暗闇。
明かりの無い、ただ暗い場所で俺は眼を開ける。
風はなく、空気の流れの感じられない。
どこか狭い部屋の中の夜のような。
前後左右に窓は無い。
天井を見上げてみても何も見えない。
この夜に月は無い。
それならと――
左手の指先を意識したら、ポォッと蒼い小さな光が灯る。
その僅かな火に照らされ、ようやく自分が認識出来る。
どうやら俺は今座っているようだ。
膝を立ててそれを両腕で抱えるようにして。
そこで右腕があることに気が付く。
ということは、ここに在るこれは俺の肉体ではなく――
だとしたら、ここに居るこの俺は一体何で。
ここは一体何処なのだろうか。
死後の世界だなんて冗談じゃねえぜ。
ようやく死んだのならいい加減俺を終わらせてくれ。
そう願う。
自分のことはわからないので、改めて周囲を視てみる。
他との違いが己というモノなら、他のモノを見てみれば自分の事がわかるかもしれないという考えだ。
もちろん、ただの現実逃避だが。
左手の光の中で俺は眼を細める。
すると、俺が座っている場所のすぐ横に壁が見える。
冷たい印象の石壁。
左右にある。
かなり狭い場所のようだ。
その壁を見ながら、自分が尻をつける床を意識してみる。
この冷たさと堅さに憶えがあるような気がしたんだ。
あぁ、そうか。
すぐに思い出した。
ここはグレッドガルドの独房だ。
イカレ女の解体実験やメイドどものマッチポンプ処刑の後に、あいつに見限られて投獄された部屋だ。
つまりここは牢獄だ。
なんだって死んだ後にもこんな黴臭い場所にブチ込まれなければならないんだと怒ろうと思ったが――
すぐにそりゃそうかと納得した。
俺はやりすぎたことを自覚している人間だ。
俺をブタ箱にブチ込みたい人間なんて、日本にも異世界にもいくらでもいるだろう。
ましてや死後の世界なんてものが本当にあったとしたら、こうなって当然だ。
大体どの宗教でも、くたばったら生前の行いをネチネチと値踏みされ、天国に行くか地獄に行くかを決める裁判を受けさせられる。
俺に裁判など必要ない。
こんな奴は地獄行きに決まっている。
考えるまでもない。
これまでの俺の所業の中の、何を論われたとしても、俺は誰にも謝る気はない。
だから時間の無駄だ。
キリストか、閻魔か――
誰が担当するのか知らないが、効率が悪いからさっさと来て、さっさと俺を処刑しろ。
そんな期待をこめて前方を見ると、光の奥に浮かび上がるモノがあった。
格子が見える。
牢屋の檻だ。
それが遮る向こう側に誰かが居る。
距離的には近い場所なので、さっき視界に入れた時にも見えていないとおかしいのだが。
何故か今は見える。
メイド服を着た少女の姿をした女。
エルフィーネが悲しげな顔で、牢屋の中の俺を見つめていた。
俺は笑っちまった。
『――なにがおかしいんですか?』
怒るなよ。
なんか前にも一度こういうことあったよなって思い出しただけだ。
『……一度どころじゃないです。何回も投獄されたでしょう?』
だろうな。
『そんな他人事みたいに……。そうやって反省しないから何度も捕まるんです』
それは裏を返せば、こうして牢屋にブチ込んでも反省なんかしないから無駄だということだ。
『屁理屈はおやめなさい』
で? お前が俺に最期の裁きをくれに来た天使なのか?
『それは今までで一番最低の冗談ですね。殺しますよ?』
生憎もう死んでるんだ。悪いな。
『いいえ。貴方はまだ死んでいません』
そう言い切るエルフィーネの顏を、俺は「何言ってんだこいつ」といった顏で見る。
死んでるだろ。
『死んでいたらここでこうして私と会話など出来ません』
お前死んでるくせに俺の前に出てきてただろうが。
『あれとここは違います。違う気が……します……』
ここってなんなんだ?
