<――おい>
弥堂はウェアキャットへ念話――テレパシーを送った。
「…………」
だが、返事はない。
<おい>
この急いでいる時に何をモタモタしてやがると――弥堂は苛立ちながらもう一度呼びかける。
「…………」
また、返事がない。
<おい、聞いてんのか。この役立た――>
<――うるさぁーいっ! こっちは今忙しいの!>
3回目で悪口を言おうとしてみたら、ようやく反応があった。
どうやらあちらも立て込んでいるらしく、随分と怒っている様子だ。
そんなことはどうでもいいと、弥堂は自分の言いたいことを言う。
<聞きたいことがある>
<は? 今忙しいって言ったのに? つか、どのツラ下げてフツーに連絡してくるわけ?>
<別に俺はお前にツラを晒していない。お前が勝手に見ているだけだ。この卑劣な覗き魔め>
<あーあーうっさい。そーゆーのいらない>
どうやら先程『お前は必要ない』的なことを言って無視したのをウェアキャットは根に持っているようだ。なんて心の狭いヤツなんだと軽蔑する。
しかし、弥堂の方もあの時は忙しかったので仕方がなかったのだ。
なので、弥堂は早速用件を伝えることにする。
<博士はどこだ?>
<あ、フツーにそのまま自分の用事始めるんだ>
ウェアキャットはちょっとビックリして、しかしもう慣れたものとスルーすることにした。
<で、博士がなに? つか、キミと一緒にいるんでしょ? なんでこっちに聞くわけ?>
<敵に奪われた>
<はぁっ⁉>
しかし、続いた報告でさらにビックリ仰天することになった。
<な、なにやってんの⁉ 敵ってテロリスト⁉ つか、キミ今どこ⁉>
<わからん。窓から落とされたから正確な階層は不明だ>
<お、落とされたって……、マジでなにやって……。え? 大丈夫なの?>
<わからないから聞いてるんだろ。多分15Fより上だ>
<博士じゃなくってキミが大丈夫かって――あぁーもぅっ! その調子ならだいじょぶそうだね!>
<博士の居場所を捜せないか?>
<もぉーっ! こっちだってヨユーないってのに! しょうがないなぁ……、ちょっと待ってて――>
ウェアキャットは愚痴を漏らしてから黙る。
博士の居所を探っているのかもしれない。
その間の時間で弥堂は考える。
今気が付いたことを――
(こいつ本体が何かやっている時は、こっちの様子が見えてない……?)
ウェアキャットは弥堂の様子を映像で見えていたはずなのに、博士が攫われたことを知らなかった。
『今忙しい』と言った。
恐らく外の戦闘に参加しているものと思われる。
ということは、戦闘の時はこちらを監視する能力が使えなくなるのではないかと考えたのだ。
それは単純に不可能なことなのか。
それとも、やろうと思えば出来るが、難易度的に難しくなるということなのか。
それはわからない。
これが今気が付いたことの一つ。
そしてもう一つは、弥堂以外の他の者でも位置情報を個別に捜すことが出来るようだ。
そこまで考えたところで、再びウェアキャットの声が聴こえる。
<…………多分、これかな>
<見つけたのか?>
<んー……、博士を連れてる敵は一人?>
<ああ。少なくとも逃げられた時点では>
<ん>
ウェアキャットは短く頷いて一つ間を置いた。
それから詳細な情報を伝えていく。
<上層階の方で、さらに上を目指して走ってる反応が2つ。一緒に居る。でも、鍛えてる人が走るよりはスピードが出てない。上層の方で同じような動きをしている他の反応はない。多分これだと思う>
<今どのあたりだ?>
<ここは……、22Fかな>
<そうか。わかった>
博士を攫ったアレックスは最上階を目指しているようである。
弥堂の目的地も決まった。
<そういえば、お前は何をしている?>
<は? キミが巻き込んだ一般人を救助してんだけど⁉>
<なんだと?>
さりげなく別の質問を振ったら聞き捨てのならない答えが返ってきて、弥堂はスッと眼を細める。
<……今、ホテル内にいるのか?>
<そーだよ!>
