今週は2話掲載します。
「驚いたわ。まさかあなたもあの力が使えるなんて」
「いや……正直私もびっくりなんですけど。それに、ソードの正体が同じ高校の人だったなんて」
ソードから話があると言われ、駅から出た2人。変身を解いた状態で、雑談も交えながら言われるがまま、まざるは少女の後ろを追う。
「秘密ね。絶っ対誰にも言わないで!」
「じゃあ、私も秘密です」
「ここよ」
香ばしい匂いのするカレー屋の隣。そこでぴたりと足を止めるなお。まざるが右を向くと2階建ての雑居ビルがある。1階に何があるのかは分からなかったが、幸い2階の方にはちょっとした看板がある。
「『飯島探偵事務所』……?」
「そう」
――――――――――
キィィと音を立てる、なんとなく年季を感じるドア。小綺麗に清掃されたそれを開けて中に入ると、向かい合ったソファでくつろいでいる男女の姿があった。
「あれっ?なおちゃん、お客さんかな?」
「あー……はるさん、今から説明します。ムネツグさんも聞いてくれませんか?」
『はるさん』と呼ばれている、気さくになおに話しかける若くスラッとした女性。そろそろ三十路くらいだろうか?2人の姿を見るなり笑顔で手を振っている。
対して、帽子を被った男の方はじっとまざるの方を見ている。恐らく彼が『ムネツグ』なのだろう。
はるは非常に素早く、先程のオトギソードにも匹敵するくらいのスピードで緑茶の入ったコップを人数分テーブルに置き、半ば強引に2人をソファに座らせた。その後自分も向かい合うソファにどしっと座り、たはぁー、と一仕事終えたと言わんばかりにため息をつく。
「単刀直入に言います。なんと仲間が出来ました!」
「ブフッ――」
目の前で、お茶を飲んでいたムネツグがそれを噴き出した。
「ゴホッ、ゴホッ……」
咳き込んで俯く。はるが彼の背中をさする。
(勝手に怖がってただけで別に普通の人なのかも……)
そう思うと、まざるは一気に力が抜けた感覚がした。
「なんだ、バレでもしたのか」
「いやぁ、バレたっていうか、それもそうなんですけど……この子、変身したんです!ビリビリって!」
それを聞いた瞬間、ムネツグはギロリとまざるを睨み、それとは対照にはるは目を輝かせた。
「それは本当かなっ!?あ!えーと、まざるちゃん!まざるちゃんは何が出来るの〜?」
「え、あ、こう……電気をバーンって」
「電気〜!?凄い!なおちゃんと相性バッチリじゃない!?」
はるの質問攻め。タジタジになっているまざるを助けるようになおが遮る。
「はぁ……はるさん、それも話すのでちょっと静かに」
「はぁ〜い」
静かになったところで、なおは続けた。
「さっき駅で『肉片』と戦闘になった際、私が接触した瞬間彼女の体が発光して、その後少しして覚醒しました。私もよく分からないんですが、とりあえず戦闘能力に関しては放電能力と電気を纏うバリアの2つを確認しました」
「なお……お前はどう思った」
「まぁ、彼女は信用に値します。何か隠しているようには思えません。それに、はるさんの言っていたとおり、私と相性がいい。単純計算で戦力は2倍です」
それを聞くと、ぐったりとしていたムネツグはおもむろに立ち上がり、部屋の奥の方へと消えていく。十数秒すると、すぐにカゴを持ってこちらへ戻ってきた。
「まざる!……グミ、食うか?」
「食べますっ!もうお腹ペコペコで」
フッと微笑んで、お菓子の入ったカゴからグミの入った小袋を手に取りまざるの方へポイッと投げる。まざるは元気よく袋を開封し、そこから1つ口に放り込んだ。
「全部食っていい。その代わり少し協力してくれ」
「協力?なんですか?」
なおとはるの目つきが変わる。怪訝そうに首を傾げるまざるを横目にムネツグは続けた。
「今から言うことは全て事実だ。信じられるかどうか俺には分からないが、一旦聞いてくれ」
