オトギテール RIVAL   作:爆裂おいしい君

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Ep.44「情報整理!」

 

「し、死んでない……!」

 

 痛むのか脇腹を抑えながら、ガバッと江崎が起き上がった。

 

「そうなんです!私も驚いたんです!」

「まぁいいや、江崎くん……でいいのよね。いろいろ説明してもらえる?」

「あ、はい……ちょっと借りますね」

 

 江崎は近くにあった座布団に座っては語り出す。

 

「……あの後、目が覚めたら知らない場所にいたんだ。目の前に知らない女がいて……。それで、外に出てみたんだけど。そこ、森の中の教会だった。ここからそう遠くない場所にあるんだけど……」

「へぇ、初耳ね。森なんて入ったこともないし、全然知らなかったわ。教会なんてあったのね。……えっと、熊野さんの方は何か知ってる?」

「めいら、でいーよ。ごめんだけどその人のことも知らないし、教会?のことも全然わかんない」

「ふーん……っと、ごめん、続けて?」

 

 話が逸れた。なおがそう言うと江崎も頷いて、続けた。

 

「で、少し話を戻すと、教会にいた女は『ルムール』って名前らしい。詳しいことはよく分からないけど、肉片ってのを100個集めればいいらしい」

 

「嘘だな。ルムールは嘘と虚構で誰彼構わず騙す」

 

 ルムール。その名を聞いて、ムネツグに電流が走る。鋭い視線を江崎に向け、冷たい声でそう言った。

 

「知ってるんですか?」

 

 めいら以外の全員が驚いたような顔つきになる。数秒の沈黙が流れたあと、なおがムネツグに問いかけた。

 

「あぁ。……とはいえ聞いた話だ。『盗人ルムール』。虚構を(うそぶ)いては人を騙し欺く女だ。俺のいた国でも指名手配犯として有名だった」

「じゃあ、あの魔法少女たちも……」

「恐らくそうだろう。騙されて、戦わされている。……本人たちがそれをどう思っているかは知らないが」

 

 ムネツグの言葉を聞いて、なんとも言えない表情でまざるが俯いた。

 

「そんなのダメだよ!……どうにかしなきゃ」

 

 グッと拳を握ったまざるが、そう言って前を向いた。どうやら皆気持ちは同じなようで、言葉こそ交わさなかったものの彼女の発言に頷く。

 緊張した空気が流れる中、なんでもない発言がその空気を引き裂いた。

 

「ごめん、ちょっといい?さっきから皆のこと知らないまま話が進んでるんだけど……」

 

 皆の視線がめいらへ集まる。

 江崎の話に集中し過ぎて、彼女のことを忘れていた。

 

 

 

――――――――――

 

 

 

「じゃあ改めて自己紹介するね。私は熊野 めいら!塗屋高校2年生の17歳!趣味は散歩で好きなものは鮭!嫌いなものは特にないけど、昔キャンプした時に食べた鹿肉だけはどうしても無理だったなー」

 

 カニのようなジェスチャーのダブルピース。どうしてもキラキラにデコられた長い爪に視線が行ってしまう。

 

「ん?この爪?かわいいでしょ。今度教えてあげよっか」

 

 視線を感じ取ったか、今度はその手の甲をまざるに見せつけ、ニコッと笑顔で言う。

 善意100%の眩しさに思わず目を逸らしてしまった。

 

「……じゃあ、次は私ね」

 

 メガネをクイッと上にあげては、次はなおの自己紹介。

 

「私は枠島 なお。高校3年、あなたと同じ魔法少女よ。これからよろしくね」

「えっ、3年なんですか!?」

「……タメ口でいいわよ。あなたに敬語で話されるとなんかムズムズってするわ」

「え……?え、あ、じゃあ、よろしく……」

 

 軽く握手を済ませると、めいらの視線がムネツグの方に向けられた。

 

「……俺か?俺はムネツグ。端的に言えば宇宙人だ」

「宇宙人!?宇宙人かぁ……うーん……なるほど……よろしく、ムネツグさん。…………あ、で、君は?もしかしてゾンビ?」

 

 めいらはなんとなく納得すると、ムネツグと握手をして、流れるように次は江崎に指をさした。

 

「ゾンビじゃないですって。……江崎 晃矢って言います。さっきまで俺も戦えてたんですけど、オトギマントに力を奪われて、もうただの木偶の坊です。あ、1年です」

「1年かぁ!江崎くん、よろしくねー。(デクノボーってなんだろ……)」

 

