ひめのに、周囲の視線が集まった。プレッシャーの中、彼女は言う。
「せいらんさんのことです。……彼女の持っている肉片をあなたたちに譲渡します」
「え、いいの?」
「はい。……きっとこれから、他の人と戦うこともあるでしょう。でもその時、幼いせいらんさんが巻き込まれるのは良くないです」
「それは……そうだな。で、どうやって肉片を回収すんだ?とりあえずボコボコにするか?」
うみの発言は冗談かどうか分からない。ビクッと肩を跳ね上げるひめの。
「いや、そんな野蛮なことしなくてもいいわ。この間少し試してみたのよ」
そう言って、なおがせいらんの近くへと寄る。
「ちょっと手を前に出してみて」
「こう?」
「そうそう、そういう感じ。そしたら、力よ出ていけ〜って強く念じるの」
「うーん……力よ、出ていけーっ!」
右手を突き出して、力を込める。すると掌から光の粒がいくつか出てきた。これが、肉片。ソードは一つ残らず回収すると、せいらんの頭を撫でた。
「ありがと」
「うん!…………ねぇ、ひめのちゃん。戦えなくても、私たち友達だよね?」
「当たり前でしょう?」
――――――――――
「……では、私たちは帰るとしよう」
「そうしましょうか」
ゆいかが立ち上がった瞬間、彼女の姿勢が崩れる。
「反動で動けないって、ゲームでもよくある話よね」
「あ、あはは……」
「仕方ないですね……」
そんな彼女を見下ろしながら、ひめのはスマートフォンを取り出して指をシュバババッと動かす。しばらくすると、事務所の前に車が1台停まった。
「ももすけ!手伝いなさい」
ひめのが窓からそれを確認すると、ももを呼びつけて、ゆいかの体を持ち上げ、2人は彼女に肩を貸す。
「タクでもとったの?」
「
「いや、私たちは大丈夫です。家も近いので」
「え、もしかして。ひめの、私も送ってくれる感じ?」
「……今日だけですよ」
「やった〜」
横にゆいかがいることも忘れて、ももがはしゃぐ。ひめのがたしなめるがそれでも尚騒がしい。そして5人は事務所から去っていく。
「ゆっくりですよ、ゆっくり」
「はいはい、分かってるって」
「……ありがとう、2人とも」
コツコツと金属音を鳴らしながら階段を降りていると、向かい側から人影が見えた。その横顔がこちらを向いて、驚いたような顔をしている。
「な、何事?」
「れ、レスキューです!」
「そ…………そう」
聞きたいことは山ほどあったが、今は胸の中にしまっておく。階段を降りるゆいかたちに道を譲って、彼女らが通り過ぎると階段を上る。
「なんかあったのかな……」
はるは扉の前で振り向くが、彼女らの姿はもう無かった。不思議に思いながらも事務所の扉を開けると、そこには皆が勢揃い。なんとなく、状況が分かった。
――――――――――
「あ、はるさん。おいーっす」
「おいーっす、めいらちゃん。何かあったみたいだね?」
「まー、いろいろとね」
「そっか。それで、片付いた?」
「うん。バッチリ。肉片は後でくれるってさ」
買い物のあとだろうか、手に持っていたレジ袋をドサッとテーブルの上に置いて、ソファに座って一息つく。
そして、向かい側に座っていたなおと目が合った。
「どう?調子」
「どうって言われても……。あっ、そうだ。来週から修学旅行なんです。3泊4日で」
「へぇ3泊?どこ行くの〜?」
「西の方です。お土産買ってくるので楽しみにしててくださいね」
「え!買ってくれんの?たこ焼きにうどんにソーキそば♪」
「食べ物かどうかは分からないですけど……」
楽しげなはるに微笑を向けた。そして、なおはカーペットの上で寝っ転がっているまざるの方を向き、そして全員に聞こえるくらいの声量で言う。
「私来週から修学旅行だから3
「え〜っ、修学旅行!?いいな〜、私も行きたいです」
「留年さえしなければ行けるわよ」
留年。その単語を聞いて、めいらがビクつく。何かあったのかとめいらの方を見ると、青い顔をしながら彼女が振り向いた。
「留年……留年は嫌ぁ……」
「あぁ…………」
「め、めいらちゃん!私勉強教えよっか!?」
「うぅ、後輩にまで気を遣われた……」
どよよんと、めいらが分かりやすく落ち込んでいる。何を言っても仕方ないな、とまざるは諦めてスマートフォンを見る。
「あっ、そうだうみちゃん。最近かわると遊んでる?」
「あ?……んー、まぁぼちぼちって感じだな」
「そっか。暇だったらじゃんじゃん誘ってあげてね!いつも暇そうだし」
「ん。……って、なんだよ急に!」
「いや〜、たまたまかわるの写真が出てきて。……まぁ何はともあれ、皆さんお疲れ様でした!」
オトギマントたちの件も解決、一件落着。どこかへ消えたルムールのことだけが気がかりだが、まざるは疲れたから一旦寝ることにした。
これにて第4章終了です。次回から5章が始まります!