俺は普通の高校生なので、   作:雨ノ千雨

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1章56 Away Dove Alley ⑪

 

「――その子はリピーターじゃないね」

 

「りぴーたー……?」

 

 

 ジュンペーからの報告を聞いたヤマトが水無瀬の顔を見るとそう断じた。

 

 首を傾げながら復唱する水無瀬は自身の危機的状況に気付いておらず、知らない人たちが何やら真面目に話をしている様子だったので、邪魔をしてはいけないと大人しくしていた。

 

 

「まぁいいか。“South-8”に連れてっとけよ。後で戻るけどオレら巡回中だし、もしかしたらウマヅラくん戻ってくるかもだし」

 

(たらい回しかよ)

 

 

 リクオは心中で不満を漏らしそれが表情に出ないように努めたが、咄嗟に返事をすることは出来なかった。そのことに気付いて慌てて口を開こうとするが、その前にジュンペーが答える。

 

 

「あー、ヤマトくん。馬島くんならこっちに向かってるらしいぜ?」

 

「は? なんで?」

 

「なんか客連れて戻ってきたらしいぜ」

 

「へぇ、やるじゃん。絶対バックレると思ったよ。そのまま店で待たせときゃよかったのに」

 

「さっきのヤツらシメてる時に電話かかってきてよ。こっちも取り込み中だったけど、なんか向こうも慌ただしい感じで。メンドくせェからこっちに寄こせって言っちまった」

 

「あっちでなんかあったのか?」

 

 

 ヤマトのその問いにはリクオが答えた。

 

 

「あー、オレが“South-8”に連絡入れた時もなんかモメてるとかって言ってましたね」

 

「なんだそれ」

 

 

 それにはヤマトもジュンペーも揃って眉を顰めた。

 

 

「なんかクセェな。表――はなまる通りの方でも今モメてるらしいぜ」

 

「どっかが“R.E.D(レッド) SKULLS(スカルズ)”に喧嘩売ってきたってこと? そんな気合い入ったヤツらなんかいたっけ?」

 

「そうだな……、ありえるとしたら……」

 

 

 ジュンペーがヤマトに敵対勢力の候補を挙げていくのをリクオが黙って聞いていると、クイクイと服を引かれる。

 

 

「ねぇねぇリクオくん。弥堂くんは?」

 

「あー……」

 

 

 みんながお話していたので“よいこ”の愛苗ちゃんは自分が話してもいい順番を待っていたのだ。

 

 リクオが答えに困ると、その質問をヤマトが拾った。

 

 

「ビトーって?」

 

「あっと、この子の友達らしいッス。ソイツ探して“South-8”に行こうとしてたみたいで。それでてっきりリピーター客かと思っちまって……」

 

「あっそ……、チームにビトーってヤツ居る?」

 

「いや、オレらは知らないッス」

 

「ジュンペーは?」

 

「聞いたことねェな」

 

「ふぅん……」

 

 

 顎に手をやって少し考えを巡らせたヤマトはやがてニヤリと笑った。

 

 

「――ジュンペー、表にいる連中に電話しろ」

 

「なんて?」

 

「敵対してぶちのめしたヤツらは攫えるだけ攫って来いって」

 

「どこに?」

 

「んー、“South-8”でいっかな」

 

「わかった」

 

 

 ジュンペーが電話をかけて話し出すとその間この場の会話が止まる。

 

 

 もしかして喋ってもいいのかな?と水無瀬さんがソワソワしだすと、ジュンペーの電話はすぐに終わってしまった。

 

 愛苗ちゃんは開きかけたお口をパッと手で押さえて喋るのを我慢する。

 

 

「……伝えたけど、攫ってどうすんだ? 大物か大物のオンナでもねェと身代金はとれねェぞ?」

 

「金なんか後からいくらでもとれるっつーの。“WIZ”だよ」

 

「……っつーと?」

 

「個別は面倒だからまとめて鑑定する。そんだけ居れば一人くらいは“アタリ”がいるだろ」

 

「そうか。あと、“はなまる通り”の喧嘩に三嶽さんが来てるってよ」

 

「あっそ。じゃあ余裕だね」

 

「なんでも、やたら強ェ“ダイコー”のヤツが暴れてるらしくて、ウチのモン何人もイカれたってよ。今そいつの相手をミタケさんがしてっから、終わったら伝えるってさ」

 

