謎の着ぐるみに夜道で襲われたメロだったが、その窮地に突然現れた伯爵を名乗る男が彼女を救った。
その男――
大地へと降り立ったパンティストッキング伯爵はゆっくりとメロとゲロモンの姿を見回した。
「――さて。あのマシンのような男が珍しく人間らしいことをしているようだからと、少々お節介でもしてやるつもりで見張っていたのだがね……」
伯爵はスッと目を細める。
たったのそれだけでメロとゲロモンは得も知れぬ威圧感を覚え、無意識に踵が下がった。
「こ、このプレッシャー……、タダモンじゃないッス……! 助けてくれたけど、このオジさんは味方なんッスか……?」
不安がついメロの口から出ると――
『――味方などいない』
――使い魔契約のご主人である男のそんな声が聴こえた気がした。
伯爵はゲロモンの姿を見ながらスンっと鼻を鳴らす。
「その被りもの……、なにか魔術的な隠蔽がかかっているね。卑劣にも正体を隠している。だが、このワタシは誤魔化されんよ」
つまらなそうに吐き捨てて肩を竦めた。
「ふむ。とはいえ――だ。悪魔の小競り合いに介入してどちらかに肩入れをする義理までは流石にないのだがね……」
独り言のような伯爵の言葉にメロの胸がドキリと跳ねる。
(あ、悪魔ってバレてるぅーッ⁉)
一目で見破るなんて、ますますこの人物は何者なのだろうと畏れた。
伯爵はそんなメロを静かに見て、それからゲロモンを見る。
「本来の我々の存在意義に従うのならば、どちらも滅ぼしてしまうべきか」
(こ、これはマズイ流れッス……!)
メロは焦って、どうするべきかを考える。
すると、自分の手の中の物に気付いてハッとした。
「オ、オジさん、これ……!」
「む?」
メロは伯爵にスススっと近寄ると、まるで賄賂でも渡すような仕草で老紳士の手に何かを握らせる。
伯爵は手を持ち上げて、それをジッと見た。
「これは……」
メロが渡したアイテムは“ギャルナースさんのおもらしストッキング”だ。
伯爵はピクリと眉を動かしてから、手の中のそれに顔を寄せる。
白人紳士の高い鼻がクンクンと動いた。
「…………ジーニアス――」
感極まったように言葉が漏れる。
「……ジーニアス……、ジーニアス……! ジーニアスだ……ッ!」
老獪なはずの男が語彙を失ったように、続けて4回も『天才的だ』と発言した。
何が天才的なのかについては、紳士協定により具体的な発言が禁じられている。
伯爵は徐にタキシードの懐から密閉袋を取り出した。
手に入れたお宝を袋に入れると念入りに空気を抜いて素早くジッパーを閉じる。
そして懐に大事そうにしまい込むと、空になった手をバッと振った。
「――悪いね、怪人クン。ワタシは紳士だ。そして正義を愛している。親愛なる女王陛下に誓ってね。夜更けにか弱き婦女子を害する悪漢め! 決して貴殿を許さぬッ!」
伯爵はあくまで正義によって女児を守ると宣言をする。
メロの表情が和らいだ。
「オ、オジさん……! じゃあ……⁉」
「安心したまえ、小さなレディよ。ワタシはキミの味方だよ。義によってね!」
あくまで義によるものであると伯爵は念押しをする。
どうやら賄賂による買収が成功したようだ。
「ハァーッハッハッハァッ! 覚悟するんッスね、この毛むくじゃらヤロウ! 全身にパーマをかけられたくなかったら、シッポを巻いてとっとと逃げ出すがいいッスよ!」
大人の味方を得た女児は途端にイキる。
しかし、ゲロモンはむしろ戦意を高めた。
着ぐるみボディから“ゆらぁ”っと気炎が上がる。
そして“シシシッ”とシャドウボクシングを行ってアップをした。
最後にキレのある左フックをブンっと振って、ゲロモンは老紳士と対峙する。
