俺は普通の高校生なので、   作:雨ノ千雨

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2章22 ...THE PART-TIME OPERATION ⑥

 弥堂とウェアキャットの間で準備が整ったと判断して佐藤が口を開く。

 

 

「――さて、じゃあ改めてこれからの作戦を確認しよう」

 

 

 車内の者達は皆、最後列のサードシートに座る佐藤の方へ顔を向けた。

 

 

「概要は、アメリカの秘密機関“G.H.O.S.T(ゴースト)”と日本の秘密機関“清祓課”の共同で、福市 穏佳(ふくいち しずか)博士という日本人女性をテロリストたちから守ることだ」

 

 

 テロリストとは謂え、その背後には潜在的な敵国が存在している。

 

 複数の国家間での争い――今回その最前線に選ばれた舞台がこの美景市ということだ。

 

 

「次に個々人の配置と役目だ。まず、マッドドッグ君。キミは“G.H.O.S.T(ゴースト)”の人たちに混ざってホテル内で博士の護衛に参加してもらう。こちらは戦闘も視野に入っている。いいね?」

 

「問題ない」

 

 

 聞いていた通りの話なので弥堂は首肯する。

 

 佐藤も一つ頷くと次はウェアキャットの方へ顔を向けた。

 

 

「ウェアキャット君。キミは現場の外側でバックアップ。基本的には僕たちと行動を共にしてもらって、内部に居るマッドドッグ君と連絡をとりあってもらう。いいかな?」

 

「うん。任せて」

 

「そして僕たちは博士の宿泊先の外の警備という名目で参加をする。だけど、本質的には博士の護衛よりは、大規模な戦闘が発生した場合に市民に被害がいかないように守ることが主目的となる。僕がその総指揮官、戦闘の指揮は黄沙(フワンシャ)ちゃんが担当する」

 

「その指示がマッドドッグくんにも伝わるように橋渡しするのがボクの役目ってことだね?」

 

「基本的にはそうだね。だけど――」

 

「――もしも外でも戦闘が起こったら、ボクもそれに参加ってことだよね? 大丈夫。これでも少しはやれるから」

 

「ご理解いただけて助かるよ」

 

 

 快諾するウェアキャットに佐藤は嬉しそうに笑う。

 

 

「ちょっといいか?」

 

 

 そこで弥堂が口を挟んだ。

 

 

「なにかな?」

 

「大部分は理解したんだが、一部解せないものがある」

 

 

 作戦内容に関する質問を始める。

 

 

「こいつとテレパシーを繋がされたが、一般的な手段での通信は行わないのか?」

 

「あぁ、それね」

 

 

 佐藤は苦笑いをしながら答える。

 

 

「“G.H.O.S.T(ゴースト)”の人たちは当然無線で通信を確保する。僕たちも僕たちでそうする。だけど、彼らと僕たちの間ではそれは繋がらないんだ」

 

「どういうことだ?」

 

「これがこの作戦のややこしいところなんだけど。一応形上は共同作戦ってことになっている。だけど、前にも言ったとおり彼らは僕たちの助けを必要としていない。基本的にはね」

 

「ショバ代も寄こさずに横柄なことだな」

 

「あはは。まぁ、それはね、色々とあるのさ。僕たち――つまり日本への救援要請はアメリカ政府からの打診だ。だけど現場で働く“G.H.O.S.T(ゴースト)”はあまり介入をされたくない。そんな事情だよ」

 

「な、なんかメンドくさいね……」

 

 

 弥堂が嘆息して肩を竦めると、ウェアキャットも辟易とした態度を示した。

 

 

「これはね、わからないでもないんだ。僕の立場上は密に連絡をとらせてもらわないと困るのは事実。だけど“G.H.O.S.T(ゴースト)”の立場になってみると、彼らの言い分も理解できるんだ」

 

「なんで? けっこうワガママに聴こえちゃうけど。だって、エラそうなこと言ってるけど、結局日本で場所とか色々貸してあげてるわけじゃん?」

 

「プライドだけで彼らがそう主張しているわけじゃないからだよ。彼らは彼らの任務に真剣だからさ」

 

