今日とてディネルースは変装した上で王宮を抜け出した後、首都ヴィルトシュヴァインをお忍びで散策していたのだが──そこでレトロな外観の喫茶店を発見したのだが、その喫茶店がジャズと呼ばれる音楽を聴ける店だったため、彼女は分かりやすく興味を示していた。

 

ジャズとは、センチュリースターという国にて発展した音楽文化である。

センチュリースターで生まれたジャズは、陽気でリズミカルなメロディが特徴の音楽なのだが、クラシック音楽とはまた別の雰囲気に魅了される者は少なくはなく、今もなお世界中に根強いファンが居る程であった。

それはオルクセン連邦でも同じだったようで、ヴィルトシュヴァインにはジャズが楽しめる場所がいくつか存在していた。

 

ディネルース自身も音楽系サブスクでジャズを聴くことはたまにあり、その飛び跳ねるような音色に浸ることがしばしばあったため、当たり前だがジャズ喫茶のことが気になった彼女は、早速その店に入店した。

 

「ここは──中々に良い雰囲気のする店だな」

 

ドアベルの音と共にオレンジ色の温かな光で包まれている店内にて、年季の入ったカウンターに座った後、周囲を見渡しながらそう言うディネルース。

 

店内の壁には昔懐かしいジャズのレコード盤の他に、ジャズを演奏するオーク達の白黒写真も飾られており、それを見たディネルースはこの店にも歴史があるのだなと思ったようで、心なしかその顔に優しい笑顔を浮かべていた。

それに加え、店内ではそのレコードからジャズのメロディと旋律が流れていたため、彼女がより一層その店の雰囲気に浸っていたのは言うまでもないことだった。

 

ちょうどその時、カウンター席に座っているディネルースの前に現れたのは──この店の店主だと思われる壮年の人間の男であったのだが、その男性は星欧大陸に住まう人間達とは違い、いわゆる黒人と呼ばれる人間だった。

 

その店主の姿を見たディネルースは、そういえばジャズは黒人由来の文化だったなと思い出したとか。

一方、店主はカウンター席に座る彼女に向けてニコッと笑うと、そのままこう言った。

 

「いらっしゃい!!とりあえず適当な席には──座ってるか」

 

その店主からの言葉を聞いたディネルースは、キョトンとした顔になりながらもその笑顔に対してフッと笑うような表情を返していた。

そして、とりあえずコーヒーと何かしらのスイーツを食べようと思ったようで、テーブルの上に置かれていたメニュー表を開くのだった。

 

その店のメニュー表には、コーヒーや紅茶の他にキャロットケーキやチーズケーキなどのお菓子もあり、それを見ていたディネルースの目が輝いていたのは言うまでもない。

 

そんな中、彼女の目に映ったのは──【センチュリースター風マッドケーキ】という馴染みのない菓子の名前で、それを見たディネルースはこう思った。

何故、ケーキに泥という名前を付けたのだろうか?と。

 

しかし、一度沸いた好奇心を自らの意思で止めることは出来なかったのか、彼女は店主の方に視線を移すとこう言った。

 

「とりあえず──この【センチュリースター風マッドケーキ】のコーヒーセットを頼む」

「あぁ、【センチュリースター風マッドケーキ】のコーヒーセットか。ちょっと待っててくれ」

 

ディネルースがそう言った瞬間、コーヒーセットを準備し始める店主。

店主がコーヒーとケーキを準備している間、ジャズの音色に耳を傾けていたディネルースは、ここ数年のセンチュリースターの情勢について考えて始めていた。

 

星歴1025年現在のセンチュリースターは、南と北に分断した戦いが終結してから既に三年が経過していた。

終わりの見えない戦いに疲弊した一部のセンチュリースターの人々は移民という形でオルクセン連邦へと流れつき、今となっては他の魔種族同様の市民権を得ていた。

その中には戦場で負傷した末に軍を退役した黒人や、家族を失った黒人達も居たのだとか。

 

そんな黒人達の故郷であるセンチュリースターでは、北軍が南軍との戦争に勝利したことに伴い、本格的に戦争からの復興が進んでいたものの、それでもなお差別偏見は根深く残っているようで、今度は人種差別関連のデモや社会運動が多発していた。

最近では、その運動の中心人物であった聖星教(改革派)の牧師を務めている黒人が暗殺されたことを機に、黒人に纏わる社会運動はますます活発化したようで、法改正が行われるのも時間の問題だと囁かれていた。

 

店内に漂い始めているコーヒーの匂いに包み込まれながら、一国の女王としてそんなことを考えているディネルース。

いつの間にやら難しい顔になっていた彼女に対し、店主が持ってきたのは──ホイップクリームがたくさん添えられたナッツ入りのチョコレートケーキこと、【センチュリースター風マッドケーキ】であった。

 

ちなみに、そのケーキの隣には香ばしくも華やかな香りの漂うコーヒー入りのティーカップがあったのだが、そのカップの柄があまりにも可愛かったからか、ディネルースはこのカップはどこで手に入れたのだろうと思ったとか。

 

【センチュリースター風マッドケーキ(エルフサイズ)】

センチュリースターの泥という名前だが、濃厚な甘さがクセになるチョコレートケーキ

この店ではホイップクリームが添えられているらしい

 

【特製ブレンドコーヒー(エルフサイズ)】

ケーキに合うようにブレンドされたコーヒー

コーヒー好きなオーク達も唸る美味しさ!!

