俺は普通の高校生なので、   作:雨ノ千雨

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1章74 生まれ孵る卵《リバースエンブリオ》 ⑥

 

 どうして――

 

 

 どうして、どうして、どうしてどうして、どうして……!

 

 

『朝目覚めて、家の中に見知らぬ人間が侵入しているのを発見したら――』

 

 

 そんな疑問ばっかりで頭がいっぱいになる。

 

 

 

 お話してる途中に弥堂くんの目が急に変わって――

 

 

 私を見る目が変わって――

 

 

 まるで知らない人を見るみたいに――

 

 

『お前は誰だ』

 

 

 弥堂くんの手が光って、光る剣を私に――

 

 

『――俺はその時、お前らを殺すぞ』

 

 

 そして、黒いナイフで――

 

 

 

 ナイフの刃が――

 

『今、✕✕の首筋に刃を当てている』

 

 引かれて――

 

『これを✕✕の皮膚に少しだけ押し付けて引くと✕✕の首が切れる』

 

 肌が切れて、中の肉が割れて、骨まで見えて――

 

『✕✕の細い首の、薄い皮膚が破れて、肉が裂け、その肉の割れ目からは血管が覗く。重要な血管が破かれてしまったら、そこからは大量の血液が漏れ出る』

 

 血が。血がいっぱい――

 

『首の血管――頸動脈だ。わかるか? 脳に血や酸素を送っている重要な血管らしい。それを切ると人間は血がいっぱい出て死んでしまうんだ』

 

 

 身体が斜めに傾いていく。

 

 気が遠くなるくらいに頭が真っ白になった私の目に映る弥堂くんが斜めになる。

 

 

『あぁ、約束だ』

 

 

 裂けて割れて傾いた首から赤い血を噴き出しながら。

 

 

『約束する。俺はお前のことを何があっても忘れない。違えたらこの首を落としてやる』

 

 

 弥堂くんが、弥堂くんの首を切った。

 

 

 弥堂くんの血が、背がおっきい弥堂くんよりも高く上がって、私の顏に降ってきた。

 

 

「いやああああぁぁぁぁ――っ⁉」

 

 

 

 

 

 

 目の前で起こったことが受け入れられず酷く混乱する愛苗には、自分があげた大きな悲鳴がどこか他人事のように聴こえた。

 

 そんな彼女の目の前で、弥堂の身体が地面に倒れる。

 

 

 突然彼が黒いナイフを抜いて、それで自らの首を掻き切った。

 

 

 何をしているのか認識する間も与えてくれず。

 

 止める間もないほど一切の躊躇いすらもなく。

 

 酷く慣れきったような仕草でその刃を引いた。

 

 

「――どうして……っ!」

 

 

 彼に逃げてくれるように頼んで。

 

 これが最期だからと打ち明け話をして。

 

 そしてまた逃げるようにお願いをして。

 

 

 その会話の最中に、突然彼は自分のことを忘れてしまった。

 

 

 そのことに愛苗は大きなショックを受けた。

 

 

 だだ、そんな自失など一瞬で吹き飛んでしまうほどの唐突な自死。

 

 

 まるでコメディの演出のように派手に血を噴き出して倒れた。

 

 

 その血は倒れた今も、まるで即席の棺を作るように地面に拡がり彼の身体を包んでいっている。

 

 

『それを切ると人間は血がいっぱい出て死んでしまうんだ』

 

「――だめええぇぇぇぇ……っ!」

 

 

 愛苗は地面へ飛び込むようにして手を伸ばす。

 

 両手で必死に彼の首の傷を押さえる。

 

 

「なんで……なんで……っ! どうして……っ⁉」

 

『約束する。俺はお前のことを何があっても忘れない。違えたらこの首を落としてやる』

 

「そんなの! そんな約束……っ! そんなのいらない……っ!」

 

 

 再度リフレインした昨夜の彼の言葉を今更拒絶する。

 

 

 いつもの彼らしい言葉。過激だけど彼らしい表現。

 

 いつもどおりのなんでもない言葉。

 

 その言葉の意味に今更気が付く。

 

 

 彼は真面目で、冗談を言ったことなど記憶にない。

 

 そんなことわかっていたはずなのに。

 

 

「どうして……!」

 

 

 過ぎた時は戻らず、流した血も還らない。

 

 

「おねがい! とまって……! とまって! このままじゃ弥堂くんが……!」

 

 

 それどころか彼の身体に一滴も残さないような勢いで今も溢れてくる。

 

 手も膝も赤く染まって、ボロボロと涙をいくら落としてもその赤は薄まらない。

 

 

「そ、そうだ……、魔法で……」

 

 

 手に魔力をこめて、傷をおさえて――

 

 

「――それで……っ」

 

 

 その先がカタチにならない。

 

 

 彼女の魔法は傷を癒せない。

 