「ん? どゆこと?」

 

「あぁ、そういうことか」

 

 

 佐藤の遠回しな説明にウェアキャットは首を傾げるが、弥堂は納得を見せた。

 

 ウェアキャットは弥堂の方を向く。

 

 

「え? 今のでキミわかったの?」

「あぁ。要はスパイだろ?」

 

「そのとおり! 彼らは今、非常にナイーブなのさ!」

 

 

 弥堂の答えに佐藤は当然のように頷く。

 

 ウェアキャットは驚きの仕草を見せた。

 

 

「え? ボクたちを疑ってるってこと?」

 

「そういうわけじゃあない。日本という国家と、清祓課という組織には一定の信を彼らも置いている。だけど、そこに属する一人一人はどうかというと、そうではない。そういう話さ」

 

「わからないでもないけど……。でもさ、こっちは協力してるのに……」

 

「そんな問題じゃない。疑わない方がどうかしている」

 

 

 二人の会話に弥堂が口を挟むと、ウェアキャットは不満を弥堂へ向ける。

 

 

「キミはそうかもしんないけど、みんながみんなそうじゃないっていうか。それは普通じゃないだろ?」

 

「いや、そうじゃないよウェアキャット君」

 

「え?」

 

「今回に関してはマッドドッグ君の言うことが正しい。ぶっちゃけた話、信じるとか信じないっていう話じゃないんだ」

 

「そ、そうなの……?」

 

 

 だが、それは佐藤の方から否定される。

 

 一般的な価値観で考える方がここでは異端になるようだ。

 

 

「自分が“G.H.O.S.T(ゴースト)”の指揮官だと思って考えてみろ。他所から渡された人員をそのまま使えるか? 仮に相手を信用していたとしても、調べないわけにはいかないだろう」

 

「それはそう……かも……?」

 

「今回は実際に“G.H.O.S.T(ゴースト)”や関連組織から既にスパイが見つかってることだしねぇ」

 

「でも、捕まえたんでしょ?」

 

「見つけたらそれで終わりじゃない。一人居たなら他にも必ず居る。そう考えるのが当然だ」

 

「うーん、でもさ? 仲間が捕まったんなら、スパイがまだ居たとしても行動出来なくない? 自分まで捕まっちゃうわけにはいかないだろうし」

 

「行動出来なかったとしてもそれでいいのさ。スパイはまだ居る。そう思わせることこそが重要なんだ」

 

「え? なんで? スパイって疑われちゃったらもう終わりじゃない?」

 

「ふふ、それはね。じゃあ説明頼むよ、弥堂君」

 

「…………」

 

 

 佐藤は弥堂に回答を求める。

 

 弥堂は一度抗議の眼で佐藤を見てから、面倒そうにウェアキャットへ目線を動かした。

 

 

「今度は自分が敵側になったつもりで考えろ」

 

「テロの人たちってこと?」

 

「実行部隊というよりはその裏で指示をしている連中だ」

 

「うん、わかった」

 

「仮にスパイを何人も潜り込ませることが可能だとする。その場合、別にそのスパイはバレずに任務を完遂出来なくても構わない」

 

「え? どうして?」

 

 

 心底不思議そうにするウェアキャットをどこか白んだ眼で見ながら、弥堂は先を続ける。

 

 

「今回の目的は諜報活動じゃない。実力行使だ」

 

「攻撃する気マンマンってこと?」

 

「そういう話だったろ。で、その場合スパイは捨て駒だ」

 

「捨て駒って……」

 

「当然、最後までバレずに潜ませてカタにハメてやれればそれに越したことはないだろう。だが、そんなに甘くない」

 

 

 そこで弥堂は一度言葉を切って佐藤へ眼を向けた。

 

 

「そうだね。なんだかんだ“G.H.O.S.T(ゴースト)”は優秀だよ。実際検挙してるしね」

 

 

 すると佐藤が望んだ答えを足してくれる。

 

 それを受けて弥堂はウェアキャットへ顔を戻す。

 

 