「隕石のニュースを知ってるな?……あれは隕石じゃない。宇宙船だ」
(さっき言ってたのはそういうことか……)
まざるは思わず唾を呑む。彼女は小さく頷いて、緑茶を一飲み。
「そして俺はそれに乗ってこの星へ来た。簡単な話、俺は地球人の言うところの『宇宙人』だ」
さらっと言い放つと、ムネツグは自身の顔に手を当てる。目を瞑りその手を顔から離すと、パッとその顔が変化した。確かに地球人の顔ではない。美青年だとか不細工だとかそういう話ではなく、獣のような、機械のような……まさに、エイリアンという顔だった。
「ひゃぁ!?」
予想外の出来事に思わず声を上げてしまったまざる。ハッとした表情で口元に手を当てると、ムネツグはやれやれと首を振ってその顔を元に戻した。
「まぁ驚くのも無理はない。それで話を戻すが……」
「俺たちの星は戦争をしていた。しかし……俺たちは戦争に負け、それからまぁ……色々あって、あの
「手伝ってほしいこと。それがこれだ。『肉片』を集めてくれ」
正直、まだ驚いている。まざるはなんとか脳みそをフル回転させて、情報の整理をする。
(ええと、宇宙の戦争で負けちゃった宇宙人のムネツグさんはこの星に来て、えっと、仲間の1人がバラバラになっちゃったから……それがよく分かってないけど……だからつまり、私たちはそれを集める手伝いをする、と……)
「概ねそういうことだ」
「ひゃえ!?」
「全部口に出てたよ……」
――――――――――
「とまぁ、こんな感じだ。……協力してくれるか?」
ムネツグがじっとまざるを見て、そう言った。
緊迫した空気の中で、彼女は口を開く。
「ぜひやらせてください!」
ムネツグらの予想に反して、彼女は自信満々に答えた。
「こんな力持っておいて何もしないなんて、まるで力の持ち腐れって感じじゃないですか……だからやります。先輩と一緒に頑張るぞぉ!」
「そうと決まれば歓迎会さ!ファミレス奢っちゃうよ〜」
バッとはるが燃えるように立ち上がり、手をパンと叩いてクルッとターン、3人の方を見ながら笑顔で財布を見せた。
「ちょっとはるさん……」
「やったー!」
「まざるちゃんまで……」
「タダ飯は大好物だ。行こう」
「えぇ……」
空気清浄機の電源を切り、照明もオフ。なおがふとスマートフォンを見ると、時刻はもう既に18時を過ぎていた。
「時の流れって速いものだなぁ……」
――――――――――
「「かんぱ〜い」」
注文した料理が揃ってきたところで、乾杯の合図と共にコップをコツンとぶつけてジュースをゴクゴク。プハーッ。まざるとはるの動きがおかしなくらいにシンクロしている。
「なんか、もう打ち解けてない?……あ、おいし」
その光景を横目に見ながら、なおはピザを一切れ食べメロンソーダを飲む。
「あ、そうだ。あの、はるさんって探偵なんですか?」
「違うよ」
「えっ」
驚くまざるを見て、はるは笑って答える。
「なおちゃんにもそう聞かれたんだよね。叔父さんが昔使ってたところ使わせてもらってるんだ〜」
「勘違いしたお客さんとかもいるんじゃないですか?」
「それがね〜、全く来ないの。アハハ!」
はるはコップに残るコーラをグビっと飲み干して、真剣な顔つきになって呟くように言う。
「まざるちゃん……肉片って、ただ集めるだけじゃなくて、今日みたいに戦闘に発展しちゃう場合がほとんどらしいの。だから……その、なんというか……無理も無茶も、出来るだけしないでね」
はるは笑顔だったが、彼女と目が合って、まざるの心臓の動きが少し速まった。
(そうだ。私、あの時のなお先輩みたいに戦わなくちゃいけないんだよね……)
少し俯いた。でも、もう答えは決まっている!
決意に満ちた目ではるを見ると、彼女はこくりと頷いた。
「ムネツグさん、最後の唐揚げ要りますか?」
「……欲しい」