ギャルナースのリンカさんは、この場に現れた者を茫然と見ている。
「――リンカさん……っ!」
だが、その人物に名を呼ばれたことでハッと我にかえった。
「ダ、ダメ……ッ! 逃げて愛苗ちゃん……っ!」
確かに『誰でもいいから助けて欲しい』と願ったのは自分だ。
しかし、その助けてくれる相手は本当に誰でもいいわけではない。
助けを求めてもいい相手とそうではない相手がいる。
水無瀬 愛苗――
彼女はそうではない相手だ。
むしろ自分が助けてあげなければいけない対象である。
「だ、誰か大人の人を見つけて伝えて……っ。変態が出たって……!」
「へんたい……?」
愛苗はコテンと首を傾げて模型の人を見る。
すると、模型の人はその場でゆったりとスクワットを開始し、自分は健全な存在であることを強調した。
その姿を見て愛苗ちゃんはハッとする。
「あ、あの……! なんでお洋服着てないんですか? お外でそれはいけないと思います……!」
「い、いや、ここまで剥き出しだと服の問題じゃ……」
正義の味方に“着衣キャンセル”を指摘されると模型の人は口元に手をやってアワアワする。
愛苗はその隙にダッシュした。
「リンカさん! 今たすけますっ!」
「来ちゃダメだってばぁー⁉」
慌てるリンカさんを他所に愛苗ちゃんは50m走13.8秒の脚を発揮する。
「い、いけない……っ」
リンカさんは顔を青褪めさせる。
自分に近づくということは、この模型の変態に近づくということと同じだ。
もしも幼気なJKがこの変態の餌食となってしまったらと想像すると、冷や汗が一気に噴き出した。
しかし――
「えっ……?」
――お目めをぎゅっとした愛苗ちゃんが一生懸命に走ってくると、万が一ぶつかって彼女が転んでしまったりしないように模型の人はスッと廊下の端に避けてくれた。
「あっ……、ありがとうございます」
愛苗ちゃんが立ち止まってペコリとお礼を言うと、模型の人も彼女にペコペコと頭を下げた。
「は……?」
その様相をリンカさんは口を開けて見ていることしかできない。
そうして愛苗は無事に要救助者の元へと辿り着いた。
「あ、あの、すみません。リンカさんが恐がっちゃうかもしれないので、もう少しあっちに離れてもらえますか?」
愛苗が丁寧に“おねがい”をすると、模型の人はペコペコと頭を下げながら少し距離を開けた場所に移動してくれた。
「な、なんなのこれ……?」
呆けるギャルナースさんを他所に、大体いい感じの距離で対峙するようになると、場に一瞬ビミョーな間が出来る。
そして――
「――そこまでですっ!」
――愛苗ちゃんがリンカさんの前でバッと手を広げて『お守りのポーズ』をとると、模型の人もバッと『敵対のポーズ』をとった。
「これ以上リンカさんにイジワルはさせません……っ!」
「え、えっと……?」
愛苗も模型の人も至って真剣な表情だ。
「あの……、あなた、ひょっとして痴漢の人ですね……!」
愛苗はビシッと模型の人を指差す。
「お外でお洋服着ないで、女の人に裸を見せるのは痴漢だからダメって、ななみちゃんが言ってました!」
「裸っていうか……、もう内臓見えちゃってるし、痴漢ってレベルじゃ……」
愛苗ちゃんが提示した罪状にリンカさんも首を傾げてしまう。
模型の人もどこ吹く風といったように、両手を頭の後ろで組んでゆったりと腰を回した。まるでお腹の中を見せつけるように。
その仕草に愛苗ちゃんは「あっ!」とお目めをパッチリさせる。
「だ、だめです! 裸でもダメなのに、お腹の中まで見せちゃったらリンカさんが“ヤ”になっちゃいます……!」
「まぁ、うん。ヤはヤね……」