「ほう? 威勢がいいじゃないかね。不審者め」
不審者のイキりに不審者が殺気立った。
「よかろう。貴殿のその見栄――我がパンティストッキング伯爵家への宣戦布告と受け取ろう!」
両者がバッと構えると、途端に緊張感が高まる。
月の下で、惹かれ合うようにして出逢ってしまった行きずりの不審者と不審者のバトルが始まった。
メロはちょっとだけ帰りたいなと思ってしまったが、ここでテンションを下げると変態たちに一気に呑まれてしまう。
努めて知性を下げて、メロはゴクリと喉を鳴らした。
静かな夜の中でその音はやけに鮮明に響き、そしてそれが開戦のゴングとなった。
伯爵とゲロモンはお互いの間合いを測り始める。
立会人となったメロも両者の戦力を探った。
(あのゲロモンの中身はフツーのニンゲンだとは思えないッス。対してこの変態ジジイもある意味タダモンじゃないだろうけど……、どこまでやれるんッスか……)
現時点ではメロはゲロモン有利と判定している。
もしもこの老人が負けたら次は自身の番だ。
メロは己の保身を考えてさりげなく逃走ルートを探した。
その時、ゲロモンが動き出す。
ずんぐりお手てをギュッと握って顔の前で構える。
ピーカブースタイルだ。
着ぐるみの顎を両手で守りながらゆっくりと左右に身体を揺すり始めた。
伯爵はフンっと鼻を鳴らす。
「このワタシに拳闘で挑むつもりかね? まぁ、好きにやってみるといいさ。ただし。貴公は覗くことになる――」
緩やかな口調から一転、ギラリとした眼差しで戦意を解放した。
「――我が魂の結晶。生涯を懸けて究めし【パンスト魔術】の深淵を……ッ!」
ドーンっと宣言されたその言葉に、メロはゴーンっと白目を剥きそうになりつつ――
(――ん? 魔術? 今このジイさん魔術って言った? コイツ魔術師なの⁉)
――なかなかに衝撃的な情報であることに気が付いた。
ご主人である弥堂は悪魔たちだけでなく、この世界の魔術師たちのことも警戒していた。
だからこれはとても重要な情報だ。
しかし、どうしても【パンスト】というノイズの自己主張が強く、メロの思考は捗らない。
(あれ……? これってこのジジイが勝ったとしても、大変マズイことになるんじゃ……)
メロは本格的に逃走に踏み切ろうとしたが、しかし闘争はもう止められない。
ゆったりとした風が伯爵とゲロモンの間に枝から離れた葉を連れてくる。
二人の視線が交錯する中間に落ちてきた。
ゆらゆらと揺れる葉の向こうに、ゆったりと身体を揺するゲロモンの姿が見え隠れする。
その葉が伯爵の目を隠した瞬間――
――ゲロモンの姿がヒュンッと消えた。
次の瞬間にはずんぐりボディが伯爵に肉薄している。
「ほう――」
ゲロモンの超速のステップインに対して、伯爵は獰猛に歯を剥いて嗤った。
右手の指をタキシードの左の袖口に挿し入れると、ズルっと何かを引き抜いた。
轟っ――と、竜巻を錯覚するような勢いでゲロモンの左が撃ち出される。
「甘いッ!」
伯爵は横に身を反らしながらその拳を躱した。
そしてすり抜けるようにして、ゲロモンの右脇へと移動する。
ゲロモンは素早く拳を引き戻して、今度は右の拳で伯爵を迎撃した。
だが――
「――甘いと言ったぞ? ワタシはッ!」
「――⁉」
伯爵の顔面を狙ったゲロモンの拳は、何かネットのようなモノに吸い込まれる。
そのネットは打撃の威力でミョォーンっと伸びた。
「こ、これは――ッ⁉」
その現象を目にしたメロが驚愕する。
ゲロモンの拳をシールドのように受け止め、そしてゴムのように伸びてその威力を殺したのは――
「――パンストだとぉーッス⁉」
伸縮性に優れた素材で作られたパンティストッキングが、ゲロモンの打撃の威力を吸い込んで完全に無効化した。