「……また“ダイコー”?」

 

 

 何か引っかかるものを感じながらヤマトは水無瀬に目を向ける。

 

 彼女が着ているのも美景台学園の制服だ。

 

 

「んで、その子どうすんだ?」

 

 

 訝しむように水無瀬の制服リボンを見ているとジュンペーからの問いかけに思考を切られた。

 

 

「ん? あぁ、それもまとめて。こいつのバッテリーそう何回もはもたねェんだ」

 

「わかった」

 

 

 首から提げたナイトゴーグルをチラつかせながら説明するとジュンペーは黙る。

 

 そこでようやくヤマトは水無瀬に話しかける。

 

 

「あー、お姉……、いや、お嬢さん……?」

 

「あ、私、水無瀬 愛苗(みなせ まな)ですっ! 美景台学園の2年B組です!」

 

 

 声をかけられた水無瀬は嬉しそうに自己紹介をしてペコリと頭を下げる。初めて会った人たちにちゃんと“ごあいさつ”をしたくて愛苗ちゃんはずっとウズウズしていたのだ。

 

 

「あ、ドーモ……、オレは来栖 大和(くるす やまと)です……、って! キミ普通に名乗っちゃうね?」

 

「え? 初対面だし……、ちゃんと挨拶しないと……」

 

 

 不良活動をしている中で経験のない対応をされてヤマトが困惑を浮かべると、愛苗ちゃんもふにゃっと眉を下げて困ってしまった。

 

 

「な、なにこの子……、調子狂うな……。ま、いいや。えっと、さっき言ってたビトーくんってのは同じ学校の人なの?」

 

「うんっ。同じクラスのお友達でね、席も隣なんだよっ」

 

「そ、そう……、あっと、もう少しでみんな集まるからさ。ちょっと待っててね。ビトーくんも居るらしいから」

 

「わっ、そうなんだ。みんなで何するの? お菓子パーティ?」

 

「あ、あぁ、うん……そうかな? ってことで、“South-8”って店に集合になってるから、悪いけどそこまで着いてきてくれるかな?」

 

 

 急に怯えられて騒がれても面倒なのでヤマトは頬をヒクつかせながらも丁寧な対応を心掛ける。

 

 もちろん水無瀬さんは快諾だ。

 

 

「わかりました! よろしくお願いします!」

 

「――ちょっと待て」

 

 

 彼女本人はペコリとおじぎをするが、それを見過ごせない者もいる。

 

 

 横合いから挿し込まれた制止の声に全員が顔を向ける。

 

 

 そこに居るのは傷つき地面にヘタリこんだままのモっちゃんだ。

 

 

 水無瀬はここで初めて彼らの存在に気が付いた。

 

 

「――モっちゃんくんっ……!」

 

 

 傷だらけの彼らの姿に顔色を変え駆け寄る。

 

 

「ど、どうしたの……⁉ その傷……」

 

「水無瀬ちゃん、オレらの後ろに来るッス……!」

 

「サトルッスくんも……! どうしてみんな……!」

 

 

 水無瀬は今日の昼休みにお友達になったばかりの彼らが――弥堂と一緒にここに遊びに来ているはずの彼らが傷つき倒れていることに動揺する。

 

 

 心乱す彼女を余所に、ヤマトはジロリとした目をモっちゃんに向けた。

 

 

「なに? オマエら知り合い?」

 

「知り合いっつーか……、まぁ……」

 

 

 言葉を濁す彼の返答を最後まで待たずにジュンペーが苛立ちを露わにした。

 

 

「メンドクセーなコイツら。なぁ、もういいんじゃね? 小突いてもコイツらなんもなかったし」

 

「……アホかよ、ジュンペー。“ダイコー”……、また“ダイコー”、全部“ダイコー”だ……!」

 

 

 何か確信めいた口調でヤマトは話しだす。

 

 

「少し前から“ダイコー”のヤツが色んな名前騙りながらウチの連中を襲いだして。今日偶々路地裏に迷い込んだ“ダイコー”のヤツがその騙った名前のヤツで。たまたま同じ日に勘違いして“South-8”を探しに来た“ダイコー”の女とも知り合いで。こうしてる今も表でも騒ぎが起きててそっちにも“ダイコー”だ……っ! もう少し遡れば“ダイコー”の佐城に“龍頭(ドラゴンヘッド)”のアタマがやられてる……、こんなことあるかよ……⁉」

