俺は普通の高校生なので、   作:雨ノ千雨

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1章30 nothing day ③

 

「あぁーー、焦ったぁーーっ!」

 

 

 教室で即席の食卓を級友と囲みながら、早乙女が机に上体を投げ出す。

 

 

「ののか、行儀わるい」

 

「だってさぁー、マホマホーっ!」

 

 

 日下部さんに注意をされるも改める気はないようで、口に咥えたままのサンドイッチをむぐむぐと齧った。

 

 

「まぁ、気持ちはわかるけどね。まさか初日から絡んでくるとは思ってなかったよ……」

 

「あ、あの、ごめんね……? 多分私の授業態度がよくなかったから、ダメだよって言ってくれたんだと思うの……」

 

「まなぴーってばポジシンすぎるよ」

 

「ポジティブシンキングをそうやって略してるの初めて聞いた」

 

「でも通じてるからよくないー?」

 

「愛苗ちゃんは何も悪くないわ。あいつらの頭が悪いのがいけないのよ」

 

「小夜子がそうやって煽ったからでしょ」

 

「楓が止めなければ、もっとお姉ちゃんのカッコイイところ見せてあげられたのに……」

 

「でもでも、煽りといえば弥堂くんだよねー。ののかヤベェっておしっこ漏れそうになっちゃったよ」

 

「……女子の事情というか関係性とか知らないはずなのに、的確に抉ったよね……」

 

「フフ……、私はとても面白かったわ。もうちょっと続きが見たかったわね」

 

「もう小夜子ったら。そんな風に考えちゃダメだよ。みんなクラスメイトなんだから」

 

「あら、楓。それを言うのなら弥堂君にも同じことを注意するべきじゃない? ねぇ? 愛苗ちゃん」

 

「あははー。弥堂君は真面目だから……」

 

「う、うん。弥堂くんはいっしょうけんめいなの……っ」

 

「野崎さんも愛苗ちゃんも、二人とも弥堂君に甘くないっ⁉」

 

 

 お喋りをしながら現在は平和なランチタイムを過ごしている。

 

 当然この場に弥堂はもういない。

 

 

「あ、あのね、小夜子ちゃん……?」

 

「なぁに、愛苗ちゃん?」

 

 

 水無瀬が遠慮がちに声をかけると舞鶴はニッコリと笑った。

 

 

「私、自分でごはん食べれるよ?」

 

「いいのよ、気にしないで」

 

「で、でも……、あむっ」

 

 

 弥堂に触発されたのか舞鶴が膝の上に水無瀬をのせて彼女の口へ弁当のオカズを運んでいる。

 

 

「むぐむぐ……っん、でもね? 小夜子ちゃん足がプルプルしてるよ……? 私重いんじゃない?」

 

「……そんなことはないわ」

 

 

 スッと目を逸らしながらやせ我慢をする舞鶴に苦笑いをしつつ、日下部さんが話を戻す。

 

 

「まぁ、でも、こっちは事情知ってるから、あれはピリついちゃうよねぇ……」

 

「委員長パワーでなんとかしてよ!」

 

「そんなパワーないよ……。あと私、委員長じゃないし」

 

「自信を持って楓。あなたなら出来るわ。伝説の委員長波をきっと撃てるようになる」

 

「小夜子、茶化さないで。それより……、実際、難しいよね。希咲さんが悪いわけじゃないし……」

 

「……あんまり、こんなこと言いたくないけどさ。私的には逆に七海がこのクラスでよかったと思っちゃった」

 

「おぉ? マホマホが悪口言ってるぅー。いっけないんだぁ」

 

「ののかうるさい」

 

「でも、ののかもそれ賛成かなー。さっきのアレ見ちゃうと余計にねー」

 

「もし七海がいなかったらあの子たちがクラス仕切ってたかもしれないんだよね……」

 

「……私は希咲さんはすごく上手にやってくれてるって思ってるよ。仲良くなりすぎず、表立って険悪にもしないで、でもイニシアチブは常に希咲さんが持ってる。私じゃああいう風には出来ないから、正直助かってるな」

 

「聞いたかしら、愛苗ちゃん。七海ちゃんに委員長のお墨付きが出たわよ」

 