『申し訳ありません。わかりません』
いつもは生きてる俺のところにお前らが来るだろ? だが、今は俺がお前のところに来た。そんな気がする。
『気がしただけなら気のせいなんでしょう?』
勘弁してくれよ。怒ってんのか?
『もう慣れました』
そうか。
『というか、ここは貴方が夢を見ている時と似ているように感じます』
夢? わからないな。
『そうみたいですね。普段とは違って、夢を見ている時の夢の中の貴方は、私たちが見えないし声も聴こえてないようです』
へぇ、そうなのか。
『最近は昔のことを思い出す夢を見る機会が増えているようです』
それはなんとなく俺も思っていた。
『私やルビアがその時に話しかけるのですが、貴方には私たちが認識出来ていない。“そんな気がします”』
悪かったって。
『ふふ……、いいんですよ』
控えめに笑う彼女の顔を見て、俺も意図せず表情が緩む。
俺は彼女のこの笑い方が好きだった。
わかりやすく大きく表情が変わるわけではないが、僅かに口角をあげて目尻を少し細めて下げる。
そんな顏。
人のことを言えたもんじゃないが、いつもどこか張り詰めたような彼女の人生に殺しと涙以外のシーンが増えたようで、少しだけホッとするのだ。
それを出来るだけ増やしてやりたいと思ってはいた。行動は伴わなかったが。
『あ、あの……っ』
あ?
50を過ぎているはずのエルフ女が何やら恥じらうようにモジモジとしている。
『あの……?』
なんだよ。
と、思ったらスッと表情を落として光の失せた瞳で俺をジッと見てくる。
なんなんだこいつ――と思いはするものの。
普段は表情に乏しい彼女の色々な表情を見れたことにはどこか得をした気分になる。
なにせ一つ一つが希少でこれまでの時間の中でもそれらを見ることが出来た機会はそう多くない。
だが、それらの全ては俺の“
『――あのっ!』
だからなんだよ。
エルはまた頬を紅くして、しかし今度は少し強めの声で同じことを言ってくる。
さっきからどうしたんだこいつ。
だが、彼女がこうして声を荒らげることは珍しいことで。俺はそれが――
『――ですから!』
さっきからどうしたお前。
『それは貴方が恥ずかしいことを言うから……』
あ? 俺は何も言ってねえだろ。
『あの……、聴こえてます……』
あ?
『「あ?」って言わないでください――じゃなくて! さっきから考えてることが全部聴こえてます!』
そんなわけないだろ。
『あるもんっ!』
ねえよ。じゃあお前、俺が何を考えてたか言ってみろよ。間違ってたら泣かすぞ。
『そ、それは、ですから……』
エルフィはまた顔を紅くしてキョドキョドと目を泳がせる。
それから躊躇いがちに口を開いた。
『その……、私の笑った顔がその……』
へぇ。マジで聴こえたみたいだな。喋ってるわけじゃなくて念話みたいなもんなのかこれ。
『…………』
俺の関心がそちらに移ると、エルはなにやらジト目を向けてきた。
なんだよ。
『あの……、少しは恥ずかしがったりとか、ないんですか……?』
恥ずかしい? なにが?