 

 

 一連の出来事の関連性をヤマトが主張すると、ジュンペーはガシガシと坊主頭を掻いて言葉を探してから答える。

 

 

「言いてェことはわかる。だが、“ダイコー”は一枚岩じゃあねェ。佐城とコイツらは不良だが、この子と表で暴れてるヤツらはフツーのヤツだ。襲われたヤツの話では“通り魔野郎”も不良ってわけじゃあねェみてェだし……」

 

「関連性はないって言いたいのか?」

 

「オレらもコイツらも国の軍とかじゃあねェんだ。基本どいつもこいつも好き勝手に動く。例えば“カゲコー”はほぼ丸ごとオレらの敵だが、好戦的なヤツもいればオレらにビビって逃げるヤツもいる。“カゲニシ”に通ってるオレは“RAIZIN(ライジン)”のメンバーだが、“カゲニシ”のアタマはスカルズアンチで有名だ」

 

「……学校単位で決めつけるのはよくないってこと?」

 

「だな。特にコイツら“ダイコー”はメンドクセェ。佐城と通り魔は敵で間違いねェだろうが、だからって“ダイコー”全部に手ェ出すと今度は皐月組が出てくる」

 

 

 ジュンペーの説明にヤマトは理解を示し始める。

 

 立場はヤマトの方が上とはいえ、この業界についてはまだ中学生のヤマトよりもジュンペーの方が知見が深い。

 

 

「あー、外人街との付き合い方がまだ決まってないのに、先にヤクザたちとモメたくないのね。外人街から派遣されてるオレに知られていいの?」

 

「でもヤマトくんは外人街の住人ではないだろ。もっと言うと、“スカルズ”の飽津(あくつ)さんは半グレたちをスルーして直接外人街と繋がりたいから皐月組と喧嘩になるのは好都合で。逆にそれに反対してる三嶽さんの“RAIZIN(ライジン)”に所属してるオレの立場からすると、今のところ皐月組とはモメたくねェってことだな」

 

「ホント不良ってめんどくさいね」

 

「最初は気の合うヤツと一緒に馬鹿やって喧嘩してって、テキトーにやってられりゃいいってだけのつもりだったんだけどなぁ……」

 

「ジュンペーって意外とリーマン向いてんじゃない?」

 

「ジョーダンじゃねェよ」

 

「あー、それならさ。この子ここで確認して違ったら帰すってのはどッスか?」

 

「ア?」」

 

 

 ヤマトとジュンペーの話がひと段落着いたところで、さりげなく言葉が挿し込まれる。

 

 声の方をヤマトが不快そうに見ると、そこには外方を向いたまま澄ました顔をするリクオがいた。

 

 

「……なんで?」

 

「いや、店のヤツら手が離せねえみたいなこと言ってたんで。店に置いとくにも見張りが足りなくなるかなって思いまして」

 

「ふぅん……、ジュンペー、表通りってどんくらい敵いんの?」

 

「結構な数みてェだな。一つの集団じゃなくって、“カゲコー”やら“カゲニシ”やら居合わせたヤツらがバラバラに暴れてるらしい。オレらと関係なく殴り合ってるのもいるってよ」

 

「なにそれ?」

 

「そもそもの発端は“ダイコー”だったらしいが、数は他のガッコの方が多いみてェだぜ」

 

「へぇ。じゃあ、やっぱダメだ。この子も連れていく」

 

「え?」

 

 

 決定事項としてヤマトが告げた方針にリクオは唖然と口を開ける。

 

 

「ミタケやアクツくんに立場があるようにオレにもある。“WIZ”を売るのがオレの仕事だ。鑑定の途中でコイツのバッテリーが切れたら無差別に射つしかなくなる。でも、それやったらミタケがキレるよね?」

 

「だな」

 

「だからって無駄に攫っておいてタダで帰すわけにもいかない。だから全員まとめて鑑定する」

 

「そうか」

 

「つーわけだ。連れてけ」

 

 

 ジュンペーと話して、最後の指示だけはリクオに向けられた。

 

 リクオはそれに返す言葉がない。

 

 

「待ってくれ! この子はフツーの子なんだ。カンベンしてやってくれ」

 

