オトギテール RIVAL   作:爆裂おいしい君

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前回の続きです。皆頑張って戦います。


Ep.26「マジカルガール・ラッシュ」

 

 ――カキーンッ!

 

 剣の平らな面がそれをしっかりと捉えていた。華麗なホームランだった。打ち返された黒いボールは空へと消えて、ソードが自慢げにミノンを睨む。

 ジャムの拍手を聞いて頷く。ドヤ顔で彼に指をさして、言い放った。

 

「私の勝ちよ!」

「ただのお遊びだ!」

 

 ババババッと、次から次に放たれる黒く鋭い糸。ジャムとソードの体を突き刺さんと高速で迫り来る。

 

「少し痛いぞ」

「防御!」

「はいっ!」

 

 素早く展開されたバリアが黒い糸を受け止める。幸いバリアをぶち抜くほどの攻撃力は無かったようで、カンカンと音を立てながら糸が曲がっていく。

 

「油断してると撃ち抜かれるわね、こりゃ……」

 

 流石にずっと糸を出すのは不可能なようで、攻撃の手が止まった。しかし地面に刺さった糸が邪魔で接近はしにくい状況。だが、この状況下でも彼女たちには攻撃手段がある。

 

「でも、油断禁物なのは向こうも同じね……!」

 

 ソードは剣の切っ先をミノンの方へ向ける。エネルギーがその先端に集中し始めると、ジャムも両手にエネルギーを込めて。

 

「「発射ァ!」」

 

 2本の閃光が黒い影めがけて駆ける。急スピードで迫るそれに反応出来ず、彼の体が撃ち抜かれた。

 

「あ、当たってよかった……」

「詰めが甘くて助かったわね」

 

 だが、これで倒しきれる敵でないことは分かっている。立ち込める土煙、直後、ソードの目の前に黒い爪を伸ばした怪人が現れる。

 

「しまっ――」

 

 

 

――――――――――

 

 

 

「ここら辺なら……まぁ大丈夫だろ」

「はぁっ……はぁ、もう、何事……」

 

 かわるの手をぎゅっと握ったうみは、彼女を逃がすため安全な場所に避難。動き慣れているうみとは違い、かわるは困惑したまま息を切らしている。

 

「あっ……ごめん」

「いや、ううん、いいよ……」

 

 かわるは膝に手を当て前屈みの姿勢。そんな彼女を心配そうに見つめるうみの視界に、人影。目を凝らして見れば、少女が3人。彼女らの着ていた奇天烈な服装は魔法少女のものに違いなかった。

 

「ウジ虫どもが…………」

 

 庇うように前に立つ。何を言っているのかは分からないが、魔法少女たちは何やら会話をしているようだった。

 

「んでねー、ひめのってばめっちゃ驚いちゃって。おバカだよね」

「え〜、ももちゃん、ひめのちゃんにそんなことしちゃだめだよー」

「今はファングって呼んでって言ってるでしょ、ファ・ン・グ」

「えー……」

「ってか。探して来いって言われたけど、魔法少女なんていなくない?」

 

 近付いてくる。うみが身構えていると、向こうの方から話しかけてきた。

 

「ねーちょっといい?この辺で魔法少女見なかったー?」

「ファング。急すぎます」

「…………」

「んぁ?聞こえなかったのかな」

「さぁ。知らねーな」

 

 かわるが隣にいるため、戦闘はできるだけ回避したい。少女らがうみの横を通り過ぎる瞬間、黒髪短髪の少女が振り返る。

 

「あれ嘘ついてます」

「でかした!」

 

 桃色の髪の少女――ファングも振り返って、手に持つ狼牙棒を思い切り振り下ろす。丁字路のアスファルトが凹み、衝撃波が走る。

 

「チェンジッ!」

 

 一瞬にしてうみの姿が変化、衝撃波の勢いを殺すと同時に重力波が魔法少女たち3人を押さえつける。彼女らの足がめり込み、ミシミシとゆっくりアスファルトにヒビが入っていく。

 

「ファング……これ、ヤバいです……」

「うぅ〜……」

「まだまだぁぁ!」

 

 ファングだけはなんとか膝をつきながらも抗っている。残りの黒髪と、天使のような魔法少女は力負けしてしまって、うつ伏せでぐったりとしている。

 

「ラウェス・シュベリアのクソども……」

「はぁ?……何の話だ!」

 

 狼牙棒に力を込めたかと思うとバッと衝撃波を放ち、重力エリアを抜け出したファング。頭をかち割ってやらんと、狼牙棒を振り上げながらグラビティに急接近する。

 

