俺は普通の高校生なので、   作:雨ノ千雨

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1章58 決着! 悪の幹部! ~さらばボラフ~ ①

 結界の中に侵入すると、そこにあったのは予想通りの光景だった。

 

 

 弥堂 優輝(びとう ゆうき)は足を止めて、この場で対峙している二人の人物を視る。

 

 

「ボラフさん、もうやめてください……っ!」

 

 

 悲痛な叫びをあげるのは魔法少女――水無瀬 愛苗(みなせ まな)

 

 

 そして彼女が瞳を向ける先には、跪いて肩で息をする悪の幹部――ボラフ。

 

 

 周囲を見渡せば、水無瀬が大量に結界内に引き摺り込んだはずのネズミも、ボラフが連れて行ったネズミも、一匹たりとも姿がない。

 

 魔法少女によってゴミクズーはあっさりと殲滅されてしまったのだろう。

 

 そしてそれを指揮していた悪の幹部も既に敗北寸前。

 

 

 

 それらは弥堂にとっては全てわかりきっていたことであり、特段驚きもなかった。

 

 

「まぁ、そうだろうな……」

 

「――あれ? 少年も来たんスか?」

 

 

 納得の声を独り言ちると、黒猫が声をかけながら近づいてくる。

 

 魔法少女のお助けマスコットであるネコ妖精のメロだ。

 

 

「……あぁ」

 

 

 弥堂は一度だけ彼女を横目で見遣り、すぐに視線を戻した。

 

 

「心配してわざわざ来て……くれるわきゃねェッスね……。ともかく、こっちも無事に終わりそうっス。もちろんマナの勝利で!」

 

「そうか」

 

 

 自分の方へ目も向けずにどうでもよさそうに短い返事を返される。

 

 弥堂の淡泊な対応にメロはムッとすると、背中に浮いたオモチャのような羽をピコピコと動かし弥堂の顏の前に回ろうとする。

 

 そして彼の顔を正面から見た瞬間、表情をギョッとさせた。

 

 

「オオオオ、オマ……ッ、オマエ……ッ⁉」

 

「なんだ」

 

「『なんだ』じゃねえッスよ! 血ッ! 血ぃ出てるッス!」

 

「転んだんだ」

 

「いやいや、転んだって……、そうはならねえだろッス! 目と耳から血出るってフツーじゃねえッスよ! なんで少年はちょっと目を離すとすぐ流血するんッスか⁉」

 

 

 途端に騒ぎ出すネコにうんざりとした弥堂はメロをジロリと睨む。

 

 

「うるさい。他人のことより自分のことを考えろ」

 

「ジブン血ィ出てねえッスけど?」

 

「自分の仕事をしろと言っているんだ。お前の仕事はなんだ」

 

「お助けマスコットッス!」

 

「今日は何をしたんだ?」

 

「『こうなったら変身っス!』をやったッス!」

 

「死ね。役立たずが」

 

「ニャンだとぉーッス!」

 

 

 シッポをピンっと立てて、メロは抗議の為に弥堂の顔面に詰め寄る。

 

 顏に付着したままの血を舐めとろうとしてくる彼女に迷惑そうにしていると、メロの声で騒ぎに気付いたのか、水無瀬がこちらへ顔を向ける。

 

 

 弥堂を見てパァっとお顔を輝かせようとした愛苗ちゃんは、笑顔が完成する前に驚きに目を見開き、ピンクのツインテールをみょーんっと跳ね上げた。

 

 そしてピューっと慌てて飛んでくる。

 

 

「――びびび弥堂くん……っ⁉」

 

「うるさい。戻れ」

 

「ででででもっ! 血が!」

 

 

 動揺した彼女は止血のつもりなのかどうか、弥堂の眼球に指を伸ばしてくる。

 

 弥堂は彼女の顏に手を遣って抵抗した。

 

 

「どどどどどうしたの⁉」

 

「お前のペットに引っ掻かれたんだ」

 

「えぇ⁉ メ、メロちゃん⁉ 弥堂くんのお顔バリバリしちゃったの?」

 

「イヤイヤっ! ジブンじゃねえッス! オイ! このクソやろうっ! 息をするようにウソをつくんじゃねえッスよ!」

 

「言いがかりだ。嘘を吐くたびに息をしているだけだ」

 