『もういいです!』
なんだよ。
『ずるいです……っ!』
よくわからないが彼女は拗ねてしまったようだ。
いい歳をこいて恥ずかしくないのだろうか。
『貴方って……、無敵ですよね……』
んなわけねえだろ。さっきぶっ殺されてこのザマじゃねえか。
『だから死んでないんですってば……!』
まだ言ってんのかよ。
彼女の気持ちはわからないでもないが、しかし現実は受け止めなければならない。
生きてりゃ死ぬし、死ぬときは死ぬ。そして死んだら死ぬのだ。
『わけわかんないこと言わないでください。あと生きてます』
しつけえな。死んでるつってんだろ。お前女のくせに生意気だぞ。
『セクハラでパワハラです』
『ここは日本です』
矢継ぎ早に言い返されてしまう。
なにか、以前よりも彼女は口が達者になったように思えた。
『フフ。ナナミを見て勉強したんです。どうすれば貴方に言い返せるか』
勘弁してくれよ。あのクソ女の影響なんか受けないでくれ。
『そんなにあの子が苦手ですか?』
当たり前だろ。
『嫌いですか?』
当たり前だろ。
『……そうですか』
なんだよこいつ。
というか俺がまだ生きてるって話だろ。希咲のことはどうでもいい。
『はい。では貴方が生きてるってことで、話を戻しましょう』
なにか言い包められた気がして釈然としないな。
『気がしただけなら気のせいです』
彼女はまた控えめに笑って、そして話が戻る。
『戻りなさい。ユウキ』
あのな。
俺は嘆息する。
どうやって、というか結局ここがなんなのかわからなきゃ戻りようがねえだろ。
『戻るまで戻れば戻れるのです』
それはパワハラとかモラハラってやつだぞ。
『そうなんですか?』
あぁ。以後気をつけろ。
『すみません。難しいですね』
まぁ、もう日本の常識やモラルなど気にする必要もないがな。
『またそういうことを……』
呆れる彼女を置いて、少しこの場所のことを考える。
夢みたいと言ったな。
『似た感じがします』
レイスにぶっ飛ばされて気絶したから、俺は今夢を見ている?
『理屈づけるならそう考えるのが自然かもしれません。でも、違うと思います』
何故だ?
『夢で見る……、見ている間居る世界は、一時的なものじゃないですか?』
死んでからは暇だからポエムでも始めたのか?
『茶化さないでください』
そうは言っても抽象的でわからないな。そもそも俺は夢をあまり覚えてない。
『そうなんですか?』
最近見るような昔の記憶の再現なら、目醒めた後でも夢に見たことを憶えてる。だけど、そうじゃない夢は見ない。もしくは見たことを憶えていない。
『その記憶の再現のことでいいですよ。その夢は記憶が再現されてその世界に居るようで、でも、昔の映像を見ているだけですよね? 実際に過去は物質的に再現はされません』
お前なんか賢い風なこと言うようになったな。
『だから茶化さないでください。ユウキ。貴方がその映像の中に立ちながらそれを眺め、そして私たちもそこに居る』
へぇ。お前やルビアも見てんのか。
『エアリス……様も見てますよ』
お前らとあいつって認識しあってるのか?
『えぇ、まぁ』
それは知らなかった。
そういえば、こないだの悪魔との戦いの時にルビアが俺の前に現れた。
その時のルビアの口ぶりは、誰かに何かを言えと要求されたようだった。
つまり、あれはエアリスに指示されてルビアが俺に説教をしにきたということなのだろうか。
というか、そもそもこいつらが俺の前に出てくること自体がおかしい。
それも最近は前よりも頻繁になっている。
今までも声が聴こえたり、そこに居るような気がしたことはあった。
だけど、俺はそれを認めたくなくて。
クスリの幻覚だと思っていた。
というか、今でもそう思っている。
『貴方はまたそういうことを……』
呆れられてもどうにもならない。
死んだ人間が肉体を離れてずっと存在し続けるなんてことはありえない。
それこそあのレイスのように死霊にでもならない限りは。
だが、それは大抵の場合バケモノになる。
2代目が術を施行でもしない限りは。
その彼も俺が殺した。
『貴方は本当のところ私たちのことをどう思っているんですか?』
多分魔眼の副産物の記憶能力のせいだ。あまりに正確に頭の中に記憶通りのお前らを浮かべることが出来るから。自分で創り出したお前らに自分の言わせたいことを言わせているんだ。
『妄想だと思っているのですか?』
妄想と幻覚のハイブリットじゃねえのか? 俺の頭がおかしくなっちまってんだよ。
『また自分のことをそんな風に……』
クスリのやり過ぎて人を殺し過ぎた。正常でいられる理由の方が少ねえだろ。
『それでもそう思ってはいけません』
エルが悲しそうに俯く。
これ以上言い張ると泣くやつだ。
せっかく最期に話が出来たというのに、俺も別に彼女を泣かせたいわけではないのでここで折れて……、待て。
おい。
『はい?』
ルビアは?
