新キャラが何人も出てきます。名前だけでも覚えてくださいね。
Ep.21「黒の魔法少女」
「はぁ…………」
とある日の授業中。『ペアワーク』と称して、決められた2人で作業する授業内容だった。まざるはため息をつく。別にそれが嫌だったというわけじゃない。問題はまた別なところにあった。まざるはチラリと視線を横に向ける。
「…………」
(『
「あの…………」
「…………」
声にも気付かず、ぽけーっとまざるは明後日の方を向いて。
「あのっ……!」
「はっ、ああ!ごめん!えっと、あ、えー、なんだっけ!?」
「あ……えっと、うどんのコシが…………」
「そ、それだ!うどん!」
黒くて長い髪が揺れて、その隙間から目がちらりと見える。正直言って、まざるは彼女のことが少し苦手に思えた。口数も少なく、静かな雰囲気。それと同時に、何故だか暖かいような気持ちも覚えた。
「そういえば漆さん……あっ、えっと。あいさちゃんって呼んでもいい?」
「あ、はい……」
「そ、そっか!じゃあえっと……あいさちゃんって、趣味とかある?」
「趣味……」
沈黙が流れて、このまま会話が終わってしまうのでないかとあらぬ心配をしてしまったが、杞憂。数秒後にあいさは答えた。
「ゲーム……。うん、パソコンで、ゲームするのが趣味かな」
「パソコンでゲームかぁ……」
まざるの脳内で、あいさがマインスイーパで遊んでいる。心の中が覗けるのなら、あいさはすぐに否定しただろうが。
(うぅ……それにしても会話が続かないなぁ……)
――――――――――
結局、魔法少女が3人に増えたところで何かが変わるわけでもなかった。魔法少女との戦いが多くなるだろうと言われたが、結局次に変身したのは巨大化した肉片との戦いだった。
「なんだ、まだまだ肉片はいるみたいね」
「そうですね……!」
グラビティはまだ合流していない。中学校はスマートフォン持ち込み禁止だからこういう時には上手く集合出来ないなぁ、なんて思いながら、ジャムは拳を握る。
カッと睨みつけた先には手足の生えた立て看板のような姿をした肉片。
「あのカフェの物かしら?ちゃんと返しておかなきゃね……ジャム!準備はいい?」
「はい!3、2、1で行きますよ……3、2、1、ゴー!」
ジャムの声に合わせて、2人が駆けた。今日は妙に息が合っている。電撃と斬撃が同時に放たれ、片方がかわされても片方がヒットする。肉片も両腕を振り回して反撃するが、華麗な身のこなしで回避し反撃するソード。電磁バリアで受け止めるジャム。これは敵わないと判断したのか、肉片は逃げ出す。
「あっ待て!」
止まるはずもなく、速い足取りでササッと逃走。2人を突き放すほどのスピードを出している。追いかけるうちにそろそろ彼女らの方が疲れ始めてきて、汗がたらりとジャムの頬を伝う。
「あっ、危ないっ!」
追いかけるのに必死で気付かなかった。ジャムはグッとスピードを上げるが、それでも届かない。
死角から不意に現れた黒髪の少女――漆 あいさはもう肉片の目と鼻の先にいた。
「避けて――」
「は、はわわわわわ!」
瞬間、ピカッと辺りが光ると、大きく肉片の体が吹っ飛んだ。驚きのあまりジャムが口を開くと、目の前には黒色をした魔法少女が1人立っていた。
「あわわ……」
「えー…………?」
黒色の髪はそのままだが、やや綺麗な瞳が見えやすくなっている。ドロドロとしたコールタールのような黒い液体を所々に纏っており、やや不気味に見えた。
「え、あい――」
「あなた、名前は?」
名前を呼びかけたジャムの声を遮ってソードが尋ねる。ジャムは耳を澄ませながら、体勢を立て直そうとしている肉片の方を見る。
「アッシュ……オトギアッシュ、です」
「そう。私はソード。向こうにいるのがジャムで……まぁ、それはあとで。アッシュ!とりあえずこの場を何とかするわよ!」
「あ、あ、はい!」
フツフツとアッシュのオーラが煮えたぎる。彼女が地面に手をつけると、オーラが溶岩のように流れ始める。
「まずは私からっ!《ストレート・ソード》!」
凛とした一筋の光が走り、黒い体を切りつける。直後、地面に力が流れているのを感じて、ソードは逃げるように飛び跳ねた。
――何かが起こる。
「《アッシュゲイザー》…………っ!」
バーンッ!
