闇エルフのお忍びグルメ   作:常夏鳳梨

3 / 7
副題:大地の実りに祝福を

どうも、常夏鳳梨です。
前回はスイーツ回だったので、今回はお酒のおつまみ回です!!
オルクセン王国史のキャラって、何気に酒豪が多そうな気がするなぁ。
あと、今回はとあるキャラが出てきます!!


にんじんフライと白ヴルスト

オルクセン連邦に住まうオーク達は、今も昔もビールが大好きである。

もちろん、最近ではワインやウイスキーなどを好んで飲む者も増えているものの、何かしらのイベントがある度にビールを飲む呑兵衛気味な魔種族が多いため、未だにその人気は根強いものであった。

 

特に、豊穣祭(エルンテンフェルト)と呼ばれる大地の実りに感謝する祭りの時期になると、酒が飲める大義名分が得られるということもあってか、ビールを飲みまくるオーク達の姿がよく見られるようになり、今となってはその中に闇エルフや白エルフが混ざったとしても、何の変哲もない光景として受け入れられていた。

つまり、ある種の平和な光景と言っても過言ではなかった。

 

オルクセン連邦の女王であるディネルースも、国民達と同じように豊穣祭(エルンテンフェルト)を愛していた。

かつて自身が愛したオーク──グスタフ王は、誰よりも大地の実りと豊穣を祝うこの祭を愛していた。

愛していたからこそ、彼女もまたこの豊穣祭(エルンテンフェルト)の時期が来るのを心待ちにしていたのである。

 

ただし、彼女自身は首都ヴィルトシュヴァインにて行われた今年の豊穣祭(エルンテンフェルト)には参加しなかったようで

 

「姉様!!」

「久しぶりだな、グルティナ」

 

今現在の彼女はヴァルダーベルクの駅にて、自身と同じくオルクセンの地へと逃げ延びた闇エルフの一人──グルティナ・モリエンドと顔を合わせていた。

 

グルティナは軍人としてベレリアンド戦争に参加したディネルース達とは違い、このヴァルダーベルクの地にて他の闇エルフと共に農業に励んでいた。

それは今も変わらず、ヴァルダーベルクが農事試験場からオルクセン連邦の中でも屈指の農業地帯となり、農業の勉強をするために実習生として白エルフ達が移住してもなお、彼女は畑仕事を続けていたのである。

それはまるで、どんな場所でも力強く咲き誇る花のように。

 

そんな彼女に対し、ディネルースは自分達とはまた別の強さを持っていると思ったようで、お忍びでグルティナ達と会うついでにヴァルダーベルクにて行われる豊穣祭(エルンテンフェルト)に参加するため、電車を利用する形でこの地にやって来たのである。

 

ちなみに、グルティナはディネルースのSNS垢について知っている数少ない人間なのだが、ちゃんと姉貴分である彼女が身バレしないように口は硬くしているらしい。

 

「姉様が元気そうで良かったです!!」

「それはこっちのセリフだ。お前も元気そうで何よりだよ」

 

グルティナとディネルースはお互いにオルクセンに亡命してきた闇エルフとして、その顔に久々の再会を喜ぶような笑顔を浮かべると、駅の構内からヴァルダーベルクの街へと移動していった。

 

グルティナが暮らすヴァルダーベルクという場所は、ベレリアンド戦争時にはただの農事試験場であった。

しかし、ある年に豊作状態となったニンジンをどうするかで悩みに悩んだ結果、リンゴやオレンジなどの果汁の他に蜂蜜を加えたニンジンジュースを売ったところ、そのジュースが意外にもオークやコボルトを筆頭にした女性達を中心に人気が出たようで、やがてニンジンジュースはヴァルダーベルクの名物となった。

 

その際、彼女達はどんな野菜も工夫次第では美味しいモノになるのだと理解したようで、この出来事を機に野菜を中心にした商品の開発が始まり、グルティナはその中心人物として大いに活躍していた。

 

