モンハン徒然日記   作:まー坊

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 ソロハンター。それは、強大なモンスター達に単身で挑む者達の総称。各々が独自の美意識を持った、効率なんぞ度外視の勇気ある丈夫(ますらお)達の尊称である。
 そんな彼らは狩りの最中に何を思うのか。今回はその中でも【ガンナー】に焦点を当てようと思う。



第1話

 

 

 

「―――――誰か……誰か、頼む……!」

 

 

 

 ソロハンターお悩み相談室【ガンナー編】

 

 

 

 ―――もう……諦めるしかないのか?

 

 俺は眼前の相手を見据え、悔しさに歯噛みする。

 戦いが始まってから既に半日が経過していた。集中力は途切れ途切れになり、空腹は結構深刻なレベルにまで達してしまっている。

 

 「……くぅっっそぉぉぉぉぉおおお!!」

 

 俺は諦念と共に絶叫すると、自らの得物を構えた。

 これが、最後の攻撃だ。

 結果がどうあれ、この攻撃がこの死闘で振るう俺の最後の一撃になる。

 

 何度目だろう。

 俺がコイツと戦うのは、これで一体何度目になるのだろうか?

 いつもいつも、失敗ばかり。いい加減、自分で自分を罵倒したくなる。

 

 そんな俺の心中を余所に、相手は最後の攻撃を仕掛ける為の予備動作に入る。

 それを見た瞬間、俺は相手の心意気に感銘を受けた。

 この動作は……火炎ブレス。その名の由来にもなった彼女の最高の攻撃だ。

 彼女の名は【雌火竜リオレイア】。俺を何度もフッてくれた、つれない陸の女王様である。

 自身の最大の攻撃で最後を彩ろうなんて、中々気が利いてるじゃないか女王様。

 

 俺はその姿を目に焼き付けるように凝視した。もうコイツと遭う事は二度と再びあるまい、と一抹の寂しさを胸の片隅に抱く。なにせ、昨日の日没からの一夜を共にした相手だ。月夜の晩のダンスパーティー。演目はクルクル回る尻尾攻撃に、ムーンサルトの華麗な舞い。夜空を彩るでっかい花火に、極めつけは盛大な送り火ってか。ホント、ロマンチックが止まらないぜ。

 

 彼女はその身体に比して細く長い首を僅かに上向かせると、胸を膨らませながら大きく息を吸い込んだ。狙いを定めるようにギョロリと目を剥き、口元の鋭く並んだ剣歯の隙間からはチロチロと紅蓮の炎が顔を覗かせている。

 彼女の火炎袋(ハート)は今にもはち切れんばかりに膨らみ、焦がさんばかりの想い(殺意)は今か今かとその時を待つ。 

 俺はその光景に魅入っていた。陸の女王の矜持とその圧倒的なまでの力強さに敬意の念を抱き、それら全てを内包するこの空間に、俺は言いようの無い神秘性を感じていた。

 その中心となる彼女は、口を顎関節が悲鳴を上げそうな程に開き、さながら砲塔のような首をこちらに向けて突き出して―――

 

 ――――――そして、それを撃ち出した。

 

 紅蓮の豪火が膨らんでいく。

 砲塔から放たれ留めるものが無くなったそれは、撃ち出した彼女の顔よりも遥かに大きく膨らみ、闇夜を照らす小太陽のように宙を走った。明かりに寄った小虫が焼かれたのか、バチバチと爆ぜる音を響かせながら、火球は獲物である俺に一直線に襲い掛かる。

 

「―――ォおおォォォォォ!!」

『グルォォォオオオーーー!』

 

 それら一連の動きを確認した俺は、腹の底から搾り出すように雄叫びを上げた。すると、それに呼応するかのように、彼女も最大級の咆哮(バインドボイス)を轟かせて応える。

 

 今、最後の挨拶は終わり、最期の時が訪れた。

 

 ……さあ、宴は終わりだ。

 

 俺は得物を手にし、地を蹴った。

 前転回避で炎を右手にやり過ごし、間髪入れず走り出す。

 咆哮の姿勢のまま突き出された首の真横を駆け抜けて、彼女の巨大な翼の影に入る。

 すり抜け際、彼女と目が合った。

 まるで、お前はよくやった、と言わんばかりに彼女の瞳は穏やかに澄んでいて、自身最大の攻撃をすり抜けた俺に対する賛辞を湛えているようだった。

 瞬間、これで良いのか、と迷う。俺の行動は間違っているんじゃないのかと逡巡する。

 例えこれが最後の攻撃だとしても、いや、最後だからこそ『俺にとっての最大の攻撃』をするべきなんじゃないのか、それが彼女への礼儀なんじゃないのか、と懊悩する。

 だが、それも一瞬。俺は即座に思考を切り替えた。

 この戦いは、『たった一つの目的の為』に始まったのだと思い直す。それを貫く事こそが彼女への礼儀であり、最大級の餞である、と。

 

 俺は『ソレ』を握り締め、叫んだ。

 

「―――行っけぇぇぇええええーーーー!!」

 

 炎弾が着弾し燃え上がる背後の地面に照らされ、放たれたそれは鈍く光る流星となって飛翔する。くの字の体を高速回転させながら、目標に向かって円を描くようにそれは走った。

 

 ―――斬ッ!

 

 見事に命中したそれは、放たれた時とは対称の軌道で俺の手元へ戻ってくる。

 そう、これの名はブーメラン。俺が持つ唯一の切断属性の武器だ。

 

 ―――ズ、ッズゥン

 

 俺の最後の一撃を浴び、体力の尽きた彼女は地に倒れ伏した。

 

 

 

 哀れだ、樹海の主がまさかブーメランで止めを刺されるとは。やった張本人ながら、本当に哀れだ。

 しかし、これには事情がある。

 俺の目的とはリオレイアの尻尾切断で、そこから剥ぎ取れる『逆鱗』なのだ。

 もう、何度繰り返されたか分からないレイア逆鱗ソロマラソン。しかも未だ成功無し。

 無辜のレイア達の怨嗟の声が聞こえるようだ。

 

 もう無理だ。俺の心はたった今折れてしまった。

 だから、心の底からこう叫ぶ。

 

「―――――誰か……頼む! 誰か、尻尾を切ってくれーーーー!!」

 

 と。

 

 




 尻尾切断に悩むソロガンナーさんのお話でした。
 まあ、頑張れば切れなくはないんですけど……やっぱメンドイですよね。
 大抵は諦めてフレに泣きつくか、泣く泣く切断武器に持ち替えるかだと思います。だってその方が早いし……。今回の人は泣きつきましたが、自分は太刀でバッサリと切りました。
 
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