オトギテール RIVAL   作:爆裂おいしい君

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投稿でーす。14話でーす。前書き、もう少し書きたいのですがちょっと間に合いませんでした。すみません。


Ep.14「確保!」

 

「……というわけで、私は今からあなたを倒す!」

「やれるものならやってみろッてんだ!」

 

 怪人が一歩踏み出すと、ソードを惑わすかのような動きで、猛スピードで彼女の周りを駆ける。

 

「ここぉっ!」

 

 ソードは大きく跳び上がってその剣を振り下ろす。0.数秒後、剣筋は突如として現れた黒い影を捉えた。

 

「ぐはあっ!?」

 

 再び高速で移動する影。ソードと距離を取ったかと思えば、次は真っ直ぐに彼女へ向かって猛突進。

 

「こンのおぉぉぉっ!」

 

 眼前に刃が迫る。ソードはふぅ、と一息つくと、冷静に剣を一振り。

 

「フンッ!」

 

 ガキィンッ!

 

 たった一振りで、突進の勢いは打ち砕かれ、怪人の姿勢も大きく崩れてしまった。

 

「なっ……!」

「パワーは申し分ないわね。でも何か物足りないわ」

 

 間髪入れずに冷静に、丁寧に、真っ直ぐに。筆で文字を書くような美しい太刀筋で怪人を斬りつけていく。見事にクリーンヒットした斬撃が、怪人のスタミナと機動力を奪っていく。

 

「クソッ、なんだ、お前っ!」

「たぁっ!」

 

 何とか反撃しようと腕を振り回すが、ソードの強烈な回し蹴りが炸裂。鋭い刃先など見る影もなく、ポキッと刃が折れてしまう。

 

「グッ……!?も、もう逃げるしかっ!」

 

 驚きよろめく怪人。怯えたような表情で慌てながら背を向け逃げようとするが、そうは問屋が卸さない。ソードは動く素振りは見せずに、ただ立ち止まって剣にオーラを纏わせる。

 

(きっとただの斬撃ならかわされる。だから……)

 

 剣の纏う黄色のオーラは徐々に切っ先へと集まっていき、キラキラとその輝きを強めていく。

 

「逃がさない――。《ソードドラグーン》!」

 

 オーラは太い光線へと姿を変え、怪人の背を捉えた切っ先から高速で射出される。閃光はささやかな細い音と共に空を切り、ついに怪人の体をぶち抜いた。

 

「夢野くん……あなたも何かと大変ね」

 

 怪人の纏う黒の外套は光の粒となり、その中から横たわる夢野が現れた。

 

 

 

――――――――――

 

 

 

「ん…………」

 

 朝目覚めた時と同じように、眠そうな顔でまぶたを開ける。目ヤニなどついていないだろうか、手をそっとまつ毛の方へ近付けようとするが……。

 手が動かない。何かがおかしい。縛られている?

 

「お目覚めかしら」

 

 ソファの上に佇むなおが、座った姿勢の夢野を見下ろしながらそう言った。

 

「わ、枠島さん!?」

「そう。聞きたいことがたくさんあるから、気絶しているあなたをここまで連れてきたの」

「えぇ〜っ……!」

 

 夢野はキョロキョロと辺りを見回すが、分かったことといえば誰かの住処なのだろうということだけ。なおの家と解釈するのが自然だろう。

 

「それで――自分が何してたか、分かる?」

「えっ……。すみません、記憶が曖昧で……」

「そう。まぁ仕方ないわよね。あなた、怪人になって暴れてたのよ。しかもこの真ん前で」

「……ッ!」

 

 悔しそうな、悲しげな声にならない声。またか……。と言わんばかりに、複雑な表情で俯いて。

 

「魔法少女について、何か情報は覚えてる?」

「えっ……?」

 

 何故それを、と口にしようとした瞬間、なおの姿が光に包まれ変化する。驚きのあまり、夢野は叫びながら大きく跳ねた。

 

「うわぁっ!」

「また何かされたんでしょ?あの()()()()に」

 

 一歩ずつ夢野の方へ近付いていく。縛られたままの彼は何も出来ずに、ただ怯えたような声を小さく出してゆっくりと仰け反るだけ。

 

