俺は普通の高校生なので、   作:雨ノ千雨

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1章54 drift to the DEAD BLUE ⑮

 

 なかなか蛭子が話し出さないので望莱が進行する。

 

 

「では、➂の弥堂先輩VS妖6体の決戦の件ですが」

 

「……あぁ」

 

「決戦って、なんかちょっとバカっぽいわね……」

 

「名前だけじゃなくって、お話の中身も十分バカっぽいですしね。なんでしたっけ? 妖1体に人質にとられていた弥堂先輩が6体に増えた妖をジェノサイドしたんでしたっけ?」

 

「全然意味わかんないんだけど、どういうことなの?」

 

「……どういうことなんだろうな」

 

 

 早々に話が終わってしまい、希咲と望莱が蛭子に失望のジト目を向ける。

 

 

「そんな目で見んなよ! オレだってわかんねェよ、こんなもんっ!」

 

 

 思わず身を乗り出しながら蛭子くんは、自分は悪くないと主張した。

 

 

「まぁ、これで終わらせてもしょうがないので、一応細かく見ていきましょうか。えぇと……、一対一で勝てなかったのに6体相手に無双、ですか? なんですこれ? 覚醒でもしたんですか?」

 

「いや、知らねェけど……」

 

「いやー、キミ……蛭子くんって言ったっけ? あのさ、キミねぇ~。困るよぉ。20年前ならいざ知らず、イマドキの読者はこれじゃあ納得しないよぉ。みんな目が肥えちゃって、おまけに口ばっかり達者になっちゃってて色々メンドクサイからねぇ? それにさぁ、ウチの雑誌じゃこういう系の話は散々擦ってきちゃったからさぁ、ウチの読者みんな飽きちゃってんだわ。とりあえず出オチで後が続かなくてもいいからさぁ、奇抜で斬新な設定をいっちょ頼むよぉ。ストーリーとかいらないからさぁ。ていうか、こんなのわざわざボクに言われなくたってさぁ、今はネットで調べりゃいくらでも出てくるだろぉ? カンベンしてくれよぉ。ボクに無駄な時間を使わせないでくれ。お気にの嬢と同伴の約束があるんだよ、キミのせいで遅れちゃったらどうしてくれるんだい?」

 

「あぁーっ! ウッセェ! 小慣れた風なこと言ってんじゃねェよ! 編集者気取りか! オレの持ち込みじゃねェって言ってんだろうが!」

 

「……てゆーか、ジッサイさ。アイツどうやって倒したんだろうね。さっきの話だと、建物巻き込んで妖をぶっ飛ばした的なオチに聞こえたんだけど、それって具体的になにをしたわけ?」

 

「……さぁな、ビームでも撃ったんじゃね?」

 

「あー、でた。これだから素人さんは。とりあえずビーム撃っとけばいいみたいな。カンベンしてよぉ。いやね? ボクもビーム好きだけどさ。でもそれじゃ――ふがふがふが……」

 

「あんたそれもうやめろ。ふざけないのっ」

 

 

 またも編集者ムーブをしようとしたみらいさんだったが、希咲にほっぺをつねられて、品評はフガフガと消えていった。

 

 

「でもさ、さっきの写メ見ると、マジでビームでも撃ったんじゃないかって感じよね」

 

「まぁ、ありえねェけどな。だが、ビームって言われた方が納得しやすいよな」

 

「ぁいたたた……、なんでしたっけ? 妖をやっつけたら爆発して、その余波で建物が壊れた? そんな話でしたっけ」

 

「“うきこ”はそう言ってたな」

 

「んー……、でもそれヘンよ。ね、みらい。さっきの時計塔が写ってる自撮りもっかい出して」

 

「はぁーい」

 

 

 望莱がスマホに指示された写真を表示させると、希咲は綺麗に伸ばした爪の先で、ドヤ顏の“うきこ”を映えさせる為の背景オブジェに為り果てた時計塔を指差す。

 

 

「……ここ。この切断でもされたみたいに壊された場所。大体3階あたりよね? 爆発が起きてここから上が折れるってことは、やっつけた時に妖はこの位置にいたことになるわよね?」

 

「……言われてみりゃ、そうだな」

 

「ってことは、空中にいる妖を地上から飛び道具で攻撃したってことになんない? じゃないと、弥堂も空飛んで空中戦やってたことになっちゃうし」

 

「飛び道具っつったってな……、え? ビームなのか?」

 

「空中戦っていうのもまた……、え? ビームですか?」

 

「うーーん……、空飛ぶのと、ビーム撃つの……。どっちがありえそうかって話になっちゃうのね……。ヤダな……、こんなことマジメに考えるの……」

 

 