「うんっ。そうなの! ななみちゃんはスゴイの! カッコイイし、カワイイし……、いっぱいスゴイんだよ!」

 

「あら、そうなの。ところで私と七海ちゃん、どっちの方が好き?」

 

「えっ⁉ えっと……、えと、その……」

 

「ふふふ、いいのよ……? 七海ちゃんのことが一番好きな愛苗ちゃんが私は一番好きなの……」

 

「小夜子ちゃんがメンドクセェダメ女ムーブしてるよ!」

 

「真に受けちゃダメだよ愛苗ちゃん。この子こうやって楽しんでるだけだから」

 

「ひどいわ楓……、バラすなんて……」

 

「あはは……。それよりさ。実際どうなの? あの子たち。けっこうヤバげ?」

 

 

 日下部さんの問いに野崎さんと舞鶴が顔を見合わせる。

 

 

「えぇっとね……」

 

「楓。私が話すわ」

 

「そういえば小夜子ちゃんは去年も同クラなんだったっけ?」

 

「そうよ。一言で言うなら最悪ね」

 

「ズバって言ったねぇ」

 

「事実よ。主に寝室だけど、さっきあの子が弥堂君に言ってたこと覚えてる?」

 

「ツンデレムーブ?」

 

「そこはどうでもいいわ。ほら、『いつでも不良の男子を集められる』って言ってたでしょ? あれがあの女の本質よ」

 

「あぁ……、うん……」

 

 

 それだけで察したのか苦い相槌をうつ日下部さんを見て、自分も去年のことを思い出したのか露骨な溜息を吐く。

 

 すると横髪がハラリと頬にかかり、それをお膝の上の水無瀬さんがセッセと直してくれる。

 

 舞鶴さんはニッコリ笑顔になった。

 

 

「小夜子」

 

「んんっ。まぁ、あれを日常的にやるのよ。不良だけじゃなくて、あちこちの目立った男子グループにいい顏して、媚びて取り入って、それをナイフをチラつかせるように使って自分のワガママを通そうとするのよ」

 

 

 野崎さんに促されると真面目な顔に戻って舞鶴は続ける。

 

 

「タチが悪いのは、あの子そこそこ男を操るのが上手なのよね。入学して早い段階で上級生と仲良くなったからってのが大きいけど」

 

「うおぉーっ、もしかして悪女ってやつ?」

 

「そう呼ぶには知性が足りないわね。適格に表現するならクソビッチが最も相応しいわ」

 

「小夜子。言い過ぎだよ」

 

「事実だもの」

 

「でもさ、そんなにあちこちの男子にいい顏してたらモメたりしないの?」

 

「あら、いい指摘ね真帆。もちろんその通りよ」

 

 

 得意げに鼻を鳴らす舞鶴にお褒めの言葉を頂いたが、正解をしたにも関わらず日下部さんはもの凄く嫌そうな顔をした。

 

 

「本当にいい迷惑よ。普段の休み時間は教室があの子たち狙いの男子のたまり場になるし、別口とバッティングするとケンカが始まるし。もっと強いグループとか、もっと派手なグループとかと繋がると今まで仲良くしてた連中をフェードアウトするもんだから。揉め事が尽きないわ」

 

「うわぁ……」

 

「ここで最初の評価に戻るわ。一言で言って最悪、ね」

 

「納得しました。ありがとうございました」

 

 

 証明終了とドヤ顔の舞鶴に日下部さんはペコリと頭を下げた。

 

 

「ついでだから、もう少し話を戻して七海のことにも言及しておくと……」

 

 

 続けて話す舞鶴へ日下部さんも顔を向け直す。

 

 

「さっき真帆も言ってたけど七海がこのクラスでよかったって私も思ってるわ。あの子たちにとって天敵なのよね、七海って」

 

「あぁ、そうか。紅月くんか」

 

「そう。紅月くんもそうだし蛭子くんもね。気に入らないでしょうね。自分たちが頑張って取り入ってる男子どもより、全然格上のイケメンと不良に一番近いポジションにいるんだもの」

 

「おまけに七海ちゃんの場合は、それがなくても男子に負けないもんねー」

 

「わかってるじゃない、ののか。小賢しいわね」

 