「へぇ……!」

「これでも……食らえっ!」

「なにっ!?」

 

 振り上げた狼牙棒をそのままの勢いで放り投げて、すぐさまトゲの生えた足を構える。グラビティの反応が遅れて、ギザギザとした蹴りが腕部にジャストミート。空気の弾ける音が鳴って、グラビティの体が吹っ飛んだ。

 

「か、金陽さんっ!」

 

 返事は聞こえない。オロオロとしているかわるにファングが歩み寄る。

 

「仲間?あんたも、魔法少女かな」

 

 怯えて声も出なかった。うずくまるだけの余裕もなく、ただ足を震わせている。後退りしようと体が自然に動くが、背中には壁、これ以上どうしようもない。足から力が抜け、地面に座り込んだその時、グラビティがよろめきながら立ち上がる。

 

「バカには言っても分からねーと思うけどさ……それ以上はダメだろ?……つまるところ、今から殺してやるよ」

 

 指をさしてニヤリと笑う。前髪の間から見える瞳に、怯えた顔のファングが映っていた。

 

 

 

――――――――――

 

 

 

「きゃあッ!?」

 

 土煙から飛び出したミノン。ソードは攻撃を間一髪で回避。鋭い糸の爪が空を切った。しかし、これの本懐はそれではない。黒い糸はぐにゃりと曲がり、彼女の体をグルグルと巡る。

 剣を抜こうとしたが、ミノンに手首をパシッとはたかれて、彼女の剣が宙を舞う。みるみるうちに手足も縛られてしまって、身動きが取れない。

 

「このぉ!」

「見え見えだ!」

 

 飛び出すジャム。素早く糸の爪を伸ばしたミノンが彼女を薙ぎ払い、その体を突き飛ばす。

 

「うっぐえ!」

 

 うつ伏せの状態で地面に倒れるジャム。右手の近くに何かが見えた。そっと触れてみると、それは金属のように冷たい。視線を上げると、そこには剣。ソードの使っていたものだった。

 

「私も……使っちゃおっかな」

 

 剣を見据える。何か強い力を感じた。バチッと電流が弾けて、横から迫り来る黒い糸を砕く。

 

「っやられた!」

「たああああっ!」

 

 電撃の如く高速で駆けるジャムには、伸びる黒い糸やミノンの姿はとても鈍く見えた。飛び上がって、剣を振り下ろす。糸が撚られて縄のようになり、強固なそれが電流を纏った斬撃を受け止める。プツップツッと糸が切れていくが、それをただ見ているだけのミノンでもない。

 反撃を叩き込んでやる。と、彼が力を入れた瞬間――

 

「二刀流!《ジャムサーベル》!」

 

 バキィッ!

 

 音を立て、黒糸の盾は崩壊した。束のパスタが折れるように真っ二つ。せめて防御だけはしてやると、地面からドーム状になるよう糸を伸ばすミノンだったが、もちろん間に合うわけもなく。ジャムの両手から伸びる2つの斬撃がクリーンヒット。

 

「ハァ……ッ。なんとか斬れた……。ねぇ、私の新しい力も見なさいよ!」

 

 宙を舞う黄色の剣姫。剣は持っていない?否、彼女こそが『剣』。華麗でスタイリッシュな姿勢のソードの右足は、正しく剣だった。エネルギーを纏った蹴りという名の斬撃が、姿勢を崩したミノンに命中し、その体を大きく吹っ飛ばす。

 綺麗な姿勢で着地したソードに、ジャムがハイタッチしようと手を伸ばしたが、様子がおかしい。

 

「あ、手はまだなんですね」

「はは……」

 

 ソードの手を縛る糸をジャムがスパッと切ると、ソードは完全復活。勢いづいた2人は、吹き飛んだミノンの方へ歩いていく。

 

「油断禁物だからね」

「はい」

 

 2人の視線が倒れているミノンの方へ向けられる。万事休すというやつだ。

 

(あー、こりゃもうダメだな……)

 

「インヴァ!」

 

 彼は悟って、変身を解除。直後、天に向かって声を上げた。2人が一瞬足を止めると、影が彼女らを覆う。見上げると、悪魔のような翼を生やした1人の少年。彼は軽く着地すると同時に丁寧に両手でミノンの体を掴んで、再び飛翔。2人に軽く手を振って、どこかへ飛び去った。

 

「あ、ちょ!…………あんな逃げ方……ズルくないですか?」

「はぁ……私たちにもああいうの欲しいわね」

 




お読み頂きありがとうございます。
新たな魔法少女が出てきました。オトギファング、割と好きなキャラです。
評価・感想励みになります。これからもよろしくお願いします。
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