 言葉の意味は分かっていないが、とりあえず握手。

 

「よし、これで皆のことも分かったし、他にも色々教えてよ」

「じゃあ、肉片のことから――」

「ってちょっと待ってよー!私は!?」

 

 じっと座っていたまざるが立ち上がって、涙目で皆の顔を見る。

 

「んぇ?」

「なお先輩も気付いてたでしょ!」

「あはは、ごめんごめん。ちょっとからかってみたくなっちゃって」

「もー……。ってわけで、私は苺園 まざるって言います。魔法少女……って言うのは知ってますよね。江崎くんと同じく1年生です。よろしくお願いします」

「さっきネイル見せたのに忘れちゃってごめんね!まざるちゃんって呼んでいい?」

 

 先程の非礼を詫びるように、ペコりと軽く謝罪の姿勢を見せたあと、まざるの両手を持ってブンブンと振る。

 

「はい〜。めいら先輩、よろしくお願いします」

「硬っ苦しいなぁ。呼び捨てでいいし敬語も使わなくていいよ?だって私たちもう仲間じゃん?」

「えぇ〜っ……じゃ、じゃあ、よろしく……」

 

 敬語を使わずに歳上と話すなんて、家族に対してのものを除けば小学生の時ぶりかもしれない。まざるは慣れない口振りでなんとか答えた。

 

 

 

――――――――――

 

 

 

「はぁ、はぁ。え、じゃああのビルの一件も先輩たちがやったってこと?」

「まぁ、そうなるわね。……厳密にはラウェス・シュベリアのやつらが起こしたんだけど」

「まさに悪を挫くヒロインって感じじゃん!私はそんなの知らずに弟とボコスカ喧嘩してたな〜。……って、もしかして!」

 

 何か思い出したようで、手をパチッと叩いた。

 

「みのん……後で叱らないとな」

「みのん!?」

 

 めいらがボソッと口から出した名前に、思わずなおは驚く。その言葉でまざるも驚いて、2人してめいらの顔を見た。

 

「なお先輩!どこかでめいらさんを見たような気がしたんです!」

「どこかって、一体どこよ……。…………あ!!」

 

 2人の脳内に思い浮かんだ景色は同じ。ミノンとの戦いの後、彼とインヴァが合流したあの時。思い出の中で、変身を解除したみのんが彼の姉に引っ張られてフェードアウトしていく。そう、みのんの姉。

 

「「あーっ!!」」

「え、なになに?みのんの知り合いなの?」

「えーっ、あー、いやー」

 

 興味津々に2人の方を見るが、2人はみのんについて話していいのか分からない。

 

「あら違うの?……あ、そっか」

 

 2人が適当にはぐらかそうとしていると、めいらは何かに気付いたのか声のトーンが変わった。

 

「……みのんってさ、たまに意味分からないことするし、生意気でアホだけど、根はいいやつなんだよ。ごめんね、色眼鏡?かけてるかも。……今度ここ呼んでもいいかな?敵とかじゃなくてさ、私の弟として。多分、魔法少女のことも知ってると思うし」

 

 優しい目で俯きながらそう語るめいら。少し言い過ぎかもしれないが、弟のことを強く想っているようだ。

 

「なんだか出会いって不思議だよね。めいらちゃん、私会ってみたいかも!ね、なお先輩」

「まぁ、まざるちゃんがそう言うならね」

 

「それにしても弟か〜。あ、私も妹ならいるよ!」

「マジで!?写真とかある!?」

「うん、あるある」

「ヤッバー!超かわいいじゃん!」

 

 騒ぐ3人の姿を遠くで見守る男性陣。お茶を一口飲んで、気まずそうに江崎がムネツグに話しかけた。

 

「ムネツグさん……で、いいんですよね?」

「ん?ああ。何か質問か?」

 

 様々なことを知ったからか、江崎の目に映るムネツグの姿はさっきよりも優しく見えた。何より、妙なプレッシャーがない。

 

「いや、えぇ、まぁ。これまで、色々大変だったんじゃないかって」

「そうだな。……だが、仲間のおかげで乗り越えられた」

「なんかいいですね、それ」

 

 江崎が微笑むと、扉が鳴って風が差し込む。何かと思って全員が入口の方を見ると、紫髪でツインテールの少女。うみが入ってきた。やけに騒がしい事務所を見て、一言。

 

「どういう状況?」

 




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