闇エルフのお忍びグルメ   作:常夏鳳梨

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副題:浪漫漂う海軍飯

どうも、常夏鳳梨です。
今回はカリーヴルストがあるならこれもありじゃね?的なノリで書いたやつになります。
ちなみに、ライスフライシュはチキンライスorリゾットに似た料理なのだとか。
カレーは良いぞ、美味しいぞ。


海軍風ライスフライシュ

星歴1025年の11月──秋と冬の境目が曖昧となる季節になってきた頃、ディネルースはオルクセン北部にある港街に来ていた。

その街は世間一般的に言うところの造船の街であるが故に、オルクセン国内では海軍のお膝元として知られていたからか、街にはオルクセン海軍に関する博物館があった。

 

だからなのか、長期休みのシーズンになるとオルクセン国内外の軍艦・戦艦好きが集まる街として知られていて、今ではそれなりに知名度がある観光地として有名になっていた。

それに加え、その博物館内にあるレストランでとある料理を食べられるためか、それを目当てに博物館を訪れる観光客も多く居たため、今現在の博物館はたくさんの人々で賑わっていた。

 

そんな人々の姿を見たディネルースは、いつの時代もそういうのが好きなんだなと思いつつ、博物館内で行われているとある企画展に足を運んでいた。

その企画展は、かつてエルフィンド軍が保有していた装甲巡洋艦──リョースタとスヴェルタに関する企画展で、魔種族を含めた多くの人々で溢れかえっていたのは言うまでもない。

 

「ふぅむ──これがあのリョースタとスヴェルタか」

 

博物館の特設会場に置かれている展示の数々に対し、そう声を漏らすディネルース。

 

このリョースタとスヴェルタに纏わる企画展では、今となっては貴重な資料となっている設計図の他、その姿を正確に模した上でミニチュア化したモノや、ベレリアンド戦争時に船員として乗っていた白エルフ達のインタビュー。

そして、この二隻が沈んだとされている海域の調査映像などがあり、ディネルースはそれを熱心な様子で見ていた。

 

と言うのも、陸での戦いに参加していたディネルースにとって、海での戦いはあくまで耳に入った情報としか認知してはいなかった。

──少なくとも、シュヴェーリン経由でとあるゲームに纏わる頼み事をされるまでは。

 

そのゲームは、いわゆるベレリアンド戦争を含めた様々な戦争で活躍した戦艦を美少女化したゲームで、元々は秋津洲のゲームではあったものの、オルクセン連邦内での人気が根強いためにリョースタとスヴェルタの企画展が開催されることが決まった際、博物館の公式アカウントはそのことをSNS経由で告知していた。

そして、そのゲームにハマっていたオルクセンの英雄──アロイジウス・シュヴェーリンは企画展に行こうとしたものの、急にギックリ腰になったがために断念。

 

シュヴェーリン経由でそのゲームを知っていたディネルースは、泣く泣く博物館に行けなくなった彼に変わる形にて、美少女エルフ化したリョースタとスヴェルタのグッズを購入するため、この企画展に来たのだとか。

ちなみに、当のシュヴェーリン本人は次のコラボ企画展に備える形で療養していたらしい。

 

その企画展にて、美少女エルフ化したリョースタとスヴェルタの等身大パネルを見たディネルースは、あまりの美少女っぷりに対してマジかと思う反面、そのキャラデザに対して素直に凝ってるなと思っていた。

そもそも、ディネルース自身がそういうのに対して嫌悪感をあまり抱いてはいなかったため、むしろ興味関心すら抱いていたのだった。

 

ただ、亡き夫(グスタフ)関連のことになると結構厳しくなるとのこと。

 

「にしても──まさか、あのリョースタとスヴェルタがここまで人気になるとはな」

 

ベレリアンド戦争時のオルクセン軍において、リョースタとスヴェルタという船は対エルフィンド戦における脅威であり、越えなければならない高い壁であった。

 

