「あ、まざるちゃん。オッハー」
「おはよー……っていうか、もう夕方になるよ?」
「あっはは……。ところでまざるちゃん、今日はなんでここに?」
「コンビニで美味しそうなお菓子が売ってて、買いすぎちゃったからムネツグさんにも分けようかなって」
めいらの視線がムネツグの方に移る。テーブルに並べられたお菓子を少しづつ、つまんでは食べている。
「私も食べていい?」
「どうぞどうぞー」
ニヤニヤと笑みを浮かべてはテーブルに向かって、行儀は悪いが立ったまま前屈みになって、ピンク色のチョコレートを拝借する。
(イチゴ味かぁ〜)
「はうっ!?」
食べた瞬間、想定外の味。イチゴ味じゃない。この味は……。
「チェリー……!?」
「あ、うん。イチゴかと思った?」
「ご名答。……最初はビックリしたけど結構いけるねこれ」
「でしょ」
ムネツグがパクパク食べているのにも頷ける。これは確かにパクパクいけてしまう。
「なお先輩は今日から出発だし、うみちゃんは今日はかわると遊ぶって言ってたから、今日は私たちとムネツグさんと3人だね。なんか珍しい感じの組み合わせ」
「あぁ、確かにそうだね」
そう言っては再びチョコレートを手に取る。それを食べようとした瞬間、勢いよく事務所のドアが開かれた。
「た、助けてくださいっ!」
出血しているももを引きずりながら、必死の形相のひめのが事務所に押しかけてきた。のほほんとしていた事務所の空気が盛大にぶっ壊れた。
「な、なななな、なんちゅーことに……!」
「ヤッバー……」
――――――――――
ぐったりとしていたももの患部に包帯を巻いて、ソファの上に寝かせた。
焦りに焦っているひめのを落ち着かせながら、まざるたちは彼女から話を聞く。
「それにしても酷いことするよね。……何があったの?」
「……少し小腹が空いたので、ももとうどんを食べていたんです。その帰りでした」
―※―※―※―※―
「ウワーッ、こりゃ食べすぎたかもな」
「ふん、調子に乗って食べてるとすぐ太りますよ」
「ひめのも結構食べてたじゃん」
スマートフォンで経路を確認しながら、慣れない道を2人で歩く。そんな中、ももが左に指をさす。何かと思ってひめのがその方向を見ると、鳥居があった。
「こんなとこに神社なんてあったんだね」
「そうですね」
「ちょっとお参りでもしていこうよ」
「……何故?……はぁ。まぁ、いいですけど」
鳥居の前で一礼して、道の真ん中を通らないようにして神社へ入る。2人が手水舎で手を洗っていると、青白い髪をした少女と目が合った。軽く会釈をする。
「お賽銭は5円って言うよね」
「ええ。ですがお母様は二重にご縁があるようにと、25円を投げ入れていましたわ」
「洒落てるね」
財布から小銭を投げ入れると、ガラガラと鈴を鳴らし二礼二拍手一礼。
「……それにしてもお祈りって、なんか気合い入るわぁ。……これからも魔法少女として、頑張ろう、よ!」
ベシベシと笑顔でひめのの背中を叩く。嫌そうな表情でももを睨み返した瞬間、後ろに人の気配を感じた。
「もも、避けて!」
ひめのがももを突き飛ばして、彼女の体が前方に大きく吹っ飛ぶ。
「ウワーッ!……何すんだ――」
困惑混じりの怒りを彼女に向けようと振り返った瞬間、先程少し目が合った青髪がホウキを地面に叩きつけていた。それも、数秒前までももとひめのがいたところに。
「ああ、そーゆーことね……。おい!喧嘩売ってんの?」
「いえ。ただただ……死んでほしくて」
「は?」
直感が告げていた。目の前のこいつは只者じゃないと。
「物腰柔らかそうな感じなのに、随分と過激なことを言いますね?……お名前、聞いてもよろしくて?」
「
禍々しいオーラが彼女を包む。薄い空色をした衣装が彼女を包み込む。神秘的でどこか恐ろしい、和風な姿。
「魔法少女……!」
「いいじゃん、やったろうじゃん!」
「ええ!」