『……?』
あいつもここに居るのか?
『居るというか……、まぁ。姿は見せてないですが、この会話も聴こえてますし、貴方が考えてることも――』
――ちっ、それを先に言えよ。馬鹿女が。
『……何故いきなりルビアのことを?』
エルはスッとジト目になった。
別に。
『何故急に態度を変えるのです?』
変えてない。
『変えました。さっきまでは昔の二人きりの時と同じ感じでした』
別にその時も今も変わらない。
『変わります。少しだけ寂しかったです。ここで貴方のことを見ていたり、たまに話が出きるのは嬉しいのですが、ルビアもいるせいか前みたいに甘えてくれなくなって』
まるで前は甘えていたかのような言い草はやめてもらおうか。そのような事実はない。
『いいですけど……。というか、恥ずかしいんですか?』
あ?
『私と話してるところをルビアに見られるのが』
別に。
『ルビアには恥ずかしがるんですね……』
別にっつってんだろ。
『もういいです』
よくわからないがお師匠さまが拗ねてしまったようだ。
俺も都合が悪いので眼を逸らす。
すると足元にあるものに気が付いた。
牢屋の中の石畳の隙間。
そこから草が生えている。
草というか、小さな花の茎なのか。
花は咲いていない。
閉じたままの莟がぶら下がっている。
俺の記憶にある牢獄にこんなものは生えていなかった。
ということはここは記憶を見る夢の中ではない?
本当によくわかんねえな。
もう面倒になってきた。
とはいえ、話の途中で放り出すことはこのお堅い女が許してはくれないだろう。
しかし、ルビアの話を続けたくもないので、上手いこと話を元に戻すフリをして話題を逸らそう。
『だから聴こえてるんですってば』
お前は、お前らは自分たちのことをどう思っているんだ?
ごり押しするとエルは溜息を吐く。
これは彼女が俺の嘘に騙されたフリをしてくれる時の仕草だ。
つまり俺の勝ちだ。
『……それは、わかりません。私もルビアも。おそらくエアリス、様にも』
俺もわからん。だからどうしようもない。結論が出たな。
『いつも言っていますが、それは結論が出たのではなく、結論を放棄しているだけです』
だけど実際わからねえだろ。
『確かにわかりません。私たちにも私たちがここに居るのか、わかりません。夢も記憶も実際にはそこには存在していません。ですが、ユウキ。貴方は――貴方だけは存在します』
……
『夢を見ている時も、記憶を再生している時も、現実の世界でも。そして今ここにも。貴方はちゃんと居ます』
だから戻ってあのクソッタレをぶっ殺せって?
『そうです』
彼女もあまり俺のことを言えない。
結局最後はゴリ押しだ。
100歩譲って、俺が生きていて、戻れたとしてもどうにもならんだろ。今生きていたとしても、まだ死んでないだけだ。俺の経験によるとあれは致命傷だ。戻ったところで死ぬ。
『いいえ。あの程度の雑魚に負けるような鍛え方はしていません』
お前に鍛えてもらったパンチが当たらねえんだよ。霊体相手にどうしろってんだ。
『簡単です。“魔討”で仕留めなさい』
あのな。
彼女が言っているのは“零衝”の2段階目。
自分の魔力を“威”として相手に徹す弐式の業だ。
それが出来りゃ苦労しねえよ。
『出来ます』
出来ねえだろ。実際に出来たことがない。
『貴方は今日
何の話だよ。逆だろ。弐式も出来ねえのになんで間すっ飛ばして漆式までいくんだよ。
『実際にさっきやったじゃないですか』
なに言ってんだこいつ。
あんな変態機動が俺に出来るわけがない。
『ホテルから逃げる敵を追う時です!』
あ?
