(い、1対4なんて分が悪すぎる!)
前方にいる魔法少女に狼牙棒を突きつけられながら、まざるは思った。だが、不思議と恐怖心はない。
(あれ、そういえばこの子、どこかで見たような……)
記憶を辿れど思い出せない。どこかで見た記憶はあるのだが……。まざるがそう考えていては、向こうが痺れを切らして襲いかかってきた。
「ひやぁぁ!?」
振り下ろされた狼牙棒はアスファルトの道路を砕く。まざるはなんとか回避して、反撃のチャンスを伺っている。
「あのさ!今聞くことじゃないのは分かってるんだけど!あなたの名前なんだっけ!」
「オトギファング!もう忘れんなよ!」
大きく狼牙棒を振りかぶった。それをまざるめがけて振り下ろそうとしたその時。彼女らの視界の前に大きな白い手が現れる。
「ちょっと待ったぁ!弱いものいじめは感心しないなぁ」
「へ……?」
「なんだっ!?」
白い手は狼牙棒をガッシリと受け止め、困惑していたファングを逆に吹っ飛ばす。
「オトギポラリス見参!……それとも、ヒーロー参上の方が格好つくかな……?って、そんなことよりも逃げて!ここは私が何とかするから!」
「え、あ……はい!」
一気に新しい魔法少女が大量に現れた。困惑しながらその場を抜け出すと、まざるは人目のつかないところで変身する。
(あ、一応連絡しとこう。最低でも新しい肉片が6つも見つかった……ってことだし。……よし!)
ポチポチとメッセージを送信すると、ポラリスの援護をするために道を引き返す。
「よぉし、リベンジだーっ!」
意識外から飛び出すと同時に、後方で援護していた紫の魔法少女に不意打ち。首元を掴んで地面に打ち付けた。
「ぶべらぁっ!」
間抜けにその場で沈んでは、ジャムは次の標的を目で捉える。大きな扇を持った緑の魔法少女。
「え、ちょっと!私ですか!?」
広げた扇を前方に向けて防御。拳が通らないと判断したジャムは両手を広げる。電気がバチバチっと弾けて、彼女の持つ扇に接触した。
「《ジャムパルス》!」
「あばばばばば!?」
「オッケーあとは任せて!」
痺れている彼女の防御を崩そうとした瞬間、後ろから声が聞こえた。振り向くと白い手が迫ってくる。ポラリスのものだと判断して、まざるが道を開けると、痺れている魔法少女の顔面に白い拳が突き刺さった。
「そんなぁっ!」
「みんなをいじめちゃダメーっ!!」
天使の翼を生やした小柄な魔法少女が低空飛行しながら弓を構えている。ポラリスはジャムにハイタッチで合図を送り、彼女の方へと走り出す。
(ハイタッチ……?)
ジャムは困惑しているが、ポラリスを追うようにこちらへ迫る赤い魔法少女を見て、合図の意味を理解した。
(ファングは任せたよ?)