 病気も治せないし、生命を戻せない。

 

 

 何故かそれは成功したことがないし、何故か出来ない。

 

 何故か出来ないような気がして、何故か願いにならない。

 

 何故かそう発想できないのだ。

 

 

 だから、必死に何が何だかわからないモノに縋る。

 

 

「かみさま……! おねがい……おねがいします……っ! 弥堂くんを――」

 

 

 グッと力が入り過ぎて、血のヌメりで首を押さえる手が滑る。

 

 すると、その力でグリンっと動いた彼の首がその傷を裂きながら、少々不自然な曲がり方をして顏をこちらへ向けた。

 

 

「――っっ……⁉」

 

 

 彼の目と、目が合って、愛苗は呑み込む。

 

 

 息を――

 

 言葉を――

 

 願いを――

 

 

――呑み込んでしまった。

 

 

 こちらを見た彼の目。

 

 

 彼の瞳は――

 

 

 いつも色が薄く、光が薄い、彼の瞳。

 

 いつもはそれでも見つめ合えば自分の目が映っていた。

 

 

 その瞳には完全に色も光もなく――

 

 愛苗の目ももう映ってはいない。

 

 

 その生命はもう――

 

 

 

「――――――――――――――――――――――――ッッッ!!」

 

 

 

 何の言葉にも為っていない叫びが愛苗の口から出て『世界』を震わせる。

 

 

 さっきまで小躍りして燥いでいた悪魔たちは、その叫びに驚き引っ繰り返り、今は畏れを抱いたように彼女を見ている。

 

 

 悲哀、嘆き、慟哭、喪失、絶望――

 

 

 何を表したのかわからない絶叫が現世に顕れたこの地獄に轟く。

 

 

 血に染まった両手で自分の顔を掴む。

 

 赤い指の隙間から彼の姿が――彼の死体が見える。

 

 指から垂れて零れた血が視界を赤く塗り替えていく。

 

 

『世界』が彼の血で染まった。

 

 

 

 そして、顕れる――

 

 

 

 

 何秒間か続いたその叫びは唐突にスッと鳴りを潜めた。

 

 

 人が傷つき、優しさが踏み躙られ、悪魔が嘲笑う。

 

 そんな地獄に打って変わった静けさが唐突に訪れた。

 

 

 愛苗は顔を押さえていた両手を力なくパタンと落とす。

 

 それとほぼ同時、彼女の魔法少女の変身が解けた。

 

 

 美景台学園の女子用の制服と上履き。

 

 髪と目の色も元に戻る。

 

 当然髪型も両肩にのせる緩めの三つ編みおさげに戻った。

 

 

 一拍おいて、その制服が膨らんで裂けた。

 

 

 ブラウスと上着を突き破って。

 

 スカートの中から。

 

 

 蔓がそのまま太くなり、大きな木の根になったように膨らんで増えて伸びて、彼女の裡からその外へ無数に出てくる。

 

 

「マナッ⁉」

 

 

 その様子に慌ててメロが駆け寄ろうとするが、膨れ上がって周囲に拡がる木の根に目の前を塞がれ、彼女へ近づくことが出来ない。

 

 

「キタアアアアアァァッ!」

 

 

 対照的にアスは歓喜の声を叫んだ。

 

 その異変に、その異様に、そしてその威容に、両手を広げて歓びを以てそれを迎え入れる。

 

 

 愛苗の上衣が千切れて、代わりに肌には細い蔓が巻き付き、露わになった乳房を申し訳程度に隠す。

 

 残った切れ端のようなスカートや上着の破片が黒く変色し、露出の高いコスチュームのように変わる。

 

 

「さぁ、来ますよ! 新たな我らの王がッ!」

 

 

 愛苗の身から溢れ出た木の根は地面に突き刺さり、そして地中からコンクリを貫いて別の場所から飛び出し、広く広く拡がっていく。

 

 意図せず蟻を踏み殺すかのようにその辺の悪魔どもを突き刺して圧し潰して、そうして領域を、己を拡げ辺りを支配下に治めていった。

 

 

「“生まれ孵る卵(リバースエンブリオ)”――魔は満ち、溢れるほどに膨らみ、そして存在は裏返る……! 回り捲れて別のモノへと為り変わる! 生まれ変わり……、生まれて、今……ッ! 卵は孵る……ッ!」

 

 

 愛苗の栗色のおさげが解けて白く色を喪いながら、木の根と同じように長く伸びていく。

 

 元の髪と同じ色をしていた瞳は金色に染まり輝きだし、そして瞳孔の奥に赤い光が灯った。

 

 

 地上を蹂躙し尽くした木の根は上へと伸びる。

 

 根と根と根が三つ編みでも作るように絡まりながら天に昇っていく。

 

 勢いよく、産声をあげるようにしながら。

 

 

 愛苗の身体はそれらに飲み込まれる。

 

 