「だが、一人スパイを見つければ他にもいるかもしれないと考える。考えざるを得ない。すると、どうなる?」

 

「……引き続き捜す?」

 

「そうだ。それをし続けなければならない。その結果どうなる?」

 

「どうって……、あ、そっか。人が足りなくなる?」

 

「そうだ。通常の護衛任務の為に集めた人員をスパイの捜索にも回さなければならなくなる。クロだと割れた者を尋問する者、見張る者。グレーなヤツらも拘束するなりで隔離しなければならない。リソースは常に割かれ、そして減らされ続ける」

 

「そこに他所から人を増やされると余計に大変になっちゃうってことか」

 

「ヤツらにとってはここは出先だからな。人員の補充もままならない。というか、自分たちの組織から送られた増援にもスパイがいることを疑わなければならない」

 

「それって少なくとも今回のことが終わるまでは解消されないのか……」

 

 

 ようやく伝わったようで、ウェアキャットも納得の姿勢を見せた。

 

 その様子を弥堂はジッと見ながら補足をする。

 

 

「スパイを潜り込ませることが可能。この事実を突きつけるだけで実力行使になる。スパイの洗い出しなどやっていればお互いに疑心暗鬼にもなるだろうしな。そのストレスを強いて、人数的にも精神的にも消耗させれば、襲撃の成功率も上がる」

 

「なるほど。うん、ありがとう。納得できた」

 

「別に」

 

 

 口角を上げて礼を述べるウェアキャットに適当に肩を竦めて、弥堂は佐藤の方を向く。

 

 

「だから俺一人なんだろ?」

 

「そう。だからって僕たちも完全に外されるわけにはいかないからね。どうにか一人だけってことで捻じ込ませてもらったよ」

 

「よく外部の民間人を入れることに納得したな」

 

「そこは御影さんのおかげだね」

 

「なんだと?」

 

 

 思いもよらぬ話に弥堂は眉を顰めた。

 

 

「キミは御影や清祓課で外部委託をする異能力者って紹介してある。以前に御影さんと一緒に外人街とやりあったろ? その実績を以て信用を証明できたのさ」

 

「そうか」

 

 

 気の無い返事をしつつ、内心では舌を打つ。

 

 

(さすがに優秀だな)

 

 

 依頼を受けてから中一日での今日。

 

 弥堂がその間に色々と小細工をしていたのと同様に、彼らもきっちりとやることをやってきている。

 

 

 やはり侮ってはいけない相手だと再確認すると同時に、やはり後がないことを再自覚した。

 

 今回の件は弥堂にとってまたとない程のチャンスだが、その成果次第では真逆の地獄に落ちることもある。

 

 

 先程のウェアキャットの疑問を弥堂に答えさせたこともそうだ。

 

 修羅場に放り込んだ時にどれだけ使えるのかを測られている。

 

 

「だから建前上は、嘱託の魔術師を清祓課から“G.H.O.S.T(ゴースト)”へ貸し出すという風になっているよ」

 

「了解した」

 

 

 その結果、死んだとしても何も痛まず、責任もとらなくていい――

 

――ただの捨て駒。

 

 

 それが弥堂の立場だ。

 

 

 日本の清祓課、アメリカの“G.H.O.S.T(ゴースト)”、多国籍なテロリスト。

 

 今回の戦場はこの三者によって支配権を奪い合っている。

 

 

 嘱託戦闘員としての弥堂は、日本側でアメリカに助力するというのが仕事になる。

 

 

 だが、個人としては違う。

 

 

 水無瀬 愛苗を守ることを目的とする弥堂 優輝という個人は、この三者の思惑がぶつかる戦場で上手く立ち回ることを求められる。

 

 今後の自分たちが生きるために。

 

 

 その為には――

 

 

「――ねぇ、キミちゃんとするんだよ? なんかスパイと間違われてアメリカの人に捕まっちゃいそう。すっごい怪しいし、めっちゃ裏切りそうだもん」

 

「…………」

 

 

 その為にはと思考を動かそうとしたらウェアキャットに水を差されてしまい、弥堂は相手をジッと見る。

 