 

「これが【センチュリースター風マッドケーキ】──」

 

一人の闇エルフである以前に、一人の乙女として目を輝かせるかのような様子でそう呟くディネルース。

その顔には、今にも食べたいとばかりの顔が映し出されていたため、それを見た店主はクスッと笑いながら、この【センチュリースター風マッドケーキ】について語り始めた。

 

【センチュリースター風マッドケーキ】とは、センチュリースターの川の一つの泥が名前の由来となったチョコレートケーキである。

センチュリースターという名前が付いているが、実際のところはセンチュリースターに思いを馳せた人々によって生み出されたケーキで、それ故にセンチュリースター風なのだと彼が語ると、ディネルースはかつての故郷のことを思い起こしたのか、例え人間であってもの故郷に想いを馳せるのだと感じたようで、種族が違っても似ているところはあるのだなと思った模様。

 

そう思いながら、【センチュリースター風マッドケーキ】を食べると、そのまま柔らかな香りの漂うコーヒーを一口飲むディネルース。

【センチュリースター風マッドケーキ】は、チョコレートやファッジなどの濃厚でもったりとした味に加え、その中にあるナッツの食感と軽くて甘いホイップクリームの風味もあってか、彼女の口の中は幸福とも言える状態になっていた。

 

そこに特別にブレンドされたコーヒーの苦みと香りが加わることにより、こってりとしたチョコレートやファッジの甘みが中和され、また一口とばかりに【センチュリースター風マッドケーキ】とコーヒーのマリアージュを楽しんでいた。

 

「お嬢さん、いい食べっぷりだね」

 

微笑みながら店主がそう言うと、そうか?とばかりの顔になるディネルース。

本人は気がついていないのだが、彼女が食事を楽しむ時の顔付きは人間から見てもかなり魅力的なのだとか。

 

そんな店主の言葉に対し、ディネルースもまたフッと笑うと──彼に対し、コーヒーを一口飲んだ後にこう言った。

 

「こんなにも美味しいケーキがあるのなら、そうなるのも致し方ないだろう?」

 

その言葉を聞いた店主は照れるような顔になっていて、シワが刻まれた顔には眩い笑顔が映し出されていた。

 

店主自身は、数十年前までは軍人であった。

家族はとうの昔に亡くなり、自身は軍人として南北戦争に身を投じてきたのだが、大きな傷を負った末に軍を退役してからは戦争から逃げるようにオルクセン連邦へと渡り、そこである程度の金を貯めた後にこの店を開店した。

 

彼自身は、チョコレートやケーキに強い憧れがあった。

それ故に、オルクセン連邦内で出来た友人から教わったレシピを基にしたケーキを──【センチュリースター風マッドケーキ】を作ったところ、まだオルクセン連邦内で黒人達が珍しかったこともあってか、ジャズの音色が流れるその店はあっという間に黒人達の居場所となった。

 

そして、多くの人々に愛されるようになったその店は今現在も営業を続けており、次第に美味しいコーヒーやケーキを求めて魔種族と訪れるようになった。

 

だからこそ、店主は彼女の言葉に照れていたのである。

その様子を見たディネルースは、ジャズの音に耳を傾けながらコーヒーと【センチュリースター風マッドケーキ】を食べ終わると、その代金を払いながら一言

 

「──美味しいケーキとコーヒーをありがとう」

 

と言ったところ、店主はこちらこそとばかりの笑顔を浮かべていた。

 

そして、店を後にしたディネルースの顔には──黒人を含めた国民達のためにも、女王の務めを果たさねばならないという意志と決意が表れており、その想いを胸に鼻歌を歌いながら街中に溶け込んでいったのだった。

 

@YamiDonguri

今日は甘いモノが食べたい気分だったから、ジャズ喫茶で【センチュリースター風マッドケーキ】のコーヒーセットを食べたよ!!

こーゆーケーキって、何気にコーヒーと合うから良いんだよね〜♪

#オルクセン飯




【本日のメニュー】
☆センチュリースター風マッドケーキ
☆特製ブレンドコーヒー
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