 自然の植物など存在しない、海を埋め立てて造られた開発中のコンクリの埠頭――

 

 

 そこに見上げるほど巨大な、天まで届くような高い大樹が聳え立った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――ああぁぁぁっ! クラウソラス! 《断罪の極光(ブレイズ・エクスキューショーナー)》……ッ!」

 

 

 森の木々の頂点にも届くような光の剣。

 

 

 手の中の聖剣に宿ったその光を聖人は門目掛けて振り下ろした。

 

 

 門の開きかけの扉の隙間から鼻先を捻じ込もうとしていたエネルギー体の龍も、巨大な石造りの門も、その極光に飲み込まれた。

 

 

 龍の叫びと門の唸り、聖剣の威力による地響きが辺りに轟く。

 

 

 光が消え収まった時、広い泉にはもう何も残っていなかった。

 

 

「……やったのか?」

 

 

 辺りの鎮まりに警戒心を滲ませながら蛭子は聖人へ訪ねる。

 

 

「わからないけど……、たぶん……」

 

 

 聖人は聖剣を握る手を緩めないまま周囲を見回す。

 

 

 解き放たれようとしていたかつての災害、伝説の海神――荒神は居なくなった。

 

 泉の上に顕れていた巨大な門も消え、その影響か悪魔たちの姿もない。

 

 戦いは終わったように見えた。

 

 

 しばし様子を見て、蛭子は両腕に装備していたガントレットを消した。

 

 

「暴走状態にあった龍脈が少し治まってる。どうやら今ので終わったみてェだな……」

 

 

 そのように判断したようだ。

 

 蛭子に倣って他の者も武器を消していく。

 

 

「門が消えた以上は龍脈を抑えて鎮めることが出来るようになったはずだ。オレは屋敷で作業に戻るぜ」

 

「あ、うん」

 

 

 簡潔に伝えて蛭子は屋敷の方へ走り出し、森の木々の中に姿を消した。

 

 マリア=リィーゼと天津の視線が自分に向いていることを聖人は感じている。

 

 自分たちがどうするかを決めろという意味だ。

 

 

 聖人は聖剣の柄を握る手を見下ろす。

 

 

(本当に終わったのか……?)

 

 

 手の中に残る感触にどこか疑いを持つ。

 

 

(伝説の海神がこんなものなのか……? その“清祓(せいばつ)”が……)

 

 

 それの手応えはこの程度のものなのか。

 

 そんな考えがつき纏う。

 

 

 だが、自分の直感はこの場に危機を感じていない。

 

 まだ戦うべきだと、まだここに居るべきだと、そうは言っていない。

 

 

 聖人は(かぶり)を振って、マリア=リィーゼと天津に曖昧な苦笑いを浮かべた。

 

 彼の表情を見た二人の緊張が弛緩し、二人は踵を返して屋敷への進路をとった。

 

 聖人も一拍置いて歩き出そうとする。

 

 

「――兄さん? 何処へ行くんですか?」

 

 

 しかし、望莱から呼び止められた。

 

 

 聖人は振り返り彼女の顔を見る。

 

 妹の瞳の奥でワインレッドの光が燻っていた。

 

 

「えっと、僕も戻って蛮を手伝おうかなって。襲撃の被害も確認しなきゃだし」

 

「…………」

 

 

 望莱は兄の目をジッと見つめる。

 

 だが――

 

 

「――わかりました。わたしはこの周辺を確認した後に戻ります」

 

「え、うん……。わかった。気をつけてね」

 

「はい」

 

 

 それ以上引き留めることなく兄を先に行かせた。

 

 

 兄の背が見えなくなると、望莱は泉の水面に一度目を落とし、そして遠くの空へ視線を向けた。

 

 

「兄さんの直感は美景に急ぐべきと言っていない……?」

 

 

 疑問を口にする。

 

 

「仮にここが終わったのならば、兄さんの性格上美景に帰りたがるはず。もしくはここが終わった以上、後は危機が残るのは美景のみ。それなのに?」

 

 

 眉間に力が入る。

 

 

「あっけなさすぎる」

 

 

 彼女もまた兄と同じ感想を抱いていた。

 

 

「伝説の荒神がこの程度? ともすれば私たちの中から死者が出ることまでを示唆されていたはずの事案。それがこんなものなんですか?」

 

 

 そうならばそれは少々大袈裟であるし、自分たちへの過小評価だ。

 

 

「兄さんの直感が美景へ向いていないのなら、これで終わりか、もしくはこの島でもう一悶着あるか……」

 

 

 嘆息を漏らす。

 

 

「読めるだけの情報が足りない。とりあえずは“うきこ”ちゃんと連絡を……」

 

 

 そして今一度海の先を見つめる。

 

 

「これで終わりなら七海ちゃんは一つの危機にも出遭っていないはず。無事でしょうか……」

 

 

