「……いいです、名乗ってあげましょう。
ひめのは高笑いをして、ビシッとまざるへ指をさす。
「あのさ!笑ってるところ悪いんだけど!」
「そうだまざるちゃん!言ってやれ!」
「な、次は何ですか!」
「やるのはいいんだけどさ、ここだと恥ずかしいから……ちょっと離れた場所でやらない?」
「…………」
「…………」
沈黙が流れる。ひめのは横にいる黒服2人を交互に見て、そっぽを向きながら言った。
「……仕方ありませんね。どうしてもと言うなら移動してあげますよ」
――――――――――
「どうです?せっかくなので私の家の庭までご招待ですわ」
「車に乗せられた時から薄々こんなことになるんじゃないかと思ってたけど、まさか本当にそうなるとはね……」
「いや〜このお家ひっろいなぁ!私何人くらい寝られるんだろ……1000、いや2000もゆうに超えるってやつ?ヤッバー!」
「いやいや、いやいやいやいや……」
招待されたのはひめのの家、風見城邸。だだっ広い庭には隅に少しの木々があり、確かに戦うのにはうってつけの場所かもしれない。
「というか私たち、ひめのちゃんからすれば敵なんだけど……その、良かったのかな?」
「……ここであなたたちを倒せば万事解決ですわ!」
そう言ってはひめのは両腕を広げる。体の中心から光の粒子が溢れ出して、彼女の体を包み込む。
「チェンジ!」
「急なんだから……!……私も!」
続いてまざるも変身する。薄紅色の魔法少女と緑色の魔法少女が向かい合った。
「息吹き輝く扇!オトギテッセン!」
ポーズとともにセリフをキメると、右手の鉄扇を前へ向け、めいらとなおの方を見ながら言う。
「あなたたちもどうぞ。1対1にこだわるつもりもありませんので」
「え〜いいの?」
「ええ、構いませんよ。……ボブ!ヨハネス!」
そう言って両手をパンパンと2回鳴らすと、彼女の横に立つ2人の男が前へと出て、黒い鎧のようなものを身に纏っては、手に持つ武器を構える。それぞれボブと呼ばれていたスキンヘッドの男は槍、角刈りとサングラスが特徴のヨハネスは剣の怪人になった。
「怪人っ!?」
「へぇ〜、そう来たか!じゃあ存分に戦っても良さそうだね!」
「えぇ、そうね!」
まざるに続いて2人もチェンジ!ポラリスは両腕を前方に突き出し、ソードは剣を構えて戦闘態勢。
「さぁ!オトギテッセン・ショーの始まりですわ!」
テッセンがそう言って駆け出した。2つの鉄扇が宙を舞って、気が付けばテッセンはジャムの頭上近くへ。振り上げた2つの鉄扇を振り下ろすと、先程までジャムがいた場所に2本の線上の跡が刻まれた。
「逃げる気です?」
「まっさか!」
跳び上がっていたジャム。右手はまっすぐテッセンを捉えて、その手の平に走る電流がほとばしっていた。
「ジャムパルス!」
桃色の電流が走る。防御のために鉄扇を顔の前に突き出すが、ジャムにはその弱点はお見通しだ。
「こっちだよ!」
「なんのぉ!」
弱点、前が見えにくい。だが、そんなことテッセンだって分かっている。乱暴に鉄扇を声のした方へ振っては、拳を握っていたジャムの動きを牽制する。
「……結構やりますわね」
「伊達に戦ってないから!」
「でも、負けませんわ!」
テッセンが鉄扇の刃に緑色のエネルギーを集中させる。ジャムは一呼吸して、少し距離を取った。
――何かが来る。
防御の姿勢を固める。
「《テッセンブレイカー》!」
放たれた2つの衝撃波。緑色のそれらは空気を切り裂きジャムの元へ。
「これくらいなら!」
右手を軽く一振りで前方にバリアを生成。バリアは少しのヒビも入らず完璧にそれらを受け止めた。だがこれで終わりではなかった。息をつく間も与えずにテッセンが遅れて向かってくる。
「まさかこれで終わりとお思いで!?《花鳥風月》!」
鉄扇がエネルギーを受け光る。だが光った箇所は刃ではなく風を扇ぐ扇面。斬撃ではなく暴力的な殴打。意外な攻撃だった。
バリィとバリアが破られる。それと同時に突き出されたジャムの拳が扇面とぶつかり拮抗する。
「めっちゃ痛い……けど!」
打撃が弾かれるが、次の一手が既に打たれていた。
「《開巻有益》ッ!」
身を翻しての回転斬りが命中。それと同時に鉄扇の刃に集中していたエネルギーが緑色のリングを生成しながらレコードのように回転して、仰け反ったジャムをさらに吹っ飛ばす。
「ふふふ……このコンボが成功したのは初めてですわ!」
「痛かった〜……この間と違って全然隙がない……っ!」
――――――――――
「悪いがお嬢様のためだ!」
ボブはそう言ってポラリスに襲いかかる。
(この動き……かなりの手練じゃない?)
