俺は普通の高校生なので、   作:雨ノ千雨

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1章12 Out of Gate ②

 

 スマホを操作してメッセンジャーアプリであるedgeを使い、特に意味もないスタンプを特別な相手と送り合う。

 

 たったそれだけのことで、無為な時間すら特別なものになる。

 

 

 そのはずなのに、大好きな親友の愛苗ちゃんとコミュニケーションをしたのに、希咲 七海(きさき ななみ)はどこか浮かない気分だ。

 

 それどころか、むしろ彼女は激しくイライラしている。

 

 

 それは――なにか用事にとりかかったのか――少し前から水無瀬からの返信スタンプが途切れたことだけが理由ではない。

 

 

 というのも――

 

 

 

「――だからよぉ、言ってんだろぉ? とりあえずベロつっこんでカキ回してやりゃあいいんだよ!」

 

「ギャハハハハッ! マジかよ“サータリ”!」

「やっぱ“サータリ”くんはサスガだよなっ!」

「ちくしょう! 俺らも行けばよかったぜ!」

 

「こういうのはよ、気合いがダイジなんだよ。とりあえず強気に出ときゃいいんだよ」

 

「……そういや、強気といえばよ……このままでいいのかよ、“サータリ”くん?」

 

「あぁ? どうしたヒデ?」

 

「どうもこうもねーぜ! “モスケ”のヤローだよ!」

 

「なんだぁ? ヤローがなんだってんだ?」

 

「あのヤロー最近チョーシこきすぎだぜ! 聞くところによるとよぉ、あいつ“サータリ”くんに上等くれてたらしいぜ!」

 

「…………ほぉ」

 

「オレぁ許せねえよ! あのヤロー、“サータリ”くんがヤるってんならいつでもヤってやるってフキあがってるみてえなんだ!」

「あぁっ⁉ そりゃマブかよヒデェっ!」

「ナメやがってあのクソガキャァ!」

 

「……あいつも随分エラくなったもんじゃねーか」

 

「頼むよ“サータリ”くん! あのガキ、シメてくれよ!」

「おぉ! ヤっちまおうぜ“サータリ”! オメーがヤんならオレもヤるぜ!」

「そうだぜ! オメーらがヤるってんならオレもヤるぜ!」

 

「まぁまぁ、落ち着けよオメーら」

 

「“サータリ”くん⁉」

「テメー! ビビってんのかよ“サータリィ”!」

「テメーがシキれねえってんならオレがシキってやってもいいんだぜ⁉」

 

「だから落ち着けって。誰もイモひくなんて言ってねーだろ?」

 

「どういうことなんだよ、“サータリくん”⁉」

 

「いいか? “モスケ”のヤローはシメる。が、それは今すぐじゃあねえ」

 

「だからなんでなんだよ⁉」

 

「キレんなよコーイチィ。まぁ聞けって。あのな? ちょっとムカついたからってソッコーでボコりにいくとかそんなのは三下のすることだぜ? こういうのはよ、先にケンカ売った方がダセェんだ。ヨユーのねえヤつほどすぐにキレっだろ? わかるよな? “カク”が下がるっつーかよ」

 

「お、おぉ……なんか大物っぽいぜ!」

「カ、カッケーよ、“サータリ”くん!」

「ま、まぁ? オレはわかってたけどよ……」

 

「とはいえだ。直接ケンカ売られたらもちろんそん時はオレも黙ってねえ。“モスケ”のヤローがよ、どうしてもこのオレとヤるってんならぁいつでもタイマンはってやんよ!」

 

「そん時はオレもヤるぜ!」

「オレも連れてけよ!」

「“サトル”のヤローはオレに任してくれよな! “サータリ”くん!」

 

「……へっ。オメーら……。オレはいいダチを持ったぜ。ま、そういうわけだからよ、オメーらもバンっと構えておいて、その時が来たらオレに“イノチ”預けてくれや! 頼むぜ‼‼」

 

 

「――うるさーーーーーーいっ‼‼」

 

