初投稿ですが、だからといってどうというわけでもないです。まざるちゃんは変な名前だと思いますが、よろしくお願いします。
Ep.1「魔法少女 まざる」
4月下旬のある日、午後4時20分。とある駅のホーム。
1人の女子高生が、カバンを背負いながら電車を待っている。午後4時22分。そろそろ電車が来る。女子高生はスマートフォンに表示されている時刻を見て、端末をポケットに入れた。
そろそろだ、と、チラチラと電光板を見ながら線路の方を向く。
午後4時23分。
明らかに電車ではない。
彼女の視界に、蜘蛛のような脚を持った、ずんぐりむっくりとした黒く大きな怪物と、それを追いかけるように翔ける1人の少女の影が飛び込んできた。
「ヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいぃぃっ!!」
「ちょっと、何これ……」
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2週間前。東京のある場所に隕石が墜ちた。
大きなクレーターとちょっとした森林火災が発生して、その日はどの局もその報道で持ち切りであった。テレビでは有名なコメンテーターが隕石について語り合い、インターネットでは喜ぶもの、怖がるものもいて、中には侵略だの謀略だの、陰謀論者が盛り上がってもいた。
父親も母親も盛り上がっていたが、まざるにはそれがあまりよく分からなかった。何が凄いのかも分からないが、それでもまぁ、一目くらいは見てみたいとは思った。
その翌日、学校へ行ってみると教室内の盛り上がりがそれはもう凄かった。まざるの観測した限りだと、全員が同じ話題で盛り上がっていた。彼女の視界に入らなかったところで、一部の人間は昨日の漫画やアニメの話をしていたのかもしれないが、大多数の人間は昨日の隕石の話ばかりしていたのをよく覚えている。
――――――――――
そして現在へ戻る。まざるの目の前で繰り広げられているThe・非現実な現実に理解が追いつかない。怪物がその足を振りかぶると、黄色の剣を持つ少女は高速で迫るそれらをまたまた高速で捌き、1本切り落とした。風圧で頬に涼しさを感じる。圧倒されてしまい、まざるはその場から動けないままだった。
少女から距離を取ろうと、足を1本失った怪物は残る7本の足でカタカタと動いて、その目にまざるを捉えた。
「へ?あっ、こっち見てる!」
身の毛がよだつ。鳥肌が立つ。逃げなきゃ、と心が叫んでいる。思うように足が動かない。なんとか立てたと思いきや、数秒も経たないうちに、尻もちをつくように後方へ転んでしまった。
「!!」
まざるは咄嗟にあの少女がいた方向を見る。いない。次に怪物のいる方向を見ると、目の前にその少女が立っていた。
瞬く間に怪物を斬る。斬る。斬る。体が欠ける、再生した足を斬る、再生した体をもう一度斬る。
怪物が仰け反る。少女はまざるに背を向けたまま軽快に宙を舞いながら一回転、勢いをつけて追撃の袈裟斬りを叩き込んだ。
「あっち……行けっ!」
防御が崩れたところを間髪入れずに右足で蹴りつけ、その巨体を大きく吹っ飛ばした。少女はそれを目視すると、瞬時に大ジャンプしてまざるの方へ戻ってくる。
「……立てる?」
「あ、はい!立てます立てます……あれっ?」
体に力が入るようになってきた。まざるは足をよろっと動かし立とうとするが、少し体が動くだけですぐにストンと力が抜けてしまう。
「あっ、はは……」
「…………」
少女は無言でまざるの右手を取る。
(あったかい……)
引っ張られ、手と手を通して、肌の温もりが伝わる。
(でも、なんか熱すぎるような……)
妙な熱さを感じる。まざるがそれに気付いたと同時に、彼女の手を取る少女の表情も変化したのが分かった。
カッ――
何かが光って弾けた。
少女は怯えたような、驚いたような奇妙な表情になって、パッとまざるの手を離した。