<へぇ。今何階に居る?>
尋ねるとウェアキャットが答えるまでに僅かな間が空いた。
<……えっと、5F……? 下に降りながら救助して行ってる>
<1Fは今頃戦場になってるぞ>
<わかってるよ! つか、そこを抜けたテロの人たちが少しずつ上の階にも来始めてるし!>
<要救助者を1Fに連れて行っても外に出せないんじゃないのか? 下の戦闘が終わるまで上の階に匿っては――>
<――知ったことか!>
『匿ってはどうか』と提案しようとしたが、ウェアキャットの鋭い意思にその言葉は断ち切られた。
<1Fの敵なんて、そんなの全部外に叩き出すに決まってんでしょ! こっちだっていい加減もう怒ってんだからっ!>
<……そうか>
内心で舌を打ちながら弥堂が適当に返事をすると、ウェアキャットはその怒りを弥堂にも向けてくる。
<キミに一番怒ってんだけど!>
<そうか。がんばれ>
<うっさい! こっち終わったら手伝いに行ったげるから、さっさと博士を追え!>
だが、あちらもこれ以上の長話をする気はないようで、そこで通信を打ち切られた。
弥堂もそれ以上は聞かず、部屋の外へ出る。
パタンっと閉まったドアのプレートをチラリと見る。
1212号室――
ここは12F。
3階分下に落とされたようだ。
最上階は25F。
博士は今22F。
あいつは今5F。
「このホテル内の人間は皆殺しにする」
そう呟いた時――
『――スケベ心』
――ポツリと、こちらも呟くようなルビアの声が一言だけ聴こえた。
「…………」
弥堂は2秒だけ沈黙して――
「その通りだな」
――絶好のチャンスではあるが、優先順位を入れ替えることはやめた。
最上階は25F。
博士は今22F。
急がねば追い付けない。
弥堂は【身体強化】へ魔力を注いで走り出した。
通路を駆け抜け、階段を跳び越え、最上階を目指す。
16Fまで戻ってきたところで――
(――妙だな……)
弥堂は走りながらスッと眼を細めた。
ここまでの3フロアほどの道中、人っ子一人いない。
生きている人間の姿もそうだが、廊下に死体が転がっていることもない。
(いくらなんでも人が居なすぎないか……?)
テロリストたちに関してはまだここまで上がって来れられていないのだろうと、そう考えれば納得は出来る。
だが“
“
そんなことを考えながら16Fのエレベーターホールに差し掛かった時――
――パッと。
廊下に灯りが点いた。
「なんだ?」
先程の部屋のトラップほどではないが、暗がりに慣れていた為に一瞬顔を顰める。
停電する前と同じようにホテル内は明るくなっていた。
停電から復旧してしまったのだろうか。
そう考えた時、真横のエレベーターから駆動音が伝わる。
扉上部の階表示に眼を遣ると、エレベーターは下の階から上に向かってきているようだ。
「まさか……」
最上階に辿り着いたアレックスがエレベーターを呼び出したのだろうか。
そうだとすると、ここまで昇ってきてしまったのは完全に裏目となる。
このエレベーターは1F、15F、20Fといった重要な階以外には止まらないように設定されていると聞いた。
今から15Fに戻ってエレベーターの呼び出しボタンを押して止めるべきか。
しかし間に合うだろうか。
それよりも1Fに降りて待ち伏せをする方が――
「――そうか」
1Fには今ウェアキャットが向かっているはずだ。
少なくとも弥堂よりは近い位置にいる。
ヤツに伝えてエレベーターの出口を押さえさせるよう指示を――
そう考えた時に、移動中のエレベーターは弥堂の居る16階を通過して上へ――
――は行かずに、チーンっと音を鳴らしてこの階で止まった。
「なんだと……?」
驚きに眼を見開く弥堂の前で、エレベーターの扉が開いた。
御影探偵事務所――
所長室のデスクのPCモニター前で、
「――まだお休みにならないのですか?」
スーツ姿の男がそう声を掛けながら、彼女のデスクに湯呑を置いた。
「大山さん。ありがとうございます」