例えば、ニンジンジュースをベースに数種類のお酒を加えたリキュールに、豆を砂糖などで甘く煮たジャム。

センチュリースター南部のパンのレシピを基にしたトウモロコシのケーキや、甘藷を薄くスライスして揚げたチップス──などなどの商品が開発された結果、ヴァルダーベルク産の野菜や商品を取り扱う大型施設こと、道の駅(ラストホーフ)と呼ばれる店がオープンした。

 

それにより、道の駅(ラストホーフ)を目当てに訪れる観光客はもちろんのこと、その地で採れた野菜を使った料理を提供するレストランが開店したことにより、星歴1025年のヴァルダーベルクは自然豊かで野菜が美味しい街として発展していったのである。

 

そのためか、駅の近くの街には野菜に特化した市場や商店街がこれでもかと並んでおり、それを見たディネルースはかつてのヴァルダーベルクのことを思い出しつつ、グルティナに向けてこう言った。

 

「──ここも随分と変わったな」

「まぁ、ヴィルトシュヴァインに比べたらまだまだですけどね」

 

そう言葉を交わしつつ、二人が辿り着いたのは──駅前に設置された豊穣祭(エルンテンフェルト)の特設会場で、そこでは闇エルフやオーク達の賑やかな声とグラスに並々と注がれたビールと共に、食欲を刺激する料理の匂いが漂っていたため、彼女達がワクワクとした顔になっていたのは言うまでもない。

 

ヴァルダーベルクで行われる豊穣祭(エルンテンフェルト)では、ビールの屋台と同じようにとある屋台が並んでいた。

それは、この地で採れた野菜を使用した料理が食べられる屋台だったのだが、フレンチフライや豆の塩茹でに串に刺さったキュウリのピクルス──といった感じのラインナップであったため、それを見たディネルースはビールが飲みたくなるラインナップだなと思ったとか。

 

そう思っているディネルースを尻目に、グルティナはとある屋台の方に向かったかと思えば、そこでつまみとなる料理とビール瓶を手を持ちながら彼女の下へと戻った。

なお、それを見たディネルースは力持ちにも程があるだろと驚いていた模様。

 

「姉様!!これが今のヴァルダーベルクのオススメの食べ物です!!」

 

【にんじんフライ(エルフサイズ)】

ヴァルダーベルク産のニンジンをこれでもかと味わえる一品

サクッとカリッと揚げたてを召し上がれ!!

 

【白ヴルスト(エルフサイズ)】

新鮮な豚のベーコンを使った白いソーセージ

ハーブの香りと豚の脂の相性は抜群だ!!

 

【ヴァルダーベルクのビール(エルフサイズ)】

ヴァルダーベルクで作られた瓶ビール

その喉越しにオークも唸ること間違いなし!!

 

「ほぉ、とても美味そうな料理だな」

 

グルティナが持ってきた料理に対し、思わずそう呟くディネルース。

それを聞いた彼女はとても嬉しそうにしていて、その頬は少しだけ赤く染まっていた。

そして、木製の簡易的なテーブル席へと移った二人は瓶ビールの蓋を開けると、ヴァルダーベルクの地での再会を祝して乾杯を行った後、そのビールを一口飲んだ。

 

そのビールは喉越しと風味と苦味の絶妙なバランスに保たれていて、今まで数々のビールを飲んできたディネルースにとっては、非常に美味しい酒であった。

そして何より──同郷の闇エルフと共に飲む酒は格別だったようで、彼女達はまさにこの一杯のために生きているとばかりの顔になっていた。

 

「あぁ──美味い!!こんなにも美味いビールは久々に飲んだな!!」

「本当ですか!!」

 

ディネルースの発言に対し、そう嬉しそうに声を上げるグルティナ。

それもそのはずで──何しろ、このビールはヴァルダーベルクの地にて試行錯誤の末に完成した代物であったため、彼女はその苦労を知っているからこそ、そんな反応になっていたのである。

ついでに言えば、つい最近売り出し中の商品なのもあってか、グラティナのその喜びが尋常ではなかったとのこと。

 

