闇エルフのお忍びグルメ   作:常夏鳳梨

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副題:思い出の味はいつまでも

どうも、常夏鳳梨です。
今回の話では、原作でも出てきていたあのサンドイッチに纏わる話です!!
ちなみにこれは本編と関係のない余談ですが、イギリスではスパムは戦時中に飽きるまで食べたモノの一つだったようで、それが後々スパムメールの語源となるコントの元ネタになるのだとか。
コンビーフ、コンビーフ、コンビーフ──


オルクセン風サンドイッチ

ベレリアンド戦争時において、塩漬け肉の加工品であるコンビーフは軍用食の一つであった。

キャメロット軍のスパム程ではないが、それでもある程度はコンビーフを食べる日が多かったようで、戦争後に退役した軍人の中にはコンビーフを見ただけで苦笑いをする者も少なくは無かった。

 

やがて、戦争が終わると今度はコンビーフがエルフィンド内で流通するようになり、そのコンビーフのおかげで命を繋いだ白エルフもそれなりに居た。

と言うのも、質素な食事を好む傾向のある白エルフ達が戦後の時代に突入した直後、栄養失調に近い状態に陥る者も多かったのもあってか、塩味の強いコンビーフは栄養食として受け入れられ、その多くがエルフィンドの土地へと輸入された。

 

当時のことを知る白エルフは、後にこう語った。

コンビーフのあの塩っけと肉の脂の前では、誰だって夢中になって食べるはずである──と。

 

コンビーフに飽き飽きしていたオルクセン側とは異なり、白エルフはある意味でコンビーフに命を救われたことにより、今現在もなおコンビーフに対して特別な思いを抱いていた。

やがて、収容所から戻ってきた元軍人達の白エルフ経由でとある料理がもたらされたことにより、白エルフ達の間でコンビーフ料理文化が花開いた。

 

その料理の名は、【オルクセン風サンドイッチ】。

オルクセン風という名前だが、その正体はベレリアンド戦争時にオルクセン軍がよく食べていた料理こと、コンビーフをピクルスやらマヨネーズソースと共に黒パンで挟んだサンドイッチのことであった。

 

その当時、戦争に敗れたことでオルクセン側の捕虜として収容所に居た彼女達は、労働の後の対価として与えられたコンビーフサンドイッチに感動の涙を流していた。

故郷であるエルフィンドの食事情があまりにも質素すぎたからか、その美味しさに涙を流す白エルフ達の姿を見たオーク達は、食べることが好きな性分であったが故に、逆にそんな彼女達のことを不憫に思ったようで、労働の後に必ずコンビーフサンドイッチを出すようにしたのだとか。

 

その結果、彼女達はその料理を食べたいがために喜んで労働に取り組むようになり、戦後に解放されて故郷に戻ったとしてもその味が忘れられなかったようで、結果として旧エルフィンド内でそのコンビーフサンドを──【オルクセン風サンドイッチ】を売り始めたのである。

幸いなことに、サンドイッチに挟むコンビーフなどの食材はエルフィンドでも手に入るようになったため、オルクセン風サンドイッチの店はあっという間に広まり、多くの白エルフ達の胃袋を満たすようになっていた。

 

やがて、【オルクセン風サンドイッチ】は激動の時代を生きることになった白エルフ達の心の支えとなり、オルクセンの地で生きる白エルフ達の生きる糧のような立ち位置となっていて、今現在でもその味を愛する白エルフ達は少なくなかった。

ちなみにこれは余談ではあるが──コンビーフに命を救われた白エルフ達の中には、自分達の胃袋を満たしたコンビーフに感謝の意味を込めて褒め称える歌を作った者も居たようで、その歌は後にコンビーフ讃歌と呼ばれるようになり、ある意味で国歌に近い立ち位置を得たのだとか。

 

「いらっしゃい!!美味しい【オルクセン風サンドイッチ】はいかが?」

 

それは、一昔前は白エルフ街と呼ばれたオルクセン連邦の首都であるヴィルトシュヴァインの一角にて、【オルクセン風サンドイッチ】を売っていた白エルフの店主も同じだったようで、彼女は今日も今日とてオルクセンに住まう白エルフ達に対し、サンドイッチを売っていた。

