オトギテール RIVAL   作:爆裂おいしい君

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Ep.53「息吹く」

 

 ひめのに、周囲の視線が集まった。プレッシャーの中、彼女は言う。

 

「せいらんさんのことです。……彼女の持っている肉片をあなたたちに譲渡します」

「え、いいの?」

「はい。……きっとこれから、他の人と戦うこともあるでしょう。でもその時、幼いせいらんさんが巻き込まれるのは良くないです」

「それは……そうだな。で、どうやって肉片を回収すんだ?とりあえずボコボコにするか?」

 

 うみの発言は冗談かどうか分からない。ビクッと肩を跳ね上げるひめの。

 

「いや、そんな野蛮なことしなくてもいいわ。この間少し試してみたのよ」

 

 そう言って、なおがせいらんの近くへと寄る。

 

「ちょっと手を前に出してみて」

「こう?」

「そうそう、そういう感じ。そしたら、力よ出ていけ〜って強く念じるの」

「うーん……力よ、出ていけーっ!」

 

 右手を突き出して、力を込める。すると掌から光の粒がいくつか出てきた。これが、肉片。ソードは一つ残らず回収すると、せいらんの頭を撫でた。

 

「ありがと」

「うん!…………ねぇ、ひめのちゃん。戦えなくても、私たち友達だよね?」

「当たり前でしょう?」

 

 

 

――――――――――

 

 

 

「……では、私たちは帰るとしよう」

「そうしましょうか」

 

 ゆいかが立ち上がった瞬間、彼女の姿勢が崩れる。

 

「反動で動けないって、ゲームでもよくある話よね」

「あ、あはは……」

「仕方ないですね……」

 

 そんな彼女を見下ろしながら、ひめのはスマートフォンを取り出して指をシュバババッと動かす。しばらくすると、事務所の前に車が1台停まった。

 

「ももすけ!手伝いなさい」

 

 ひめのが窓からそれを確認すると、ももを呼びつけて、ゆいかの体を持ち上げ、2人は彼女に肩を貸す。

 

「タクでもとったの?」

「TAXI(タクシー)?あんな高いもの払ってられませんわ。セレブは黙って自家用車です。……しのさん、せいらんさん。一緒に送っていきましょうか?」

「いや、私たちは大丈夫です。家も近いので」

「え、もしかして。ひめの、私も送ってくれる感じ?」

「……今日だけですよ」

「やった〜」

 

 横にゆいかがいることも忘れて、ももがはしゃぐ。ひめのがたしなめるがそれでも尚騒がしい。そして5人は事務所から去っていく。

 

「ゆっくりですよ、ゆっくり」

「はいはい、分かってるって」

「……ありがとう、2人とも」

 

 コツコツと金属音を鳴らしながら階段を降りていると、向かい側から人影が見えた。その横顔がこちらを向いて、驚いたような顔をしている。

 

「な、何事?」

「れ、レスキューです!」

「そ…………そう」

 

 聞きたいことは山ほどあったが、今は胸の中にしまっておく。階段を降りるゆいかたちに道を譲って、彼女らが通り過ぎると階段を上る。

 

「なんかあったのかな……」

 

 はるは扉の前で振り向くが、彼女らの姿はもう無かった。不思議に思いながらも事務所の扉を開けると、そこには皆が勢揃い。なんとなく、状況が分かった。

 

 

 

――――――――――

 

 

 

「あ、はるさん。おいーっす」

「おいーっす、めいらちゃん。何かあったみたいだね?」

「まー、いろいろとね」

「そっか。それで、片付いた?」

「うん。バッチリ。肉片は後でくれるってさ」

 

 買い物のあとだろうか、手に持っていたレジ袋をドサッとテーブルの上に置いて、ソファに座って一息つく。

 そして、向かい側に座っていたなおと目が合った。

 

「どう?調子」

「どうって言われても……。あっ、そうだ。来週から修学旅行なんです。3泊4日で」

「へぇ3泊?どこ行くの〜?」

「西の方です。お土産買ってくるので楽しみにしててくださいね」

「え!買ってくれんの?たこ焼きにうどんにソーキそば♪」

「食べ物かどうかは分からないですけど……」

 

 楽しげなはるに微笑を向けた。そして、なおはカーペットの上で寝っ転がっているまざるの方を向き、そして全員に聞こえるくらいの声量で言う。

 

「私来週から修学旅行だから3〜(から)4日くらい居ないけど、何かあったらよろしくね」

「え〜っ、修学旅行!?いいな〜、私も行きたいです」

「留年さえしなければ行けるわよ」

 

 留年。その単語を聞いて、めいらがビクつく。何かあったのかとめいらの方を見ると、青い顔をしながら彼女が振り向いた。

 

「留年……留年は嫌ぁ……」

「あぁ…………」

「め、めいらちゃん!私勉強教えよっか!?」

「うぅ、後輩にまで気を遣われた……」

 

 どよよんと、めいらが分かりやすく落ち込んでいる。何を言っても仕方ないな、とまざるは諦めてスマートフォンを見る。

 

「あっ、そうだうみちゃん。最近かわると遊んでる?」

「あ?……んー、まぁぼちぼちって感じだな」

「そっか。暇だったらじゃんじゃん誘ってあげてね!いつも暇そうだし」

「ん。……って、なんだよ急に!」

「いや〜、たまたまかわるの写真が出てきて。……まぁ何はともあれ、皆さんお疲れ様でした!」

 

 

 

 オトギマントたちの件も解決、一件落着。どこかへ消えたルムールのことだけが気がかりだが、まざるは疲れたから一旦寝ることにした。

 




これにて第4章終了です。次回から5章が始まります!
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