俺は普通の高校生なので、   作:雨ノ千雨

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2章23 G.H.O.S.T ⑥

 

“――さて、ヤロウども。オレたち“チームインディア”はシズカ博士の護衛のバックアップが役目だ”

 

 

 挨拶が一段落すると、ダニーが全体に向けて発言する。

 

 彼がこのチームのリーダーのようだ。

 

 

“そんで、コイツは“マッドドッグ”。日本の清祓課から貸し出された捨て駒だ。仲良くやれよ”

 

 

 改めて弥堂のことを名前とともに紹介する。

 

 隊員たちは何故か口笛を吹いて、面白可笑しそうに囃し立てた。

 

 

<なんで“G.H.O.S.T(ゴースト)”の人たちってキミの名前聞くと変な反応するんだろね?>

 

 

 それら一切の反応を無視して、弥堂はダニーに訊ねる。

 

 

「――で、具体的な行動は?」

 

 

 ここまでの道すがらに聞いた内容だが、改めて確認をする。

 

 

「メインで張り付いてる護衛チームの休憩を回したり、何かあった時の補欠要員ってとこだな。さっき言ったとおりだ」

 

「何もない時はここで大人しくしていればいいんだな?」

 

「そうそう。だから、楽にしてろよ」

 

 

 ダニーから返ってくる答えにも変化はなかった。

 

 

 確かに楽なのはいいことだが、今回の目的を考えるとそれでは少々困る。

 

 

 弥堂が何もしなくても、それで博士の護衛が無事に完了するのならそれに越したことはない。

 

 しかし、今日初めて会った“G.H.O.S.T(ゴースト)”の実力を弥堂が妄信することはないし、仮に任せっきりで成功するとしても、それでは弥堂自身のアピール出来るような成果にはならない。

 

 

 博士の護衛成功は最低条件であり、それだけでは今回弥堂がこの依頼を受けた目的を果たすことにはならないのだ。

 

 

「呼ばれるまではずっとこの部屋に居なければならないのか?」

 

「ん? まぁ、基本的にはそうだな」

 

「そうか」

 

「あぁ……、でも、順番がきたら面談に呼ばれるから、一旦はそれまで待機ってことになるな」

 

「面談?」

 

 

 探りを入れるようにダニーに訊ねると、別方向での新たな話が会話上に浮かび上がる。

 

 

「どこまで聞いてっかわかんねェけど、オレらん中にゃネズミが紛れてる」

 

「スパイだろ。まだ居るのか?」

 

「正直なところ、わかんねェな」

 

 

 ダニーは白状するように両腕を拡げて見せた。

 

 

 それは仕方のないものもあると弥堂も考える。

 

 組織である以上、現在スパイが絶対に居ないということを証明するのは、永遠に不可能なことなのだ。

 

 

「この美景に来るまでに大分削いだんだが、こっちで新たに合流した連中もいるしな……」

 

「今から一人一人尋問するのか? 悠長なことだな」

 

 

 弥堂はわざと挑発するような物言いをしてみる。

 

 相手のことを知るためには、とりあえず適当に怒らせてみることが有効だ。

 

 少なくとも弥堂はそう考えている。

 

 

 だが、相手が怒ることを期待していたわけではないが、むしろダニーはニヤリと笑った。

 

 

「そこはオメエ、アレよ。元FBIの敏腕捜査官サマの出番ってやつよ」

 

「そんなヤツまで居るのか」

 

「ジャスティーヌちゃんのことよ」

 

「へぇ」

 

 

 部隊の指揮官の情報は重要だ。

 

 弥堂は興味を持ったことを表に出さぬように続きを訊く。

 

 

「彼女はそっちの出身なのか。諜報員だったか?」

 

「それはCIAの方だ。FBIは国の警察機関だよ」

 

「ふぅん」

 

「オマエそんなことも知らねェのか……。まぁ、いい。彼女はオレらとは違って栄転――キャリアアップってやつさ」

 

「要するに尋問が得意なのか?」

 

「得意っつーか……」

 

 

 そこまで質問を重ねたところで、突然ダニーの歯切れが悪くなる。

 

 弥堂は怪訝そうに瞼を動かした。

 

 

「どうした?」

 

「なんっつーか、彼女は能力者なのさ」

 

 

 弥堂の眉がピクリと僅かに反応する。

 

 

「能力?」

 

「サイコメトリーってヤツさ。聞いたことねえか?」

 

 

 その言葉自体には、弥堂にも聞き覚えがあった。

 

 廻夜部長から渡された漫画などの文献にたまに登場していた超能力だ。

 

 

「読心が出来るという超能力だったか?」

 

「正確には違うみてェなんだが、大体そんなモンじゃねェか?」

 

「適当だな」

 

 

 ダニーも詳細までは知らないようだ。

 

 

「さっきの見てたろ? あの女がオレに自分の能力のことを詳しく教えると思うか?」

 

「……それはそうか」

 

 

 それが本当かどうかはわからないが、理屈の上では納得できた。

 

 これ以上はしつこく聞かないようにする。

 

 

「オレらはアメリカを出発する時にチェックがもう済んでるから、今回やるのは合流組がメインだな。オマエも後で呼ばれるぜ」

 

「そうか」

 

 

 知ってようがそうでなかろうが、この尋問は避けては通れないイベントのようだ。

 

 面倒なことになったと内心で舌を打つ。

 

 

「今シズカ博士の部屋を掃除してる連中と一緒になるはずだ。そん時はオレが付き添ってやるよ」

 

「博士の部屋に合流組がいるのか?」

 

「荷物運びのヤツだけな。博士周りはもう一回洗って必要があれば再編するかもな。なんせ一番シロいヤツを置かなきゃなんねェ」

 

「それはそうだろうな」

 

 

 肝心の護衛チームにスパイが居たのでは致命的だ。

 

 とはいえ、仮に居たとしても、ここから博士を攫って脱出するのもそれはそれで困難なようには思えるが。

 

 だとしても、そこにスパイが居ていい理由にはならないし、捜さない理由にもならない。

 

 

「では、呼び出しを受けるまでは俺は何もしなくていいんだな?」

 

「あぁ。今の内に休んでおきな」

 

「わかった。少し仮眠をとる」

 

「おぉ。今夜は長いぜ?」

 

 

 断りを入れるとダニーが器用にウィンクをしてくる。

 

 

 弥堂は部屋の隅に移動し、床に腰を下ろした。

 

 立てた膝をブラインドにして表情を見せないようにする。

 

 それから眼を閉じて、少し思考をすることにした。

 

 

 ウェアキャットのテレパシーを切り抜けたと思ったら、今度は“G.H.O.S.T(ゴースト)”の指揮官のサイコメトリーだ。

 

 こっちはロクに魔術も扱えないというのに、超能力の世界に引き摺り込まれても困ると辟易とする。

 

 

 まだ敵と出遭ってもいないのに、友軍の目を潜ることに四苦八苦するなんて笑えない――

 

 

 そう思いかけたところで、そう言えばそんなのは昔からそうかと思い直した。

 

 そんなことより実質的なことを考えなければならない。

 

 

 サイコメトリーによる尋問――

 

 

 それがどのようなものなのかを想像する。

 

 弥堂は自身の思考の中へと潜った。

 

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