その当時は恐ろしい敵とも言える船だったものの、それは昔の話。

ベレリアンド戦争から100年以上が経過した今となっては、リョースタとスヴェルタの存在や逸話は映画やゲームなどの題材となり、それなりの人気を誇っていた。

 

しかしながら、ディネルース自身は最強と謳われた二隻の装甲巡洋艦が──リョースタとスヴェルタが美少女風味なエルフになるとは思ってもいなかったのか、等身大パネルを見た時は一瞬だけポカーンとしていた。

けれども、それと同時に軍艦を美少女エルフ化するまでに世界は平和なのだと理解したようで、その顔には時代の流れは早いなと感じるような表情が映っていた。

 

「さて、グッズ売り場は──ここか!!」

 

そう呟いた後、企画展の会場からグッズ売り場へと向かうディネルース。

博物館のグッズ売り場には、オルクセン軍が保有する軍艦関係のグッズはもちろんのこと、リョースタとスヴェルタの限定グッズもあり、その中にお目当てのグッズを確認したディネルースは、シュヴェーリン用にいくつか購入した後、そのまま売り場を後にした。

 

その途中で美少女エルフ化したリョースタ、スヴェルタの写真スポットがあったため、シュヴェーリン用にということでディネルースは写真用パネルの写真を撮った後、それを彼のメールに送った。

なお、その写真を見た彼は本気で行きたかった!!とばかりのようになった模様。

 

当たり前だが、そんなことなど知らないディネルースはしばらく博物館内を歩いていたのだが

 

「──む?」

 

博物館内にあるレストラン前にて、【海軍風ライスフライシュ】と書かれた黒板を発見したため、彼女は思わず立ち止まっていた。

──その顔に食べたいとばかりの表情を浮かべる形で。

 

ライスフライシュとは、オルクセンでよく食べられているリゾットのようなモノである。

主に、具材と共に炒めた後にスープで煮込む形で作られる料理なのだが、この国においては家庭料理と位置付けられており、各家庭によっては具材も味付けも異なる物として認識されていた。

 

ただ、【海軍風ライスフライシュ】は普通のライスフライシュとは違い──ヴルストや細かく刻まれた野菜などの具材に加え、スパイスの風味が香るカレースープで作られるためか、それなら辛い上にそれなりにボリューミーな一品として知られていた。

 

なので、海軍として務めている軍人達の間では大変好評なメニューなためか、主に軍艦をメインに取り合っているこの博物館のレストランのメニューに入っていたのである。

そのためか、そのメニューを目にした良い腹ごなしになるだろうなと思いつつ、そのレストランに入るのだった。

 

「いらっしゃいませ!!」

 

そんなドワーフの店員の声と共にレストランの中に入ると、そのまま綺麗な海が見える席に座るディネルース。

レストラン内にはリョースタ・スヴェルタなどの展示を見たであろう人々で溢れかえっており、それを見た彼女はいつの時代もそういうのが好きな輩は多いのだなと思ったとか。

 

そのレストランの窓からは、カモメなどの海鳥が海を背景に悠々飛ぶ姿の他に、博物館の近くの公園を歩く人々の姿が見えたため、それを見たディネルースはここも随分と賑やかになったなと思っていた。

と言うのも、彼女自身がこの博物館のテープカットをした一人でもあるため、そう思うのも無理はなかった。

 

そして、その数分後にやって来た店員に対し、ディネルースはこれが食べたいとばかりにこう言った。

 

「とりあえず、海軍風ライスフライシュを頼む」

 

そういうわけで、海を眺めながら【海軍風ライスフライシュ】を待っていたディネルースは、海軍絡みのことであることを思い出していた。

 

