――『青の魔法少女』との戦いから、今までずっと特訓してきた。かつては上手くいかなかったオーラの扱いも、ここまで上達した。
「『第2ラウンド』だよ……!」
両腕に電気を纏っては、グラビティにそう言い放った。
「バカが……!」
うっとうしそうな顔をして、グラビティは強烈な踏み込みから猛スピードで接近。オーラを纏った拳を振るうが、瞬時に反応するジャムがそれを拳で受け止める。
「お返し!」
「当たるかよッ!」
周辺の雨粒が空中で破裂するほどに激しい攻防。2つのオーラが混じり合って、弾けてを繰り返す。
「邪魔なんだよぉっ!」
右腕を突き出すのと同時に、ばら撒かれる小型のエネルギー弾3つ。ジャムはすぐにそれが爆発するものであることに気付いたが、その時にはもうバリアを展開する時間はなかった。
「負けないって言った!」
防御出来ないなら、反撃するまで。その身で爆発を受けながらも前へ飛び出して、右ストレートをぶち当てる。
「ぬあぁっ!!」
叫びながらオーラを周囲に放つグラビティ。後方へ仰け反ったジャムは、自身に迫る彼女を迎撃すべく手のひらを突き出す。
「《ジャム・サンダー》!」
両腕の電流は閃光となり、グラビティに命中し炸裂する。予想外の反撃をもろに受け、吹っ飛んで地面に転がった。
「大したことねぇ〜……なぁ!」
「!!」
立ち上がったグラビティが仕掛ける猛ラッシュ。ジャムは防戦一方、ただただ打撃を打ち込まれるばかりだ。
「オラオラオラ!!どうした!あたしに勝つんじゃなかったのかよ!」
「うっ……」
最後に放たれた大振りな一撃。しっかりと両腕でガードすると、ジャムの反撃。周囲に電撃を放って、グラビティに連撃を仕掛ける。
「力は誰かを傷つけるためにあるんじゃない!守るためでしょ!」
「いい子ぶって、あたしに指図すンじゃねぇーーッ!」
猛攻をいなし、強烈な反撃。ジャムをぶん殴って、オーラの波でその身体を突き飛ばす。
「ぶっ死ね!うるぁぁぁぁぁぁっ!!《グラビティ・バスター》!」
両手を前に突き出し、強大なエネルギーを放出。極太の紫色をしたレーザーが雨も風も砂も切りつけながら、ジャムへと迫る。彼女にプレッシャーを与えるように、ゴゴゴゴと地面が唸るような音を鳴らしている。
(防ぎきる……ぜったい、絶対!!)
今まで作ったきたものより一回り大きいバリアを展開する。それの纏う電流も今までのものとは比にならないほど。
キィィィィィィィィィィィンッッッ――!!
激突した2つの光は激しい音と共に拮抗。
「あたしのグラビティ・バスターが……そんなので受け止められると思うなよッ!ジャムゥゥゥッ!!」
「ぐううぅぅぅ……!」
……していたに思われたが、2人が力を強める度にレーザーがバリアを押していく。そしてある時、バリアにヒビが入った。
ミシミシとヒビは大きくなっていき、それと同時にジャムの手もプルプルと震えてきている。
「あああああああっ!」
「ううううぅぅぅっ……!」
ガラスが弾けるような音。風圧でジャムの髪が後ろに流され、視界が真っ白になる。砂埃が舞い上がり、その場で1人、グラビティはケタケタと笑った。
「ハッ、ハハハッ。ハハ、アッハハハハハ!アハハハハハハハ!」
――勝った。あたしの勝ちだ。これであたしが最強だ。
「ハハ、アハハハハ、アハハハハハ……」
違和感に気づいた。確かにバリアを破りグラビティ・バスターは命中した。だが、確実に『気配』を感じる。
「ハハ………………おい。マジで言ってんのか?」
「…………」
先程と同じ場所に立っているジャム。彼女はもうボロボロだというのに、立っている。その場から数センチも動くことなくただただ立っていた。
「ふッざけんなよ……」
「…………」
声が届いているのか、届いていないのかも分からない。恐る恐る一歩近づいてみると、ジャムの体が…が指1本だけピクリと動いた。
ゾワッと、背筋に冷たいものが走った。グラビティの心にあった小さな怯えが、目の前の標的への苛立ちを上回った瞬間であった。
「おい……!」
「……ないもん」
「ヒッ…………!?」
「負けないもん……」
――負けない負けない負けない負けない負けたくない負けたくない負けない負けない。
――倒れるもんか倒れるもんか負けるもんか負けるもんか負けるもんか終わるもんか……。
そんな簡単な感情の昂りだけが、彼女をそこへ留めた。
バリバリッ……バリバリッ……
最後の力を振り絞るように、右腕にオーラを纏わせるジャム。この間と同じように、エネルギーが宙で渦巻いている。
「…………ッ」
グラビティはただ黙って、右手に力を込めた。右手にエネルギーが集中していく。
2人は同時に駆け出した。その瞳は、もはやお互いしか見えていない。
「ハアアアアアッ!!」
グラビティの声だけが響く。ジャムの拳が一手先に彼女の元へと届く。グラビティはただ、自身に迫る拳の方を見ていた。
(あぁ、あたしの負け――)
その瞬間。その拳の纏っていたオーラが一瞬のうちに消失し、それと同時に、ぐったりと腕の力が抜ける。
驚きのあまりグラビティのオーラもどこかへ拡散して、彼女の理解の追いつかないうちに、変身が解けてしまったジャムの体が前方へと倒れ込んだ。
「何が……起こった…………?」
抱き寄せるようにその身体を受け止めていたグラビティは、怪訝そうにボソッと呟いた。
「あ…………」
よく見れば、知った顔が胸元で静かに眠っていた。かわるによく似ているその人は、彼女の姉――苺園 まざる。なんとも言えない表情で、うみはギュッと腕に力を込めた。
「……っ、なんかさ……。あんたの妹って、本当に……本当にいいやつだよね」
長い長い第2ラウンドが終了した。お互いズタボロのボロボロになって、勝者はもはやどちらか分からない。ぬかるんだ地面が冷たかった。
ふとした瞬間、頬に水が滴り落ちた。
――あぁ、変身を解いたから、雨が……
うみは空を見上げた。雨なんて、もうひとつも降っていなかった。
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この回をどうしても書きたかったんです!