 

 サータリの呼びかけに仲間たちが「応」と威勢よく応えようとしたが、その声をあげる前に横合いから非難の大声があがる。

 

 仲間同士で友情を確かめ合っていた時に突然希咲に大声で怒鳴られた彼らは驚き、その目を一斉に彼女へと向けた。

 

 

「あんたたちなんなの⁉ わざわざ人の近くにたむろって、大声でサイテーな会話しないでよ! クッソうざいんだけど!」

 

 

 もう何を話しかけられても無視するからとっとと何処かへ行けと、少し前に希咲が彼らに告げよもや一触即発かというような剣呑な雰囲気になった。

 

 しかし不良たちは、希咲に対して実力行使に出るわけでもなく勿論どこかへ行くわけでもなく、ただガードレールに腰掛ける希咲の近くに座り込んで「あーでもないこーでもない」と何の意味もないどうでもいい駄弁りの時を仲間たちと共有していた。

 

 

 しかし、それは特別に想い合う者同士だからこそ楽しめるものであり、何の関係もない他人からしてみたら、そんなものをすぐ間近で聞かされるのは苦痛以外のなにものでもない。

 

 

 つまりは、嫌がらせだった。

 

 

「どっか行けって行ったでしょ⁉ あんたたちの話、聴いてるだけでイライラしてくるんだけど!」

 

「なんだぁ? オレらと話したくなったのかぁ? 何言われても無視するとも言ってたよなぁ?」

 

「クソウゼー」

 

 

 希咲が反応を示してくれたことで彼らは嬉しそうにニヤニヤとした笑みを浮かべ煽りにかかるが、想定していたよりもずっと低い声がかえってきて、さらに彼女の眼光が強烈だったために、ウンコ座りをしたままジリジリと僅かに後退った。

 

 

「待ち合わせしてるって言ったでしょ。あんたらなんかと絡んでるとこ見られたくないのよ。何回も言わせんな」

 

「あぁ、オトコ待ってんだろ? オレが見極めてやんよ。オメーに似合わねえ、しょーもねーダサ坊だったら別れさせてやんよ」

 

「はぁ? キショ。余計なお世話っつーか、あんたなんかに首つっこまれる筋合いないんだけど? 言ったでしょ? あんたごとき名前も覚えてないって」

 

 

 言い捨てて、しかし言葉とは裏腹に内心で面倒なことになったと舌を打つ。

 

 

 目の前の連中に遊びに誘われて、待ち合わせをしているからと言って断った。人を待っているのは嘘ではない。

 

 そうしたら、待ち人は女友達だと思われ、その人たちも一緒に遊びに行こうと誘われた。

 

 万が一ここに居る自分に、下校してきた知り合いや友達の女の子たちが通りがかりに声をかけてきて、その彼女らが待ち人だと誤解をされこの状況に巻き込んでしまうことを避けるために、待っているのは男子生徒だと伝えた。そして、それも嘘ではない。

 

 

「覚えてねえことはねーだろうが! 合コンの時にオレのケーバンとID書いたメモ渡しただろうがよ!」

 

 

 こういった手合いに現在のように下心満載で絡まれるのは、希咲にとっては割とよくあることではある。

 

 しかし、その中でもこの連中は何をそんなに自分に執着してくるのか、見かける度にしつこくしてくる。

 

 本音を言えば、いい加減に目障りだ。

 

 

 だが、それよりも今の問題は、この後この場に来るであろう待ち人とこの連中を絶対に関わらせたくないことである。

 

 ある意味で、女友達たちよりも『あいつ』とこいつらを鉢合わせることの方がよっぽど憚られる。

 

 そしてさらにしくじったのが、待ち人が『彼氏』であると言ってしまったことだ。

 

 

 手っ取り早く諦めさせて追い払うために、待っているのは『彼氏』だと嘘を吐いたのだが、まさかここまで強硬手段にでる程に自分に執着をしているとまでは思っていなかった。

 