「はやく仕舞わないとオマワリさんに怒られちゃいますよ⁉」
愛苗ちゃんがいっしょうけんめいに犯人を説得して着衣を促すが、模型の人は挑発するように自身の肝臓を指で摘まみムニムニとさせた。
その姿にリンカさんが露骨に顔を顰める。
「き、きも……。あのね、愛苗ちゃん?」
「はい。なんですか? リンカさん」
「えっと、痴漢っていうか、あれ人間じゃないんじゃない?」
「えぇっ⁉」
プロフェッショナルな魔法少女の愛苗ちゃんは、一般人に「あれ人間じゃなくない?」と指摘されてビックリ仰天した。
「だって、フツーさ? あんな風に内臓丸出しで生きてらんないじゃん? よくあるでしょ? 病院の怪談で人体模型が動き出すヤツ。まんまそれじゃん?」
「そ、そういえば……」
愛苗は慌てて模型の人を注視する。
すかさずお鼻をクンクンと動かした。
それから愛苗ちゃんはハッとする。
「あ、あなた……、さてはゴミクズーさんですね……⁉」
ビシッと指差して犯人に真実を突き付けると、模型の人は両手を派手に突き上げてビックリすることで、『正体を見破られたことに対する驚き』を表現した。
「ゴ、ゴミクズ……?」
“よいこ”の愛苗ちゃんのお口から出てきたまさかの口汚い罵倒言葉にリンカさんもビックリする。
「みんなが寝てる夜の病院で迷惑をかけるなんて……、このままじゃ明日みんなが寝不足になっちゃう……!」
甚大な被害を予測して愛苗は深刻そうな顏になった。
模型の人は『クックック……愚かなニンゲンめ』とほくそ笑んでいそうなジェスチャーで彼女を煽る。
「その上、リンカさんにお腹を見せてイジワルまでして……、そんなのゆるせません……っ!」
愛苗がハッキリと戦意を露わにすると、模型の人もシババババっとシャドウをして応戦の意思をアピールした。
一人だけノリについていけないリンカさんは白目になってしまいそうだったが、寸でのところで頭を振って正気を取り戻す。
「愛苗ちゃん! なんかわかんないけどここは危険よ! ワタシのことはいいから逃げてっ!」
どうにか緊迫感を絞り出して彼女に伝える。
だが、愛苗はやはり首を横に振った。
「ううん。私、リンカさんを助けにきたんです!」
「た、たすけにって……どうやって……?」
「それはもちろん――」
愛苗はリンカさんを安心させるように頷き、続きの言葉は誰かに託すように切った。
しかし、誰も発言しないまま数秒が経過する。
愛苗ちゃんは「あれー?」と首を傾げてから周囲をキョロキョロと見回してハッとした。
「あ、そうだ。メロちゃん居ないんだった……」
恥ずかしそうに「えへへ」と笑って、彼女はお顔を横に向ける。
そしてお口をお手てで隠しながら裏声をだした。
「今っスよ、マナ! 変身っス!」
「うん! わかったよメロちゃん!」
今日は相棒が不在なので一人二役でお決まりのやりとりを自演すると、変身ペンダントを取り出す。
「え? 変身……?」
不可解そうに眉を寄せるリンカさんの前で、愛苗は両手でペンダントを包み、それに口づけをした。
そして――
「――
ブーケを投げる花嫁のように、愛苗は幸福への祈りを唱えてペンダントを宙へと放つ。
だが――
「あれ?」
――ペンダントが光を放ちながら飛び回るはずが何も起こらず、ペンダントはそのまま落ちてきて、コチンっと模型の人の頭に当たった。
当然変身バンクにも移行しなかった。
模型の人は床に落ちたペンダントを拾うと、ペコペコと頭を下げながら愛苗に手渡してくれる。
「あ、模型の人さん、ありがとうございます」
愛苗がお礼を言って受け取ると、模型の人は所定の位置に戻っていった。