「それってウソつかなきゃ生きられねえってことッスか? 何の弁明にもなってねえじゃろがいッス! このクズめっ、クズめっ……!」

 

 

 道を踏み外した愚かなニンゲンに怒りを露わにして、メロは弥堂の顏にピターンピターンっとシッポを振ってぶつける。

 

 

 大好きなお友達どうしが仲良くふれあいをしている姿に水無瀬はほっこりしていたが、ハッと気が付く。

 

 似合うというか、見慣れたというか、流血をしていても違和感を感じづらくなってきてしまったが、彼が怪我をしていることを思い出したのだ。

 

 

「た、たいへん……っ! 血を止めなきゃ……!」

 

「いい。ほっとけば治る」

 

「で、でも……、せめて血を拭いて傷口見てみないと……、わっ⁉ お耳からも……」

 

「耳から血ぃ出るってヤベェんじゃねえッスか?」

 

「あわわわ……っ、ど、どうしよう……っ⁉ ガーゼとか、脱脂綿とか……、持ってない……。あ、そうだ! 薬局に行けば……! さ、さうすえいとに行かなきゃ……!」

 

「戻ってどうすんだ。戦えよ」

 

「で、でも……」

 

 

 眉をふにゃっと下げて困ってしまうと、お助けネコ妖精が助け舟を出してきた。

 

 

「仕方ないッスね。ここはジブンに任せて欲しいッス!」

 

「メ、メロちゃん、なにかいいこと思いついたの?」

 

「うむッス。ちょっと待ってるッスよ」

 

 

 大仰に頷いた食肉目ネコ科の妖精は地面に下りると尻をつけて座った。

 

 そしてガバッと股を開いて上体を起こすと自身のお腹にベローンっと舌を這わせる。

 

 目を閉じてうっとりしながら何度も腹を舐め、時折後ろ足でカリカリと顎を掻く。

 

 

 突然リラックスモードになり毛繕いを始めた小動物を胡乱な瞳で見ていると、やがてメロは身体を起こす。

 

 クエックエッと鳥のような声を出してからお口をモゴモゴとさせると、ンベっと何かを吐き出した。

 

 それを拾い上げ肉球の上に乗せて差し出してくる。

 

 

「さ、この毛玉を使うッス!」

 

「わぁっ、メロちゃんすごいっ! 弥堂くんちょっと横向いてくれる?」

 

「お前まさかそれ耳に突っ込む気じゃねえよな。汚えから捨てろ」

 

 

 水無瀬の掌の上の毛玉をペシっと叩き落すと、彼女らは地面に落ちたそれをジッと見て、それから眉をふにゃっと下げて悲しげに弥堂を見上げてきた。

 

 

「大丈夫だと言っただろ。大袈裟なんだよお前は」

 

「で、でも私、心配で……」

 

「大きなお世話だ」

 

「でもでもっ、弥堂くん毎日死にそうになってるし……」

 

「…………」

 

 

 それは確かに事実であり、自分が弱いことも自覚しているし、彼女が圧倒的に強い存在であることも認めている。

 

 しかし、この水無瀬 愛苗という少女の人格にそれを指摘されると酷く屈辱を感じ、弥堂は口の端をヒクつかせる。

 

 

 怒鳴りつけて泣くまで詰めてやりたくなるが、それをギリギリのところで自制し、代わりに彼女のスカートに手をつっこみグニっとお尻を抓る。

 

 

「あいたぁーーっ⁉ な、なんでお尻つねるのぉ……?」

 

「うるさい。変身してるから痛くないだろ。いちいち大袈裟に騒ぐな。謝れ」

 

「ご、ごめんなさい……」

 

「この圧倒的なDV気質よ……。どうしてオマエは性に対してだけは前向きなんッスか」

 

「そのような事実はない」

 

 

 ジト目のネコにシレっと言い放つと涙目の水無瀬はお尻をさすりながら下がっていく。

 

 

 多少溜飲が下がったので、弥堂は話を生産的なものに修正した。

 

 

「いいからやることをやれ。決着(ケリ)をつけるんだろ? 殺せる時に殺せと何度も言ってるだろうが」

 

 

 三度、ハッとした水無瀬は慌ててボラフの方へ顔を向ける。

 

 だが――

 

 

「――殺さないよ。そんなことはしないもん」

 

 

 あくまでそのスタンスは崩さない。

 

 

「……ナメやがって……!」

 

 

