オトギテール RIVAL   作:爆裂おいしい君

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いよいよ決戦です。ここらの話は書くのがとても楽しかったです。


Ep.33「ラウェス・シュベリア」

 

「さて、そろそろ出ましょうか……」

「ああ。……2人とも、留守番は頼んだ」

 

 はると夢野、2人に視線を向けて、立ち上がったムネツグが言う。しかし2人もそれに反発するように立ち上がって。

 

「ぼ、僕も行きますっ」

「私も。当たり前じゃない!仲間なんだから。でしょ?それに、戦う前に怪我なんてしたら大変でしょ。護衛だよ、護衛」

 

 いつの間にかホウキを持っていたはるが、これ見よがしにそれを振り回してみせる。

 

「……すまない。では、頼んだ」

「ん?まざるちゃん、どうかしたの?」

 

 気付けばまざるだけが事務所に取り残されていて、ドアからひょこりと顔を出したなおの声を聞いてそれに気付く。

 

「え!あ!すぐ行きます!」

 

 汗を拭って、バタバタと動きながらドアから飛び出した。

 

「あ、カギ!」

「忘れてたぁ!」

 

 すぐに事務所に戻り、カギを取ってはドアを施錠。

 

「はぁ……なんか幸先が悪いですね」

「終わりよければすべてよしよ。元気出していきましょう!」

 

 はるに背中を押されて、下がっていたまざるのモチベーションが上がった気がした。暗い空に微かな星の光に勇気づけられ、モチベーションが自信へと変わる。

 

(うん、そうだよ。私たちなら絶対に勝てるんだから……!)

 

 

 

―――――――――

 

 

 

「な〜んか、初めて来た気がすんな」

「え、うみちゃんここ来たことないの!?……って、私も1回くらいしか来たことないんだけど」

「しかし……防護ネットって言うのかしら。あれがあるとどうもパッとしないわね」

 

 目の前にそびえ立つ高いビル。灰色をした防護ネットがそれを覆うように設置されている。

 

「か、改装工事中、でしたっけ……」

「……だから人の気配が一切ないのね。もしかして、ちょうどこのタイミングを狙ったのかしら。結構気が利くじゃない」

「それにしても屋上って……あれ、一体どうやって登れば……?」

 

 まざるの問いかけに答えるように、ムネツグが1歩前に出る。キョトンと首を傾げる。すると、横にいたなおが口を開いた

 

「それならムネツグさんが『俺に任せろ』って……」

「ああ。最近力が戻ってきてな。……しかし奴ら、俺の能力まで織り込み済みというわけか」

 

 ギューンと音を鳴らしながら、ムネツグの手が青白く発光し始めた。眩しいほどではないが幻想的なそれを、じっとまざるが見つめる。

 

「まざる、なお、うみ。もう少しこちらへ来てくれないか」

「なんだよ?」

「あ、はい」

 

 3人それぞれ、タイミングは違えど確かに彼に近付いた。それを目視すると、ムネツグが頷く。発光していた右手に力を入れ、腕ごと前へと伸ばすと、光が少し強くなった。

 

「《座標転移(トランスポート)》」

 

 光の強さは更に増して、青白い光が全員を包む。その眩しさに思わず目をつぶったまざる。次に彼女が目を開いたとき、目の前には広い空間が。心做しか風が少し冷たい。そしてこの先程には感じなかったこの感覚。そう、ここはきっと――

 

「屋上……!」

 

 驚いたような表情でムネツグを見たまざる。そんな彼女に視線を返して、ムネツグはまた頷いた。

 

「これが俺の能力だ。人と物を運ぶ。無論、それだけというわけではないが……」

「こんな能力があるならもっと早く使えばよかったんじゃ……」

「今でも力は万全というわけではない。この力は、最近になって取り戻せたものだ」

 

「おい、そろそろお見えになるみたいだぜ」

「ええ。そうみたいね」

 