「愛苗ちゃん……?」
「あれー?」
リンカさんがハラハラとした目を向けてくる。
愛苗は悠長に小首を傾げながら、反応のないペンダントをブンブンっと振った。
その時、ここまで大人しくしていた模型の人の目がギラリと赤く光る。
攻撃色だ。
模型の人はバッと大仰な仕草で両手を自身のお腹の中に入れた。
「えっ……?」
さらに二つの腎臓をそれぞれの手で取り出すと、その左右の手を小刻みにブルブルと動かす。
謎の粘液がピチャピチャと辺りに飛び散った。
「ウヴォァーッ」
模型の人が愛苗に迫る。
ビックリした愛苗ちゃんが「きゃーっ」と逃げるのを、腎臓を突き出しながら追いかけた。
床にへたりこむリンカさんの周囲をバタバタと駆けまわる。
それが何周かしたところでリンカさんはハッとした。
「オラァ――ッ!」
リンカさんは元ヤンちっくな前蹴りを模型の人の腰にぶちこむ。
かけっこ中に背後から衝撃を受けた模型の人は、お腹の中身を溢しながら転んでしまった。
すると、彼が背負っていた風呂敷の中身もバラバラと床に広がる。
出てきたのはホルマリン漬けになった標本の各種内蔵だった。
模型の人はハッとすると、バッと床に這いつくばりながらそれらを拾い集めた。
「オラァ! 死ね! 死ね! このヘンタイがッ!」
そんな模型の人の背中にリンカさんはハイヒールによるストンピングを喰らわす。
キックの度に模型の人のお腹の中身がポロポロと床に零れた。
「あ、模型の人さん。これ、胆のう……? 落ちてましたよ?」
親切な愛苗ちゃんが模型の人のお腹の中身を拾ってあげると、彼はペコペコと頭を下げて謝意を示す。
「ちょっと、愛苗ちゃん⁉」
それにリンカさんは顔色を変えた。
「バッチィからそんなの触っちゃダメっ!」
「あ、ごめんなさい……」
リンカさんは急いで駆け寄るとハンカチで愛苗ちゃんのお手てを拭う。
そして使用済みになったそれをバシッと模型の人に投げつけた。
模型の人は顔面にビチャっと張り付いたハンカチもさりげなく回収し風呂敷に仕舞う。
リンカさんはもうそちらには目を向けることはなく、愛苗の手をガシっと握った。
「さ、今の内に逃げるよ!」
「え?」
ぽやぽやとした彼女を急かしながら手を引いて、ギャルナースさんは再び廊下を駆けだす。
「大丈夫! ワタシが守ってあげるから……!」
助けにきたはずなのに何故か助けられてしまった愛苗ちゃんは、「あれー?」と不思議そうにしながら手を引かれるままにお姉さんに着いて行った。
その頃――
「――ほんぎゃぁーッス……⁉」
ビックリして中庭から逃げ出したネコさんはそこらを適当に走り回り、そしてまた中庭へと戻ってきていた。
その後ろからは怒り狂ったネズミさんが追いかけてくる。
「ま、まだ追いかけてくるッス! なにゆえこのネコさんにかようにも執拗な執着を……っ⁉」
<オマエに殺されたからでしょ>
<え? ジブン、ネコさんだし今は忙しいから難しい話はちょっと……>
<このクソネコが……ッ!>
会話の成立しない下等動物にエアリスは苛立ちMAXだ。
<バカネコ! いい加減にしなさい! さっさとワタシのところに――>
<――いや、お姉さん、気遣いは無用ッス。ジブンに構わずお姉さんだけでも逃げてくれッス>
<そもそもこちとらずっとベッドの上だわ!>
エアリスは辛抱強くペットの躾を行う。
<そうじゃなくって! ワタシを小娘のところに持っていけって言ってるのよ!>
<え? なんで?>
<ワタシがいないと多分あの子変身出来ないわよ?>
<ニャニャニャ、ニャンとぉーーッ⁉>
驚きの事実にネコさんはビックリ仰天した。