『あいつ』とこいつらが遭遇するだけでも面倒そうなのに、さらにアレと付き合っていると思われるのは非常によろしくない。自分にとっては致命的だ。

 

 

 自分が吐いた嘘のせいではあるが、どうも悪手というか裏目というか、昨日から調子がよくない。

 

 

「こ、ここでシカトかよ……っ! このアマどこまでもナメくさりやがって……!」

 

 

 本当に面倒なことになったと頭を抱えたくもなるが、あまり悠長なこともしていられない。

 

 

 待ち人が来るまで、恐らくもうそこまでの時間の猶予はないだろう。

 

 彼が現れるまでにはこの連中を退場させねばならない。

 

 そうしなければ、きっと今よりももっと面倒なことになる。

 

 

「オイ、テメェっ! 聞いてんのかよ!」

 

 

(あまり形振り構ってもいられないわね……)

 

 

 そう切り替える。

 

 

「うっさいわね。聴こえてるわよ。汚い声で怒鳴るな」

 

「ナ、ナメやがって。テメェ、昨日もシカトしやがったよなぁ?」

 

「昨日? なんのこと?」

 

「バックレてんじゃねえぞ! 昨日カラオケ屋の前で声かけただろうが!」

 

「はぁ? 知らねーってば。あと、なんだっけ? メモ……? あんたの番号とか登録するわけないし、IDもソッコーでブロックしたっつーの」

 

 

 目論みどおり、ちょっと煽ってみたらわかりやすく彼らの表情に苛立ちや怒りが表れ始める。

 

 先程は随分と厭らしい嫌がらせを仕掛けてきたが、昨日絡んできた法廷院 擁護(ほうていいん まもる)たち程には性格も人格も捻じ曲がってはいないようで直情的で助かると、その点においては幸いだと感じる。

 

 決して感謝はしないが。

 

 

「……オマエ…………女だからって何でも許されると思うなよ?」

 

「あんたこそ。不良ぶってればビビってみんな言うこと聞くとでも思ってんの? それで許されてると勘違いしてるとか、バッカじゃないの?」

 

「あぁっ⁉ んだコラ、このクソアマぁっ!」

 

「うるさい。声のデカさだけはいっちょまえね。つか、マジでどっかいけ。優しく言ってあげるのはこれで最後よ。痛い目見てから泣いて後悔したいわけ?」

 

「ふざけんなボケがぁっ! 随分強気にでるじゃねえか、ええおい? テメェ、男4人相手に上等こくたぁいくらなんでもチョーシのりすぎじゃあねえのか? あぁ?」

 

 

 希咲の物言いにいよいよ男たちも激昂し始める。

 

 

「あんたこそ。そんなイキがってもいいの? 弱っちいくせに」

 

「あぁ⁉ 誰が弱いってぇっ⁉」

 

 

 ついには立ち上がった彼らから暴力の雰囲気が伝わってくる。

 

 

 しかし、希咲はそれに全く臆することなく、少し表情を和らげて自身の顎を指でちょんちょんと指しながらコテンと首を傾げてみせる。

 

 

「あんた。D組の猿渡、だっけ? アゴ、だいじょぶ? 昨日“いいの”もらって道でひっくり返ってたわよね?」

 

「テ、テメェ……! 見てやがって…………つーか、やっぱ気付いてたんじゃねーか!」

 

「あんだけみっともなく騒いでりゃ嫌でも目に入るっつの。恥かきたくないんなら大人しくしてなさいよ。ザコいんだから」

 

「……おい、テメェら…………」

 

 

 仲間に目で合図を送り、彼らは希咲を包囲するように位置取りをする。

 

 今回はさっきのように遠回しな嫌がらせなどしてこないだろう。

 

 彼らの目は誰が見てもわかるほどに“キレて”いる。

 

 

 希咲としても退くつもりは更々ない。

 

 

 この後のことを考えてもそうだし、目に余る程にしつこい彼らをいい加減露払いもしてしまうつもりだ。

 