ベレリアンド戦争が終結し、第一次星欧大戦が勃発する約一年前──ディネルースはその当時の秋津洲の海軍を視察するため、夫であるグスタフと共に道洋を訪れていた。

その際、海上でも曜日感覚を失わないためにと言う理由でカレーを食べている秋津洲の海軍に対し、ディネルースは衝撃を受けていたのに対し、当のグスタフは驚くことなくこう言った。

 

〈海軍カレー、か〉

 

それから何週間か経った頃に生まれた料理こそが、【海軍風ライスフライシュ】であった。

 

この料理は、特に海軍に勤めていたドワーフ達からの評判がかなり良く、【海軍風ライスフライシュ】が提供される日のドワーフの興奮っぷりはお察しである。

ついでに言えば、この料理はオーク達からも好評なのだとか。

 

ディネルース自身は、海軍内でこの料理が普及したことに彼が一枚噛んでいることは察していた。

察していたからこそ、あえて【海軍風ライスフライシュ】を注文したのである。

 

「お待たせしました!!【海軍風ライスフライシュ】です!!」

 

その数分後、彼女のいるテーブルに置かれたのは──カレーの匂いが香る黄金色の米料理こと【海軍風ライスフライシュ】で、その匂いを嗅いだディネルースの食欲が自然と刺激されたのは言うまでもない。

 

【海軍風ライスフライシュ(エルフサイズ)】

カレーの風味がアクセントの海軍飯!!

大きめに切ったヴルストと共にワイルドにかき込め!!

 

「──良い香りがするな」

 

カレーの匂いに魅了された様子でそう呟いた後、そのまま【海軍風ライスフライシュ】を一口食べるディネルース。

 

複数のスパイスが調合されたことにより、複雑に絡み合うカレーの辛みと香り。

そこに肉々しい味が溢れ出るヴルストや、みじん切りにされた野菜とライスの甘みも加わることにより、完成するのは一つの美味なる料理。

そう、これこそが真の意味での病みつきになる味なのである。

 

「あぁ──これは美味いな」

 

だからなのかは分からないものの、ディネルースは美味しそうに【海軍風ライスフライシュ】を食べており、その脳裏には宮殿の厨房にてキャメロット風カレーを作っていた夫の姿が──グスタフ・ファルケンハインの姿が映し出されていた。

 

秋津洲の海軍カレー文化は、元々キャメロットから伝来した物とされている。

そして、この【海軍風ライスフライシュ】はその海軍カレーを基に独自のアレンジした料理であった。

 

そのためか、ディネルースは文化という物はこのように作られていくものなのだと思う反面、この料理をグスタフと共に食べたかったなと思ったようで、ほんの少しだけ寂しさを感じていた。

 

そういえば、彼はキャメロットのカレーよりも秋津洲のカレーが好きだったな。

そんなことを考えつつ、思い出に浸りながら【海軍風ライスフライシュ】を完食するディネルース。

 

その直後、海を眺めていた彼女の目に映っていたのは──公園のベンチに仲良く座っているカップルの姿だったのだが、そのカップルはオークと白エルフの異種族同士であったため、それを見たディネルースはこう思った。

世界情勢が複雑化していく中でも、あの頃の自分達のように愛は育まれていっているのだと。

 

「さてと──私も腹ごなしにブラッと散歩でもするか」

 

そう呟いた後、代金を払う形で店を後にするディネルース。

そして、海からやって来たであろう爽やかな潮風に吹かれつつ、彼女は今日も今日とて頑張っているであろう海軍に対し、敬意を払うかのようなポーズをしていた。

 

もちろん、シュヴェーリンへのお土産は忘れなかったようで──お土産を貰った彼が予想以上に喜んだのを見た彼女は、また長生きしそうだなと思ったらしい。

 

@YamiDonguri

今日は博物館でリョースタ・スヴェルタを見たついでに【海軍風ライスフライシュ】を食べたよ!!

やっぱカレー味しか勝たん!!

#オルクセン飯




【本日のメニュー】
☆海軍風ライスフライシュ
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