ポラリスの腕は確かに大きい。しかし槍は彼女の両腕よりも長い。上手いこと間合いを取って、ボブは彼女のリーチ外から何度も斬撃を放つ。
カン、カンと分厚い腕で防御していく。ダメージは少ないが疲労は溜まる。防戦一方はストレスも溜まる。
「はぁ!なんてね……」
華麗に攻めるふりをして、その場に留まる。思わずバックステップをしたボブの方を睨みつけた。
「どうしちゃおうかな……あ!」
右手にエネルギーを集中させた。ボブは警戒しては再び大きくバックステップ。だがそれもポラリスの計算内。
「《ポラリス・ビッグディッパー》!」
この技ならば距離は関係ない。どこからでもぶち抜ける。大きな爪で引っ掻いた跡のようなエネルギーがその場に放たれた。
「ぶっ飛ばしたらぁ!」
急に受けた大ダメージで身動きが取れないボブへ急接近して、拳をグッと握る。
放たれたパンチはボブの胸部へと命中しては彼を大きく後方へと吹っ飛ばした。
「やっぱ攻撃は緩急つけなきゃね!」
――――――――――
「私に剣で勝負を挑むなんて100年早いわよ」
「フッ!その口を塞いでやろう!」
ヨハネスが剣を持って突進。鋭い目つきで睨んで切っ先を向けた。
「《ソードドラグーン》!」
黄色のエネルギーがビームのように放たれ、真正面からヨハネスの体を貫いた。
「は……?」
何が起きたか、理解出来なかったであろう。剣の魔法少女がいきなりビームをぶっぱなすなんてそう起こりえない。
「初見殺しが決まってよかったわ。じゃあ終わらせるわね!」
間髪入れずに放ったストレート・ソード。真っ直ぐな太刀筋でヨハネスの体を切り裂いた。
――――――――――
「オトギジャム、これで終わりにしてあげましょう!」
日本舞踊を彷彿とさせる動きで舞っては、鉄扇の湛えた緑色のエネルギーがその軌道を描く。何かしらの準備だろうか。
「はあぁっ!!」
纏っているオーラの揺らめきが激しくなる。先程生成した軌道上のエネルギーは霧散し、猛スピードでテッセンが飛び出した。
「ただのカッコつけかぁ……!」
「風見城家の人間であるなら全てにおいて美しく!《テッセン・アサルト》!」
持つ双鉄扇の外側に、それらと連動して動く鉄扇と同じ形をしたエネルギーが2つ生成された。テッセンは両腕を前方で構えて突進する。
「パワーで勝負!?負けないよ!……ジャム……!」
その場で踏ん張って、右の拳を振りかぶる。その先端にエネルギーが集中して、漏れた電流がビリビリと細かく鳴っている。
「ランページ……!」
電撃を纏う強烈な打撃が放たれた。
鍔迫り合いの末、ジャムの放つ拳が鉄扇を打ち砕く。扇状のエネルギーも粉砕されて、拳はテッセンを打ち抜き大きく吹っ飛ばした。
「きいいいいいっ!!」
テッセンは逆立ちするように着地しては跳躍し両足で地面を踏みしめる。ボブとヨハネスも合流して、3人揃って前方を見た。
「ボブ!ヨハネス!私にその力よこしなさい!」
「「はい、お嬢様ーッ!」」
2人が差し出されたテッセンの手を取ると、彼らの変身が解けて黒い鎧は光の粒となる。
「ここまで私たちを追い詰めたことは認めてあげましょう!ですがしかし!」
まだ自信は折れないのか、声高らかに宣言する。ジャムが唾を呑むと、彼女は続ける。
「パ〜フェクトな私にひれ伏しなさい!」
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