白エルフの店主は、後世においては〈まりんこエルフ〉の愛称で親しまれている英雄の部下の一人であった。

 

そのため、ベレリアンド戦争時には故郷であるファルマリアを守るために彼女の指揮の下、オルクセン軍と戦っていた。

ただ、二名の二等少将が事実上の指導者であったハルファン二等少将を殺害した末に逃亡した際は、こんな奴らが指揮官だったのかと絶望する反面、それでもなお前線に立とうとした彼女に敬意と尊敬の念を抱いており、彼女が自決した際は後を追って死のうとしていた。

 

しかし、とあるオークの説得によって他の白エルフ共々それは未遂に終わった。

その後──ベレリアンド戦争が集結するまでの間、彼女は収容所内での無気力のままに労働に取り組んでいたのだが、その際に出会った【オルクセン風サンドイッチ】の味に感動し、それ以降は生きる気力を取り戻したようで、何が何でも生き残ってやる!!という勢いで収容所での生活を乗り切った。

 

戦後、彼女の家族がファルマリアでの一件で行方不明になったのを機に、当時はまだ王都であったヴィルトシュヴァインにある白エルフ街と呼ばれる場所に移住。

そこで労働者として働いていた白エルフ達のために【オルクセン風サンドイッチ】の店を開くと、その店は瞬く間にオルクセンでの暮らしに悪戦苦闘していた白エルフ達の居場所となったのは言うまでもない。

 

彼女の店の【オルクセン風サンドイッチ】は、マヨネーズソースに刻んだホースラディッシュを混ぜるのが特徴で、マヨネーズならではのコクと爽やかな辛味を感じるそのソースにより、コンビーフ本来の塩味と脂が中和され、また一口食べたくなる味付けになっていた。

そのためか、肉体労働をしているが故にガッツリした食事をよく食べていた白エルフ達にとって、この【オルクセン風サンドイッチ】は間違いない味だったようで、開店してから数十年が経った今もなお愛されていた。

 

「すまない、【オルクセン風サンドイッチ】を一つくれ」

「よっしゃ!!毎度ありぃ!!」

 

ベレリアンド戦争から数十年の時が経ち、今の白エルフ達はオルクセン連邦の国民として溶け込んでいた。

それは言い換えれば──闇エルフとの和解の道を歩んでいると言っても過言ではなく、この日の店先には一人の闇エルフが訪れていた。

 

どうやら、時の流れは白エルフに対する憎悪をも洗い流したようで、ここ数年は彼女の店に闇エルフも少しずつではあるが訪れるようになり、今では観光地となった白エルフ街の名店の一つとして知られるようになった。

ただし、当の本人はそのことに対する自覚は無かったとか。

 

一方、【オルクセン風サンドイッチ】を用意する彼女の様子を見ていた闇エルフ──もとい、変装している状態のディネルースは白エルフの店主から包装紙に包まれたサンドイッチを受け取ると、その店内にて【オルクセン風サンドイッチ】を食べ始めていた。

 

【オルクセン風サンドイッチ(エルフサイズ)】

ガッツリ食べたいエルフ向きのコンビーフサンドイッチ

これぞまさしく復興の象徴なり!!

 

「──懐かしい味だな」

 

ディネルース自身は、ベレリアンド戦争の際に定期的にコンビーフを食べまくっていた兵士の一人であった。

けれども、女王となってからはそういった類いのモノを食べる機会が少なくなったがために、その懐かしい塩っけと脂の風味に思わず頬を緩めていた。

 

【オルクセン風サンドイッチ】の具材の一つである爽やかな風味のピクルスや、ピリッと辛いホースラディッシュ入りのマヨネーズソースがコンビーフの濃い味付けを更に美味しくするようで、彼女はこのソースを買いたいと本気で思ったとか。

その様子を見ていた白エルフの店主は、自身の店の料理をこれでもかと美味しく食べているディネルースに対し、満足げにニヤニヤと笑っていた。

 

彼女自身は、ディネルースが退役軍人の方の闇エルフであることを察していた。

だがしかし、収容所やオルクセン連邦での日々が彼女を変えたようで、今の彼女には闇エルフへの差別意識は持ってはいなかった。

だからこそ、例え闇エルフであっても──店にやって来たのなら、客としてもてなす方針にしたのか、サンドイッチを満喫するディネルースを優しく見守っていた。

 