 向こうもジッと見返してきた。

 

 

「――あっ⁉ やめろ! さわんなっ!」

 

 

 ムカついたので帽子を取ってやろうとしたら手をベチベチと叩かれたので仕方なく引っ込める。

 

 

「お前は保護者気取りで首を突っ込んできたのか?」

 

「は? んなわけないじゃん。ボクはマジメに仕事しに来たんだよ」

 

「そうか」

 

 

 質問はしたものの答えには大して興味はなかったので、弥堂は必要なことを聞く為に佐藤の方を向いた。

 

 

「それで? いつになったらホテルに入るんだ?」

 

「ん~?」

 

 

 肝心のことを聞いたつもりだったが、佐藤は曖昧に笑みを浮かべるだけで何も答えない。

 

 

「本当にここなのか?」

 

「……どういう意味だい?」

 

 

 それは弥堂がここに来てからずっと気にしていた疑問だ。

 

 真意は隠したままでそれを訊ねるも、佐藤は笑みを張り付けたままで問いに問いを返してくる。

 

 弥堂は視線を車外に振った。

 

 

「それらしい車や人間がほとんど居ない。厳重な防衛拠点には見えない」

 

 

 このホテルにはこれから要人を迎えるような雰囲気はない。

 

 現在待機中の地下駐車場にも護衛をするような者たちは居なく、そういった者たちが乗るような車もほとんど見えない。

 

 一般客もあまり見当たらず、清掃業者やゴミの回収業者の車の方が多いように見えるくらいだ。

 

 

「パッと見でそう見えちゃったら問題だから――かもしれないよ?」

 

「それはそうだな。だが、ここには全くニオイがしない」

 

「ニオイ?」

 

「そうだ。戦場のニオイだ――」

 

 

 そう言って佐藤へ視線を戻し、弥堂は眼を細める。

 

 

「フフフ……」

 

 

 佐藤はただ笑みを深めた。

 

 

「…………」

 

 

 弥堂がさらに剣呑な雰囲気を纏いかけた時――

 

 

「――ウルサイぞ、キョウケン。マテと言われタラ、マテ」

 

 

 助手席に座って黙っていた黄沙(フワンシャ)から窘められる。

 

 

「…………」

 

 

 弥堂は彼女へ一度視線を固定し、しかしすぐにスッと逸らした。

 

 

 すると――

 

 

「――ワタシ、オマエ、気にイッタ」

 

「あ?」

 

「もうチョット、マテ。もうスグ」

 

「…………」

 

 

 てっきり警告を受けたものだと思ったがどうもそういうわけではないようだ。

 

 だが、それならそれで余計に解せないと、弥堂は眉間に皺を寄せる。

 

 

「おやぁ、黄沙(フワンシャ)ちゃんが珍しいね。弥堂君、彼女がこんなことを言うのは滅多にないよ?」

 

「オヤジ、ウルサイ、キモイ」

 

「キッツイなぁ……」

 

 

 佐藤が茶々を入れたことでどこか有耶無耶にされたような雰囲気だ。

 

 弥堂はとりあえずもう少し大人しくしていることにした。

 

 

「言っとくけど、ちっちゃい子にヘンなことしちゃダメだよ?」

 

「うるさい黙れ」

 

「ニセネコ、チッチャイ言うナ、コロスゾ」

 

「えぇ……? ボクが悪いの……?」

 

 

 困惑とショックを浮かべるウェアキャットを無視して、弥堂は目線を目の前の背もたれに向ける。

 

 

「もうちょっとだから。僕たちの部隊も今配備してるからさ」

 

「……そういえば、そもそも目立つからお前らの人員は出すなという話ではなかったか?」

 

「うん、そうだよ。だからね、どうにかそれを解決――というか、問題ないように調整が出来てね」

 

「よくわからないな。とにかくここが現場になるんだろ?」

 

「うん。その予定になっているよ」

 

 

 面白くない回答だと、弥堂は肩を竦めてそれ以上は口を開くのを止めた。

 

 

(トーマスの野郎。ガセを掴ませやがったな……)