 

 それは酷く効率がいい。

 

 そう思うことにしてトドメを刺しにいく。

 

 

 顎を指差していた手を、今度その細長い指を揃えて口元に添えてクスクスと露骨にバカにするように嘲笑いながら言ってやる。

 

 

「いいのぉ~? そんな強気に出ちゃってぇ? 昨日みたいにぶっとばされちゃうよぉ~? ちっちゃい子に投げられたヌイグルミみたいにポイってされてたよねぇ~? ぷぷっ、だっさぁ~い」

 

 

「テメー、オワッタぞ? クスリ漬けにしてマワしてやるよ! 泣きながらツッコんでくださいってオレにコンガンするようにしてやる……っ!」

 

 

「ハッ……! 上等よ。泣きながら『おクスリくださーい』って病院に駆けこむのはあんたらだっつーの」

 

 

 威勢よく啖呵を切りながら思考の裏側で遠い目になる。

 

 

 自分からこう仕向けたものの、そもそも自分は不良でもないし、おまけに普通の女の子だ。

 

 

 それなのに何故このような連中とバトルのようなものを往来でしなければならないのか。それも二日連続で。

 

 

 思い悩みそうになる正気の自分を押し込めるために、思考に必要なリソースを戦闘用のそれに明け渡す。

 

 

 とりあえず、ぶちのめしてから後で悩めばいい。

 

 

 まるで“誰かさん”のような考え方だと心中で苦笑いをした。

 

 

 

 

 さて、どう始末をつけるか――

 

 

 周囲に展開する敵を視界に捉えて、希咲はごく小さく唇を舐める。

 

 

 とはいえ、ガラの悪い男4人を向こうにまわして、希咲はまったく危機感を抱いていなかった。

 

 どうとでもなる。

 

 そのように考えているため、怒りに目を血走らせた複数名の男たちがジリジリと間合いを詰めてきていても、未だにガードレールに尻をのせたままだ。

 

 

 その余裕を感じさせるような態度がさらに男たちの怒りを加速させるが、それは同時に冷静さも削っていく。

 

 そう仕向ける為に過剰にバカにして煽ってやったのだ。

 

 

 幼馴染である天津 真刀錵(あまつ まどか)のように、相手のベストを引き出した上での尋常な勝負を――などといった嗜好は希咲にはない。

 

 

 正気を失った暴徒となる寸前といった具合の憤怒を浮かべた表情。

 

 仮に彼らに負けた場合には自分はただでは済まないだろう。

 

 だが、決して自分にとって彼らは脅威にはなり得ない。

 

 

 多少は喧嘩をした経験くらいはあるのだろうが、例えば昨日対峙した『弱者の剣(ナイーヴ・ナーシング)』の高杉 源正(たかすぎ もとまさ)のように何らかの技術を習得しているようには見えないし、例えば昨日やり合った弥堂 優輝(びとう ゆうき)のように多くの時間を闘争の中に身を置いて過ごしてきたといった雰囲気もない。

 

 4人同時に相手をしても十分に捌けるだろう。

 

 

 とはいえ、油断はしない。

 

 

 昨日の『弱者の剣(ナイーヴ・ナーシング)』も弥堂 優輝も十分に捌ける相手だったはずなのに後れをとってしまった。

 

 寝る前に思い出して半ベソかきながら反省をしたのだ。

 

 同じ轍は踏まない。

 

 

 気を引き締めると同時に浮かび上がりそうになった昨日の『嫌なこと』を振り払うように、トレードマークであるサイドテールを片手で後ろへ振り払う。

 

 

 しかし、そうしようとして耳の上に持って行った手に想定していた感触がなく空振りしかけたので動作を途中でやめる。

 

 そういえば弥堂のせいで現在はいつもの髪型ではなく、水無瀬のようにゆるくおさげにしていたのだったと思い出した。

 

 中途半端に上げた手で誤魔化すようにおさげをイジイジする。

 

 