激しい音とともに、間欠泉が噴き出すような激しい勢いで放たれた黒いエネルギーが肉片を吹き上げ、それにトドメを刺した。黒い肉体はポロポロと光の粒となって、アッシュの体へと吸い込まれていく。
(あ……私、何もしてないし……。ってダメダメ!)
ジャムはギュッと拳を握ると、すぐさまパッと力を抜いてアッシュの方へ近寄る。
「オトギアッシュ!ありがとう、戦ってくれて」
「あ、……はい、こちらこそ、ありがとうございます……。って、ひいぃ!ごめんなさい!私なんかが手柄を横取りするみたいで……」
「ちょ、ちょっと!大丈夫だって。そんなこと気にしてないから」
予想外の反応。あたふたしながらソードがなんとか宥める。アッシュが落ち着いてきたあたりで、彼女は深呼吸して、パッと変身を解いた。
「あなたも生徒でしょ?私、3年の枠島」
アッシュも変身を解いて、長い髪から瞳を覗かせながら震え声で自己紹介。
「1年の……漆です」
「1年?ってことは……知り合い?」
「えっ?あ、はい、まぁ」
なおがジャムを見ると、彼女はキョトンとした顔でそう言って、頷いた。彼女が変身を解くと、あいさは驚いて思わず声を発した。
「あっ……」
「漆さん――あっ、あいさちゃんも魔法少女だったんだね。私びっくりしちゃった。あ、クラスメイトなんです」
「そう。……ところで漆さん、魔法少女ってことなら、私たちを手伝ってくれないかしら?いろいろあって、魔法少女の味方を増やしたいところなの」
――言い方は悪いかもしれないが、魔法少女であるなら利用しない手はない。
なおは右手を出して握手しようとするが、あいさはもじもじとしていた。
「……?」
「あ、え、えっとあのその、あっ、ごめんなさいっ!!」
そう言いながらぷいっと背中を見せて、目にも止まらぬスピードで走り去っていく。2人は驚きのあまり声も出なかった。
「まざるちゃん……私、何かまずいこと言ったかしら」
「え、いや……わからない、です」
――――――――――
「インヴァくん、インヴァくんっ!」
とある廃ビルの部屋の中に、男が1人。静けさの中に、1人の少女の声が響く。
「騒がしいね、何かあったの?アイサ」
「あ、えっと……えっと、私の他にもいたよ!魔法少女」
「なっ……本当?ふぅん……ケルウェイルの手先だろうか?それとも……」
椅子から降りて部屋をぐるぐる歩く。ひとしきりぶつぶつ言い終えると、パチンと指を鳴らして少女――あいさの方へ向き直る。
「魔法少女は何人いた?名前は?年齢は?能力は?背丈はどれくらい?人柄は良い?それとも悪い?魔法少女以外に誰かいた?宇宙人でも地球人でも構わない!」
「え、え〜……」
至近距離で間髪入れずのマシンガントーク。口をもにょもにょさせるあいさの態度を見ると、申し訳なさそうな顔になって彼女から距離を置く。
「ごめんごめん、地球人は僕たち
「おいインヴァ、本当にこんな鈍臭いやつで良かったのか?」
奥から現れた男。インヴァと呼ばれていた彼よりも背丈が高く威圧感があり、体型は筋肉質。艶やかな二の腕が光を反射し光る。
「ひっ……」
「こら、ベイス。ダメだろう、そんなことを言っちゃ。僕たちは仲間なんだから。立場が上とかそういうのはないんだし。まぁ、僕はとりあえずリーダーってだけだけどね?それはさておきアイサ。教えてよ、君がさっき見てきたことを、僕たちにさ」
両手を広げ、にこやかにあいさを見るインヴァ。静かに頷いて、彼女は口を開いた――。
お読み頂きありがとうございます。
あいさもインヴァもベイスも、書いてて楽しかったキャラクターです。(あまり書いてて楽しくなかったキャラクターもいませんが)
という訳で3章入りました!これからもよろしくお願いします!