戦えない私がキヴォトス中の生徒に執着されるまで 作:Zuzuiikb
放課後。窓の外が少し橙色になり始めた頃、私はヒフミ先輩と並んで歩いていた。
ぎこちない。でも、嫌じゃない。
むしろ、そのぎこちなさが少しだけ安心した。
ヒフミ先輩は無理に話しかけてこない。ただ、私の歩幅に合わせて隣を歩いている。人が多い場所へ入る時だけ、少しだけ前へ出る。それだけ。でも、その“それだけ”が、今の私にはすごくありがたかった。
「……レナちゃん」
「はい?」
「今日は、ちゃんとご飯食べましたか?」
不意の質問だった。私は少しだけ目を逸らす。
「……一応」
「“一応”って、絶対ちゃんと食べてない時の言い方じゃないですか」
「うっ……」
図星だった。
最近あまり食欲がない。食べようとしても、途中で気持ち悪くなる。そんなことまで見抜かれているのが、ちょっと悔しい。
ヒフミ先輩は困ったみたいに笑った。
「レナちゃん、頑張りすぎです」
「……頑張ってないです」
「頑張ってます」
即答だった。私は言葉に詰まる。
「私はちゃんと見てますよ」
その言葉に、胸が少し痛む。思い出す。押さえつけられた腕。逃げられなかった感覚。力が入らなくなっていく感覚。笑い声。乱れた制服。
呼吸が少し浅くなる。
その瞬間、ヒフミ先輩が小さく「あっ」って顔をした。
「ご、ごめんなさい……!」
「い、いえ、大丈夫です」
慌てて否定する。本当は全然大丈夫じゃなかった。でも、ヒフミ先輩にそんな顔をさせたくなかった。
少し沈黙が落ちる。その空気が嫌で、私は無理やり話題を探した。
「……先輩って、なんでそんな優しいんですか」
「えぇっ!?」
すごい勢いで振り向かれる。
「な、なんですか急に!」
「いや、なんか……普通あんなことあった後、もっと気まずくなるかなって」
「気まずいです!」
「えっ」
「めちゃくちゃ気まずいです!」
ヒフミ先輩は顔を赤くしたまま、わたわたし始める。
「だ、だってレナちゃん避けるし……私なんか変なことしちゃったかなってずっと……」
「う……」
罪悪感が刺さる。
ヒフミ先輩は少しだけ俯いた。
「でも、怖がられても仕方ないかなって思ってました」
「……違います」
気づけば、すぐ言葉が出ていた。
「怖かったわけじゃないです」
ヒフミ先輩が顔を上げる。 私は少し迷ってから、小さく続けた。
「……合わせる顔、なかっただけで」
その瞬間。ヒフミ先輩の顔が、泣きそうなくらい柔らかくなった。
「レナちゃん……」
その声が優しすぎて、私は慌てて前を向いた。
無理。
そんな顔されたら泣く。
その時、人混みが横を通った。肩がぶつかりそうになる。
反射的に体が強張った。
「っ……」
息が止まる。怖いというより、体が勝手に反応する。
でも次の瞬間、ヒフミ先輩がすっと私の前へ半歩出た。何も言わない。ただ、人の流れを遮るみたいに立つ。
その背中を見た瞬間、少しだけ呼吸が戻った。
「……大丈夫ですか」
小さい声。私は俯いたまま頷く。ヒフミ先輩は、それ以上何も聞かなかった。優しい。優しすぎる。私はその横顔を見る。
見ていたら、急に胸が苦しくなった。
「……先輩」
「はい?」
言うか迷う。
でも。
今なら言える気がした。
「……手」
「え?」
「手、繋いでいいですか」
ヒフミ先輩が止まる。
目を見開く。
「…………え」
本当に固まった。
私は急に恥ずかしくなって目を逸らす。
「や、やっぱ今のなしで――」
「い、いいです!!」
すごい勢いだった、周囲の人がちょっと見る。ヒフミ先輩は真っ赤になっていた。
「す、すみません大きい声出ました……」
「いや、びっくりしますって……」
二人で変にしどろもどろになる。
でも。
嫌じゃない。
ヒフミ先輩が、おそるおそる手を伸ばしてくる。前みたいに。壊れ物を扱うみたいに。
私はその手へ、自分から指を重ねた。
少しだけ震える。
でも。
今度は逃げたくならなかった。
ヒフミ先輩の手は温かかった。強く握らない。押さえつけない。ただ、ちゃんと隣にいてくれる。
それだけなのに。
それだけだから。
安心した。
「……レナちゃん」
「はい」
「私、これからも隣にいますからね」
柔らかい声だった。私は少しだけ俯く。涙が出そうになる。
でも今度は、ちゃんと笑えた。
「……はい」
まだ少し怖い。人混みも。思い出すのも、全部。
でも。
隣にヒフミ先輩がいるなら。
それでも歩いていける気がした。
みんな重いのが好きだと思ってやりすぎちゃいました。ヒフミ編を終えてストーリー展開について意見おねがいします。
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やりすぎ。二度としないで。
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毎回じゃなくて、ときどきだったらいいよ
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足りない。もっともっとやっていい