「な、なんだ……⁉ テメェなんのつもりだ……?」

 

 

 すると、いきなり手を上げて何をするでもなく下ろした希咲の仕草を警戒したのか、彼らは足を止めて睨みつけてくる。

 

 

「……ハッ――なぁに? ビビってんの? カッコわる~い」

 

 

 自分の仕出かしたちょっとした『うっかり』を悟られぬよう、ブラフ半分、照れ隠し半分でこれみよがしに鼻を鳴らして嘲ってやる。

 

 

 ガードレールに腰掛けながら盛大に見下してくる希咲の態度に、不良たちは怒り狂う――ことはなかった。

 

 

「ゔっ――⁉」

 

 

 呻いたのは希咲だ。

 

 

 今しがた誤魔化すような真似をしたせいか、無意識の仕草で足を組み替えた希咲の下半身に彼らの目玉がギンっと一斉に集中したからだ。

 

 

(お……男ってホント……バカ…………っ!)

 

 

 お前ら怒ってたんじゃねーのか。

 

 今すぐ殴りかかりたいほどに怒り狂ってたんじゃねーのか。

 

 これからケンカしようって相手のスカートがそんなに気になるのか。

 

 てゆーか危なかった。さっきあいつらがしゃがんでる時にやってたら下着見られてた。

 

 

 と、希咲は頭を抱えそうになる。

 

 

 

 男というものは、時に性欲が怒りを凌駕する。

 

 

 わかってはいたが、彼らへの呆れと軽蔑の気持ちを強めると同時に、こんな連中と揉めている自分も酷く低俗なのではないかと情けなくなってくる。

 

 

 思わず漏れ出そうになる溜め息を意識して留めた。

 

 

 ここで脱力してはいけない。

 

 

 スカートといえば――と思い出すまでもなく、昨日とんでもなくヒドイ目に合わされたばかりだ。

 

 

(弥堂めえぇぇっ……! 許さないんだから……っ!)

 

 

 気が抜けてしまいそうだったところを弥堂への怒りを燃やすことで、それを目の前の彼らへぶつけようと無理やり戦闘用のテンションを保とうとする。

 

 弥堂に対しても彼らに対しても八つ当たりな気がしたが、気がしただけならきっと気のせいだ。

 

 

 そこで、『そうだ。弥堂といえば……』と思い当たり、少し試してみることにする。

 

 

「んんっ」と喉と気持ちを整えてから唇を動かす。

 

 

 

「――見たい?」

 

 

「……あ?」

 

 

 

 言っている意味がわからないと怪訝そうな顔をする彼らの前に、ここでようやくガードレールから尻を離して立つ。

 

 

「見たいの? って聞いてるんだけど?」

 

「見たいって……なんのことだ……?」

 

「だからぁ…………こぉ・こっ」

 

「へっ……? はぁ…………っ⁉」

 

 

 自身のスカートに真っ直ぐ伸ばした綺麗な人差し指を当てて指し示しながらコテンを首を傾げてみせる希咲の、その蠱惑的で妖艶な仕草に男たちは動揺した。

 

 

「今見てたでしょ? あたしの、ここ。見たいのかなって」

 

「はぁっ⁉ みっみみみみみ見てねえしっ!」

 

「そ?」

 

 

 あれだけ下心丸出しに振舞うくせにそこは否定するのは、何かしらのプライドのようなものが彼らにもあるのだろうか。

 

 

(てゆーか、あんだけロコツに見てきて気付かないわけないでしょ)

 

 

 心中で胡乱な瞳になりながら、表の顏には出さぬようにして演技を続ける。

 

 

「じゃあ、見たくないんだ?」

 

「あっ……あ?」

 

「だからぁ…………」

 

 

 勿体ぶるように声を伸ばしながら、スカートの表面を指で下方向になぞっていくと、男たちの視線がその指の動きに釘付けになる。

 

 

 その指はやがて衣服と素肌との境界となる裾にまで辿り着くと、第一関節分だけその境界を越えた。

 

 

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