 

 

 脳裏で名前の無いBARのバーテンに呪詛を吐く。

 

 

 だがそれをしたところで意味がない。

 

 なんにせよ大幅にプランを変更する必要が出来てしまった。

 

 

 どう修正するべきかと思考を切り替えようとすると、隣で動く気配を感じて横目を向ける。

 

 そうやら同じく待機のウェアキャットが暇を持て余してスマホを見始めたようだ。

 

 弥堂にはそういった習慣はないので、黙って目線を前に固定した。

 

 

 しばらく車内は無言となる。

 

 

 しかし少しすると――

 

 

「――あれ?」

 

 

 ウェアキャットが驚いたような声をあげる。

 

 

「どうした?」

 

 

 弥堂はチラリと横目を向け、念のため訊ねた。

 

 

「あ、うん。今“edge”見てたんだけどさ。この近くのホテルで火事がって――SNSで拡散されてて……」

 

「どうでもいい」

 

 

 ウェアキャットがスマホの画面を向けてこようとしたが、弥堂は興味を失って視線を切る。

 

 その態度にムッとしたウェアキャットが何か文句を言おうとした瞬間――

 

 

「――はい、もしもし……」

 

 

――背後の座席の佐藤のスマホが着信音を鳴らし、彼は素早く電話に出た。

 

 

 反射的にウェアキャットが口を噤んだことでまた会話が途切れる。

 

 佐藤の相槌の声だけが少し続き――

 

 

「――さぁ、行くよ」

 

 

――通話を切断すると同時に佐藤はそう言った。

 

 

「え?」

 

「了解しました」

 

 

 ウェアキャットは首を傾げるがその言葉は彼に向けられたものではない。

 

 彼を越えたその先の運転席だ。

 

 これまで一言も口を聞かなかったドライバーの男は短く返事をし、すぐに車を発進させた。

 

 

「わわわ……っ」

 

 

 急な制動に驚いてウェアキャットは慌てて深く座り直す。

 

 車はスチール音を鳴らしながら地上への出口へと向かう。

 

 

「おい、何故外に?」

 

「まぁまぁ、少し急ぐからベルト締めてね?」

 

 

 弥堂が眉を顰めて問うが、佐藤は碌に答えない。

 

 

 車はあっという間にホテルの敷地を出て公道に踊り出る。

 

 そして法定速度を超えたスピードで走って行く。

 

 

 周囲の流れる景色を見て弥堂はまた眉を寄せる。

 

 今まで居たホテルニューポート美景まで来た時の道を引き返しているように見えたからだ。

 

 

 記憶の中に記録されて新しい光景がまるで逆再生されていくようだった。

 

 だが――

 

 

(――なんだ……?)

 

 

 どこか違和感を覚える。

 

 

 その正体は他の車だ。

 

 

 道を走る車や路肩に停まっていた車が先程よりも少ない。

 

 目に見えて。

 

 

 ワンボックスが角を曲がると長めの直線に入る。

 

 道の脇には大きな敷地、ポートパークという公園だ。

 

 

 道の端に停車中のパトカーが見える。

 

 

 車が速度を上げてそれを通り過ぎた瞬間、横目に映る。

 

 停車していたパトカーの脇に居た警官が弥堂たちを乗せた車が通り過ぎた後の車道に入ってくるのが。

 

 

 素早く視線をバックミラーに振ると、警官が車道を閉鎖している様に見えた。

 

 

(なにが起きている?)

 

 

 そう考えていく内に視界に入るパトカーが増えていく。

 

 パトカーだけでなく、消防車や救急車も何台か見えた。

 

 

(まさか先程の火災とは――)

 

 

 そのように連想した時、ワンボックスカーは公園の外周に沿った直線を走破する。

 

 そして公園に隣接した敷地に入っていった。

 

 

 角を曲がり切ると視界に映るパトカーや救急車両が一気に増える。

 

 

 曲がりながら車のサイドのウィンドウの向こうに看板が見えていた。

 

 

 その看板にはこう書かれていた。

 

 

 ポートパークホテル美景――と。

 

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