「ただいま〜」
事務所に戻った4人。はるも帰ってきており、コーヒーをそっと飲みながら静かにソファに佇んでいる。
「はる……帰ってきてたのか」
「うん。ちょうどさっき帰ってきたところ。ね?夢野くん」
「え?あ、はい。皆さんも、おかえりなさい」
カバンを下ろしたり上着を脱いだり、3人は適当にラフな格好になって、適当な場所でリラックス。
「――で、ムネツグさん。話を聞かせてくれませんか?その……『ラウェス・シュベリア』について」
沈黙を破ったのはなお。ムネツグは頷くと、口を開いた。
「ああ。何から話せばいいか迷ったが、まずは俺の仲間のことについて話そうと思う。以前、俺たちの星が戦争に負けたという話をしたな。まざる、覚えているか?」
「はい。それでこの星に来たんですよね」
「その話ならあたしも聞いた。それでお前の仲間がバラバラになったんだよな」
「……ああ。それで……そうだな。彼の名前は『ウォルオル』。故郷、『メルフル星』の国王だった」
「えっ、国王、それってつまり王様……ってこと、ですか?」
ウォルオルが王様と聞いて驚くまざる。だが、それ以上に王と一緒に逃げたムネツグの正体が気になった。
「そういうことだ」
「ムネツグさんは……どうして王様と?」
「簡単に言えば、直属の部下だった。船の操縦を任されていたんだ」
「ははぁ……」
「それで、あのラウェス・シュベリアだったな。あれはラウェス星の騎士団のようなもので……そのラウェス星というのが、メルフルと戦争をしていた国だ」
「!!」
それを聴いて、一同びっくりしたような表情で。誰も何も言わず、空気はより一層シリアスになった。
ムネツグは続けた。
「まぁ、奴らに関しては名前しか聞いたことはなかったが。恐らくあれの狙いはこの俺の命だろう。何しろ王であるウォルオルの復活を目指しているからな。殺してでも阻止したいのは当然だ」
「そりゃそうだろうな。しっかし、なんか壮大な話になっちまったな」
「うん……そうだよね。王様とか、戦争とか……」
「…………」
――そう思ってしまうのは当然だ。
ムネツグは気まずそうに口をつぐんだ。
「で、でもっ!」
声のした方に、全員が一斉に振り向く。弱々しい目で、夢野がムネツグを見ていた。
「僕たち、やるしかないんですよね……」
「そうね、弱気になってる暇なんてないわ!何しろ、ここでムネツグさんを見捨てるなんてできっこないもの!」
「そうだよね!命は大事だもん!」
「んま、あたしはそこんとこどーでもいいけどな。ただ、あいつらはぶちのめしてやらないと気が済まねぇな!」
「うん、私も皆と同じだよ。ムネツグ」
全員志は同じ。それまで黙って話を聞いていたはるもニッと笑って、握った拳をムネツグへ突き出した。
「ありがとう……」
素直な5文字が、心に強く響いた。
――――――――――
(緊張するな……)
あれから1日経った。あいさは学校に来ているだろうか。まざるは緊張に震える手で教室の扉を開ける。
(あいさちゃんは……あっ!)
すぐに見回す。いた。普段と何も変わらず静かに椅子に座っている。
「苺園さんおはよ〜」
「!!あ、おはよう」
手を振る佐藤。ナイフの怪人に切りつけられた腕も完治したようで、元気そうに話しかけてきた。
(良かった。あの傷、治ったんだね)
――そういえば、今日はペアワークの時間がない。
席についたまざるは、時間割を見てすぐに立ち上がる。
「あいさちゃん!」
「ひぃやあっ!?」
バンッと机を叩く。飛び上がったあいさは奇声をあげて驚愕したようなポーズ。一瞬だけクラス全員の視線が集まったが、数秒もすればそれも散り散りになった。
「ごめん……」
「あ、うん、いいよ……。そ、それで、どうしたの?」
「私、あいさちゃんと戦うよ。でも、その前にあいさちゃんの目的とか、知っておきたいんだ」
「……そう。うん、……も、もう分かってると思うけど、ラウェス・シュベリアは魔法少女の肉片集めを阻止するために動いてる。ウォルオルを復活させてしまったら、まっ、また戦争になりかねないから。……ごめんなさい、こんな戦い。苺園さんも……戦いたくなんてないよね」
「うん……。私は、あいさちゃんを信じてる。けど、あのベイスたちを信じる気にはなれないし、ムネツグさんを裏切ることもできないよ。……あいさちゃんも、そう?」
「うん。わ、私も……同じ気持ち」
まるで挑戦状を送り合うように、2つの視線が交差した。
――――――――――
「あ、そういえば土曜日って授業参観だね」
「……うっ、忘れてた……でも、いいや。うちの親は、どうせ来ないし」
「そっか。……私はお姉ちゃんに来てもらおうかな」
その日の夕方。帰り道で、かわるとうみが話している。どうやら土曜授業があり、しかも授業参観らしいのだ。
「……ね、金陽さん。私ね、金陽さんが魔法少女で、本当に良かったと思ってるよ」
「!!」
「あの時、何の言葉も……かけられなくてごめんね」
「……嬉しいこと言ってくれんじゃん」
「……え?なに?」
「――ううん。なんでもないよ」
かわるは微笑んだ。彼女からすれば、自分の思いなんてお見通しなのかもしれないと、うみは心の中に熱いものを感じた。
「金陽さん。私、なんでも力になるから!」
「うん……苺園さんも、あたしに力、貸してね」
いつもの分かれ道で2人はお互いの瞳を見つめる。一度手を振った2人は振り返ることはなかった。
――――――――――
「え!?!?行きたい行きたい行きたい行ってみた〜い!」
「いや、まざるはもともと来るだろ……」
目を輝かせて特大の主張をしているまざるをうみが睨みつけている。事務所は今日も騒がしい。
「授業参観、懐かしいわね〜。はるさん、行きますか〜?」
「う〜ん。残念なことに仕事なのよね。なおちゃんだけで行きなさいな」
「うみちゃんの親は来ないの?」
「ああ〜、ま、そうだな。母さん、あたしに興味ねーし。っつか、んなことどうでもいーだろ。今はラウェス・シュベリアとかなんとかの対策でも練ろうぜ」
「あのねぇ……私たちって結構あなたのこと知りたいのよ?普段のあなたを知れる授業参観なんてイベント、皆行ってみたいに決まってるじゃない」
「まざるが行くだろ!」
「私も行きたいの!」
口論で攻防。こんななおの姿は珍しいと、ニヤニヤしながらまざるが見ている。
「え……これ何の騒ぎですか?」
「えっと……」
「なッ!」
遅れてやってきた夢野も興味津々、キラキラな瞳でうみを見つめる。
「こいつもかよっ!あーもうっ、勝手にしろ!アイスでも買ってくる!」
乱暴に扉を開けて事務所を出ていく。シャーペンを手に取ったなおは、意気揚々とうみのカバンに手を伸ばした。
「楽しみね、まざるちゃん」
「はい!!」
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うみは母親と2人で暮らしています。でも、母親はあまりうみに興味がないみたいです。ちなみにうみの好きな食べ物はビーフシチューです。逆に、嫌いな食べ物はラム肉です。あの独特な匂いが特にイヤなんですって。