 しかし、その慈悲は相手にとっては侮辱にもなりうる。

 

 ボラフの目はまだ死んではいなかった。

 

 膝に力を入れて悪の幹部は立ち上がる。

 

 

「まだだ……っ!」

 

「ボラフさん! もうやめてくださいっ!」

 

 

 冒頭の台詞に回帰して、弥堂は何とも言えない気分になったが、それは胸の裡で磨り潰す。

 

 

 ボラフはチラリと弥堂へ目線を向けてきた。

 

 弥堂は何も語らず肩を竦めてみせる。

 

 構えることもせず、隙だらけの姿勢のままでいた。

 

 

 ボラフは水無瀬へ視線を戻すと、キッと眦を上げる。

 

 

「オレはまだ負けてねェぞ……っ!」

 

「でも……っ」

 

「ウルセェッ! 見せてやるよ……、オレのホンキを……ッ!」

 

 

 癇癪を起したように怒鳴り散らして水無瀬を黙らせると、ボラフは腕を鎌から人間のものに形を変え懐を探る。

 

 

「それは――っ⁉」

 

 

 ボラフが取り出したのは何本かの試験管。

 

 ゴミクズーを強化するのに使用していたのを何度か見ていた。

 

 

「ま、まさか……⁉」

「ボラフ! それは使っちゃダメッス!」

 

「勝負だ、ステラ・フィオーレ……ッ! 今日、ここが――その時だッ!」

 

 

 ボラフは数本の試験管を全て開封し、上を向いてその中身の液体を口の中に流し込んだ。

 

 

「ボラフさん、やめ――」

 

 

 水無瀬が制止の声を叫ぶ中、弥堂は眼に力をこめて様子を視る。

 

 

「――グッ、グアァァァァ……ッ!」

 

 

 カシャンっとアスファルトに落ちた空の試験管が割れると同時に、ボラフは苦悶の声をあげ始める。

 

 

 ボゴンっと――まずは左側の側頭部が破裂しそうなほどに膨れて、そして戻る。

 

 肩が、腕が、胸に、腹に、腿に、脚に――

 

 

 不規則な順番で躰のあちこちが膨れて縮み、伸びて戻り、それを繰り返す内にボラフは段々とカタチを失っていく。

 

 

「ゥグオォォォォォーーッ!」

 

 

 そして絶叫をあげながら一塊になったその身を大きく膨張させた。

 

 

 大型のトラックほどの大きさに膨れてから、粘度が丸まるように収縮して楕円形になる。

 

 

 そこから大きな鎌が生える。

 

 全部で8本。

 

 左右に4本ずつ、歪な鎌がまるで足のように生えた。

 

 

 左右の鎌の間となる車で言えばフロントになる部分に、内側の弧を下にしてヘッドライトのように二つの目が開く。

 

 ルーフから粘度を摘まんで引き延ばしたように、太い触手が伸びていき触覚の様に為る。

 

 その触角の先端がこちらへ向き、ガパっと裂けるように口を開いてギザギザの歯を剥いた。

 

 

 彼は最初からずっと人に近いカタチをして水無瀬や弥堂の前に姿を見せていた。

 

 それ故に少々感覚が麻痺していたが、彼はゴミクズーという異形を使役する悪の怪人を名乗っていた。

 

 ここにきて、その怪物としての魔なる本性を露わにしてきた。

 

 

(大きさはそこまででもない……)

 

 

 異様を瞳に映して弥堂は眼を細める。

 

 

 これまでに見てきた“ギロチン=リリィ”や“アイヴィ=ミザリィ”といった、『ネームド』と呼ばれるゴミクズーの方がサイズは大きかった。

 

 だがボラフはそれらを使役する悪の幹部。

 

 ゴミクズーより弱いはずがない。

 

 

 なにより、弥堂の眼に映るその魂のカタチ――存在の密度と強度が“ギロチン=リリィ”や“アイヴィ=ミザリィ”よりも遥かに上だった。

 

 

 巨大ナマコのような触覚が、口の周りに大量に生えた細い触手を震わせ粘液を飛散させながら筆舌に尽くし難い叫び声をあげる。

 

 そして8本の鎌足を撓め、跳び上がる。

 

 

 ビルの壁に鎌の先端を刺して張り付くと、8本の足をガチャガチャと動かしながら蜘蛛のように壁を走っていく。

 

 

「あっ……! ま、まって……!」

 

 