伯爵は広げたパンストを構えながら闘牛士のようにヒラリと身を躱す。
今度はゲロモンの背後へと回った。
ゲロモンは慌てて振り返る。
すると――
「――ワタシのことより、自分の腕を気にしたらどうかね?」
――伯爵はニヤリと笑う。
「――ッ⁉」
その言葉に釣られてゲロモンが自身の腕を見ると、先程受け止められた右腕にパンストのレッグ部がグルグルに巻き付いていた。
そのパンストは伯爵の左袖の中へと繋がっている。
「そら、捕まえたぞ? むん――っ!」
伯爵が左手でパンストを引くと、まるで合気道で投げられたかのようにゲロモンのずんぐりボディがバランスを崩し宙へと浮いた。
「ハァッ――!」
伯爵は空中で身動きのとれないゲロモンへ右の掌をむける。
すると、その袖口からパンストが伸びていって、ゲロモンのぶっといボディに何重にも巻き付いた。
「それぃッ――!」
伯爵が右のパンストを引くとゲロモンの身体が高速回転しながら、パンストを巻き取りつつ伯爵の手元まで引き寄せられる。
「征くぞッ――» Strumpfhosen《シュトゥルムフォーゼン》
伯爵は魔術詠唱をし、ゲロモンの躰をヨーヨーのように投げて撃ち出した。
さらに――
「ぬぅぅん……ッ! » Strumpfhosen《シュトゥルムフォーゼン》
――次の魔術を行使し、ハンマー投げのようにその場で身体を高速回転させる。
パンストで拘束されたままのゲロモンの躰がド派手にブン回された。
中心点で直立したまま回転する伯爵と、その周囲を残像を残すような速度で旋回するゲロモン――
そのシルエットは外側のメロからはまるで独楽のように見えた。
ゲロモンの躰がそこらじゅうの物にぶつかりまくる。
電柱を一本ヘシ折り、病院の塀を砕き、ガードレールをどこかへぶっ飛ばした。
「――オォォォォ……ッ!」
その回転のまま、気合の咆哮をあげた伯爵が高く跳び上がる。
空中でギュルルルッとド派手に回転しながら、その回転の方向を横から縦へと変化させた。
巨大なタイヤのように回転をし、そのまま地面へと落ちてくる。
「くたばれィッ――! » Strumpfhosen《シュトゥルムフォーゼン》
縦回転で得たエネルギーを余すことなく乗せたまま、ゲロモンは猛烈な勢いでアスファルトに叩きつけられた。
破片を周囲に撒き散らしながら、路面にグシャァァァッとクレーターが出来上がる。
その中心ではお目めをグルグルにしたゲロモンが倒れていた。
シュルルルッとパンストが縮んで、伯爵の手元へと戻っていく。
「――んなッ……⁉ なななな……ッ⁉」
その豪快なバトルにメロは目ん玉をひん剥く。
「パ、パンスト魔術クッソ強ェェェーッ⁉」
思わずバンザイしながら驚きと称賛を口にするが――しかし、どこか納得いかない気持ちもあった。
以前に悪魔学校で習ってはいたが、メロが実際にニンゲンの魔術師に遭遇したのはこれが初めてだ。
厳密に言えばメロのご主人である弥堂も魔術師と謂えば魔術師なのかもしれない。
しかし、あの男は勇者モードの時は別として、基本的には殴る蹴るの暴行を加えるだけの野蛮人であり、あまり魔術師っぽくはない。
だから、やっぱり魔術師には火の玉を飛ばしたりだとか、雷をビビビッと発射したりだとか、そういうイメージがある。
そんな中、ようやく本格的な魔術を見ることが出来たと思ったらこれだ。
(え? 魔術師ってこういう感じなん?)
確かにパンストを自由自在に操ることが出来るのはスゴイとは思う。
だが、魔術師に関する幻想を壊された気分だった。
(もしかして、ウチのご主人クンって割とまともな部類なんッスか……?)
