「あら、まざるもお友達なの?」
「あ、うん。う、うみちゃんは一体どうしてここに?」
「ん?あぁまぁ色々あってな」
「ふ、ふぅ〜ん。まぁ、いただきます」
――まぁ、今はいいや。そんなことよりお腹が空いた!
まざるは顔の前で両手を合わせると、スプーンを手に取ってオムライスを切る。切り取ったオムライスを口に運ぶと、ケチャップライスの甘みと酸味、玉子のまろやかさと塩味が絶妙にマッチして絶品。やっぱり家のオムライスが一番美味しい。まざるはそう思った。
「あ、うみちゃん。ケチャップついてるよ。拭くね」
「え、あ、ありがと」
(へぇ。うみちゃんって、かわると話す時はそんな感じなんだ……。それにしても……)
「おいしー!」
あまりの美味さにどんどん箸が進む。(スプーンだが)
いつの間にかオムライスの乗っていた皿からオムライスは消失し、まざるが手を合わせた。
「ごちそうさまでした」
皿を台所へと持っていき、それをコト、とシンクに置く。ついでに手を洗うと、床に置いていたバッグを手に取り自室へと向かった。
――――――――――
鼻歌を歌いながら雑誌を読むまざる。そんな彼女の部屋に、コンコンコン、とノックの音がドアの向こうから3回鳴る。
「はぁい?」
「入るぞ」
扉を開けて入って来たのはうみ。かわるのパジャマを着ていた。
「うみちゃんか」
「今日はここで寝る」
「あらっ、マジか」
「かわるが、私の部屋は狭いからって。ま、いろいろ話したいこともあるからちょうど良かった」
「な、なるほど。……で、話したいことって?」
うみが地べたにぺたりと座り込むと、まざるは雑誌を読むのをやめて、彼女と同じように地べたに座る。
「妹のこと」
「妹ぉ!?」
「なんだよ、いてもいいだろ。……あたしの妹、そらが魔法少女になって私の前に現れた。……それで、悔しいけど負けちまった」
「えぇ!うみちゃんが負けるなんて……」
いろいろと衝撃でまざるは驚きっぱなし。うみが負けた、そう聞いて表情が険しくなる。
「そら……オトギマグナムの能力はその名前の通り銃だ」
「……なお先輩と同じようなタイプかな」
「あぁ。しかも、かなりの腕だ。百発百中ってくらい、あたしに当ててきた。……で、あたしをボコボコにしたあと、そらが凄く興味深いことを言ってた」
「興味深いこと?」
「『魔法少女を全員倒すと、願いが叶うらしい』。って」
「願いが叶う?」
そんなのデタラメだ。まざるがそう思った瞬間、彼女の脳内に電流が走った。
「まさか、ルムール……!」
「お前もそう思うか!」
うみが珍しく目を輝かせて、まざるの両手を握る。そして急に恥ずかしくなったのか、咳払いをして元の姿勢に戻った。
「ムネツグさんにも相談しないとね」
「あぁ、任せた。あたしはそういうの苦手だからな」
「よいしょ、送信送信……。あ、そういえばさ、そらちゃんとは仲悪いの?」
うみはどう答えようか少し考えて、数秒後に答えた。
「あたしとそらは別の家に住んでる」
「あ……」
聞いてはいけないことを聞いてしまった。顔を見ただけでそう思っているのが分かるほどに青ざめていた。
「いや、なんも言ってなかったあたしが悪い。……あたしの親はさ、あたしが母さんの中にいる時離婚したんだ。で、その後に父さんがどっかで引き取ったのがそら。……名前は知ってた。たまに父さんと会った時に名前は聞いてたから。いい子だからあたしにも会わせたいってよく言ってた。それで、昨日そらと初めて会った。めちゃくちゃムカつくやつだったけど、あたしを憎んでる理由はよく分かったし、理解できた」
「憎んでたって……」
「……父さんはさ、あたしに会う度に1回は必ず謝るんだよ。『ごめん』って。……謝らなくていいって思うけど、それを聞く度にちょっと嬉しい自分もいた。父さんは私のこと好きなんだって。愛してるんだって。でも、それはきっとそらといる時も同じ。あたしの話をしている時の父さんはきっと同じような笑顔で、自分に向けられている愛情が姉であるあたしにも向けられているって。それが嫌だって、そらは言ってた」
空気はすっかりしんみりとしてしまった。ちょっと話しすぎたか、とうみが俯く。
「私、そらちゃんの気持ちちょっと分かるかも」
この返答は予想外だった。俯いていたうみが顔を上げて、真剣な眼差しでまざるを見ていた。
「……かわるが産まれた時、私もそらちゃんと同じこと思っちゃったかもしれない。今まで私に向けられていた母さんたちの愛情がかわるに向き始めて、辛くて悲しかった時があったんだ。憎かったかどうかはもう覚えてないけどね。だって私とかわるって3歳差だし。私3歳だよ?」
「姉って、大変なんだな。……まざるはいつから、そんな気持ちが無くなった?」
「んー。……それも覚えてないや。かわるを家族の一員として認めてから?うーん……」
「なんだよ、さっぱりじゃねえか」
「もー、仕方ないでしょ?……ねぇ、うみちゃん」
「ん?」
優しい笑顔でまざるは聞く。
「うみちゃん、お父さんのこと好き?」
「うん、好きだよ」
「じゃあ大丈夫。きっと大丈夫」
「なんだよそれ……。でも、ありがとな」
うみは笑顔を見せた。心が満たされていくのを感じる。
彼女の顔を見ながら微笑んでいたまざるが何か思い出したように口を開けた。
「あっ!」
「んぁ?」
「なんか勝手に満足してて忘れてたけど、私も今日新しい魔法少女の話を聞いたんだよ!」
「……マジか」
「今日ね、事務所にいたら急にひめのちゃんが入ってきてね」
「ひめのって……この間のやつか」
ひめのがももを連れて事務所を訪れたことやオトギカースの能力について話した。うみは相槌を打ちながら話を聞いて、聞き終わるとすぐに言った。
「それもルムールの仕業かもしれねえな」
「そうだよね……。願うが叶うなんて嘘をついて、戦うように仕向けてる」
「バカにしやがって……今頃ほくそ笑んでやがるぜ、あいつ」
「だね、絶対止めてやんなきゃ」
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