 その目には答えは映らない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……あっ……、あぁ……っ⁉」

 

 

 尻もちをつきながらメロは茫然と目の前の巨木を見上げる。

 

 弥堂の死にショックを受けた愛苗が箍が外れたように叫び、そしてその姿を、魂の在り方すらも変貌させてしまった。

 

 

「マ、マナ……?」

 

 

 彼女の姿を探す。

 

 

 彼女の身体は増殖し肥大化して絡まる木の根に飲み込まれたように見えた。

 

 太い木の幹に沿うように下から上へ視線を動かす。

 

 すると――

 

 

「――あっ!」

 

 

 地面からそう離れていない建物二階分くらいの高さ、そこに愛苗の姿があった。

 

 手足は木の中に埋まり、(うろ)の中に嵌ったようにして顔と胴体だけが見えている。

 

 髪が伸びて白く色が抜け落ち、瞳は金色に。

 

 その姿は変わり果てていた。

 

 

「マナ――ッ!」

 

 

 行かなければと、強くそう感じてメロは彼女の元へ飛び立とうとする。

 

 だが、俄かに、自分と同様に茫然としていたレッサーデーモンたちが騒ぎ出した。

 

 

 

 

 

 ぼんやりと視界が掠れている。

 

 

「……わた……し……」

 

 

 曖昧な意識の中、愛苗は呻く。

 

 

 何か、とても、大きなことが、自分の中で爆発したようで。

 

 一瞬頭の中が弾けて意識がとんでしまい、何が何だかわからなくなってしまった。

 

 

「あぐぅ――い、いたい……っ⁉」

 

 

 鋭く酷い痛みが奔ったことで、少しだけ頭がはっきりした。

 

 一瞬だけの痛みではなく、断続的に継続的に身体が痛んでいる。

 

 だがその痛みが、身体の何処がどのように痛んでいるのかがわからない。

 

 

 それは身体を、魂を作り変えられた痛み。

 

 今も作り変わっている痛み。

 

 彼女にそれはわかっていないが、しかし痛かった。

 

 

 滲んだ涙によってまた視界が歪む。

 

 それを拭おうとしたが手が動かせない。

 

 自分の手が何処にあるのか、これまでどうやって動かしていたのか、それすらもわからなくなる。

 

 

 すると俄かに眼下が騒がしくなった。

 

 

「マリョク! マリョク! スッゴイマリョク!」

「マオウ! マオウ! オデノオウ!」

 

 

 もう見慣れてきた肉人形――レッサーデーモンたちがキャッキャと踊っている。

 

 

「あのひとたち、いつもたのしそう……」

 

 

 酷く暢気で的外れな感想が漏れる。

 

 

「ササグ! ササグ! オレガササグ!」

「オウヨ! オウヨ! オレガササグ!」

「ニエヲ! ニエヲ! オマエガニエ!」

 

 

 しかし、次の彼らの行動に顔色を変えることになる。

 

 肉人形たちは地に倒れる弥堂へ群がった。

 

 

「やめてぇっ! 弥堂くんにさわらないで……っ!」

 

 

 思わず叫びをあげる。

 

 

 そうしたら――

 

 

 地に転がる弥堂の死体。

 

 その近くの地面を破って伸びていた太い根が動き出し、弥堂へ襲い掛かろうとしていた肉人形どもを薙ぎ倒した。

 

 

 横に払い纏めて転がし、その上に振り下ろして肉を叩き潰す。

 

 

「え――っ?」

 

 

 その光景に茫然となる。

 

 

 驚く愛苗とは対照的に、仲間をやられたはずのレッサーデーモンたちは殊更に歓声をあげた。

 

 

「マリョク! マリョク! ホウマンナマリョク!」

「タベル! タベル! オデモタベル!」

 

 

 わっと歓びの声をあげ、彼らは今しがた叩き落された木の根に飛びつく。

 

 

「いつっ――⁉」

 

 

 そして昆虫が蜜を啜るように、根に抱きつき歯を立てて、ピチャピチャとナニカを啜り出した。

 

 

「や、やめて……! 私をたべないで……っ!」

 

 

 思わず痛みを訴え、そして言った瞬間に「え?」と自分で首を傾げる。

 

 

「マナをはなせ!」

 

 

 その間に、木の根に集る肉人形たちにメロが襲い掛かった。

 

 

「やめろ……! このッ! マナに触るな……!」

 

 

 爪で裂いて、掴んで引き剥がそうとするが、次々と集まってくる悪魔たちに彼女は逆に取り押さえられそうになる。

 

 

「メロちゃん――っ!」

 

 

 反射的にメロを助けようと考えると、また木の根が動いて彼女の周辺の悪魔たちを薙ぎ倒した。

 

 自分でやったことなのに、その光景にまた茫然としてしまう。

 

 

「私、今……手で……、手を振り払おうとしたのに……」

 

