俺は普通の高校生なので、   作:雨ノ千雨

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序章38 茜色のパラドックス ➀

 

 桜の花が舞い散る並木道を、美景台学園の外へと通じる正門へ向かって、女子生徒が一人と、その後ろを男が独り、緩やかな歩調で歩く。

 

 

「去年初めて見た時もびっくりしたけど、やっぱここの桜すごいわねー」

 

「そうだな」

 

「でもさー。上を見たらキレイですごいけど、下を見ると悲惨よね。あたし去年委員会でさ、愛苗と一緒にここの掃除手伝ったんだけど――あ、って言っても春じゃなくて冬に落ち葉の掃除だけどね、それもなかなかの労働だったわ」

 

「だろうな」

 

「これ毎朝登校時間にはキッチリ綺麗にしてる清掃員さんも大変よねー。てかさ、うちの清掃員さんたちってさ、ちょっと優秀すぎてたまにヒかない?」

 

「そうだな」

 

「路面も大変だけど、女子的には髪とか服にも付いちゃうのも減点ね。あたしこないださ、うっかりバッグの口閉め忘れてここ通っちゃってさ。中に入っちゃってるの気付かないで家まで花びら持って帰っちゃったわ」

 

「難儀だな」

 

「なんかさ、あんたの場合、花びらの方から逃げていきそうよね」

 

「そうだな」

 

「またテキトーに返事してる?」

 

「そんなことはない」

 

 

 地に落ちて広がっているものから目を逸らすように、桜の枝と宙を舞う花びらを見上げながら、背後を歩く弥堂へと話を振り続けていた。

 

 また短い相槌しか返してこなくなったので、足を止めて振り返り希咲は弥堂の顔を窺う。

 

 

「……なんかキゲンわるい?」

 

「そんなことはない」

 

 

 彼が追い付いてきたタイミングでそう問いかけたが、同じ言葉で否定をされた。

 

 希咲からしてみれば手抜きとしか思えない端的に過ぎる返答に「むー」と眉を寄せたが、上目で見遣った彼の瞳の奥に何かを見て、今日これまでのように彼を責めることはやめた。

 

 

 並んだ彼の隣を歩く。

 

 

 言葉のないまま共に何歩か進む。

 

 

 希咲 七海はプロフェッショナルなJKだ。

 

 

 場に無言の時間が続くことを嫌い、会話が途切れそうになればその会話スキルを以てして上手く繋ぎ留める。

 

 常日頃からそうであって、常であればそうであるはずだった。

 

 

 なのに――

 

 

(んーー?)

 

 

 隣の男の子の歩幅に合わせるように大袈裟に足を前に出しながら、チロリと彼の顔を盗み見る。

 

 

(意外とまつげ長い……なまいき……)

 

 

 思いついたことから思考を逸らすように関係のないことを心中で独り言つ。

 

 自覚のある無駄な足掻きだ。

 

 

 本来ならば、会話が途切れることを避けてとっくに何かしらの言葉を繋いでいるくらいの間だ。

 

 いつもならば、どこか落ち込んでいるような、苛立っているような――ささくれ立っているように感じる彼の気分を変えるように、もしくは有耶無耶にするように、何かしら別の話題に転換させているところだ。

 

 

 だが、今日のこの時に限っては、何故か(いとま)の静寂が気に障らない。

 

 別に暫くこのままでもいいんじゃないかと、そう感じられる。

 

 

 あまり揺れない彼の睫毛をじっと見つめる。

 

 

(こいつがこういう子だから、気になんないのかな……?)