メロが様々な誤解をしたことで、与り知らぬところで相対的に弥堂の評価が上がる。
しかしメロは眠っていて見逃してしまったが、その普通のイメージ通りに火とか出す魔術師は彼のご主人に惨たらしくぶっ殺されていた。
そんなことを考えている内に、頭の上でヒヨコさんをピヨピヨさせて目を回していたゲロモンがハッと正気に戻る。
バッとクレーターから飛び出して路上に立った。
「ほう。なかなかにタフじゃないかね」
伯爵は余裕の態度でカイゼル髭を撫でる。
圧倒的な力の差を感じたゲロモンはジェスチャーで狼狽えていることを表現してから、ガパっと口を大きく開けた。
ウィィィンっと駆動音を鳴らして便座に付いていそうなノズルが出てくる。
「む?」
伯爵はそのウォッシュレットトイレの部品のような器具を見て、不審げに目を細めた。
次の瞬間、ゲロモンの目がビカンッと赤く光る。
ノズルの先端からブシャァーーッと勢いよく美景汁が噴出し、広域に撒き散らされた。
MIKAGEスプラッシュだ!
この必殺技は案件である。
バトルにてこの必殺技を使用し美景汁をプロモーションすることによって、ゲロモンの口座に美景市農作物名産化推進委員会から3万円の報酬が振り込まれるのだ。
「うわぁッ⁉ キッタネェ汁がァ……ッ⁉」
「落ち着くのだ少女よ!」
自分の頭の上から落ちてくる謎の汁に泡を食ったメロを伯爵は一喝する。
そしてビョーンっと跳んでメロの前に着地した。
「やらせはせんよ――ッ!」
裂帛の気合を吐くとともに伯爵はパンティストッキングを展開し、左右のレッグ部をそれぞれ手で掴む。
そしてそれを外側に勢いよく引くと、ブワっと頭上にパンティ部が大きく拡がった。
パンティ部はベロンっと裏返り、メロと伯爵の周囲を包む。
そして――
「――ふんッ!」
――パンストの爪先を口に咥えた伯爵が息を吹き込むと、二人を包むパンストがさらに大きく膨らんでまるでテントのようになった。
仕組みは不明だ。
パンストテントの上に美景汁がボトボトと垂れてくる。
撥水加工を施され、さらに網目が細かく編まれたそれは精巧な芸術品であり、そして実用品だ。
パンティストッキング家自慢の由緒正しきパンティストッキングは汁の水滴を一滴すらこちら側へ通さない。
おまけにUV加工もバッチリなので雨の日だけでなく、晴れの日も大活躍だ。
パンストに弾かれた美景汁は辺りに飛び散ると、ぷしゅぅーっと謎の煙をあげてピンク色の粘体へと変わる。
パンスト魔術による防御は“MIKAGEスプラッシュ”を完璧に防ぎ切った。
シュルンっとパンストが元に戻ると、女児が歓声を上げる。
「う、うわぁーっ! オジさんスゲエッス……!」
「フッ、素晴らしいのはパンティストッキングだよ。レディ」
完成された紳士は己を喧伝などしない。
ただそこに存在することで、その所作だけで誇り高さを知らしめることが出来るからだ。
案件を台無しにされたゲロモンは怒りに両腕を振るう。
すると、ジャキンっという音とともに、黒い大きな刃が左右の腕に出現した。
ゲロモンはその二つの刃を合体させると、グリンっとずんぐりボディを捻って伯爵目掛けてそれを投げつけた。
ゲロモンブーメランだ!