彼は清祓課の職員であり、弥堂の理不尽な暴力の犠牲になった大山さんだ。
入れたばかりのお茶を置くと、大山は所長のデスクの脇に控えるように立つ。
「あの、そちらの椅子かソファにお掛けになって下さい……」
「構いません」
どこか居心地が悪そうに所長が着席を勧めるが、大山は微動だにせずそれを固辞した。
所長は少しオロオロと困った様子を見せてから、またオズオズと大山の顏を見上げる。
「あの、すみません。ここで私に付き添って頂くことになってしまって……」
そう言って、申し訳なさそうに眉を下げた御影所長へ、大山はやはり表情を変えないままで同じ返事をする。
「構いません」
「そうですか……」
所長はシュンっとして湯呑を手に持って唇に近付ける。
「それに――」
彼女が「ズズっ」と熱いお茶を啜った時、大山の口が僅かに動く。
それは相手に伝えるための言葉ではなく、彼の口の中で小さく発音された。
「――私はこの為に清祓課へ入ったようなものですから……」
「え? なにか仰いましたか?」
「いえ。なにも」
その小さな声はお茶を啜る所長にはハッキリとは聴こえなかったようで、彼女は不思議そうに首を傾げる。
「それに。私はこの怪我で作戦には参加できませんから」
大山は自身のあばらに手を当て、自嘲気味な言葉を口にすることで誤魔化した。
弥堂の暴行によって骨に罅が入ったため、彼は本日の現場への参加は認められなかったのだ。
「す、すみません。私の術が未熟なばかりに……」
そうすると、また別方面で所長を恐縮させてしまった。
大山は内心でそれに困ってしまうが、表の態度には出さぬように首を横に振る。
「いえ、充分です。そもそも完全な治癒術は失われて久しいですから。ここまで治して頂いただけで感謝しております」
「そうですか?」
「えぇ。見事な腕前です」
「ふふふ。ありがとうございます」
唇に手を当てて微笑む彼女からフイっと大山は顔を逸らした。
「それよりも――」
「はい?」
そしてすかさず話題を逸らしにかかる。
「――そんなに心配ですか? 従業員たちのことが」
「え? えぇっと、そうですね……。心配してます。ウェアキャットさんを……。あと、弥堂さんが心配です……」
そう訊ねると所長は一度キョロキョロと目を泳がせてから神妙な顔になった。
妙な言い回しだなと、大山は「はて?」と首を傾げる。
「あ、その……、誰も酷いことにならなければいいなぁ、と……」
すると、所長は慌てて誤魔化すようにそう言った。
大山は厳かに頷く。
「ご安心を。我が清祓課が付いております。こういった時の為に訓練をしているのです。卑劣なテロリストになど負けません」
「い、いえ……、あ、いえ……、あの、はい……」
大山が自信ありげに豪語してみせると、所長は何故かまた目をキョドキョドとさせてしまった。
(うぅ……っ、どどどどうしましょう……⁉)
彼女は悔いていた。
その卑劣なテロリストよりももっと卑劣で危険で何をするかわからない男を味方として送り込んでしまったことを。
(弥堂さん……、お願いですからいい子にしていてください……っ)
ちなみにこの時にはもうホテルは彼の手によって爆破され、“
すでに手遅れである。
そんなことは知らないまま、御影所長は気を揉ませ続けていた。
知ったらきっと彼女は卒倒してしまうだろうから、ある意味知らないままが幸せなのかもしれない。
「都紀子様……」
そんな彼女の心情などこちらも知らず――
物憂げな彼女の顏に大山も心を痛める。
どうにか励まそうとさらに言葉を重ねた。
「大丈夫ですよ、都紀子様」
「え?」
「あの現場には
「はぁ」
「彼女はああ見えて一流の戦闘員であり、“
「そう……、ですね。はい。ありがとうございます……」
「恐縮です」
『そういうことじゃないんだけどなぁ』と思いつつも、あまり彼を困らせてもいけないので、所長は気を使ってニコっと微笑む。
大山さんは恐縮した。