「なんでマホマホは褒めたのに、ののかはディスるの⁉」

 

 

 会話を円滑にする良コメをしたのにぞんざいに扱われた早乙女はびっくり仰天する。

 

 その様子に満足げな笑顔を浮かべて続ける。

 

 

「まぁ、ののかの言ったとおり、あの子たち繋がりの男子を使っても七海に言うことは聞かせられない。逆に派手にやればやる程、あの子たちが本当に近づきたい紅月君の不興を買う可能性がある。だから表面上は七海を上に置いて仲良く振舞わなきゃいけない。つまり、あの手の子たちの大好きなマウントを自分から譲らなきゃいけないわけね」

 

「あー……、ちょっと同情しちゃったかも。それはストレスね……」

 

「優しいのね真帆は。私はいい気味だわ」

 

「おやや……? まなぴー、まなぴーっ。ついてこれてる?」

 

「えっ?」

 

 

 ぽへーっと話を聞いていた水無瀬へ早乙女が声をかけると彼女はハッとして、それから「えへへ」と笑った。早乙女は「うむ」っと鷹揚に頷く。

 

 

「要するに、七海ちゃんSUGEEッてことだよ」

 

「あ、やっぱりそうだったんだ!」

 

「まぁ、間違ってはないけど……」

 

「いいのよ、愛苗ちゃんはそのままで。うふふ……」

 

 

 緊迫していた空気を演出していた舞鶴がほっこりとしたことで、場の空気も弛緩する。

 

 

「ということは、このクラスの平和は七海ちゃんに守られていたのだー」

 

「確かに、小夜子が言ったみたいに他のクラスの不良がここで屯ったりもしてないしね」

 

「まぁ、そうね……、それは七海のおかげもあるんだけれど……。楓、構わないかしら?」

 

 

 先ほどまでとは違い、少々歯切れ悪く同意をしながら舞鶴は野崎さんを窺う。

 

 しかし、彼女は会話に参加しておらず、両手を使ってスマホを操作し何やら没頭している様子だった。

 

 

「楓……?」

 

「え? あ、ごめん。ちょっと立て込んでて……」

 

「別に構わないけれど、珍しいわね。ご飯中にスマホに夢中になるなんて」

 

「あははー。午前中ずっとボーっとしちゃってたから、返さなきゃいけないものが溜まっちゃって」

 

「目開けながら寝てるのかと思ったよー」

 

「そこはなんとかギリギリ耐えてたよ……、あ、小夜子。話していいよ。弥堂君のことだよね?」

 

「あら、それでも会話は把握してたのね」

 

「どう話すかは小夜子に任せるよ。私もこれ返したら終わりだから途中から参加するね」

 

「わかったわ」

 

「えっと……? 弥堂君が……?」

 

 

 日下部さんが真意を問うと、野崎さんは再び作業に集中し、舞鶴が話し始める。

 

 

「ここが無法地帯になっていない理由よ。七海のおかげでもあるけれど、何割かは弥堂君のおかげでもあるのよ」

 

「え? そうなの?」

 

「むしろこのクラスを無法地帯にしている張本人だって、ののかは思ってたよ!」

 

「まぁ、それは否定できないわね」

 

 

 苦笑いをしつつ、続ける。

 

 

「実は去年の私のクラスでも無法地帯になっていたのは二学期の途中までだったのよ」

 

「……? どうして?」

 

「あの子たちと連んでるのって元格闘技系の部活の男子が多いんだけれど、彼らがその『元』になった原因は弥堂君なのよ」

 

「あー……、はいはい」

 

「ののか? 今のでわかったの?」

 

「うん。でもちゃんと小夜子ちゃんの話聞こうぜー」

 

「まぁ、多分察しの通りよ。うちの学校って去年まで格闘技の部活がやたら多かったじゃない?」

 

「そういえばそうだった……、って、多かっ『た』……?」

 

「そう。過去形よ。知っていると思うけれど、そのほとんどは部活っていうのは建前で、ガラの悪い連中の溜まり場になっていたの。それで去年の秋ぐらいだったかしら? 弥堂君が風紀委員会に入ったのは……」

 

「もしかして……」

 