 

 それなのに動いたのは――

 

 

「これ……、わたし……?」

 

「――そうですよ」

 

 

 眼下の視界いっぱいに蔓延り、世界を侵食するような木の根を見下ろしてそう呟くと、それは即座に肯定された。

 

 

 目線の高さ――いつの間にかそこにアスが居た。

 

 その悪魔はニヤリと嗤った。

 

 

「これは、これらは、これこそが――アナタです」

 

 

 その可能性――自身の身の変貌に怯える少女に、悪魔は無慈悲にそう告げる。

 

 

「素晴らしい……、これほどの威容、その御姿――御見それ致しました。初めまして新たな王よ。私は魔王ファウストが眷属、アスと申します。以後御見知り置きを。我らはアナタの御誕生を歓迎し、僭越ながら私が先だってお祝い申し上げます」

 

 

 優雅に恭しく礼をする。

 

 既に知己の間柄だというのに、まるで初対面のような、そんなアスの態度と言葉に愛苗は茫然とする。

 

 

 だが、すぐにハッとすると頭を振って叫ぶ。

 

 

「そんなこと……! それより弥堂くんを! 弥堂くんを病院に連れていかせて……っ!」

 

 

 切実なその願いにアスは一瞬ポカーンと口を開けて、それから困ったように半笑いで肩を竦める。そして堪えきれないといった風に「プッ」と吹き出し、口元を隠しながら「クックック……」と笑った。

 

 

「なにがおかしいんですか⁉」

 

 

 その態度を彼女は咎めるが、やはりアスは笑いながら眉を下げただけだった。

 

 物事を知らない幼い子供のワガママに困りながらも、それを微笑ましく思うように。

 

 

「そうは言ってもですね、王よ」

 

「早くしないと、弥堂くんが!」

 

「早く、というか――」

 

 

 アスはパチンと指を鳴らす。

 

 

「死んじゃう! 弥堂くんが死んじゃうの……っ!」

 

「死んじゃうというか――」

 

 

 先程、穴の中からクルードを引き上げた時のように、銀色の光の床が弥堂の身体をここまで運んできた。

 

 アスはその頭を乱暴に雑に掴みあげる。

 

 

「――死んでますよ? もうこれ」

 

「え――?」

 

 

 その言葉にまた愛苗は茫然としかけるが――

 

 

 頭を掴んでぶら下げた弥堂の首が――ナイフで切り開いたその傷口が自重によってミチミチミチッと肉がさらに裂ける。

 

 

「やめてぇっ!」

 

「やめる? 何を?」

 

「弥堂くんを! やめて! 殺さないで!」

 

「ですからぁ――」

 

 

 ニヤニヤと厭らしい笑みを浮かべて、アスは片手で弥堂の頭を持ちながら、もう片方の手で胴体から伸びる首を掴む。

 

 そして首の傷口がよく見えるよう、愛苗の方へと向けた。

 

 

「――俺なら問題ない。気にするな。何故なら俺はもう死んでいる。既に死んでいる人間の無事を気にしても無駄だ。とっくに死んでるんだからな。もっと効率を考えろ。そんなのは馬鹿のすることだ」

 

 

 魔法を使って弥堂の声に似せ、言葉に合わせて口を動かすように首の傷口をパカパカと開く。

 

 

「どうです? 似てた? 似てましたよね? いかにも言いそうですよね? それっぽかったですよね? アハッ――アハハハハハハッ!」

 

「…………」

 

 

 盛大に馬鹿にしたように目を見開きながら大笑いをする。

 

 そのあまりの行動に愛苗は絶句した。

 

 

「おい水無瀬! 変身だ! ほら、パクパクパク――あっ」

 

 

 愛苗のその表情に味をしめたのか、さらに首を激しく動かす。

 

 すると、首の肉の裂けが拡がり別の血管がブチっと千切れる。

 

 プピュっと血が噴き出た。

 

 

「あ、壊しちゃいました。すみません。でも、どうせ死んでるんだから別にいいですよね?」

 

「あああああっぁぁっぁあああぁぁぁっ!」

 

 

 友達の亡骸を冒涜され、愛苗は激昂し声を荒げる。

 

 その叫びに反応して幾本もの蔓のようなモノがアスへと伸びた。

 

 

「弥堂くんをかえして――っ!」

 

 

 何本かの蔓がアスを狙い、残りは弥堂の亡骸へと向かった。

 

 

 アスは特に抵抗することもなく弥堂の死体を離してその場から離脱する。

 

 蔓は弥堂を奪い返し愛苗の元へ引き寄せる。

 

 

 亡骸を両腕でそうするようにして、木の根で蔓で葉で、抱き寄せた。

 

 

「メロちゃん!」

 

「え?」

 

 

 続いてメロに声をかけると、蔓が彼女を巻き上げる。

 

 

「つかまってて!」

 

 