 三人揃って「う~ん」と考える。

 

 

「兄さんっ。兄さんはどっちがいいですか?」

 

「どっちがいいとかそういう話なの……?」

 

「ちなみにわたしはビーム推しです」

 

「う~ん……、推しっていうか……。でも空を飛ぶってのはなんか違うかなぁって……」

 

「その心は?」

 

「飛んで結局どうするの? ってなっちゃわない? 飛ぶだけじゃ倒せないし」

 

「なるほど。飛んだ先のことが重要なんですね。ということは……、え? ビームですか?」

 

「い、いやビームは……。ていうか二択じゃなくなってるし。そもそもどうやって飛ぶの?」

 

「それはやっぱりビームじゃないですかね」

 

「それって地面に向けてビーム撃って反動で空飛ぶってこと? ヤバくない……?」

 

 

 みらいさんのビーム激推しに聖人は難しい顔になってしまった。

 

 そろそろ止めないと洗脳されてしまうと危惧して希咲は割って入る。

 

 

「聖人にしては鋭いじゃん」

 

「え? ビームが?」

 

「ちがうから。飛ぶだけじゃ倒せないってとこ」

 

「うん。だからやっぱりビームなのかな?」

 

「や。ビーム忘れろ」

 

「でもさ、こう……、ビームをジェットみたいにして……」

 

「つか、ビーム撃てるならわざわざ飛ぶ意味なくない? ビームだけ撃って当てればいいじゃん」

 

「それもそうか。じゃあやっぱりビームだね」

 

「しまった……」

 

 

 聖人はもう手遅れだった――というか若干自分がトドメを刺してしまった感もあり、希咲はとりあえず彼に大人しく黙っているよう命じて他二人を説得する。

 

 

「やっぱりビームですよ蛮くん!」

 

「えぇ……? そうかぁ?」

 

「バカ言ってないの。ビームはないでしょ」

 

「えー? でもでも、人間が空を飛ぶのはちょっと無理めかなーって思いますけど、ビームならいけそうじゃないですか?」

 

「や。ビームのが無理めでしょうよ……」

 

 

 すっかり興奮した様子の望莱にゲンナリとする。これは骨が折れそうだと。

 

 

「だって七海ちゃんくらいになればビームいけますよね?」

 

「むり」

 

「ギャルなのに?」

 

「ビーム出すギャルなんか見たことねーわ」

 

 

 幼馴染のお姉さんにキッパリとビームは出せないと否定され、みらいさんは幼馴染のお兄さんに縋る。

 

 

「蛮くんっ! 現在修行中の蛮くんならいけますよね? ビームっ! ビームの術とかないんですか?」

 

「ねーよ。陰陽術はそういうモンじゃねェから」

 

「えー」

 

 

 やはりこちらにもしっかりと否定されみらいさんは失意に沈む。

 

 

「なんでそんなにガッカリしてんのよ。あんたホンキでビームだと思ってんの?」

 

「いいえ。そんなわけないじゃないですか」

 

「は?」

 

 

 気を遣ってあげたら彼女の表情はコロッと元に戻った。

 

 

「さすがにビームはないですよ」

 

「……じゃあなんであんなにビーム推ししたわけ?」

 

「いえ、大した理由はないんですが、ここで頑張ればもしかしたら『必殺ビトー・ビーム』が爆誕するかもって思いまして」

 

「するか! 今マジメに話してんだからふざけないでっ!」

 

 

 プリプリと起こるお姉さんにみらいさんはほっこりとして、それから表情を改める。

 

 

「まぁ、真面目な話、空中戦の方がまだありえるかもですね」

 

「……空飛ぶのもムリめじゃない? あんた、もしかしてまたふざけようとしてる?」

 

「いいえ。飛ぶのは無理でも落ちることは出来ますよね?」

 

「ん? どゆこと?」

 

 

 眉を寄せる希咲にニッコリと微笑んで望莱は説明をする。

 

 

「これは思いつきですけど。例えば時計塔の屋上から飛び降りて空中の妖に攻撃を仕掛けるとか」

 

「……攻撃出来たとして、その後どうすんだ?」

 

「さぁ? 死ぬんじゃないですか?」

 

「ダメだろ!」

 

「もしくは屋上から妖と一緒に飛び降りて道連れに……とか?」

 

「頭おかしすぎ……、いくらアイツでもそこまではしないでしょうよ」

 

「そんなイカレたヤツいるわけねェだろ。まだビームの方が可能性あんじゃね?」

 

「えー?」

 

 

 またも揃って否定された形だが今度は楽し気に笑う。

 

 

「でも、そうですね。さすがにアタオカすぎでしたか」

 