「あっ、ごめんなさっ……!」
まざるの手から光が漏れているのに気付いて、目を大きく見開く。目の前の謎現象に困惑が隠せていないのか、もう一度ゆっくりとまざるに近付く。
「あなた、それ……」
「え、なんですか、これって……」
呆気にとられている2人を大きな影が包んだ。まざるの表情を読み取り瞬時に後ろを振り向くが、不意打ちに防御が間に合わず、少女の体が大きく吹き飛ばされる。
「逃げてっ!!」
直前、その声が聞こえた。火事場の馬鹿力とでも言うべきか、まざるはグッとその体を起こして、逃げようと全力疾走。だが……
「マジ!?」
それは、思っていたよりも遥かに速かった。このままではすぐにでも追いつかれそうだ。振り向いたとき、全力で振りかざしていた右手の軌道が見える。さっきの光がまだ灯っていることに気付いて、グッと目をつぶり、歯を食いしばる。
振り返って、怖くないぞと暗示をかけながらパッと目を開け、光る右手を頼るかのようにそれを前へと突き出した。
「お願い……お願いだから、お願いだからなんとかなってよっ!!」
ついに追いつき、足を振りかぶる怪物の動きがピクッと止まる。右手の光はその輝きを大きく増していき、まざるの全身を包んだ直後に周辺に電撃を放つ。
いつの間にか駅に着いていた電車が走り去る。轟音が鳴り止んだ頃、まざるの装いは全く別のものに変わっていた。
「凄い……なんか、なんでも出来そうな気がする……」
艶やかな薄紅色の髪が煌めく。フリフリの服が風に揺られてなびく。手がバチッと電流を放つ。
間違いない。これは多分……あの少女と同じような力だ。まざるには剣が、少女には電流がなく、服装だって同じじゃない。しかし、何故かまざるにはその確証があった。
分からないことだらけだが、最早考えている場合でもない。グッと拳を握り目の前の障害を見据える。
「やるしかないっ……」
再び怪物が攻撃を仕掛ける。またあの黒い足を上げた。先程よりも遅く見える。まざるの脳が足に信号を送ると、とてもスムーズに体が動いた。
「ほっ!」
攻撃を華麗にかわす。軽いフットワークで懐に潜り込んだ。
「そりゃそりゃ、おりゃあっ!」
軽いパンチを2発。思うように体が動いて心地いい。体を捻ってもう1発、強烈なパンチを怪物の顔めがけて叩き込んだ。
先程の少女のように大きく吹っ飛ばす……とはいかないものの、ダメージを与えたという手応えはあった。なんとかなる。なんとかなる……!
「なんとかなる!」
反撃する間も与えず、身を翻して蹴り。仰け反る怪物との距離を詰め、一撃、一撃と力を込めて攻撃を叩き込む。
「グァァァ!」
その最中だった。怪物が大きく口を開け叫ぶ。まざるは放とうとした拳をピクと止めてしまった。しまった、と言わんばかりに目を見開くと、怪物は彼女を突き飛ばすように2本の足を前に突き出す。
「ひぃぃやぁぁ!」
なんともまぁ間抜けな声だ。間抜けな叫び声に呼応するかのように心臓の辺りが光る。半球状、コンタクトレンズのような形をしたオーラがバリアのように正面へ飛び出た。
バチバチと電気を纏ったそれと怪物の足が接触、バリアはパリン!とガラスの割れるような音を立てて砕け散ったが効果は
「凄いじゃん、私!」
「本当に凄いわ、それ!」
その声とともに怪物の背後からジャンプして現れたのは先程の少女。不意打ちの報復だ、と剣を煌めかせその巨体を捉えた。
「《ストレート・ソード》ッ!」
剣がオーラを放ちその煌めきを強める。気がつけば怪物の体は真っ二つに斬り裂かれ、光の粒子となって彼女に取り込まれていた。
「……私、オトギソード。あなたは?」
「ま、まざる……苺園、まざるです……」
暖かくて冷たい春風が吹く。それは、2人の出会いを祝福するかのように。
「少し話があるの。一旦ここから出ましょうか」
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