 そう忠告して愛苗は走り出す。

 

 

「何処に行こうというんです?」

 

「病院です!」

 

 

 足を動かしてこの場から逃げ出そうとする。

 

 

 だが、足などない。

 

 

 地に埋まった根を引き摺りコンクリを捲って剥がしながら、ゾゾゾゾっと這うようにして移動する。

 

 自分でも何をどうして動いているのか全然わからなかった。

 

 

 

 その悍ましさを考えないようにする。

 

 こんな自分なんかよりも、彼の生命の方が何倍も大切だ。

 

 何体かの悪魔を巻き添えに轢き潰していることにも気が付かない。

 

 

「弥堂くん、待ってて。今助けてあげるから……、だからもうちょっと、がんばって……」

 

 

 腕の中の彼は答えない。

 

 その身はさっきよりも冷たく感じた。

 

 

 でも、それは、彼に触れる自分の手が蔓や葉になってしまったからだ。

 

 だから温度をちゃんと感じられないんだ。

 

 

 そんな風に自分に言い聞かせて懸命に走る。

 

 

 しかし――

 

 

 宙空から魔法の剣が飛んできて、地を這う根に突き刺さった。

 

 

「あくっ――」

 

「ハハハハ、逃がしませんよ」

 

 

 剣が次々に降ってきて木の根を地面に磔にしていく。

 

 メロを吊る蔓も切られて彼女は下に落ちてしまった。

 

 

「い、いたい……っ」

 

「痛い? そんなものですか?」

 

「え……?」

 

 

 地面に立ち、“世界樹の杖(セフィロツハイプ)”の前でこちらへ手を向けるアスに問い返す。

 

 

「ニンゲンがこんな風に滅多刺しにされたら、普通は『痛い』だけじゃ済まないですよね?」

 

「あ……、うぅ……っ」

 

「ニンゲンだったら普通は死にますよ。その男のようにね」

 

「わ、わたしは……、弥堂くんは……っ」

 

 

 否定の言葉が出てこない。

 

 本当は自分で全部わかっている。

 

 

「その男は死に、アナタはもうニンゲンではなくなった。魔王と為った」

 

「ち、ちが……わたし……っ」

 

「違う? どこが? 今のアナタを見て誰がニンゲンだと思います?」

 

「それは……」

 

「大体、その姿で病院に行ってどうするんです? バケモノがニンゲンの死体を持ってきたと大騒ぎになりますよ? ちょうどいいから試しに行ってみますか?」

 

「あ、あぁ……」

 

 

 面白がるように目を細めながら、しかし決定的なことを彼女自身に言わせるようにアスは追い詰めていく。

 

 

「や、やめろ! マナをイジメるな……ッ!」

 

 

 そのアスの前にメロが立ちはだかった。

 

 

 アスの瞼は細まったままで、その中の目の色が冷える。

 

 

「ゴミめ」

 

 

 その侮蔑とともに魔法弾が飛んでいきメロを弾き飛ばす。

 

 地面に転がる彼女の前に転移し、人間の女児ほどの小さな躰を踏みつけた。

 

 

「裏切者が今度はこちらを裏切るのか? 意思が弱い。自分が無い。だから貴様はクズなのだ」

 

「イッ――⁉ アアァァァァ……ッ!」

 

 

 足に力をこめて踏み躙られるとメロは痛みを叫ぶ。

 

 

「メロちゃん⁉ やめて! メロちゃんにヒドイことしないで!」

 

 

 愛苗の叫びを無視してアスはさらに彼女を甚振る。

 

 悪魔にとって格上に従うことはほぼ絶対のルールだ。

 

 それを破るモノに対する感情は、人間が強盗犯や殺人犯に向けるものと近いものがある。

 

 

 何度か蹴りつけてメロがグッタリとすると、アスは彼女を跨ぎ愛苗の方へ歩こうとする。

 

 しかしその足首がガッと掴まれた。

 

 

「……貴様」

 

 

 見下ろすアスの目が赤く光る。

 

 

「た、たしかにジブンはクズッス……ッ」

 

 

 その目を震える躰でメロは見上げた。

 

 

「でも、ここはどかない! ジブンは悪魔で妖精で裏切者で……それが全部嘘で……! 全部嘘になっちまっても! でもマナの友達だけはやめないッ! ネコでも妖精でも悪魔でもなくなっても! それだけはジブンのまま……ッ、この手は離さない……ッ!」

 

 

 ボロボロと涙を溢しながら傷ついた躰で歯向かう。

 

 アスは怒りを露わにした。

 

 

「何を言っている、このバカがッ! その感情は我々が喰うモノだ! オマエが、悪魔がッ! ボラフといい! ニンゲンに感化され……! このクズがクズがクズが……ッ!」

 

 

 何がそこまで逆鱗に触れたのか不明だが、怒りを喚きながらメロを蹴りつける。

 