 

 

 実際はそんなに長い時間この道を共に歩いているわけでもなく、そうは長い時間をかけずにこのまま正門まで辿り着くだろう。

 

 

 桜のアーチの下、周囲をゆらりゆらりと舞う多くの花びらがきっと時間の緩やかさを感じさせているのかもしれない。

 

 

 ゆっくりと舞落ちる無数の花びらの内の一枚が、何とはなしに視点を合わせ続けていた彼の睫毛との間にひらりと割り込む。それにより一瞬視線が途切れたタイミングで弥堂を見るのをやめた。

 

 

 前を向いて歩く。

 

 

(完全にバイト遅刻してるくせにこんなこと思うのもアレだけど――)

 

 

 少しだけ視線を上向きに、俯瞰するように出来るだけ広く今の光景を映した。

 

 

(――なんか。こんなにゆったりしてるの久しぶりかも)

 

 

 ここ一年くらい、ずっと慌ただしく日々を過ごしていたかもしれない。

 

 

(効率、効率ってうざい奴と一緒なのに…………ヘンなの)

 

 

 クスリと笑みを漏らす。

 

 

 手を組んで、「んーー」と両腕を天に伸ばし身を解す。

 

 

 心身とてもリラックスしたはずなのだが、このタイミングで何故か、タラリと一筋のイヤな汗が頬に流れ落ちてきた。

 

 

(んん?)

 

 

 唐突に強い不安が湧きあがる。

 

 

(あれっ⁉ なにこれっ⁉ よくわかんないけど、なんだかこれってマズくない⁉)

 

 

 たった今の思考は何だったのかと、自分にツッコみたくなるほどに希咲は猛烈な危機感に見舞われる。

 

 

(えーと。えーーっと! やばい、なんかしゃべんなきゃ……っ!)

 

 

 そしてこの場をぶち壊すような話題を求めて、おめめと頭をぐるぐる回転させる。

 

 結局はやることは変わらなかった。

 

 

 大きな混乱に陥った彼女は視界に拡がる桜の花びら群へ手を伸ばし、宙に浮かんだそれらの何枚かを『しぱぱぱぱぱっ』と素早く掴んだ。

 

 そして大量ゲットしたそれらを自身の顏へと持っていく。

 

 

「ねーねー! みてみてっ! つけまっ!」

 

 

 クルっと身を回しながら瞼の上に花びらを貼り付けた顏を弥堂へと見せる。

 

 薄桃色のつけまつげをのせた左右の目の端に左右の手でそれぞれピースを作り、呼びかけに合わせて無言でこちらを向いた弥堂と目を合わせて、瞼をぱちぱちと動かす。

 

 

「…………」

 

「……すみません。なんでもない、です……」

 

 

 まるで路傍に打ち捨てられたゴミを見下ろすような弥堂の眼つきに、希咲さんは速やかに両手を下ろしてペコリと丁寧に謝罪をした。

 

 

 実際は弥堂としては見ろと言われたから見ただけで、確かに「なんだこいつ?」と思ってはいたが、特に見下したつもりは彼にはなかったのだが、自分でも「これはないな」と思っていた希咲にはそのように錯覚して感じられた。

 

 

 シュンと顔を下げ、ぺりぺり花びらを剥がしながらホロリと涙をこぼす。

 

 

(……べつにいいんだもん…………成果を得るためには痛みはつきものなんだもん…………あたしは立派にやりきった……)

 

 

 胸中でそう自分を慰める。

 

 彼女の考えたとおり、確かに場の空気を変えることには成功したようだ。

 

 

 ただし、彼女が感じていたその雰囲気や空気といった何かを弥堂も同様に感じていたかどうかは不明なので、結局は彼女の気の持ちようで一人相撲だったのかもしれない。

 

 

 そして再び話題の転換を試みる。

 

 今度は自分の気分を変えるために。

 

 

「ねー、そういえばさ――」

 

「お前今のはなんのつもりだ?」

 

「うるさい黙れ。んんっ、あのさ、さっき言いかけてたことなに?」

 

「…………」

 

「無視すんなっ」

 

「……黙れと言っただろうが」

 

 

 理不尽なことを言い肩をぶつけてくるクラスメイトに弥堂は正当な抗議を入れたが希咲には無視をされる。先ほどの奇行を力づくにでもなかったことにしたいようだ。

 

 

「さっき何か言いかけてたじゃん! あれなに?」

 

「ん? あぁ…………なんだったか」

 

 