 カツカツと音が聞こえた。それをいち早く察知したのはうみ。話すまざるたちの方へバッと手を伸ばして、注意を促した。

 

「おや、随分と遅れちゃったかな」

 

 インヴァの声がしたかと思えば、いつの間にか彼の姿が現れて。

 

「……いいや、今来たところだ」

 

 表情ひとつ変えずに、ムネツグが静かに答えた。

 次に口を開いたのはベイス。インヴァの後ろに続きながら、彼の後ろで立ち止まる。

 

「ほう!貴様まで来たのか、ケルウェイル!」

「……当然だ。彼女たちを巻き込んだのは俺だ」

「へえ。案外いいところあるじゃないか」

 

 まざるの視線が、ふとあいさ――オトギアッシュの方へ向いた。目が合うが、頷きもせず。

 

「っておい、1人足りないんじゃねーか?」

 

 うみが指をさした先に、まざるたちの視線が集まる。確かにそこにいたのはインヴァ、ベイス、そしてアッシュの3人。ミノンの姿はない。

 やれやれと言わんばかりに首を振るインヴァ。髪を触ったあとに言う。

 

「それが僕らも分からなくてね。もしかしたら逃げ出したのかも。……ま、これでイーブンって感じかな」

「イーブン?ハッ、バカ言うなよ」

「ハハ。えーと……御託はいいからそろそろ変身しなよ、時間稼ぎなんてするつもりもないんだろう?」

 

 ムネツグ、そしてインヴァ。稲妻のように鋭く、氷のように冷たい2つの視線が交差した。

 

 

 

――――――――――

 

 

 

 少し前に遡る。熊野家の玄関で、みのんが靴紐を結んでいた。

 そんな彼の後ろに人影1つ。妙な感覚を覚えた彼が振り向くと、そこにはめいらがいた。

 

「なんだ、姉ちゃんか」

「みのん、どっか出ていくの?」

「ちょっとね」

 

 めいらを確認するとすぐに立ち上がって、目も合わせずにそう答える。直後、めいらの手が彼の肩を叩いた。思わず振り向いて、その目を見る。

 

「何?」

「ちょっと話があるんだけど。そうだなぁ……ちょっと公園まで行こうよ」

「え?はぁ……」

 

 スマートフォンで時刻を確認する。まだ余裕はありそうだ。もし時間がかかるなら途中で切り出そう。ため息の後、静かに頷くと黙ってドアを開ける。静かな夜の中で、虫の声が聞こえた。

 

「姉ちゃん、話ってなんだよ」

「公園に着いたら話すよ」

「もう見えてるからいいだろ。ったく……」

 

 なんて話している間に、ついに公園へと着いた。入口で立ち止まったみのんを小走りで追い越して、中央辺りでめいらが振り向く。

 

「あのさ……」

 

 妙な光の粒が舞っている……そんな気がして、目を何度か擦るが、目に映る景色は変わらない。

 

「んだよ……」

「なんていうか分かんないんだけどさ……なーんか、今からあんたを止めなきゃいけない気がするんだよね」

「はぁ……何を言って――!?」

 

 確かにめいらの周りには光の粒が舞っていた。少し経った今になってその意味が分かった。

 

「今夜、なんかしでかす気でしょ。あんたを止めて、あんたを守る」

「んだよ、それ……!」

 

 光の粒が彼女を包むと同時に、みのんから伸びた糸状のオーラも彼を包み込む。視界が開けた瞬間、そこにいたのは大きな爪を携えた魔法少女の姿。同じく彼女の視界にも、糸の怪人が1人映っていた。

 

「鮮烈なる白き爪……オトギポラリス!」

「バカじゃないのかよ……あんた!」

 

 襲いかかるミノンの刃。目を見開いたポラリスが、爪を構える――。

 




お読み頂きありがとうございます。ポラリスはかなり後の方に考えた魔法少女です。能力や装備を考えるのにかなり時間がかかった思い出があります。
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