「えぇ。風紀委員になるなり彼がその不良の隠れ蓑を潰してまわって、年明けにはほぼ壊滅状態にまで持っていったのよ」

 

「そっか……だから……」

 

「つまりっ! 七海ちゃんだけじゃなくって弥堂くんも、あの二人とその取り巻きにとって天敵ってことだねっ!」

 

「そうよ。彼に潰された後は目立ったことをするのを自重したのか、私のクラスにもあまり来なくなったわね。当然、本人が在籍しているこのクラスにわざわざ遊びに来たりなんてするわけがないわ。こんな感じでいかがかしら?」

 

「うん。過不足ないと思うよ。ありがとう、小夜子」

 

 

 ここで作業を終えた野崎さんも会話に参加してくる。

 

 

「部活って名目で学園から活動費をもらって、それを遊びに使っちゃったりなんてこともしてたから、弥堂君のおかげで不正会計が正されたんだよ」

 

「おぉ……、これは衝撃的な事実だよ……っ!」

 

 

 目から鱗――とばかりに早乙女が感心したが、その正されて浮いたはずの予算の大部分が今年度より弥堂が所属するサバイバル部に流入しているという事実はここでは浮き彫りにならなかった。

 

 

「……私、弥堂君のこと誤解してた。風紀委員って肩書を持ってるだけで、実際はトップクラスの不良なんだって勘違いしてた……」

 

「マホマホ……、ののかもそう思ってたよ……っ」

 

 

 その評価は誤解ではなく、なんなら甘いくらいだ。

 

 

「弥堂君はね、自分の悪評に言い訳とか自己弁護をしないし、自分の功績を喧伝したりもしないから……。だから誤解されやすいの……」

 

「野崎さん……。私、あとで弥堂君に謝るよ……っ!」

 

「うおぉぉぉっ。もしかしてダークヒーローってやつ? ののかちょっとキュンってしちゃったかも……っ!」

 

「…………」

 

 

 教えを説く牧師のように弥堂を擁護する野崎さんの言葉に、早乙女と日下部さんは感激する。しかし、その様子を舞鶴だけはジト目で見ていた。

 

 

「まなぴー、まなぴーっ! 弥堂くんスゲェなっ? まなぴーってば見る目あるぅーっ!」

 

「えっ?」

 

「お? もしかしてまた話に着いてこれてないな? 弥堂くんSUGEEEッ! ってことだよ?」

 

「だ、だいじょうぶっ! わかってるよ! 弥堂くんがいっぱい頑張ったってことだよね?」

 

「そうなの! 愛苗ちゃんもわかってくれるのねっ!」

 

 

 パンと手を叩き、彼女にしては珍しくテンション高めで野崎さんは水無瀬に共感を示す。

 

 野崎さんと水無瀬さんが弥堂くんバナシでキャッキャとしている隙に、舞鶴は早乙女と日下部さんに顔を寄せて声を潜めた。

 

 

「ああは言っているけれど、二人とも、楓の弥堂君評は話半分くらいで聞いておきなさい……」

 

「えっ?」

「どゆこと?」

 

「……盲目、というか妄信というべきかしら……。楓の言うことは大体のことは正しいのだけれど、それが弥堂君のことになるとちょっと怪しいのよ。少し浮かれすぎというか、持ち上げすぎというか……」

 

「おぉ?」

「え、えっと……それってまさか……」

 

「あぁ、違うわ」

 

 

 ハッとして気まずげに水無瀬と野崎さんを交互に見る日下部さんをすぐに制する。

 

 

「そういうのではないわ。多分。それよりも、信仰というか……、なんて言ったらいいのかしらね……。恐いから私も深くは踏み込んでないのだけれど、ニュアンスで理解して……」

 

「……ののか、ちょっと鳥肌が……」

「……言われてみればって感じで理解できる気もするわ……」

 

「私の見立てではね、弥堂君は正義感や善意でやったわけじゃないと思うわ。結果的に今こうなっているだけで。危ない人だっていうのは間違ってないと思う」

 

「ややこしいよ……っ! このクラス、マジでややこしいよ……っ!」

「……アンタもややこしい原因の一つだからね」

 

 

 両手で頭を抱える早乙女に日下部さんがジト目を送ったところで密談をやめる。

 