「どうよ、美味しいっしょ?」

「あぁ、美味い。特にホースラディッシュ入りのマヨネーズが美味すぎる」

 

ディネルースがそう言った瞬間、分かりやすく自慢げな顔になる白エルフの店主。

その表情はまさにそこを分かってくれるか!!とばかりの顔になっていて、店内にはコンビーフ讃歌の歌と共に穏やかな空気が流れ始めていた。

 

そして、店主はサービスとばかりに白エルフ街でよく飲まれているジンジャーエールを差し出すと、ディネルースに向けてこう言った。

 

「アタシ的にはオルクセン産のコンビーフが好きなのよ。だから、そのコンビーフに合うソースを作ったってわけ」

「なるほど──では、このソースはわざわざオルクセン産のコンビーフのためだけに生み出したのか」

 

ディネルースがそう言うと、ニパッと笑う白エルフの店主。

それを見た彼女は、美味しいモノがあれば差別偏見など無くなるのだと思ったようで、料理の力は凄いなと思いながらジンジャーエールを飲んでいた。

 

【白エルフ街の甘口ジンジャーエール(エルフサイズ)】

白エルフ街で製造されている炭酸飲料

ジンジャーエールではあるけれども甘口らしい

 

彼女が渡してきたジンジャーエールは、白エルフ街で暮らしている白エルフ達がよく飲んでいる飲み物で、これは酒に弱い上に辛いモノが苦手な白エルフ達のために開発されたモノであった。

だが、意外にも白エルフの他に酒が苦手なオーク達にも人気が出たようで、今では店頭販売の他にネット販売も始めたらしいのだが──意外にも、その【ジンジャーエール】の味と【オルクセン産サンドイッチ】の組み合わせは最高だったようで、ディネルースは酒を飲む感覚でグビグビと飲んでいた。

 

その時、店内に白エルフ達が入って来たのだが──その際、彼女達は店主を発見したかと思えば、そのままこう言った。

 

「姉さん!!ここにピットブル系のコボルトが来なかった!?」

「んなもん、今日は見てないけど」

 

店主がそう言った瞬間、二人の白エルフはどうしようとばかりの顔になっていて、それを見た白エルフの店主とディネルースは厄介な事件の気配がしたのか、面倒な事が置かなければいいなと思っていた。

ただし、その予想は大きく外れたようで──そんな会話をした数秒後には白エルフ街にこんな怒号が響いていた。

 

「おいコラ!!待て!!」

「誰か!!このコボルトを捕まえろ!!」

 

それを聞いた白エルフの店主は、久々に騒がしくなった白エルフ街の様子を見ようと思ったのか、そのまま店の外に出ていた。

すると、その彼女に前に現れたのは──何かが入ったカバンが白エルフの警察に追いかけられているピットブル系のコボルトであった。

 

その様子を見た白エルフの店主は、ピットブル系コボルトに向けて勢いよくラリアットをする形で足止めすると、そのままチョークスリーパーをする形で拘束していた。

けれども、元軍人である店主のチョークスリーパーなだけあって、その力は尋常ではなかった模様。

 

「おいテメェ!!何で逃げたんだよ!?」

「姉さん!!そいつ合成薬物の売人なの!!だから、しっかり抑えててね!!」

「おうよ!!」

 

白エルフ街にて発生した事件を目撃したディネルースは、合成薬物と聞いて嫌な予感がいたのか、【ジンジャーエール】を片手に【オルクセン風サンドイッチ】を完食すると、そのままどこかに連絡を入れる形でその場を立ち去った。

それを見た白エルフの店主は、白エルフ街から移動する彼女の後ろ姿を見送った後、再び店の中へと戻っていった。

 

その後、この摘発を機にオルクセン連邦内での違法な合成薬物の取り締まりが厳しくなり──あのコボルトが持っていた合法薬物をキッカケにとある国家に纏わる闇が暴かれ、結果として世界を揺るがす大ニュースになったのだが、それはまた別の話である。

 

@YamiDonguri

ヴィルトシュヴァインの白エルフ街なう♪

#オルクセン飯




【本日のメニュー】
☆オルクセン風サンドイッチ(コンビーフサンドイッチ)
☆白エルフ街の甘口ジンジャーエール
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