 弥堂は宙を舞う桜の花びらの隙間に視線を彷徨わせる。

 

 

「あんた忘れないんじゃなかったっけ?」

 

「あぁ。思い出そうとすれば何でも思い出せる。ただし、何を思い出すべきだったかを忘れることはある」

 

「まーた適当なこと言う。記憶力はカンペキっ、みたいにイキってたくせに!」

 

「特殊能力じゃないんだ。そんなことあるわけないだろう?」

 

 

 嘯いて曖昧に肩を竦める男を希咲はジト目で見遣った。

 

 

「ほらっ! さっき! 喋るのかぶっちゃった時の!」

 

「ん? あぁ……」

 

 

 該当する場面のヒントを渡すように強調された希咲の言葉に、紐づけられた記録が記憶から想起される。

 

 

「大したことじゃない。もういい」

 

「……気になる」

 

「気にしない方がいい。というか聞かない方がいい」

 

「話したくないんなら、そうやって余計に気になるような言い方すんじゃないわよ。絶対聞く!」

 

「やめとけ。きっとキミは怒る」

 

「なにそれ。怒んないから言ってみって」

 

 

 引き下がらず催促してる希咲に、弥堂は諦めたように嘆息する。そう言って怒らなかった女は一人もいなかったからだ。

 

 

「そうだな。なんというか、俺も気になったことがあってな」

 

「ふーん。なに?」

 

 

 ジッとこちらの顔を見ながら問われ、弥堂はしばし言葉を探す。

 

 だが特にうまい言い回しを思いつかなかったのですぐに諦めた。

 

 

「何故色が変わったのだ?」

 

「ん?」

 

 

 弥堂から質問を投げ返されたが、その意味がわからず希咲は首を傾げる。

 

 

「どうでもいいことだが、何故着替える必要があったのかと少し気に掛かっただけだ」

 

「あんた何の話してるの?」

 

「お前が話せと言ったんだろうが」

 

「や。ごめん。マジで何の話?」

 

「なにって、お前のおぱんつだ」

 

「は?」

 

 

 脈絡もなく放たれた不適切な単語に思考が止まり、それに伴い希咲の足も止まった。

 

 歩みを止めた彼女に合わせ、一歩だけ先行した弥堂も立ち止まる。

 

 

 そして彼女に自らの言わんとしていることが伝わるように、しっかりと彼女へ向きなおり真っ直ぐに彼女の目を見ながらもう一度告げる。

 

 

「お前のおぱんつだ」

 

 

 その時一陣の風が吹き抜け、周囲を覆っていた桜の花びらを全て回収していった。

 

 その風は希咲のスカートも少し強めに揺らしたが、絶賛フリーズ中の彼女は気付かなかった。

 

 

 辿り着きたくない答えに繋がるいくつかの単語が希咲の思考を駆け巡る。

 

 

『色』『変わる』『着替える』

 

 

(そ、それって……!)

 

 

 身に覚えがありすぎるそれらの言葉は、彼女にそう長い時間は現実逃避を許さなかった。

 

 

「あーーーーーーーーーっっ‼‼」

 

 

 答えに辿り着いてしまった彼女があげた絶叫に弥堂のお耳はないなった。

 

 

「マジでうるせぇなこいつ……」

 

「なっ、なんでっ⁉」

 

「あ?」

 

「なんで⁉」

 

 

 耳の様子を確かめながら弥堂は眉を顰める。

 

 

「なんでって聞いたのは俺だが?」

 

「ちがう! 変わってない! みえてないもん! ちがうから! かんちがい!」

 

「何言ってんだお前?」

 

 

 自らの記憶に絶対に近い自信をもつ弥堂は、勘違いだと言い張り否定をしてくる少女へと反論を試みる。

 

 

「嘘を吐くな。お前はさっきまで青だか緑だかよくわからん変な色のおぱんつを穿いていただろうが」

 

「変じゃない! ミントブルーっ! 今もミントブルーっ!」

 

「それは嘘だな」

 

 