「はい!」
虚空に返事をして、拳を握る。
「クッソ、この野郎ぉ!」
振り下ろされた狼牙棒を両手でしっかりと掴む。痛みは感じるが我慢は出来る。
「《ジャムパルス》!!」
両手から桃色の電流を流し込む。狼牙棒を伝ってはファングの体に流れていき、体の自由を奪う。
「こ、こんなのでぇ!」
ファングは勢いよく狼牙棒から手を離して、握った拳にトゲのようなエネルギーを纏った。身を翻し軽々としたステップでジャムの側へ向かう。
「《ファングナックル》!」
ファングが右手にエネルギーを集中させたその時、ジャムが両手を前へ突き出した。
「おいしょー!」
ジャムの生成した半透明のバリアが拳を握るファングのそのトルソーに命中して、彼女の肉体に電流が送り込まれる。
「うぎゃっ!?!?」
感電、麻痺してしまって攻撃どころではない。ファングの体から力が抜け落ちたその瞬間、その隙に、ジャムが手に力を込めた。
「アッパー!!」
スタイリッシュに、ダイナミックに!握った拳を胸部に思い切り突き刺し振り抜く。ファングの体が宙を舞って、重力に引っ張られて落ちた。
「……私、結構強くなってるかも」
ポラリスの方を見る。彼女の方もなんとかなったようで、天使ちゃんを捕まえていた。
「離してよ〜」
「じゃ、しばらく大人しくしててね」
「うん!」
捕まえていた彼女をあっさりと離す。ジャムの方を見て手を振る。ジャムも同じように手を振っては合流した。
「ありがと。結構やるじゃん?」
「いやいや、それほどでも……あ!ごめんなさい、今暇ですか?」
「んー、まぁ暇だけどどしたの?」
「ちょっと、さっき友だちが魔法少女に襲われちゃって……」
「マジで!?」
――――――――――
ザッザッと足音2つ。先程、江崎と行動していた時にオトギマントに襲撃された場所へと、ジャムはポラリスを連れて急ぐ。
「こっちこっち!確かこっちに……」
「はぁ〜」
「あっ、いた!!」
指をさした所に気絶した江崎が横たわっていた。2人は中腰の姿勢になって状態を確認する。
「ポラリスさん、運べますか?」
「余裕だとは思うけど、途中で変身解けたりしたら怖いかな」
と言いつつ、大きな手を使って江崎の体を担ぐ。ジャムにはそう簡単に出来ない芸当だ。尊敬の眼差しで彼女を見る。
「ってか、さっきの4人は何?知ってる人?」
「いや、それが分からないんですよ。目的も意味不明だし。でも、ここで襲撃してきた魔法少女の仲間かもしれません」
「なんか大変そうだね」
「はい、大変ですよ〜。次から次に難題が色々来るんです」
「私も最近弟と殴り合いの喧嘩したり大変だったわ〜。……そういえばこの人、どこまで運べばいいのかな?駅前?」
「えっ?あ!」
ポラリスは自身の担いでいる江崎に視線を向ける。ジャムは「忘れていた!」と言わんばかりに口を開いて、道案内を始めた。
――――――――――
「駅前で問題発生って言ったかと思えば次は事務所の前で待てって……一体何が……」
なおが頭に疑問を浮かべながら事務所前で待機していた。すると目の前にジャムの姿が見えた。
「……あ。って、横のは誰よ」
横にいるのはよく分からない白の魔法少女。それだけでなく、彼女が何か人を担いで来ている。一瞬警戒したが、ジャムの表情を見て、警戒を緩めた。
「また友だち作ったの?」
「え?あ、まぁ、そんな感じかもしれないです。って、色々話したいことあるので、事務所入っていいですか?」
「はいはい……」
気になる点は多々あるが、とりあえず今はジャムの言うことに従おう。なおはカツカツと階段を上り、扉を開けた。中にはいつも通り、ムネツグがいた。
「ムネツグさん、まざるが来ました」
「ああ。って…………」
なおに続いて入ってきたのはジャム。そこまではとりあえずOK。問題はその次だ。知らない魔法少女に、彼女の担いでいるよく分からない男。ムネツグは驚きのあまり言葉を失った。
「えっと……じゃあ説明してもらえる?まざるちゃんに……えーと」
ゆっくりと江崎をその場で寝かせるポラリス。名前を呼ばれたのに気付いて、ゆっくりと振り向く。状況を理解して、変身を解いた。
「驚かせてすみません。熊野 めいらって言います」
ニコッと屈託のない笑顔。なおの着ていた制服に気付き、こちらも驚いた。
「あれ?同じ制服ってことは……同じ高校!?」
「あ、私も私も」
ジャムも変身を解いて、自身の制服を見せる。
「ありがと。それじゃ次は彼」
なおが江崎の方へ視線を向けた。まざるは頷いて口を開く。
「あの……少し前の話になっちゃうんですけど。江崎くんって覚えてますか?あの、ユウナンで戦った」
「江崎……って、ああ!あの銃の!……今思うと、うみちゃんと出会ったのもあの時だったわね」
沈黙が流れる。少しして、再びなおが口を開く。しかも、とても驚いたように、だ。
「江崎くんって死んだんじゃないの!?」
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