 ビルとビルの間の狭い路地に入っていくボラフを水無瀬は思わず追った。

 

 

「マ、マナッ……!」

「行くぞ」

 

 

 弥堂とメロも彼女の後に続く。

 

 

 魔法で空を飛び、ボラフが入った路地の中へ曲がるとそこには誰の姿もない。

 

 

「いない……?」

 

 

 キョロキョロと見回しながら薄暗い空間をゆっくり進んでいく。

 

 遅れて弥堂とメロも路地の中へ入ってきた。

 

 

「マ、マナ……ッ! これは罠ッスよ!」

 

「えっ?」

 

 

 メロの声に水無瀬が振り返ると周囲の色が変わり始める。

 

 

 煤けて薄汚れた放置された廃ビル群。

 

 

 ゆっくりとコールタールを流し込まれるようにビル壁の色が黒く変色していく。

 

 

「な、なにこれ……っ?」

 

(空間の支配権……)

 

 

 戸惑う水無瀬を尻目に弥堂は脳裏に浮かべる。

 

 公園での戦闘の時に、アスが言っていたことだ。

 

 

 美景川での戦い、そして先程のスケボー通りでの戦い。

 

 そこでは最初にボラフが結界を張っていて、それを水無瀬が自分の結界に塗り替えた。

 

 それはつまり支配権の強奪ということになる。

 

 

 そしてここは水無瀬の結界の中だ。

 

 

 彼女らの言う魔法が使えない弥堂には理解が出来ないが、元の現実世界をコピーした空間を創り出しているらしい。

 

 水無瀬の創り出した空間に彼女の意図せぬ変化が現れるのは、支配権のシェア率に変化が起こったということだろうと考える。

 

 重要なのは、今のボラフにはそれが出来るということだ。

 

 

(影響力……)

 

 

 ボラフが服用したクスリ。

 

 あれによって暴走気味に魔力が高まり、その魔力によって『魂の設計図(アニマグラム)』を歪めてでもその存在の強度を無理矢理押し上げている。

 

 先程視た試験管の中身、それとこの効果。

 

 それは弥堂には覚えのあるものであった。

 

 

 考えている間に、見える範囲のビル群は真っ黒に染まっていた。

 

 影が差したように辺りが暗くなる。

 

 

「なに……?」

 

 

 慌てて上を見るとそこには空はなく、黒い網のようなもので覆われていた。

 

 

「あれは……」

 

 

 一体何なのだろうと見上げていると、天井の網と繋がった黒い糸にぶら下がって蜘蛛のようにスルスルと下りてきたボラフが背後に現れた。

 

 

「――マナッ! うしろ……ッ!」

 

「え――」

 

 

 メロの叫びに慌てて振り返るが、その時にはもう大きな鎌が振られた後だった。

 

 

「――っ⁉ 【光の盾(スクード)】ッ!」

 

 

 反射的に魔法のシールドを展開することに成功した。

 

 

 ガインッと音を立ててボラフの鎌を受け止める。

 

 

 しかしー

 

 

「……えっ――」

 

 

 盾は簡単に破壊された。

 

 

「わわわ……っ⁉」

 

 

 水無瀬は慌ててその場から逃げ出す。

 

 どうにか避けることには成功し、距離を離す。

 

 ボラフは彼女を追わなかった。

 

 天井からぶら下がったままジッと敵の姿を見ている。

 

 

「くぅ……っ! やっぱり罠だったッスか」

 

「そりゃそうだろ」

 

「なにをノンキに……、ってコラァ! オマエなんッスかその態度は⁉ 壁に寄りかかるなぁーッス!」

 

 

 どうでもよさそうに相槌を打って壁に肩をつけて体重を預ける弥堂にメロは激昂する。

 

 そんな二人を置いて、この場で対決する二人の間の空気は張りつめていく。

 

 

「決着をつけるぞ……ッ! ステラ・フィオーレ!」

 

「ボラフさん……っ!」

 

 

 気合いを発するとボラフは躰を振り子のように揺らしてまた横向きに壁に張り付くと、鎌足をガシャガシャと鳴らして空中の水無瀬の方へ駆けてくる。

 

 

「セ、【光の種(セミナーレ)】ッ!」

 

 

 水無瀬はそれを数発の魔法弾で迎え撃つが、いくつかは躱され、当たった弾も黒光りするボディに硬質な音を立てて弾かれた。

 