 

 代わりというわけではないが、そこに食って掛かったのはモっちゃんだ。

 

 彼の後ろに庇われる水無瀬は状況の理解が追いつかず呆けている。

 

 だが、彼女にもこの場の空気が不穏なものであることだけはもうわかっていた。

 

 

 ヤマトとジュンペーは鋭い目をモっちゃんたちに向ける。

 

 

「誰にモノ言ってんだ? 立場わかってんのかよ?」

 

「……この子を連れてってどうするつもりだ?」

 

「関係ねえだろ。こっちの客だ」

 

 

 客。

 

 

 “R.E.D(レッド) SKULLS(スカルズ)”というチームが何を生業としているかはわかっている。

 

 それの客ということは――

 

 

 緊張と共に心臓の鼓動も高まり、モっちゃんの顔には嫌な汗が流れる。

 

 

「まぁ、客に出来るかはまだわかんないけど、そうじゃなくっても女だから使いみちは色々あるしね」

 

「――テメェッ!」

 

 

 軽い調子で言い放つヤマトに、モっちゃんは思わず激昂する。

 

 

 すると彼らの雰囲気も剣呑さを増した。

 

 

「さっきからウルセェな。なんか文句あんのかよ? 無抵抗にボコられてただけのザコがよ。オレら“スカルズ”だぞ?」

 

 

 そう凄まれると、モっちゃんは黙って下を向く。

 

 

「オイ、オマエ。早くしろよ」

 

「……わかったよ」

 

 

 不機嫌な声で急かされ今度はリクオもすぐに従った。

 

 水無瀬の方へと近づき、地面に膝をついてハンカチでサトルくんの顔を押さえる彼女の腕へ、リクオは手を伸ばす。

 

 

「――ゴメンな」

 

 

 しかし、その手は水無瀬に触れることは出来なかった。

 

 

「――っな……⁉ オマエ……⁉」

 

 

 リクオの腕を掴んで止めたのはモっちゃんだ。

 

 

 地面に座り込んでいたモっちゃんは自身の体重をかけてリクオの手を引っ張り、その勢いを使って一気に立ち上がると――

 

 

「――ウラァッ!」

 

「グッ――⁉」

 

 

 リクオの顔面に拳を叩きこんだ。

 

 

「リクオくんっ!」

 

 

 今度は逆にリクオが倒れこむと彼を心配する水無瀬の声が上がる。

 

 そんな彼女を置き去りに状況は深まる。

 

 

 

 リクオは反撃することを思いつかないまま、呆然とモっちゃんを見上げた。

 

 

 モっちゃんはもうリクオを見ておらず、その先のヤマトたちを睨みつけていた。

 

 

 ジュンペーが一歩前に出て、ヤマトは嘲笑するような笑みを浮かべる。

 

 

「あーあ、やっちまったな。バカじゃねーの?」

 

「……そうだな。バカかもな」

 

 

 自分ごときが歯向かったところで何の脅威も感じていない。

 

 そんな余裕の態度をとるヤマトに、モっちゃんも静かに返す。

 

 

「一応聞いてやるよ。なんのつもりだテメェ?」

 

「聞く意味あんのか? 決まってんだろ」

 

 

 先程までとは打って変わって強気な目線と言葉で応える。

 

 

「テメェみてェな三下がよ、“スカルズ”に勝てると思ってんのか?」

 

「無理だろうな」

 

「はぁ? なのにやる気かァ? なに? この子オマエのカノジョなん?」

 

「いや? 今日初めて会ったぜ?」

 

「理解できねェな。どう考えてもワリに合わねェだろ」

 

 

 言葉どおり不可解そうにする彼らにモっちゃんはどこか気が清々清々とする。

 

 

「モ、モっちゃんくん……?」

 

 

 背後からの不安そうな声に振り向き、モっちゃんはニカっと男くさい笑みを浮かべた。

 

 それから敵の方へ向き直る。

 

 

「ワリに合わねェって……? そんなこたねェぜ? なんせ昼メシ恵んでもらって、おまけにこんなオレらをこの子は“友達”だって言ってくれたんだ……」

 

「はぁ? なんだそりゃ?」

 

 

 嘲るようなヤマトを真っ直ぐに睨み返す。

 

 

