戦えない私がキヴォトス中の生徒に執着されるまで 作:Zuzuiikb
トリニティって絶対おかしい。いやほんとに。
入学してからずっと思ってるけど、この学園、構造が人間に優しくない。広いとかそういうレベルじゃないんだよね。普通にダンジョン。初見殺し。設計した人、「迷子」という概念知らなかった可能性ある。
しかも全部綺麗だから余計に混乱する。
廊下も綺麗。
中庭も綺麗。
礼拝堂も綺麗。
結果、「さっきここ通った?」ってなっても全然分からない。
そして私は今、見事に迷っていた。
「……いや無理でしょ」
思わず独り言が漏れる。
だって説明がまずおかしかった。私はただ第二資料室に行きたかっただけなのに、図書委員の先輩、
「中央棟から第三回廊抜けて、噴水側じゃない方の渡り廊下を右! そのあと聖堂の鐘が見える方向じゃない方に進んで、階段降りたら二番目の廊下を左にいって!そしたら赤い扉が見えてくるからその扉の二つ奥の部屋!!」
って。
分かるわけある?
「じゃない方」が多すぎるんだよ。あと途中から鐘見えなくなったし。しかも気づいたら人いないし。静かだし。てかなんでなんも見ずにその説明ができるんだよ天才か?
なんかもう、私このまま卒業までここ彷徨う?
みたいな不安が出てくる。
いや怖。
……あ、また怖って言った。なんか最近すぐ”怖“って言ってる気がする。語彙力終わってるなぁ
そんなことを考えながら、とりあえず来た道を戻ろうとした、その時だった。
「……何してるの?」
「ひゃっ!?」
変な声出た。いやほんとに。自分でもびっくりした。反射で振り返る。
そこに立っていたのは、下江コハルだった。正実でも期待されていると名高い同じ1年生。顔だけはなんとなく覚えていた
正義実現委員会の制服。
少し鋭い目。
小柄なのに妙に圧がある感じ。
あと、かなり顔が良い。
いや前から知ってたけど。近くで見るとその可愛さにびっくりする。
「あ」
「あ、じゃないって。何その反応」
呆れた声。でもそこまで怖くはない。なんかこの人、思ったより感情が顔に出る。
「その……ちょっと考え事してて……」
「廊下の真ん中で?」
「……はい」
「迷った?」
うっ。そんなに分かりやすかった?私。
「なんか“もう全部投げたい……”みたいな顔してたけど」
そんな顔ある?いや、ちょっとだけ投げたくはあったけど。
「で、どこ行きたいの」
「第二資料室です……」
「なんでこんなとこいるの!?」
ですよね。コハルが頭を抱える。
「どういう説明されたの」
「えっと……鐘が見える方向じゃない方に行って、そのあと二番目の廊下を左って……」
「説明したやつ誰!? 初見で分かるわけないじゃんそんなの!」
良かった。やっぱり難しかったんだ。ちょっと安心した。
「というか途中で誰かに聞かなかったの?」
「いや、なんか皆忙しそうだったし……」
「……あー」
コハルが微妙な顔をする。
「なんか、あんたって変なとこで遠慮するタイプ?」
「え」
「いや、なんとなく」
断定じゃない。でも、少し探るみたいな言い方だった。私は曖昧に笑う。
「……まあ、ちょっと」
「それで迷子になってるの、だいぶ本末転倒だと思うけど」
うぅ。正論。
「一年?」
「あ、はい」
「名前は?」
「レナです」
「レナね。私はコハル」
「はい、知ってます」
「その言い方ちょっと怖いんだけど...」
だって正義実現委員会だし。顔がいいし
でもコハルは思ってたより話しやすかった。
もっとこう、
「規律!」
「風紀!」
みたいな人かと思ってたのに。
いや真面目なんだろうけど。普通にツッコミが多い。
「で、第二資料室行きたいんでしょ。案内するから」
「あっ、でも悪いし――」
「その“悪いし”でまた変なとこ行きそうだから言ってるの!」
声大きっ。思わず肩が跳ねる。
でもコハルはそのまま歩き出してしまった。
「ほら、行くよ」
「あっ、待って!」
慌てて追いかける。というか歩くの速い。
小柄なのになんでそんな速いの。
「……なんか、意外だった」
「何が?」
「もっと怖い人かと」
「それ何回言うの!?」
コハルが振り返る。ちょっと眉上がってる。
でもなんか、それが面白くて少し笑いそうになる。
「いやでも、正義実現委員会って皆ちょっと近寄りがたい感じあるし……」
「まあ、否定はしないけど。でも普通だよ。少なくとも私は」
「普通の人、“迷子になる方が難しい”って顔で見てこないと思う」
「実際そうだったし」
「うぅ……」
なんかテンポが速い。でも不思議と話しやすかった。
ミカ先輩とはまた全然違う。ミカ先輩相手だと、ずっと変に緊張してるから。顔近いし。距離感おかしいし。あと普通に綺麗すぎる。
あんな距離で笑われると、脳が「危険!」って騒ぐんだよね。いや本当に。生物的な危機感みたいな。
「……レナ?」
「ひゃい!?」
噛んだ。終わり。いやだからその思考やめようって。
「なに、急に」
「え、いや……」
「顔赤いけど」
うそ。そんな分かりやすい?なんか恥ずかしい。
「熱あるとか?」
そう言いながら、コハルが少し顔を覗き込んでくる。
近。
いや待って。
この人も距離近いな?
「だ、大丈夫!」
「ならいいけど……」
コハルが少し首を傾げる。睫毛長いな、この人。
あと目綺麗。
ちょっときつめだけど整ってる。
……って、今それ考える場面?
そんなことを考えていた、その時だった。
「あれ?」
柔らかい声。聞き慣れた声。その瞬間、心臓が妙に跳ねた。いやほんとなんなのこれ。
「レナちゃん?」
振り返る。
そこに立っていたのは、ミカ先輩だった。
「あ、本当にレナちゃんだ。遠くから見えたから来ちゃった」
ふわっと笑う。
綺麗。
いやほんとに。毎回思うけど顔が強い。
「……ミカ様」
隣でコハルの声が少しだけ固くなる。でもミカ先輩は気にした様子もなく、自然にこっちへ近づいてきた。
「何してたの?」
「えっと……道に迷ってて、コハルが案内してくれてて……」
「へぇ〜」
ミカ先輩が私とコハルを交互に見る。
そのまま。
す、と。
私の腕へ手を伸ばした。
「わっ」
自然すぎて避ける暇なかった。しかもそのまま腕抱き込まれてるんだけど。
近。
いやほんと近い。
制服越しに体温分かるくらい近い。しかもミカ先輩、多分これ無意識でやってる。私だけ変に意識してるみたいでなんか悔しい。
「ミ、ミカ先輩、近――」
「ふふっ。レナちゃん、ちゃんと見つけられてよかった」
耳元で笑う。近い近い近い。無理。声が近い。
あと良い匂いする。いやそこ意識するな私。
「……ミカ様」
隣でコハルが何か言いかける。でも途中で止まった。
視線だけが、私の腕を抱えるミカ先輩の手に落ちる。
「ん?」
「……いえ、なんでもないです」
コハルが小さく首を振る。
ミカ先輩はそれ以上気にした様子もなく、私の袖を軽く摘まんだ。まるで、どこか行かないようにするみたいに。
「じゃあ、ここからは私が連れてくね」
柔らかい声。でも。
腕に触れる指先だけ、妙に離れなかった。
r18っている?
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必要だろ。んなもん
-
いらない。プラトニックこそが至高