一方、ヴァルダーベルクのビールにどハマりしたディネルースは、ビールがおいしいのなら料理も美味しいのだと確信したようで、プラスチックのフォークを使って【にんじんフライ】と【白ヴルスト】を食べ始めていた。

 

衣にビールが混ざられている【にんじんフライ】は、サクッとカリッと食感と共にニンジンの優しい甘みが口の中に広がるのだが、企業秘密のカレー塩の食欲をそそる味付けもあってか、彼女は【にんじんフライ】を食べた直後の口の中にビールを流し込んだ。

 

「──ニンジンを揚げるとこんなにも美味しいのか」

 

彼女の予想通り、その組み合わせに間違いはなかったようで──食べる手が止まらないとばかりに半分以上の【にんじんフライ】を食べた後、今度は白ヴルストを口に入れた。

結果は言わずもがな、美味であった。

 

そして、ビールとの相性も抜群であった。

 

「っ〜!!」

 

ヴァルダーベルクで作られた【白ヴルスト】は、この地で収穫されたものの市場には卸せない甘藷を食べた豚が原材料である。

そのためか、通常の豚と違って非常に美味しい肉となっており、彼女はその脂の肉の甘みの虜になっていた。

 

そもそも、【白ヴルスト】は新鮮な豚肉の背脂やハーブ類などを使用した爽やかな風味が特徴のソーセージである。

ヴァルダーベルクの地で育まれ、製造された美味しいソーセージと美味しいビールが合わないはずもなく、いつしかディネルースはこう思い始めていた。

こんなにも美味い【白ヴルスト】が存在していたのか──と。

 

彼女のその様子を見ていたグルティナは、瓶ビールを飲みつつもニコニコとした顔になっていて、女王ではなくただの闇エルフとして祭りを満喫するディネルースを微笑ましい雰囲気で見守っていた。

 

「【にんじんフライ】も【白ヴルスト】も、このビールとよく合うな」

「ふふっ、そう言っていただけて嬉しいです」

 

そう言った後、最後の一本とばかりに残されていた【にんじんフライ】と【白ヴルスト】を口の中に放り込むと、そのまま瓶ビールを飲み干すディネルース。

それを聞いたグルティナは良かったと言わんばかりの表情になっていて、心なしかホッと一安心していた。

 

ディネルースが女王として即位して以降、グルティナは国の象徴となった彼女のことを心の底から敬い、そして同じ闇エルフとしてたまに心配していた。

だからこそ、こうして彼女がお忍びでここに来ることを楽しみにしており、自分達が築き上げた野菜という名の財産を味わうことを心の底から喜んでいたのである。

 

「去年までは外来種による農作物への被害が酷かったんですけど、今年はハンターさん達のおかげで何とかなりそうです」

「──そうか、それなら良かった」

 

グルティナの言葉に対し、優しい微笑みを顔に浮かべるディネルース。

ここ数年のオルクセン連邦では、他国から持ち込まれた動植物──いわゆる外来種による被害に頭を悩ます農家が増えていた。

故に、その外来種の問題に関する法改正が進んだことによって、最近ではその被害が少しずつではあるが減っていたようで、それを聞いたディネルースはあることを思ったようで、彼女に向けてこう言った。

 

「──そういえば、秋津洲では繁殖力のある葛を加工したお菓子を食べるらしい」

「え!?そうなんですか!?」

 

その後、オルクセン連邦内にて大量発生していたとある植物が減少傾向になるのと同時に、ヴァルダーベルクで一風変わったゼリーが売られ始めたとか。

 

@YamiDonguri

豊穣祭って良いよね、合法的にお酒が飲めるよね

というわけで!!今日はヴァルダーベルクで【にんじんフライ】と【白ヴルスト】をビールと一緒に食べたよ〜!!

ヴァルダーベルク産のビールは良いぞ!!

#オルクセン飯




【本日のメニュー】
☆にんじんフライ
☆白ヴルスト
☆ヴァルダーベルク産ビール
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。