 

「や、やめて……」

 

 

 愛苗は彼女を助けたいと思う。

 

 だが、魔法も使えず、手も伸ばせない。

 

 

 先程の――こんな姿に変わってしまった時のように、意識が遠のくようになる。

 

 まるで自分が遠くなるかのように。

 

 

 酷い眠気が訪れたように視界が霞んでいった。

 

 

「だ、だれか……」

 

 

 上から落ちてくる暗闇にその呟きは塗り潰され――

 

 

 

 

 

 

 

――霞む視界に空が映る。

 

 

 美景近海、海水に身を浸しながら、希咲はそこに横たわるようにして空を見上げていた。

 

 グッタリとした身体には力が入らず、今にも沈んでしまいそうだ。

 

 

「あー、くそ……っ、なんなのよもう……」

 

 

 怒りを炉にくべて無理矢理エネルギーに変えようとする。

 

 

「めっちゃ強いし、天使……。むかつく」

 

 

 見上げる空に翼は無い。

 

 

「行かなきゃ……、愛苗……」

 

 

 意思とは裏腹に力無い呟きはその身とともに海面に沈む。

 

 

 乱反射しながら歪む夕陽の光が閉ざされる瞼に遮られた。

 

 

 

 

 

 

 

 

――瞼が開く。

 

 

 ぼんやりとした『世界』をぼんやりと見る。

 

 

 何をしていたのか、ここは何処なのか、自分はなんなのか――

 

 

 その総てが曖昧になる。

 

 

 視界に色々なモノが映ってくる。

 

 

 周囲ではたくさんの悪魔。お祭りのように騒いでいる。

 

 

 その近くにはメロが倒れていて、銀色の髪が誰かの血に浸かっていた。

 

 

「めろちゃ……、かぜ、ひいちゃう……」

 

 

 シュルリと根が伸びてグッタリとした彼女を包んだ。

 

 

「どうして……、こんなことに……」

 

 

 涙が頬を伝って顎先から落ちた。

 

 

 顔はまだニンゲンなんだと、そんなことを考えながら落ちた涙の行方を見る。

 

 

 顔の下に向けた視線の先には男の顔。

 

 

 血の気が失せ、色の変わった顔。

 

 

 首はパックリと裂けたまま。もう血は出てない。

 

 

 シュルシュルと蔓を巻き付けて、その傷を隠してあげる。

 

 

 壊れものに触れるように木の根を伸ばして、血塗れの頬を優しく撫でた。

 

 

「アナタのせいですよ」

 

 

 アスの声が聴こえる。

 

 

「アナタが巻き込み。アナタが死なせた。アナタのせいで」

 

 

 言い返すことが何も思いつかなかった。

 

 

 その通りだと思った。

 

 

 魔法少女だなどと調子に乗り、魔法で何でも出来ると妄信し、きっと何とかなると楽観的に考え、その結果――

 

 

 何にも知らないで。

 

 

 

 ポトリと彼の頬に涙が落ちる。

 

 

 もう一度木の根で撫でてそれを拭おうとするが、後から後からポロポロと涙が落ちてきた。

 

 

「……ごめんね、弥堂くん。ごめんね……っ」

 

 

 頬を拭えば涙が溶かした血が伸びて余計に彼の顔を汚してしまった。

 

 

 彼の死に顔。

 

 

「ごめんね……っ、守れなくって……! 私のせいで……ごめんね……っ!」

 

 

 泣くのが止まらなくて涙が止まらない。

 

 

 涙は次々に彼の顔へと落ちていって、溶かして血と混ざり彼の頬を滑る。

 

 

 まるで彼が血の涙を流しているように。

 

 

 その内の一雫が口の端に引っ掛かり、彼の口の中へと流れ落ちた。

 

 

 彼の顔をキレイにしてあげたいのに、ちゃんと汚れをとってあげたいのに、なにもできない。

 

 

 もうこの手はニンゲンの手ではない。

 

 大きくて重くて上手に動かせないから、力を入れたら彼を壊してしまうかもしれない。

 

 なにもできない。

 

 

 彼のことを助けたいと思って。

 

 それで色々と話しかけたりして、でも迷惑ばっかりかけて。

 

 

 それどころか逆に助けてもらって、楽しくしてもらって、その挙句の果てに。

 

 

 自分は彼に何もしてあげられなかった。

 

 忘れられさえしてしまって。

 

 何も残らない。残せなかった。

 

 彼の生命さえも。

 

 

 何も出来ない、何の価値も示せない。

 

 それは誰でもないということだ。

 

 

 自分は彼にとってナニモノでもない。

 

 

 

 

「――もう諦めなさい」

 

 

 悪魔が囁く。

 

 

「もうおわかりでしょう。アナタはナニモノですか?」

 

「わたし、は……」

 

 

 掠れた声。

 

 