「確かにオレらぁ三下だよ。道歩いててオマエらに『どけ』って言われりゃあ下向いて大人しく道を譲るし、『金出せ』っつわれたらヘラヘラしながら財布出して詫びも入れるさ……」

 

「賢いじゃん」

 

「でもなぁ、『ダチを渡せ』って言われて、それで『はいどうぞ』なんて利口なマネが出来るほど腐っちゃあいねェんだよ……っ!」

 

「テ、テメェ……! ナメんなァッ!」

 

「――ぅぐッ⁉」

 

 

 モっちゃんの切った啖呵に反応したのはリクオだ。

 

 何か胸に刺さるものでもあったのか、激昂しモっちゃんに殴りかかる。

 

 

「――っぃぎっ……! き、っかねェんだよォ……ッ!」

 

「ガァッ⁉」

 

 

 リクオのパンチに上体を仰け反らせたまま倒れぬよう堪え、その姿勢を無理矢理戻す勢いで気合いのチョーパンをお見舞いした。

 

 再びリクオは倒れ込む。

 

 

「――オラァッ! 立てェ……! オメェらァッ!」

 

 

 そして大声を張り上げる。

 

 それは敵に向けられたものではなく、仲間に向けた言葉だ。

 

 

「――うおぉぉぉ……!」

「ジョウトォォ……ッ!」

「ぬあぁぁぁぁーーっ!」

 

「み、みんな……っ⁉」

 

 

 モっちゃんの背後で水無瀬を守るように固まっていたヤンキーたちは、雄たけびをあげることで傷ついた身体に鞭を打ち立ち上がる。

 

 

「ヘッ……、ワリィなオメェら。付き合ってもらうぜ?」

 

 

 モっちゃんは歯を剥いて獰猛に笑い、心にもない謝罪を口にする。

 

 

「やめろよモっちゃん」

「オレら上等だからよ」

「謝るんじゃあねェよ」

 

 

 軽く言いながら近づいてくる仲間たちの言葉にモっちゃんもいちいち感動したりなどしない。

 

 当たり前のことだからだ。

 

 モっちゃんの半歩後ろに3人の仲間が並び、ヤマトたち“R.E.D(レッド) SKULLS(スカルズ)”と対峙する。

 

 

「マジでやる気かよ。まさか勝てるとは思ってねェだろうが、ちょっとボコられただけで解放されるとか甘く考えんなよ? 後悔するほど地獄を見せてやるよ……! わかってんのかァ?」

 

 

 あちらも本気になったようで、恫喝するヤマトの前でジュンペーがゴキリと首を鳴らす。

 

 

 確かな重圧を受けながらも、モっちゃんは気のない仕草で耳の穴を小指でほじり、サトルくんへ顔を向けて肩を竦めた。

 

 

「なぁ、サトル。アイツなんだって? どういうイミだァ?」

 

 

 サトルくんはニヤリと笑う。

 

 

「ワリィ、モっちゃん。オレ馬鹿だからよォ。アイツがなに言ってんのか全っ然わっかんねェんだわ!」

 

 

 彼らは仲間同士顔を見合わせ「ギャハハハ」と下品に笑う。

 

 

「……テメェ死んだぞ? 三下」

 

 

 ヤマトの雰囲気が明らかに変わると、モっちゃんたちも笑うのをやめてベっと唾を吐き捨てる。

 

 

 モっちゃんは両足をガバっと開き前に出した左足の爪先を敵へ向ける。上体はやや反るようにしながら顎を上げ見下ろすようにガンを飛ばし、両手で横髪を後ろへ流してビシッとリーゼントをキメた。

 

 

 他のメンバーも彼の半歩後ろでそれぞれポケットに両手を突っこんでガバっと股を開き上体を反る。ポケットの中で一生懸命に手でスボンを外側に引っ張り、縄張り争いをするクジャクの羽のようにボンタンを広げてスカルズを威嚇した。

 

 

「オレぁ天上天下唯我独尊だからよォッ! “R.E.D(レッド) SKULLS(スカルズ)”なんぞ上等だぜッ――」

 

 

 恐れも怯えもなく、決して敵わぬ強大な敵へ純粋な戦意を発する。

 

 

「――美景台学園二年、佐川 百介(サガワ モスケ)だ、バカヤロウッ!」

 

 

 後には退けぬ上等を切った。

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