『飛び立つ“へりこぷたー”を追って貴方は屋上から飛び降りて、ビルの壁を走ったじゃないですか!』
なんだそりゃ。そんなことをする馬鹿がいるわけないだろ。
『貴方はバカです!』
なんだとこの馬鹿女が。
『記憶に残ってないだけで、本当に“界越”が出来たんです! 一度至ったのなら身体は憶えてます!』
マジの話なのか?
確かに『死に戻り』のダウングレードのせいで記憶に欠落が出来ていて、俺はこの港までどうやって追ってきたのかを憶えていない。
だが、それが事実だとして――
結局記憶に残ってないなら至ったとは言えないだろ。
『それは頭の中の記憶の話です』
なんだよ、頭の中の記憶って。記憶は記憶だろ。
『身体は別になってるじゃないですか』
どういうことだ?
『死に戻りでは知識的な記憶と肉体的な記憶を別で扱っていますよね?』
なんだそりゃ? 脳みそだって肉体だろ。
『そんなこと知りません。でも実際に、死に戻ったら、死ぬ直前に使った“
それは……
『貴方は港に着いた時、“へりこぷたー”の墜落で死んだ。死に戻った時に“
そう言われると確かにと思えるところも出てきた。
だけど――
もう足に力が入らねえんだよ。
『ユウキ』
試しにここで立ってみようとしても、俺は座り込んだままで立ち上がれない。
それに、眠くなってきたような感覚がある。
『ユウキ……! いけません……!』
なぁ……、もういいだろ……?
『なにを……。貴方はマナを守るのでしょう⁉』
守ってるよ。もう守った。だが、それも死ぬまでの話だ。死んだらもう何もかも終わりだ。お前らだってそうだろ?
『しっかりなさい! 貴方はもう以前とは違います! レイスのスキルにあてられただけです……!』
俺も、もうそっちに行かせてくれよ……
『バカなことを――』
――そこで火が縮んで辺りがまた暗くなっていく。
エルの声も段々と聴こえなくなっていった。
やはり眠いような気がする。
視界は段々と上下に狭まる。
火が消えていくのか、俺が目蓋を閉じていっているのか、どっちかわからない。
どっちでもいい気がした。
どっちでも同じだから。
上も黒、下も黒。
その上下の僅かな隙間はぼやけて。
その霞の向こうにさっき見た小さな花が見えた。
あれはなんの花なのだろう。
わからない。
今までどんな花を見ても「花だ」としか思ってこなかったので、花を見分ける知識は俺には無い。
いや、待て。
最近、なにかの花を見て、何かを思ったような。
でも、わからない。
視界が閉じる。
或いは暗闇に塗り潰される。
闇の向こうから俺を誘うように歌が聴こえてくる。
死霊が謳っていた多分俺の歌。
エルやルビアの歌かもしれない。
きっと全ての死者への歌。
暗む直前に、閉じていた花の莟が開こうとしていたような気がした。
だけど、気がしただけだからきっと気のせいだ。
ーーー
火を 火を
あなたの逝く先を照らして
残す心を燃やして 旅立てるよう
ここは戦場 あなたが終わる
だけどここには
死が 死が
教会はなく司祭もいない
残る心は還れない もう帰らない
ここは戦場 あなたは終わった
だからここへと
火を 火を
迷わぬよう 彷徨わぬよう
心残さぬよう 旅立てるよう
火を 火を
私を失い あなたは暗闇の中
痛む心を焼いて 悼む家を焼いて
手を差しのべて 私に触れて
この火の中に 私を感じて
火を 火を
私の掌は小さく 流れる血を受け止め切れない
もしも今も苦しいのなら この火を抱いて
ともに永く眠りましょう
ーーー
月の死んだ夜に咲く花。
それはきっと、朔の花――