「覚えていること全部教えて。魔法少女はどんな見た目だった?」

「あ、青ですっ。青色……も、もしかしたら水色だったかもしれない!です……知らない人からメッセージが来て……指定された場所に行ったらあの魔法少女がいて……。えっと、また黒い何かをグッと押しつけられて、気付いたらここに……。あの、えっと……すみません」

「ふーむ……」

「あっあっ!えっと、ありがとうございますっ!!」

 

 ――やりづらい。

 必死に話す夢野からスッと目を逸らしながら、彼の言っていた内容を頭の中でまとめる。

 青色の魔法少女が夢野を呼び出し、『肉片』を植え付け怪人化させ、暴れさせる。

 ……しかし、目的が分からない。好き勝手暴れさせているだけか?ソードがグルグルとその場で回っていると、ガチャリと扉が開き、はるとムネツグが顔を覗かせた。

 2人は目の前の光景に思わず眉をひそめて、お互いの顔を見た。

 

「えぇ……何これ?」

「分からん」

 

 ヒソヒソとした話し声が聞こえて、ソードは初めて二人の存在に気付く。するとカーッと茹でダコのように顔が赤くなって、ばたり、とソファに顔をうずめた。

 

「まさかあのなおちゃんが緊縛とは……」

「あぁ。……しかし、これはお前の想像しているようなものじゃないんじゃないか?」

「ち、違うんですこれはーーッ!」

 

 モゴモゴとソファから叫び声。2人はため息をついて、うずくまる彼女の元へ向かった。

 

「さてさて、2人きりで何やってたのかな?」

「ちがーうっ!!」

 

 

 

――――――――――

 

 

 

「へぇ。この子が怪人ねぇ」

「はい……」

 

 変身を解いたなお。モジモジしながら答える。

 

「まぁ夢野くんも、お茶飲みなよ」

「あ、はい。いただきます……」

 

 涙目の夢野もなおと向かい合うように座って、言われるがまま注がれたお茶を飲む。

 

「大体の事情は分かったわ。そうねぇ……今から2人を呼ぶわけにもいかないし、夢野くんは今日1日ここに軟禁ってことになるわね」

「え」

 

 飲んでいたお茶が、電気ケトルのように夢野の口からダバーと流れ落ちる。お茶は奇跡的に彼が持っていたコップに全て入って、事なきを得た。慌ててそれをもう一度飲むと、飲み干したあとに聞き返す。

 

「な、軟禁……?」

「えぇ。私たちとしては、そういうことはしたくないんだけど。あなたがまた怪人になったりでもしたら皆困っちゃうから」

「そんなぁ!」

 

 

 

 ……数時間後。少しとはいえ元気を取り戻した夢野は、事務所にあったテレビゲームを黙々とプレイしていた。

 

「いや〜、レベル上げは誰かにやらせるのが一番いいね」

「…………」

 

 結局なおも今晩は泊まることになり、ピカピカと変わっていくテレビの画面を静かに見ていた。

 

「枠島さん」

「……何?」

「僕が怪人になったとき……何か、どこかの写真を魔法少女に見せられたのを思い出しました」

「どこかって……どこ?」

 

 沈黙が続き、カチカチとボタンの音だけが部屋に響く。

 

「そう……」

 

 なんて言いながら、なおは今日の出来事を思い返してみた。階段を降りると怪人に遭遇してそのまま……

 ――あれ?

 どこか引っかかるところがあったのか、顎に手を当て考え込む。

 

(どうして怪人はあの路地に……。ここを抜けた先に何かがあるの?それとも――)

 

「バレてる……?」

 

 その声に、不安そうに夢野が振り向くと、なおはその場で立ち上がる。考えうる限り最悪の可能性だ。彼女がドアの方を向くと、心の声が漏れたのか、ボソッと呟いた。

 

「彼女の狙いは、私たち…………?」

 

 

 

――――――――――

 

 

 

 同時刻。少女が1人寂しさを漂わせては、どこかの屋上で佇んでいた。

 

「夢野くん、返信無いなあ。もしかしたら、もう倒しちゃったかな?それとも死んじゃった?あの人のことだから死んではないかな?う〜ん、じゃあ捕まっちゃったかな?余計なこと喋ってなければいいんだけどなあ」

 

 先程までの儚げな表情はどこへやら、ニヤケ面の少女は夜空を見上げて小さく笑った。

 




お読み頂きありがとうございます。14話でした。
そろそろ2章も折り返しです。今後とも応援よろしくお願いします。
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