 

「まぁ、ここまでの話を踏まえた上で、七海が自分が不在の時に彼女たちが自分の『泣き所』を狙ってくるって予測して私たちに頼ったのは、私としてはすぐに腑に落ちた話だったのよ」

 

「なるほどねー。ののか最初は『過保護では?』って思っちゃったよ」

「うん、私も。今はよくわかる」

 

「それで、追加のカードとして彼よ。『甘やかす』だったかしら? それは建前よね。紅月君と直接関係のないあの子を狙うのは彼女たちにとってリスクの少ないこと。だからそれに対するカウンターとして何処とも関係のない彼をぶつける。暴力でも勝てない、彼女たちの得意そうな……例えばハブにするとか、そういった社会性を人質にとる攻撃も通用しない。うん、いいカードの切り方だわ。やっぱり優秀ね、七海は」

 

「……確かに。こう言っちゃなんだけど、弥堂君って特別仲いい人いないし、周りにどう思われてもどうでもよさそうだもんね」

 

「そうね。それに、彼を動かしてくれたのは私たちを守る意味もある。リスク管理ね。よく考えてあるわ」

 

「おぉ、小夜子ちゃん、七海ちゃんに高評価だね!」

 

「ふふふ。私、賢い子が好きなの。もちろん一定以上の善性が伴うことが条件、だけれど。だからアナタのことも嫌いじゃないわよ? ののか」

 

「それは営業妨害だよっ、小夜子ちゃん!」

 

 

 バチコンとウィンクをキメてくる早乙女と目を合わせて互いの理解と意識をすり合わせる。彼女たちは行動を共にすることが多いが、まだこの新クラスが始まってからの二週間ほどの付き合いだ。

 

 

「あと、今日の弥堂君の行動も、自分が愛苗ちゃんのガードに付いているってアピールして牽制をしているのだと思うわ。攻勢的な護衛、ってところかしら」

 

「おぉ、小夜子ちゃんさすがっ」

「七海も小夜子もすごい考えてるのね……、あっ、だから弥堂君の邪魔をしなかったのね」

 

「えぇ、その通りよ」

 

 

 二人に褒められ舞鶴は得意げに鼻を鳴らす。だが、さきほど彼女は野崎さんの弥堂評についてああ言ったが、それでも舞鶴も弥堂をまだまだ過大評価していた。

 

 

 希咲の意図への読みはほぼその通りだが、その希咲の意図は半分も弥堂に伝わっていない。

 

 全部を伝えたらどうせやってくれないと判断をして、とりあえず必要な位置へ弥堂を配置することに成功をした点で希咲が優秀だというのは、舞鶴の評価は正しい。

 

 

 しかし、弥堂は自分で言っていたとおり、本当に何のために自分がこうしているのかをわかっていないし、またそれをどうでもいいとも考えている。

 

 先日、権藤先生が弥堂のことを『自分で何かを考えさせずに番犬として連れ歩くだけならそれなりに使える』と評価したが、恐らくそれがもっとも弥堂 優輝という人物の本質に近い。

 

 これだけ弥堂について議論するクラスメイトの女子よりも、筋肉モリモリの中年男性が一番弥堂を理解していた。

 

 

 

「はいっ。ということで、みんなで上手くやっていけるように頑張ろうね」

 

 

 再度、パンと手を打ち合わせて野崎さんが締める。

 

 

「あら? 結局楓が最後をもっていったわね。さすがは委員長だわ」

 

「野崎さん、そういえば連絡……? は、もういいの?」

 

「あ、ちょっと待って…………、うん、これで終わり……っと」

 

 

 日下部さんに聞かれ、スマホに目を戻し、何かを確認した後に送信を押した。

 

 

「よぉーーーっし。景気づけにみんなで連れションいくぞー? まなぴーっ、ご飯はもう終わったかー?」

 

「あっ……、まだ食べ終わってないぃーーっ!」

 

「仕方ないにゃぁ~。ののかが手伝ってあげる。つきましてはその唐揚げを……」

 

「ていうか、アンタたちさっきトイレいったばっかじゃん」

 

 

 日下部さんのツッコミに少女たちは笑いあい、平和な昼休みの時間が過ぎていく。

 

 

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