 

「そ、そんな――っ⁉」

 

 

 驚愕する水無瀬に異形の蜘蛛が迫る――

 

 

 

 

 

 

 

 

 表通りに戻るべく路地裏を進んでいた美景台学園のヤンキーたちだが、ふと一人が足を止める。

 

 

「……モっちゃん?」

 

 

 突然立ち止まった彼を訝しんだサトルくんが声をかけてくる。

 

 他の仲間たちも振り返ってきた。

 

 

「どうしたんだ?」

「ションベンか?」

 

「いや……」

 

 

 モっちゃんは難しそうな顔をしてしばし考える。

 

 

「……これでいいんか……?」

 

「えっ?」

 

 

 そしてポツリと呟くと仲間たちはギクリとする。

 

 そこに困惑はない。

 

 彼らも考えていたことだ。

 

 

「オレら、このまま帰っていいんか?」

 

「…………」

 

 

 もう一度問われるとメンバーは顔を俯かせた。

 

 

「で、でも……」

「ビトーくんが……」

 

「水無瀬ちゃんは戦ってる」

 

 

 言い訳のような言葉を遮られると、場には沈黙が満ちた。

 

 

「オマエら、それでいいのかよ……っ⁉」

 

 

 強い声と強い言葉。

 

 それに彼らが顔を上げる前に、タッタッタッと複数人の走る音が聴こえてきた。

 

 

「ん? 誰だ……?」

 

 

 自分たちが進んでいた方向から3人の男が走ってくる。

 

 ここらにいるのは“R.E.D(レッド) SKULLS(スカルズ)”の兵隊である可能性が高い。

 

 自然と警戒心と緊張感が高まる。

 

 

 やがて顔が視認出来る距離まで彼らが近づいてくると――

 

 

「アイツらは……」

 

 

 現れたのはリクオと彼の仲間2名だった。

 

 リクオの方もモっちゃんたちに気が付くと、彼らも意外そうな表情を浮かべて立ち止まる。

 

 

「なんだ? オマエら何か用かよ?」

 

「ア? テメェらに用なんかねェよ」

 

「じゃあ、何で戻ってきた?」

 

「え? いや……」

 

 

 モっちゃんが用件を問うと刺々しい反応を見せたリクオだったが、戻ってきた理由を問うと何やら気まずげな顔で言葉を詰まらせた。

 

 モっちゃんたちは怪訝な顔をする。

 

 

「オマエらバックレたんじゃなかったのか?」

 

「か、関係ねェだろ……! それより急いでんだ。そこどけよ……!」

 

「は? どけって、どこ行くつも……り――って、オマエら、まさか……?」

 

 

 疑問の言葉の途中で彼らがここに来た理由に思い当たる。

 

 

「リクオ……、オマエ、もしかして……」

 

「慣れ慣れしく呼ぶんじゃねェよ! テメェとはダチじゃねェんだ……!」

 

「……そっか。ヘヘッ、気合い入ってんじゃねェかテメェ……ッ!」

 

「オ、オレは別に……」

 

 

 嬉しそうな顔をするモっちゃんにリクオは居心地が悪そうに顔を逸らす。

 

 そして――

 

 

「おっしゃぁっ!」

 

 

 モっちゃんはニカっと男臭く笑った。

 

 

 そして踵を返して走り出す。

 

 

「――え? お、おい……っ!」

 

 

 思わずリクオが呼びかけるがモっちゃんは止まらず首だけ振り返ってくる。

 

 彼の仲間たちは既に後を追って走り出していた。

 

 

「うるせぇ! ツベコベ抜かすな! オレに着いて来やがれ!」

 

「ひゃっほーぅ! やっぱモっちゃんはサイコーだぜェっ!」

 

 

 彼らはどんどんと元の道を引き返していく。

 

 

「くっ――」

 

 

 何故か離されたくないと、そんな気持ちが湧いてリクオたちも駆けだした。

 

 

「テメェッ! サガワッ! エラそうにすんじゃねェよ!」

 

「してねーよ! いいから走れッ!」

 

「ウルセェ! 今日ので勝ったと思ってんじゃねェぞ!」

 

「ギャハハハッ! オレのが足が速ェ……ッ!」

 

「テメェ待ちやがれ……ッ!」

 

 

 ガラの悪い声で罵り合いながら、彼らはスケボー通りへと走って行った。

 

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