農家のみなさんとの親交イベントで雑草刈りをお手伝いする時に活躍する必殺技である。
ゲロモンブーメランはニンゲンの首など簡単に撥ね飛ばす勢いで伯爵へと迫る。
だが――
「――ムダだッ!」
伯爵は右膝を上げるとそれを脛で受け止めた。
ガインっと硬質な音が鳴り、ブーメランの刃は伯爵の足を切ることは叶わなかった。
さらに――
「むん――ッ!」
――伯爵はそのブーメランを持ち主に返すために蹴り飛ばした。
ビックリしたゲロモンは慌てて横に転がる。
ゲロモンが立っていた位置を通り抜けたブーメランは背後にあった電柱を何本か斬り倒しながらどこかへ飛んで行った。
ゲロモンは急いで立ち上がり、「そんなバカな⁉」といった顔を伯爵の足に向ける。
「フフ、生憎だがワタシの脚は護られているのだよ……」
伯爵はシニカルな笑みを浮かべながら指先でスラックスを摘まむと、スッと優雅に裾を上げた。
そこから露わになったのは――
「ハッ⁉ ま、まさかそれは……⁉」
「――もちろん、パンティストッキングさ!」
老紳士はその衣服の下に女性用のパンティストッキングを着用していた。
これもパンスト魔術の妙なのか。
「――で、でも……」
メロは何か言いたげにモジモジとする。
「うむ。キミの言いたいことはわかるよ。レディ」
伯爵はコクリと頷いた。
「これはパンティストッキング。しかも女性用だ。これはパンティを護るモノ。なのに何故紳士であるこのワタシの脚が護られるのかという疑問だね?」
「だ、だって、パンティがないのに……っ!」
言葉とは裏腹に、メロはどこか期待をこめた目で伯爵を見た。
伯爵は目を閉じる。
だが、それは純真な女児の視線から逃れるためでは決してない。
紳士は逃げない。
そして、人様から目を背けるようなことをしない。
どんな時も。
伯爵は静かに答える。
「ワタシはね……、覚悟が違うのだよ……」
伯爵の威圧感が増す。
ゴゴゴゴゴ――と地鳴りのような音が大きくなっていくような、そんな錯覚をメロとゲロモンにさせた。
「ワタシはこの【パンスト魔術】を極めるために、パンストを常に着用している。正々堂々とパンティストッキングに向き合う必要があるからだ。だが、それだけでは上辺を取り繕っただけに過ぎない……」
「オ、オジさん……⁉ それじゃあ、アナタはまさか――⁉」
「とぅ――ッ!」
動揺するメロの問いに答える前に伯爵はジャンプした。
高く跳び上がり、そして特に何もせずにそのまま同じ場所に着地する。
気分の問題だったのかもしれない。
伯爵は着地と同時にバンっと腕を翳した。
「ワタシはパンティストッキングの下に、女性用パンティを着用している……ッ!」
「な、なんだってー⁉」
老人の域に差し掛かった男性の余りに正々堂々としたカミングアウトに、メロとゲロモンはビックリ仰天する。
だが、ミハイル・パンティストッキング伯爵は何一つ憚ることなどなく、余裕の仕草でカイゼル髭をクリンっとさせた。
「何を驚くのかね? 当然だろう? なにせ、これはパンティストッキングなのだから……!」
「ち、ちがう……ッ! この人は、違う……ッ!」
「そうさ。ワタシはそんじょそこらのパンストフェチとは違うのだよ。一緒にしてもらっては困るね」
驚愕に震えるメロとゲロモンの前で、その男は自らを誇った。
「ワタシは己の生涯、己という存在の総てをパンティストッキングへと捧げた。一度は家も名も捨てて……ッ! 魂の底の底までをパンストで包み、自らをパンティストッキングとしたのだ! そして至ったのだよ。【パンスト魔術】の真髄に……ッ!」
メロとゲロモンは戦慄した。
圧倒的な強者というものの、その存在の在り方に。
パンスト卿は今一度名乗りを上げる。
己というモノの真実を曝け出すように。
「もう一度、今度は魂で訊けィッ! 我が名はミハイル・パンティストッキング! 【パンスト魔術】の開祖にして、そして完成形だ……ッ!」
メロとゲロモンは思わず後退る。
その名を聞いた後に自らも名乗ることは恥ずかしくて出来なかった。
この誇り高きパンスト卿ほどに、己は己と為れているのだろうか。
そんな疑問を感じて悪魔たちはその存在を揺らがせる。
「こ、これが、パンスト魔術師……ッ⁉」
メロは段々パンスト魔術がカッコよく見えてきてしまった。