<そ、そんな……っ⁉ それじゃマナがニャベエってことッスか⁉>
<そう言ってるでしょ!>
まるで今初めて聞いたとばかりのメロのリアクションに、エアリスさんの魔力回路が血管のようにビキビキと軋む。
<なんでもっと早く言ってくれないんッスか⁉>
<ブッ殺すぞこのクソ悪魔がァーーッ!>
<ひぃぃ……ッ⁉>
続いたメロの言葉にエアリスがブチギレると、おブラのカップに罅が入りそこから魔素がプシャァーっと漏れ出る。
怒りが念話にも伝わり、キンキンっとメロの頭の中でハウリングを起こした。
<さっさとワタシを小娘のところに連れて行けェッ!>
<ハハハハイッス!>
<オマエわかってんのか⁉ これでもし、小娘の身に何かあったら……>
その先の想像はメロにも難しくない。
メロの鼻から鼻水がパピュンっと飛び出た。
<ジ、ジブン、少年に惨たらしくぶっ殺されるッス! あの外人さんたちみたいに!>
<ワタシだってユウくんに嫌われちゃうだろうがァ! ワタシが捨てられたらオマエのせいだからな⁉ 未来永劫キサマを呪ってやる……ッ!>
<あわわわ……ッ! い、今すぐ行きますッス……!>
顔色を変えたメロは病棟の方へ進路をとる。
「ウオォォォッ! ネコさんウィーングッ!」
ピョコっと背中の上にちっちゃな羽を出して、3階を目指して飛んだ。
そして唯一開けっ放しになっている窓の中に飛び込む。
『オラァ! クソネコォ! 早くしろォッ!』
「ハハハハイッ! ただいまァーッ!」
メロはベッドに飛び込むようにして頭から突っ込んだ。
そして枕元に鎮座する“しましまブラジャー”を口に咥えると――
「――オラァッ!」
そのままシームレスにベッドからジャンプし、廊下へ繋がる引き戸の取っ手に後ろ回しネコさんキックをぶち込んでドアを開ける。
シュタッと着地してすぐに廊下をダッシュした。
走り出して数秒後、出て来たばかりの病室のドアがボカーンっと吹き飛ぶ。
怒りのネズミさんだ。
「ウギャギャッス⁉ あのネズ公まだ追いかけてくるッス!」
『相当恨みが深いようね』
「クッ、罪なき通りすがりのネコさんに筋違いな恨みを向けるなんて、もはや正気じゃないんッスね……! なんて悲しき亡霊なんッスか……」
『筋はバッチリ合ってると思うけど』
メロはネズミさんに追われながら必死の顏で廊下を走る。
「そ、そうだ! お姉さんの触手であのゴミクズーをぶっ殺してくれッス!」
いいことを思いついたと提言をするが――
『ダメよ』
「え⁉ なんでッスか!」
――エアリスには素気無く断られてしまった。
同時にウネウネと触手がブラジャーから伸びてくる。
『こうやって形を作るくらいなら小娘の余剰魔力で創れるけど、この魔力って元々廃棄予定みたいなモノなのよ』
「そ、それで……っ?」
『ザコ魔物とはいえ、あれを殺すくらいのチカラを引きだしたら流石の小娘でも気付くわ。ワタシの存在をバレたくないのよ』
「で、でも、今は緊急事態っつーか……!」
必死に懇願してくるメロをエアリスは鼻で嘲笑った。
『フン。極論、オマエや小娘が死のうがワタシにとってはどうでもいいのよ』
「えぇっ⁉」
『ワタシはね、ユウくんに嫌われたくないの。他のニンゲンや動物なんていくら死んでもどうでもいいわ。ユウくんだけが生きていればいい』
その極端な物言いにメロは戦慄する。
ある意味で、あの弥堂と長年一緒にいただけのことはあるという納得感もあった。
「な、なんて主体性のない女なんッスか……! どこまでも彼氏ファースト……! これはまさしくメンヘラ……!」
『誰がメンヘラだこのクソ悪魔がァ!』
