「力が暴走してるんじゃ……!」
「恐らく自我も無いでしょうね!」
マントは無言のまま、外套を展開して暴れ始めた。彼女を止めようとジャムたちが応戦するが、攻撃は容易く防がれてしまう。向こうはパワーアップしているが、こちらはエネルギーを一気に放出した後。先程のように力押しで突破するのも難しいだろう。
「《ジャムパルス》!……って、うわわっ!」
「…………」
ジャムが電撃を放つも、無数の刃に遮られ届かない。それどころか、それらによる怒涛の突きを受け後方へ仰け反ってしまう。
「ジャム!退避ー!」
ポラリスの合図に合わせてジャムが後退する。それと同時にグラビティがどこからか飛んで来て、マント目がけて重力波を放った。
「くっそ、これもダメってどうなってんだよ!」
効かない。いや、重力波を放っても力ずくでマントが抜け出してしまう。外套の出力だけではなく身体能力まで大幅に上昇している。まるで怪物だ。
「出来るだけ時間を稼いで!彼女も手負いだし、この暴走状態ならしばらくすれば変身が解けるはず!」
「って言ってもよ、これじゃあたしたちが先にリタイアしちまうかもしれねーぞ!」
ムチのようにしなる刃が暴れて土埃が舞う。その隙に、もう一度グラビティが重力波を放つ。
ズゥゥゥン……とマントの体が沈んで、その瞬間ソードが跳び上がった。
「断ち切る……!《ストレート・ソード》!!」
上空よりエネルギーを纏った剣が振り下ろされ、動けないマントをソードがぶっ叩く。手応えアリ。予期せぬ反撃を受ける前に後ろへ下がる。舞い上がった土埃が晴れてもなお見える人影。激しいオーラはそのままで、何事も無かったかのように、彼女がソードを見た。
「最悪……!」
「ソード、危ないっ!」
伸ばされた紺色の剣。バテ始めていたソードはそれに反応出来なかった。辛うじて前方へ剣を向けた瞬間、ジャムが急いで飛んできては彼女の盾となる。
「いったぁ〜!」
「ジャム、ありがと」
ジャムが壁になってもその衝撃には耐えられず、2人して吹っ飛び地面をゴロゴロと転がった。2人はその場で転んだ状態でマントを見る。
ゆっくりと歩いてこちらに近付いてくる。ソードは思わず唾を呑んだ。
「させるかぁ!」
マントの後ろから決死の表情でポラリスが飛び込んだ。右腕を振り上げては叫ぶ。だがその攻撃は届くことはない。外套を一振り、ポラリスは怪物の腕のような形をしたそれに薙ぎ払われて吹っ飛ばされる。
グラビティもそろそろ限界か、ジャムたちに襲いかからんとしているマントを後方から睨みつけることしか出来ない。
「せ、先輩!今まで一緒に戦えて楽しかったですっ!」
「バ、バカ!何言って――」
「たああああーーーっ!!」
突如として森の中に響いた声、不意に右方向から矢が飛んできて、マントの左足に刺さった。誰もその状況を理解出来ないまま、着弾地点から光の柱が伸びマントを仰け反らせた。
「……何?」
「あれはっ!」
ジャムの指さした先。何かが空にふよふよと浮いている。天使のような白い翼を生やした少女。
「純白のオトギエンジェルぅ、ただいま参上!」
キャピッとウインクしては、その場でクルリと回る。
「せいらんちゃんかっ!」
「呼んでもないのに来るとはね、援軍!」
「2人とも、これどういう状況ですか?」
2人のもとに駆け寄ってきたのはシャドー。マントを警戒しながら2人の手を取って起こす。
「助けに来てくれてありがと。まぁ端的に説明すると、マントが暴走中」
「良かったら助けてくれないかな?」
「はぁ、よく分かりませんが、もとよりそのつもりですよ!」
2人を起こしたシャドーは紫色の小刀を生成して、マントに接近するファングたちに合流する。
「切り込み隊長ファング、お願いします!」
「おう!任しとけ!」
伸ばされた刃を狼牙棒のフルスイングで粉々に破壊し、そのままそれを放り投げて体を翻してジャンプ。気合を入れ、桃色のトゲを足に生やした。
「いいのかましてやるから動かないでよ!《ファング・デストロイヤー》!」
いわば人間狼牙棒、回転落下で放たれた強烈な打撃がマントの頭上より襲いかかる。マントはもちろん回避をしようとするが思うように動けない。蓄積されたダメージが効いてきている。
放たれた蹴りが命中、脚部のトゲがめり込むと同時にマントの姿勢が崩れる。
「次は
この隙を無駄にはしない。連撃は彼女の得意分野、テッセンがファングに続いて突進して、扇を振り回しては無防備なマントを打ち抜く。続けて、テッセンが振り向き叫ぶ!