 弥堂は希咲へと一歩歩み寄り彼女の細い両肩に力強い手を置く。

 

 

「いいか。今のお前のおぱんつはミントブルーではない。なんかテカテカしてる赤だ。縁取りは黒で、布地はテカテカした素材の赤いおぱんつを間違いなく現在着用している」

 

「ななななななっ――⁉」

 

 

 桜舞い散る放課後の並木道にて、涙目で羞恥するクラスメイトの女子へ向かって、自分の持つ彼女が現在着用中の下着についての情報を、弥堂は嘘偽りなく審らかに真摯に伝えた。

 

 

 対して、花びら舞い落ちる桜の木の下でクラスメイトの男子から、真正面から直向きに現在自分が着用中の下着についての詳細な説明をされ、希咲は羞恥と混乱が臨界突破する。

 

 

 七海ちゃんは激おこした。

 

 

「なんですぐパンツみてくるのっ⁉ へんたい! せくはらっ!」

 

「お前が見せたんだろうが」

 

「みせてないからっ! なんでっ⁉ いつ⁉」

 

「さっき自分で俺の顏を股間に押し付けてきただろう。あんなもんその気がなくても見えるに決まってるだろうが」

 

「言い方っ! そんなえっちなことしてない!」

 

「変態もセクハラをしているのもお前の方だ。恥を知れ、このクソビッチめが」

 

「だーれがクソビッチだ! このやろう――‼‼」

 

 

 カっとなった希咲は右手を引き絞る。

 

 

 今日二度見た神速の右の突きがくるだろうと備える為、弥堂は半身になろうとしたが、彼女の攻撃は肩口から放たれるとヘナヘナ脱力していき、弥堂の身体に到達する頃には普通にゆっくり腕を伸ばしてくるのと変わらないスピードになっていた。

 

 

 ぽふっと。

 

 そんな気の抜けた音が聴こえたような錯覚を起こして、彼女の――自分のそれよりは随分と小さく見える――右拳が弥堂の胸に当てられる。

 

 

 なんとはなしに彼女の顔を見ていると、不満いっぱいの涙目で「うーー」っと唸られた。

 

 

 やがて希咲はため息を吐いて拳を離す。

 

 

「……たしかに、あれは、あたしが、はしたなかった、です。失礼、しました……」

 

 

 そしてどう見ても納得をしていない様子で形式上彼女はペコリと頭を下げた。

 

 

「うむ。そのつもりがなかったとしても、お前の軽はずみな行動が性暴力に繋がる可能性もある。これからは軽率、不用意、不必要におぱんつを露出するんじゃないぞ? 以後気を付けろ」

 

「やっぱ納得いかないっ!」

 

 

 どうにか感情を堪えて謝罪を絞り出したが、完全に自分を棚に上げた男に鷹揚な態度で上から正しいことを言われて、希咲さんはぷちっときた。

 

 

「もう話は終わっただろ。しつこいぞ」

 

「だめっ! おわってない!」

 

「触るな。貴様カードを出されたいのか?」

 

 

 判定に納得のいかない選手が審判に詰め寄るように取り縋ってくる希咲に、弥堂は毅然とした対応をするが彼女も簡単には引き下がらない。

 

 

「やっぱおかしい! あんたもわるい!」

 

「言いがかりはやめてもらおうか」

 

「言いがかりじゃないもん!」

 

「ほう。では言ってみろ」

 

 

 自らの優位性を微塵も疑っていない。

 

 そのように見える弥堂の態度が癪に障るが努めて冷静さを維持し、彼の上着を掴む手を離して希咲は挑むような瞳を向ける。

 

 

「だってさ! あたしのパンツ見えちゃってさ! ホントはそれだけでアウトだけど、百歩譲ってわざとじゃなかったから仕方ないってことにしてあげてもさ! スルーすればいいじゃん! なんで女の子のパンツ見ちゃって、それで本人に直接『キミは何故赤いパンツを穿いているんだい?』って訊くわけ⁉ フツーそんなこと言わなくない⁉ 言わないでしょ⁉ どうよ⁉」