「ウゲゲゲッ⁉ こ、ころんじゃうッス……!」
生意気な口をきいた下僕に腹を立てた聖女さまは、触手を巻き付けてメロの首を絞める。
メロは後ろ足2本で器用に走りながら、前足の肉球でポンポンっと触手をタップした。
つまらなそうに鼻を鳴らしてエアリスは触手を緩めてやる。
『ということで、このまま行くわよ。あのゴミクズも小娘に始末させればいいでしょ』
「う、うぅ……っ、暴力のない職場を目指して欲しいッス……!」
『うるさい黙りなさい。早く走れ』
「それで、どこに行けばいいんッスか? マナは今どこに?」
『知らないわよ。自分で探しなさい』
「うぅ……っ、いつかパワハラのない職場を実現して欲しいッス……っ」
メロはザァーっと涙を流しながらおヒゲをウネウネとさせる。
「――ッ! 見つけたッス! 上ッスね」
『あっそ。早く行きなさい』
「なんかマナも走ってる……?」
『まさか……、もう接敵して変身できないことに気付いて逃げてるわけじゃないわよね? とりあえず急ぐのよ』
「うおぉぉぉッス! 今行くッスよ、マナァーッ!」
『うるさい! 静かに走りなさい!』
「うえぇぇぇッ! 早くマナに会いたいッス……!」
ノンデリ触手にケツを引っ叩かれながら、メロは愛苗の元を目指した。
上階ではリンカさんに手を引かれながら愛苗も走っている。
運動の得意ではない彼女はヒーヒーと息を切らせながら頑張って足を動かしていた。
「…………」
リンカさんは焦りを浮かべる。
というのも――
(この子……)
チラリと愛苗の方を見て――
(――走るのめっちゃ遅い……っ!)
お目めをバッテンにしながら彼女は頑張っているが、追手のことを考えるとどうしても焦燥感が加速する。
(でも……、心臓のこともあるし、ムリな運動をさせるのも……)
だからといって立ち止まるわけにもいかず、八方塞がりになっていくように感じた。
「それなら――ワタシが引っ張るしかない!」
迷ったのは僅かな時間。
リンカさんは先程勝手に履かされたハイヒールをポイポイっと脱ぎ捨てる。
「愛苗ちゃん! がんばって……!」
「は、はい……っ!」
そして走る速度を加速させて彼女の手をぎゅっと強く握った。
どうにか1Fまで行くしかないと階段を目指す。
少しの間、そうして走っていると、徐に隣からクンクンと鼻を鳴らす音が聴こえた。
リンカさんは「おかしい」と感じる。
その隣は、手を引いている愛苗が居る方とは逆側の隣だ。
誰もいないはずのそちらへ恐る恐る目を向けると――
――そこには、今しがた脱ぎ捨てたハイヒールを顏に押し当ててニオイを嗅ぐ模型の人が居た。
「――ギャアァァーーッ⁉」
「きゃぁーーっ⁉」
「――っ⁉」
ギャルナースさんの悲鳴に愛苗ちゃんと模型の人もビックリする。
女子二人は「きゃー」「きゃー」言いながら逃げて行った。
模型の人は使用済みのハイヒールを風呂敷に仕舞いつつ、それに余裕の走りで着いていく。
必死に逃げる二人の脇でギャルピースをキメたり、少し先行して床で腕立て伏せをしたり、さらには二人の周囲をカニ走りでシャカシャカ周回したりして果敢にニンゲンたちの恐怖と嫌悪感を煽った。
そうすると女子たちはさらに小気味よく「きゃー」「きゃー」と喚く。
その様子に模型の人は大変気分をよくした。
「チョ、チョーシにのって……っ!」
バカにされていることだけはわかるので、リンカさんは眦を上げる。
だが、今は頑張って走ることしか出来ない。
それでも、この手には守るべき人が居る。
病院の外まで逃げればきっとどうにかなるはずと信じて、患者さんと一緒に怪異的な逃走劇に身を投じた。