 愛苗の前に鏡が顕れる。

 

 アスの魔法だ。

 

 

「…………」

 

 

 それに映った自身の姿に言葉が無い。

 

 

 なんて酷い顔、酷い姿。

 

 なんと醜悪な。

 

 

 続いて鏡の周りに先程も見たモニターのようなモノたちが次々に顕れる。

 

 

 それに映るのは、少し引いた絵で写された自分、上空から見下ろした映像、逆に下から見上げた映像、様々なアングルから写された自分の姿だ。

 

 

「あぁ……」

 

 

 コンクリを突き破ってここいら一帯に根を伸ばす巨木。

 

 ビルよりも高く天へ聳える大樹。

 

 その樹の一部となった自分。

 

 

(ちがう……、これがぜんぶ、わたしなんだ……)

 

 

 ショックはある。

 

 

 だが、どこか全部わかっていた。

 

 これはもう――

 

 

「これは“ナニ”ですか? これがアナタですよ。これはニンゲンですか? まだそう名乗れますか? 本当に心の底からそう思えますか?」

 

 

 畳みかけるようなアスの問いという名の誘導。

 

 答えるまでもなく、こんなのはもうニンゲンとは呼べない。

 

 

 アスは無理に答えを急がせずに杖を使った。

 

 “世界樹の杖(セフィロツハイプ)”が妖しく光り、妖しく喚び声を発する。

 

 

 すると、地獄のようになった埠頭にまたナニカが顕れる。

 

 

 それは門。

 

 巨大な門。

 

 

 ビルのように、今の愛苗のように巨大な石造りの門が突然この場に顕れた。

 

 

「タイミングが難しかったので心配でしたが、上手くハックすることが出来ました」

 

 

 意味不明なことを言いながらアスがさらに杖を使い、この場で集めた魔力をその門へと流し込んだ。

 

 

 荘厳な扉が開いていく。

 

 それは半分ほど開いたところで止まり、杖がさらに龍脈から魔力を吸い上げて門へと供給していく。

 

 

 すると、門の中から巨大なエネルギーをもった龍のようなナニカが叫びながら開きかけの扉に頭をぶつけてきた。

 

 怒り狂った叫びを上げながら扉の隙間に鼻先を捻じ込んでくる。

 

 

「なに、あれ……」

 

 

 見たことのない大いなるナニカを目にしてそう呟いた時、そのナニカと目が合った。

 

 

 そうしたら、そのナニカは驚いたように慄いたようにビクッと身を竦ませるような仕草を見せ、声を潜めてジッとしながらこちらを見てきた。

 

 まるで畏れを抱いたように。

 

 

(あぁ……、あの子より、わたしの方がコワイんだ……)

 

 

 その目に宿った色に嫌でも察してしまった。

 

 

 龍が大人しくなるとその下から地面を歩いてゾロゾロと悪魔たちがこちらへ出てくる。

 

 肉人形とは違う。それぞれがそれぞれのカタチを持った悪魔たちだ。

 

 その中には植物のような特徴を持ったカタチのモノもいた。

 

 

(わたしと……、わたしも、おんなじ……)

 

 

 劣等ではない、本格的で本物な悪魔の軍勢がこちらの世界へと出てくる。

 

 

 この世の終わりのような光景に心が萎れて、逆に躰はさらに育つように根を増して絡まり伸びていく。

 

 

 その異様と威容に悪魔たちは歓んだ。

 

 

 肉人形たちは手を叩きながら歓声を上げる。

 

 門から出てきた悪魔たちの知性あるモノは跪き頭を垂れ、或いは見定めるように視線を向けてくる。

 

 

「アレらはアナタの仲間。いえ、配下です」

 

「なか……ま……」

 

「アレらが、我らこそがアナタの同胞、同族です。我らが王よ」

 

「おう……さま……?」

 

 

 鏡へ目を戻す。

 

 

 そこに映る姿はどう見てもニンゲンよりも彼らに近い。

 

 

 多分、そういうことなんだろう。

 

 

「さぁ新たなる我らの魔王。改めて問いましょう――」

 

 

 満足げに彼女の顔を見たアスが目を見開き壊れた笑みを浮かべながら問う。

 

 

「その名を我らに聞かせてください」

 

「わたし……」

 

「アナタは誰ですか?」

 

「わたしは……」

 

 

 虚ろな瞳に映る景色がぼやけて霞む。

 

 周囲に飛び交う魔素がキラキラとキレイに輝いた。

 

 光の無い瞳からぽろぽろとこぼれる涙がその煌めきと混ざると、目の前が華やいだ気がした。

 

 

 

「アナタは、ナニモノですか?」

 

「わたしは、まお――」

 

 

 

 ぽろぽろでちゃう、なみだでいっぱいで

 

 キラキラのひかりとまざって、おはながさいたみたい

 

 

 せかいがおわった――

 

 

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