「てゆーか、それじゃ時計塔はどうやって壊れたのってなっちゃうし」

 

「そこは妖さんが『させるかー!』って空中で自爆したとか?」

 

「式神ならありえなくもねェが、自爆する妖なんて聞いたことねェよ。そもそも清祓(せいばつ)したら爆発するってのも聞いたことねェし」

 

「うーん、謎は深まりますねー!」

 

「楽しそうにすんなし」

 

「オマエはほんとよぉ……、あ、いや、ちょっと待て」

 

 

 希咲と一緒に望莱に呆れていた蛭子が何かを思いついたような仕草を見せ、希咲と望莱はそんな彼を不思議そうに見た。

 

 

「……近所の住民に通報されたんだがよ、その内容が『時計塔の屋根が燃えている』って内容の通報が最初だったみてェなんだよ」

 

「え? それって……」

 

「う~ん、それだけじゃ弥堂先輩が屋上に上がっていたってことは確定はしないですね」

 

「……なんでオマエが否定する側に回んの?」

 

 

 蛭子に胡乱な瞳を向けられながら望莱は根拠を示す。

 

 

「だって何のためにってなるじゃないですか」

 

「まぁ、それはそうだがよ。けど、それなら何で燃えてんだって話にもなんだろ?」

 

「そもそも何で燃やすのかって話です。もしも妖に火をかけて倒そうとか考えたとしても、わざわざあんな火を点ける難易度が高くなる場所でやる必要ないですし」

 

「……それは、そうだな」

 

「火を放つ妖が居て、流れ弾が屋上に行ったと考える方が自然じゃないですかね?」

 

 

 スラスラと話す望莱に反論を失い蛭子は沈黙する。

 

 

「あ、でもさ。最初にアイツを発見する前、なんかあっちこっちで物が壊れる音がしたとか言ってたじゃん?」

 

「うん? そうですね。そういう報告でしたね」

 

「もしかしてさ、弥堂は妖から逃げてたんじゃない? 時計塔と全損した校舎以外で壊れてたとこってどこ?」

 

「あー……、主に部室棟、それから校庭に時計塔前の広場だな」

 

「アイツ基本的には逃げてて、捕まりそうになったら応戦とかしてたんじゃない? それで時計塔に逃げたとか」

 

 

 ピンッと立てた希咲の人差し指をジッと見て、望莱は反論を開始する。

 

 

「残念ながらそれも可能性は薄いですね」

 

「そう?」

 

「時計塔の屋上は逃げる先には適さないです。それ以上逃げ場がないですし」

 

「必死に逃げてたからそこまで考えつかなかったとかは?」

 

「それは否定しきれません。ですが、屋上に火を放ったことには繋がらないですね。さっきも言いましたがあんな場所簡単に燃やせる所ではありません。最初からそれが出来るだけの道具をそこに用意でもしていない限りは」

 

「そっか……、あんな高い場所なら風も強いだろうし屋根を燃やすなんて簡単には出来ないか」

 

「それに妖から逃げてたのに道連れにして飛び降りるって意味わかんなくないですか? 死んでもいいならそもそも逃げたりしないと思いますし」

 

「それもそうね……」

 

「そもそも飛び降りとかしてたらさっきビデオ通話に出てないですし。というわけで時計塔への放火と、屋上からの道連れバンジーは否定します」

 

 

 希咲の方からも反論がなくなりみらいさんがドヤ顔をキメた。

 

 

「ふふふ、論破してしまいました」

 

「や。それあんたが言い出したことじゃん。自分で自分を論破してなんでドヤ顔してんのよ」

 

「自分を超えてしまいましたね……、みらいちゃんは可能性の塊です」

 

「つか、混ぜっ返して話をややこしくすんなっ」

 

「では、少し真面目に話しましょうか」

 

 

 希咲に叱られ望莱はまた表情を改める。

 

 

「蛮くん。全壊した校舎はどの校舎ですか?」

 

「アン? 一年の校舎だな」

 

「なるほど。では弥堂先輩が――かはわかりませんが、妖を仕留めたポイントは少なくとも三ヶ所はありますね」

 

「ん? どゆこと?」

 

 

 他のメンバーが関心を持ったことを確認して望莱は詳しく説明をする。

 

 

「一つが時計塔の3階部分、もう一つが一年生校舎、そして時計塔前の広場です」

 

「なんでそんなことがわかんの?」

 

「なんか一纏めにぶっ飛ばされたみてェな話じゃなかったか?」

 

「少なくともそれは間違いですね」

 

 

 報告内容を即座に否定し望莱は笑う。

 

 

「いいですか? 思い出してください、最初の話を。そもそも今回の襲撃、何が問題だったのかを――」

 

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