 

 

 一息に言い切ってゼーゼーと大袈裟に息を荒げる彼女の様子を見て、弥堂はつまらさそうに鼻を鳴らした。

 

 

「どうよ⁉ なんか言い返せっ! ばかっ!」

 

 

 一生懸命に喋ったのに見下されているように感じて、カチンときた彼女は繰り返して強調する。

 それを受けて弥堂は肩を竦めて口を開いた。

 

 

「お前は勘違いをしている」

 

「はぁっ⁉」

 

「確かに俺は、何故帰宅をするだけなのにも関わらず不要におぱんつを穿き替えたのか、そんな無駄なことに時間を浪費しなければあと数秒早く戻ってこれただろこのクズ女め、と云った」

 

「そこまでゆってないでしょ⁉ 盛るなバカっ!」

 

「うるさい黙れ。とにかく、俺はお前が勘ぐっているような性的好奇心からお前のおぱんつの色に興味を抱いたわけではない」

 

「…………あの、あんまり、あたしのぱんつぱんつって言わないでもらえますか……? なんかそれだけでセクハラされてる気分になるんですが?」

 

「お前自分で散々パンツパンツ言ってただろ」

 

「あたしはいーのっ! 女の子だから!」

 

「…………」

 

 

 弥堂は身近なクラスメイトの女の子の何気ない物言いに、日常的に蔓延る性差の存在に人間社会を儚み、平等で公平な世界とやらの実現性についてふと思いを馳せたが、一瞬で興味を失い話を修正する。

 

 

「……いいか? これは以前に俺の保護者のような立場にいた女が言っていたんだが――」

 

「――え? 保護者……ってあんたのママってこと?――「――誰がママだ。あんな奴そんなもんじゃねーよ」――えっ⁉」

 

 

 彼らしからぬムキになったような口調で食い気味に否定をされ、びっくりした希咲はきょとんと目を丸めた。

 

 大きな目をぱちぱちと瞬きさせる彼女を見て、ハッとなった弥堂は気まずさを誤魔化すように舌打ちをする。

 

 

「失敬。忘れてくれ。俺とあの女の関係性は本題には関係ない」

 

「…………あの、さ……? あたしが言うことじゃないかもしんないけど……」

 

「……なんだ?」

 

「その……ゴメンね? あんたん家のことなんにも知んないから、たぶんヤな気持ちにさせちゃうかもだけど。でもね? 自分のママのことあの女なんて言っちゃダメよ……?」

 

 

 心配そうに、でも言い辛そうにしながら、おずおずと話す彼女に弥堂は嘆息する。

 

 

「……あぁ、なんだ。血縁上や記録上の母親のことではない。親元を離れた後にな、出会った女で、当時面倒を見てもらったというか、一時的に世話になっていただけだ。キミが心配しているような話ではない」

 

「ん。そか。ごめん」

 

「いや、俺が不用意だった。すまない」

 

 

 今日これまでの二人の会話風景を知る者が見ればギョッとするような光景だが、お互いに非を認め謝罪しあう。

 

 

 弥堂の釈明に納得を示すようなことを発言した希咲だが、実際脳内では大混乱していた。

 

 

(ん⁉ んん⁉)

 

 

 頭の中を多数の『⁉』が埋め尽くしていく。

 

 

(『記録上の母親』? 『親元離れた』? 『面倒見てもらった女』?)

 

 

 波風立てぬよう穏やかに薄く笑顔を浮かべているが、背中にはドッと冷や汗が流れていく。

 

 

 これはまずいのではないか?

 

 

 希咲は強い危機感を抱く。

 

 

 弥堂の口ぶりや出てきた言葉の不穏さが半端ない。

 

 

 もう何度も、ついさっきも、不用意に踏み込むべきじゃないと反省をしたにも関わらずこの有様だ。

 

 無論、そんなつもりはなかったし、今回に限っては事故のようなものだが、これはいけないと希咲は焦る。

 

 

 どう考えても自分が聞いていい話ではないと思ったのだ。

 

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