「ですので、あまりご心配なされぬようお休みください。もう時間も遅いですし、ここいらは治安もよくない」
「いえ、今夜はこのビルの上に泊まります。というか、私もうほとんどここに住んでるようなものですし」
「そうですか。では、朝までしっかりと御守り致します」
「は、はい、よろしくお願いします」
御影所長は苦笑いになるのを堪えながら、彼にペコリと頭を下げる。
(その一流の戦闘員の味方と戦ってたりとかしないといいんですけど……)
そして大山に悟られぬよう、また陰鬱な溜め息を小さく漏らした。
窓の外を見る。
もう少しで日付が変わる頃の時刻。
夜は深まっていた。
ポートパークホテル美景、外――
「――うわあぁぁぁっ⁉ 隊長っ! 裏門の部隊も突破されましたぁ……っ!」
深い夜空の下、明かりの少ない戦場では銃声と怒号が響いている。
「隊長っ! 正門前もう維持できませんっ!」
「退かせロ。ケガ人、救急車、ツッコメ」
次から次へと舞い込む隊員たちの情けない声での報告に、この部隊の隊長である犬耳ロリの
返事をしながらも鋭い目線は敵兵から動かさず、射撃の手も止めない。
「隊長大変です!」
「ナンダ」
そこへまた別の隊員が報告に走ってくる。
「ホテル1Fの防衛ラインが破られ始めてます! まだ多くはありませんが敵がホテル上階に侵攻してます!」
「チッ」
そこで初めて
そろそろ応戦から次の動きを考えるべき時かもしれない。
「隊長ぉーっ! 隊長ぉーっ!」
考えを巡らせようとすると、また新たな野太い声が。
「今度ハ、ナンダ」
母犬に助けを求める子犬のようにキャンキャンと集まって来る情けない部下たちに
「隊長ぉーっ!
「竿上のヤツ、撃たれて……っ!」
二人の隊員に挟まれる形で支えられながら、グッタリとした一人の隊員が運ばれてくる。
「ナンダ、シンダカ」
「いえ」
「足を撃たれました」
両側の元気な二人の隊員が訂正してくる。
それくらいのことをいちいち報告してくるなと口を引き攣らせると、
「さ、
「お、おい……」
「無理するな竿上……」
すると、足を撃たれたという竿上は自身を支える仲間たちに声をかけて、ヨロヨロと歩き出す。
ヒョコヒョコとビッコを引きながら自分に近づいて来る男へ
やがて、彼女の目の前まで来た竿上は根が果てたようにドシャァっと地面に崩れる。
「竿上っ⁉」
「大丈夫か……⁉」
竿中と竿下が倒れた竿上に駆け寄る。
ただ冷たい目を向けていた。
「た、たいちょう……、俺はもうダメです……」
「ソウカ、シネ」
竿上は震える手を隊長に伸ばしながら、茫洋とした目で見上げる。
まるで最期の言葉でも遺すかのように。
「ど、どうか、どうかさいごに……」
「…………」
「『本当は大好きだったよ、お兄ちゃん』と、笑顔でお願いします……」
「このクライで、ヒト、シナナイ」
「ギャァーーッ⁉」
図々しい要求をしてくるクソのような部下の腿の傷口を、
「竿上ーっ!」
「傷は浅いぞ!」
彼らは竿上、竿中、竿下という、奇しくも名字が似ているだけの隊員たちだ。
いつも三人一緒につるんでおり、隊内では『竿兄弟』のニックネームで親しまれている。
清祓課というのは行政の所属ではあるので、基本的にはお堅い部署だ。
しかし、組織強化のために少し前から異能力者以外の人員に関しても、積極的に一般からのスカウトや採用を行っている。
そのせいか、この『竿兄弟』のような少しおかしな職員もこの頃増えてきていた。
シャレの通じないタイプの女児である
「それよりモ――」
イヌ耳女児は思考を切り替える。
「――潮時カ……」
最早ホテルの外は戦線を維持することも困難となっている。
こうなっては突入してくるテロリストの部隊の勢いを止めることは不可能だろう。
建物の上階にも侵攻されているという話だし、そろそろ防衛から撤退に切り替えるべきだ。
おそらく“
こちらもそれに合わせて方針を変えるべきだ。
だが――
「――クソオヤジ……ッ」
