「ジャムはサーベル展開、グラビティはいつも通りで。ポラリスは……必殺技の準備お願い!」
ソードは一人一人に指をさしながら指示を送る。ジャムたちは言われるがまま各々言われた通りに構える。
「あっ、うん分かった。んで、何すればいいの?」
「どうするって?ふふ、ポラリスやグラビティの得意な方法、
「へぇ!ソードにしては大胆だね〜」
「なんか鼻につくけど、まぁ事実だしな!」
策に気に入ったのか笑顔で顔を合わせる。そんな彼女らを見て、ジャムの表情も明るくなった。
「皆行くよーっ!4人で一気に!」
「ええ!」
「おう!」
「れつごー!」
横に並んだ4人がマント目がけて猛突進。自信にまみれた彼女らは何の躊躇いもなく突き進む。
「ハッ!何をしようが同じこと……!」
マントが前方に手を突き出すと、外套が無数の剣となり彼女らの行方を阻む。地面から突き上げるもの、左右から襲いかかるもの。無数の刃が無数のルートで彼女らに襲いかかる。
だが!
「ジャム、迎撃!」
「はいっ!」
キィンと音が鳴っては、迫り来る刃を弾いて、時には攻撃を喰らいながらも勢いだけは殺さずに進む。マントも焦りを感じて、更に厚い迎撃網を展開。
「くっ……!」
「ポラリス、準備OK!?」
「OKっ!」
ポラリスが速度を上げて前に出た。右手を肥大化させると同時に振り上げる。
「《ポラリス・ビッグディッパー》!!」
強烈なエネルギーを纏う斬撃はマントの展開したそれらを爽快なほど一気に破壊した。驚いたような顔をしているマントを見て、彼女に見せつけるようにポラリスが笑った。
「ありがとう、休んでていいわ!」
「バカ言わないでよ。17歳、舐めんなよ♪」
マントはすぐ近くにいる。あと少し距離を詰めてぶん殴ってやる。サーベルを解除したジャムが拳を固く握りしめると、マントは自らの外套をちぎって1本の剣として構えた。残りは4本の伸縮自在な刃となって、その切っ先がジャムたちの方へ向いた。
「全力でいくよ!はあああああああぁっ!!」
4人の攻撃が同時に放たれる。目指すは一点、オトギマント!
「うおおおおおおっ!」
5つの刃も一点に集中。攻撃をその切っ先で受け止め、2つの攻撃が押し合う。
「はああああああっ――!」
ミシミシと紺の刃が音を立てたかと思うと、それらは一瞬にして粉砕される。勝った!4人のユニゾン攻撃がマントを打ち抜いた!
「おっしゃあ!」
4人は吹っ飛んだマントに目もくれず、その勢いのまま教会の扉をバン!とぶち開けた。このままルムールも倒してこの騒動を終わらせてやる。そう意気込んでは、一同が奥へと進む。
その先に広がっていたのは、予想外の妙な光景だった。
「えっ……」
「何?罠?」
――――――――――
「ルムール……様……?」
ゆっくりとした足取りで教会に入ったマント。ジャムたちの後方で、彼女らと同じような表情をして驚いている。
「おい!どういうことだよ?」
「し、知らないっ。どうしてルムール様がいないっ!?」
「そんなの私たちが聞きたいって!」
そんなやり取りの後、マントが一歩前へ踏み出した。もちろんジャムたちは警戒する。が、その時。
「あっ!?うぅ、ぐううぅぅ……」
呻き声のような低い声を出しながら、マントがその場に蹲る。胸元、オーラが激しく炎のように立ち上っていく。
「な、なんか嫌な予感がしますっ!」
「気が合うわね、ジャム。……今すぐここを出ましょう!」
「はいぃ!」
蹲るマントを横目に、大慌てで教会から脱出する。
短距離を猛烈にダッシュ。流石に堪えたか、ジャムは息を切らしながら膝に手を置く。
「はぁ、はぁ……」
恐る恐る後ろを見る。静寂の教会がある。何も起こらないでくれ。そんなジャムの願いも虚しく、森の中に爆発音が響いた。
「うっ……そぉ……」
「ヤッバー!ちょっとジャム、皆!あれ見て!」
教会の壁に空いた穴から誰かがこちらを見ていた。
「な、あれ……オトギマント……?」
「あぁ、そうだろうな。でもなんか様子が違ぇぞ……!」
「何よあれ、凄く禍々しいけれど――」
ソードが話している途中だっていうのに、前方から彼女目がけて刃が飛んでくる。間一髪のところでなんとか回避して、再びオトギマントの方を見た。
「マ、ママママジでヤバいことになった気がするっ!」
マントのエネルギーは全開。ラウェス・シュベリア戦のジャムを彷彿とさせる出力だ。先程よりも一回り大きな外套が広がって、大量の剣がジャムたちに向けられた。
――――――――――
木々を抜け、森の中をルムールが走る。
「アハ、アハハハ!ホンット面白いわ!私がもうあそこを去ったと知らずに、きっと言われるがまま教会にいるんでしょうね!それとも今はもうあれで暴走中かしら?アハハ!」
反吐が出るほどのニヤケ顔と高笑い。マントの態度を思い浮かべてはもう一度笑う。
「ウォルオルの力は私のもの……!アハハハッ!もっとやりたいことがあるの!力が戻ってきた今、あんなところで時間を無駄にしてたまるもんか!」
そんな声も、森のざわめきにかき消されていく。誰も彼女に気付かない。気付けない。
「はぁ、はぁ……ははは!」
森を抜けては街に出る。何十人もの人が歩いていた。
ルムールは自身の頭部に手を当て、その形状を変える。羽織っていた聖職者風の上着を脱ぎ捨てて、街へと飛び出した。