「仕上げはあなたに任せました!」
その先にいるのはシャドー!両手に紫のエネルギーを纏い、掌を重ねてそれを集中させている。
「エンジェル!シャドーの援護任せた!」
「はぁ〜い!《エンジェル・バインダー》!」
紐状のエネルギーがマントの脚部から伸びて、グルグルと彼女の足に絡みつく。
「す……凄いわ!あの4人のコンビネーション……!」
「そうですね!めっちゃ活き活きしてますっ!」
「《エンジェル・ピアッサー》!」
彼女の持つ弓から放たれた矢はクリーム色の軌道を描いて、拘束されたマントを貫く。
「いきますよ!」
そうこうしているうちにシャドーも準備万端。エネルギーの刃を構えて、マントの方へ接近する。
「オトギシャドーは隠密行動だけじゃないってところを見せてやりますよ!度肝抜かれないでくださいね!マント!」
手に持っていたのはエネルギーで生成した巨大な手裏剣。円盤投げのように構えると、それを思いっきり投擲した。
「《ハイドライブ・クロスシャドー》ォォッ!!」
手裏剣は高速回転、マントの纏う濃紺のオーラをギャリギャリと削っていきながらその体を巻き込み、しばらく進んで大爆散。マント――ゆいかの体が後方へ吹っ飛んで、その場でバタリと倒れた。
「た……倒した!倒しましたよ、ソード!」
「え、えぇ……!」
ジャムがソードの両手を取って、そのままぴょんこぴょんこと大ジャンプ。ソードは苦笑いを浮かべながらも一安心。ゆっくりと彼女を振りほどいて、変身はまだ解かずにゆいかの方へと足を運ぶ。
――――――――――
「ゆいかちゃん、ゆいかちゃん!」
「…………!」
ゆいかの目が覚めた。彼女の視界に映るのは知らない天井。一番最初に目に映ったのは目に涙を浮かべていたせいらん。
どうも周りに人が多い。その上で、しばらくの記憶がない。
「どう、気分は」
「どうって……どうもない」
「そう」
なおが覗き込んだ。とはいえゆいかは彼女の名前なんて知らないが。淡白な会話をして、ゆいかは起き上がった。周囲を見渡す。自身の状況が理解できた。
「じゃ、とりあえず肉片を渡して」
「肉片……肉片とはなんだ?」
「はぁ?」
なおの問いにはあまりピンと来ないようで、マントは首を傾げた。呆気にとられて、なおが聞き返すと同時に彼女のメガネの位置がズレた。
「に、肉片のこと知らないの?私たちが変身するための……」
「なぁ、それって
「燃料?」
分かりやすく説明しようと、まざるが言葉を選びながら聞いていると、横にいたももが横から入ってくる。燃料。聞きなれない単語が耳に入ってきて、まざるは彼女に聞き返す。
「そう、燃料。ルムールの乗ってきた宇宙船の燃料」
「燃料……」
「嘘だ。……簡単に説明するが、あれは俺の故郷――メルフル星の王、ウォルオルの肉片だ。妙なことだが人体と融合することで『変身』が出来るようになる」
ムネツグの説明を飲み込んで、ゆいかが話し出す。
「……それは出来ないな」
「どうして?」
「君たちに肉片を渡せば、私たちは変身出来なくなるかもしれない。これから何が起こるか分からないんだ、そんなことが出来るわけないだろう」
「そっかー……」
ピリピリと空気が不穏になっていく。皆無言になって、静寂が訪れたが、まざるが何か思いついたような表情になって、軽い口調で話し始めた。
「じゃあ持っててもいいよ!」
「……は?」
「持っててもいいよ。でも私たちと合計で100個集まったときに、その時にちょうだい。100個集まったら、ウォルオルさんが復活して一件落着だし」
「……てっきり、ここでまた戦闘が始まるのではないかと思ったが」
「そんなことしないしない!だって信じてるし、皆のこと」
その言葉を聞いて、ゆいかはとても驚いた。それが顔にも出てたのか、ジャムはクスッと笑った。
「すみません、少しいいですか?」
そんな中、凛とした声が後方から聞こえた。振り向くと、ひめのが立っていた。しかも、せいらんと手を繋いで。
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