その命令を下すべき清祓課の指揮官の佐藤はこの修羅場にすっかり怯え切ってしまい、現在は装甲車の中に引き籠って膝を抱えて泣きながら震えている。
「……オマエラ、ナカマ、カイシュウ、シロ」
仕方ないので勝手に撤退の準備を進めることにした。
「よろしいのですか? 係長は」
「オヤジ、カス」
完全に越権行為ではあるので、終わった後で咎められるかもしれないが――
「――ソンナコト、生き残ッテ、考えル」
敗ける戦場には慣れている。
表情を固めてホテルを見上げる。
上の階の何ヶ所かから火の手が上がっていた。
周囲の消防車がそこへ向けて放水している。
「ココ、モウ、終ワリ」
この場で自分がすべきことは、護衛対象の撤退の援護と、一人でも多くの部下を生還させることだ。
「た、隊長っ! テロリストどもが……!」
「ン?」
その時、正門を抜けてホテル入口へ向かう敵の部隊の一部がこちらへ向かってきた。
こちらは負傷兵だらけと見破られたのか、小銃を構えながら突進してくる。
「チィ……ッ」
苛立ち混じりに指先に力を入れようとすると、
「ソウダ――」
「オイ、ホース、繋ゲ」
「は、はい!」
近くに居た隊員に命じて自分はホースの先端に筒先を接続する。
そして放水口を敵部隊へ向けて迷わずに放水を行った。
“――ウ、ウオォォッ⁉”
“な、なんだぁ……⁉”
完全にこちらをナメていて無防備に向かってきた敵の戦闘員たちは為すすべなく地面に転がりながら流されていく。
「オイ、オマエラ、イマのウチニ――」
――逃げろと、
だが――
「――うおぉぉっ!」
「さっすが隊長だぜッ!」
「今だ、ぶっ殺せェーッ!」
――その前に、ロリ隊長のご活躍に興奮した『竿兄弟』の3人が倒れたテロリストたちに襲いかかった。
「オラァッ! 死ねェッ!」
「クズが! クズが!」
「イヌ耳は伊達じゃねェんだよ!」
転倒中の敵兵に暴徒鎮圧用のゴム弾を容赦なく撃ち込んでいく。
しかし――
“この、ジャップが……!”
“ナメてんのか、そんな豆鉄砲で!”
“死ねェ!”
あっという間に他の敵に囲まれて実銃を向けられる。
「ひぃっ⁉」
「う、撃たないでェ!」
「お、おがあぢゃぁーん!」
竿兄弟は素早くハンズアップをして命乞いをした。
「ア、アノ、バカドモ……ッ!」
部下の醜態に頭痛がした
そして、グッと足を踏みしめると――
「た、たいちょう――⁉」
――隣にいた部下の視界から一瞬で消えた。
“――ギェッ⁉”
次の瞬間には竿兄弟にライフルを向ける敵兵の喉にナイフが突き刺さっている。
“な、なんだオマエは――ウガァッ⁉”
すぐに左右に素早く跳ねるようにステップを踏み、慌てて銃を向けてくる敵の視界から消えた。
そして自分を見失っている敵を蹴りつけ殴りつけ、その幼気なボディに見合わぬ膂力で一撃で無力化していく。
「隊長ッ!」
歓喜の声を上げる竿兄弟を無視して、
立っている者、倒れている者問わずに、あっという間に敵を皆殺しにしてしまう。
「「「…………」」」
その容赦のない雄姿を目にした竿兄弟はスンっと真顔になり、駆け足で所定の位置まで戻っていった。
「ヨケイナ、テマ」
付近の敵の殲滅を確認した
「オイ、コイツのハシゴ、アソコ」
そして運転席に座る男に、ホテルの上の方を指差しながら指示をする。
その一カ所が割れている。
「アソコカラ、ワタシ入ル。敵、狩ル」
“
ならば、ホテル内に突入し、侵攻する敵を狩って護衛対象の逃亡を援護することにした。
指示を受けた消防車がハシゴをかけるためにホテル建物へ近づいていく。
「隊長ご一緒します!」
「足手マトイ、ジャマ、ニゲロ」
着いてこようとする部下をバッサリと斬り捨てていた時――
ハシゴを伸ばしていた消防車が突然、強烈な音ともに上から何かにグシャっと潰された。
「ナニ――⁉」
何かが上から落ちてきて、消防車の屋根に衝突したようだ。
潰れた消防車の屋根から、ノソリと大きな人影が現れる。
「あ、あのクソヤロウ……ッ! 絶対に許さねェェェッ!」
それは弥堂に12Fから落とされた