「何それ……」
驚きを隠せないまざる。新たな魔法少女、そしてその魔法少女にボロボロに敗北したファングとテッセン。
「持ったものを強化する能力……。ねーまざるちゃん、カースってどーゆー意味さ?」
「わかんない」
「…………」
咳払いをして、ひめのが口を開く。
「おそらく、『curse』……つまるところ、
「おおー!凄いよひめのちゃん!」
「ふふふ。当然ですわ」
目を輝かせて前のめりになったまざるの顔をグイッと押しのけて、めいらは怪訝そうな顔で尋ねる。
「でもさ、その呪いってなんなのさ?」
「攻撃を仕掛ける際、何かを呟いていました。おそらく、その時に呪いをかけているのでしょう。例えば、『使用した後、消滅する代わりに威力を強化』……などと」
「なるほど〜。……ズルくない?」
「うん、ズルいと思う。私なんて電気出すだけなのに」
(いやいや、それならぶん殴るだけの私はどうなのさ)
苦笑いのめいらがジトーっとまざるの方を見ていると、ももの目が覚めた。寝転んだまま辺りを見回してなんとなく状況を理解すると、目から涙がこぼれた。
「うううううう〜〜」
「え、何?」
「ボロ負けした〜〜。そろそろ一度くらいは勝ちたいよぉ」
なんだそんなことか、とスルー。会話が一旦止まると、ムネツグが話し出す。
「少し情報収集をしてみたが、それらしい情報は得られなかった。……おい、ピンク」
「え、私?」
「違う、まざるじゃない」
ムネツグがももを指さすと、彼女はピタッと泣き止んで、起き上がりこぼしのように上体を起こす。
「はい、
「もも……分かった、ももだな。それで、痛むか?」
「まだジンジンする。あいつマジで私らのこと殺すつもりだよ。本当に何が目的なんだか……」
何も分からずに時間だけが進む。数十分経って、まざるが立ち上がる。
「あ、私そろそろ帰りますね。ももちゃん、本当に気を付けてね?何かあったら連絡してね」
「お、おう」
まざるはポンポンとももの方を叩いて、トテトテと事務所を去る。テーブルの上のお菓子を残して。
(そういえばこれ、食っていいのか……?)
目の前のそれに手を付けて良いのか分からない。手を伸ばしてしまえば、目の前のひめのに頭を叩かれそうで怖い。
「あの、ひめのさん。これは食べてもよろしいのでしょうか……?」
「さ、さぁ。私に聞かないでください……」
「……食わなければ俺が食うが」
少し黙り込んで、ももは1つ手に取って食べる。
「あ、うま」
――――――――――
「今日は楽しかったね。また遊ぼうね」
「う、うん……」
夕陽が差す道路を歩く2人。もう少し遊んでいたいのにな。なんてことを思いながら、それを心の内にしまいながら、うみは頷く。
人通りが減ってきたね、なんてたわいのない会話をしていると、2人の前に人影一つ。
「お姉ちゃん!」
そう言って、手を振っている。後ろに誰かいるのか?でもこのタイミングで振り返るのはどうもいやらしいように思える。気にしない、関係ない。そう思いながら横を通ると、彼女は通り過ぎざまにうみに耳打ちした。
「……無視なんて、酷いじゃん?
全身を妙な感覚が駆け抜けた。鳥肌が立つ。
「まぁでもしょうがないか〜。だってお姉ちゃんは私の顔なんて見たことないもんね」
「ちょっと前に父さんから名前は聞いてたけど……お前……お前が『そら』かっ!」
「父さん?ふふ、父さんかぁ…………。死んで?チェンジ♡」
そらはうみと同じく魔法少女として覚醒していたようで、指ピストルのハンドサインをうみへ向けると、撃ち抜く動作と同時に、赤い魔法少女へと姿を変えた。
「ムカついたからボコボコにしてやるよ、妹ちゃん!」
いちいち言動が鼻につく。うみも拳を握りこんでは変身し、右の拳を突き出した。
かわるが路地裏に隠れたのを確認すると、グラビティは拳にオーラを纏って飛び出す。
「死ね!」
「遅いよ」
そらの変身する魔法少女――オトギマグナム。彼女の最大の特徴と言ってもいい光線銃。グラビティが動くと同時に一歩下がって、マグナムがそれを構えた。狙うのは彼女の右肩。
放たれた光線が右肩を掠める。バチッと音を立てながら彼女の体が吹っ飛んだ。
「ぐぅ……!」
残酷に、冷酷に吹っ飛んだ体を的確に撃ち抜いていく。防御の姿勢も取れない。どんどん追い込まれていく。
「この……ボケ!」
重力弾を放ち反撃を試みるも、一瞬で撃墜される。銃弾の雨は降り止まない。
「あのねお姉ちゃん。本当は殺したいの。お前のせいでパパが私に向ける愛情が半分になるから」
銃撃の激しさが増した。浮かべていたせせら笑いはどこへやら、無表情に冷たくそう呟いては倒れているグラビティに向かっていく。
「パパはね、私と話してる時と同じくらいの笑顔でお前の話をする時があるの。それが嫌い。お前はパパと血が繋がってる。それも嫌い。今日はお前を殺そうと思ったの。でもね、私目の前でお友達が殺されたらやだもん。だから、お前の友達がいる前でお前は殺さない。だから、次会った時に殺そうかなって」
「へぇ……。父さん、いい子供を持ったじゃん」
「うるさいな。そう、私はいい子。ママは知らないけど、パパは好きだよ。お酒に弱いし、髭が生えてるのはちょっとイヤだけど……。あ。喋りすぎちゃった♡」
グラビティが何とか姿勢を立て直す。マグナムの表情と声色がケロッと変わって、銃をグラビティへ向けると、その銃口に赤いエネルギーが集中していく。
「《サディズム・マグナム》」
赤い弾丸が放たれる。グラビティは防御の姿勢を取って攻撃を受け止める。……が、残酷にも弾丸は彼女の体を貫いた。変身が解けてうみがその場に倒れる。聞こえているかどうかは分からないが、手をヒラヒラとさせながらそらが呟いた。
「……そうだ、せっかくだからいいこと教えてあげる。魔法少女を全員倒すと、願い事が叶うらしーよ。じゃあまたね、お姉様〜」
――――――――――
「ただいま〜」
「おかえり〜。もう夕飯出来るからさっさと手洗って食べちゃいなさい」
「んー」
台所から母親の声がした。まざるは適当に返事をする。お腹が減っていたからだ。さっさと手を洗って食べてしまおう。そんなことを考えながら両手についた泡をさっと洗い流すと、ドアを開ける。父に母、そして妹のかわる。そして……。
――あれ、1人多い。
「ん」
彼女がそれに気付いた瞬間、オムライスを食らっている紫髪の少女と目が合った。
「な、なななんでうみちゃんがいるのーーっ!?」
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