「「チェンジッ!」」
2色の光がビシッと迸って、桃色と緑色の魔法少女は背中合わせになって武器を構えた。
「それでは……まぁ、これでいいでしょう」
カースは前屈みになって、足下に落ちていた小枝を拾う。何か呟いたかと思うと、それを前に突き出す。
「そんな枝で何が……出来んだっ!」
ファングは手に持った狼牙棒を振るう。カースはバックステップでするりとかわして、ファングへ向かって走り出す。
「小手調べといきましょう」
狼牙棒を構えてガードの姿勢。そんな彼女に向かって、カースは果敢に枝を振り下ろした。
防御から一気に反撃してやる。ファングのそんな目論見も、彼女の持つ狼牙棒もその一振りで打ち砕かれた。
「何ッ……!!」
役目を終えた枝はボロボロと塵になって消滅する。だがそんなこと知ったことではない。目の前の標的を潰す。カースが追撃の構えを取った瞬間、横からテッセンが割り込んできて彼女を突き飛ばす。
「ファング、大丈夫ですか!?」
「ああ、でもあいつかなり変な能力だ!ただの枝で私の武器を粉々にしやがった!」
「ふふ……その通り、ただの枝ですよ。そして、これもただの葉っぱです」
体勢を立て直したカース。次は枝ではなく落ち葉を拾って、テッセン目がけて投げ放つ。
(触れたものを強化する能力があるなら……!)
テッセンが扇で猛スピードで迫るそれを弾くと、それが木に刺さった。ピィィン!と音が鳴って、先程の枝と同じく、緑色の葉は塵となって消滅する。
「なるほどね、大体読めた!」
ファングが駆ける。何を考えての突撃かは分からないが、テッセンもそれに続いた。
「じゃあこれ以上何も拾わせてやんない!」
ファングが跳び上がると足にトゲを生やし、蹴りの構え。カースは一切動じずにクス、と笑う。
「考えましたね。でも残念です」
カースが胸元をまさぐって、何かを呟いたかと思うと何かを投げた。まっすぐ投げられたそれはファングの胸元にぶっ刺さり、彼女を撃ち落とす。釘だ。
直後、青い炎が刺さった釘から放たれる。
「ぐうぅ……!!」
「釘です。痛い……ですか?」
「何を……!」
テッセンが構えた扇を振るう。カースは右手に持つ釘2本を巧みに扱いそれを弾くと、左手に釘を構えた。
「《カース・デクラレーション》!」
釘を覆うオーラが鋭くその形を変えた。それが釘ごと撃ち出されると、テッセンの体を撃ち抜いた。鋭い上に物凄い威力。激しい痛みが彼女を襲う。
「ファ、ファング!撤退、撤退です!」
「う、うん!」
「逃がしませんよ」
勝てないと判断したテッセン。そしてそれに続いて逃げるファング。テッセンのことはこれ以上追えないと判断し、カースはファングに的を絞る。
「殺して差し上げます。私の呪いで」
走り出しては再び胸元から何かを取り出した。釘よりも大きな何か。そう、マイナスドライバー。
「一回きり、追尾、豪速」
助走は万全、急ブレーキをかけながらそれを思いっきり正面へと投げる。放たれたドライバーはギュン!と音を立てながら銃弾のように回転、ファングの通って行ったルートを辿っては、彼女の首元を突き刺した。
「はぐぁっ!?」
ファングは気を失ってその変身が解ける。刺された首から血が出ている。後ろを振り向けばカースがこちらを見ていて、テッセンはとてつもない恐怖を感じた。
――大変なことになった。どこかへ逃げたい、ももをどうにかしないといけない、どうすれば、どうすれば……!
気絶しているももを担いでとにかく走った。とにかく走った。未使用のエネルギーを全て脚に活用した。
「……逃がして、しまいました」
視界からテッセンの姿が消えた。寂しげにカースは呟くと変身を解く。その口元から、ツーと一筋、血が流れた。
お読み頂きありがとうございます。第5章本格始動です。
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