「しかし
「いやいや、私も想定外だよ」
絶妙な顔をして、ひめのはぼやいた。彼女の隣には、困ったような顔をしているまざるが。時は少し遡り、昼の事務所。
――――――――――
事務所に集められたのはまざる、めいら、そしてひめのの3人。妙な組み合わせだが、ももが運ばれた時にいた3人とすると自然ではある。ちなみにうみも呼ぶ予定だったが、まだ体の調子が悪いようで今日はおやすみだ。
「3人とも、今日は情報収集を頼みたい」
「ええ、任せてください!」
自信満々にひめのが答える。ムネツグは頷くと、続けた。
「本当ならペア2組で動いてもらいたかったが仕方ないな。今回は3人1組で頼んだ」
「ムネツグさんは行かないのですか?」
「……ああ。俺も戦えるが、少し消耗が激しい。それに、王が復活した時、俺がいなければきっと宇宙船は動かせない」
完全に納得は出来ていないが、とりあえず理解した。ひめのは首を縦に振る。
「……なるほど、分かりましたわ。それで、人数が足りないんでしたっけ?ならば、私が1人呼びましょう!」
「いいのか?……では、まざるとひめのはペアで行動、めいらはその助っ人と合流を頼む」
「了解です」
「りょーかーい!」
――――――――――
と、いうわけだ。
「私の監視も兼ねているのでしょうね」
「あ、なるほどー。というか魔法少女の情報収集なんて、ちょっと難しくない?」
「ええ、そうですね。誰かに話を聞こうにも、変な人と思われるのも嫌ですし」
「うーん……」
難航している。でも何もしないのもあれだから、と2人は駅前へ向かった。行き先が被らないように、めいらへメッセージを送る。
「そういえばひめのちゃん、めいらちゃんって誰と行動してるの?」
「ああ、それはですね……」
――――――――――
「すみません、遅かったですか?」
「いやいや、全然だって!」
めいらの元に向かったのは、灯野 しの。今更説明するまでもないが、オトギシャドーに変身する中学生だ。
「ももちゃんたちのこと、聞きました。私も手伝います」
「おー、ありがたいね。それで、まずはどうしよっか。駅前にでも行ってみる?」
「いいアイデアです。人がたくさんいますしね」
ピロッと通知音が鳴った。この音はめいらのスマートフォンから鳴っている。パッと画面を確認すると、まざるからメッセージが来ていた。
「お、まざるちゃんからだ。なになに……?お。しのちゃん、まざるちゃんたち駅前行くって。どっか別の場所行こっか」
「あ、はい。じゃあ、どうします?」
「うーん、どうしよっかー……」
こちらはまざるたちよりも難航している。動き出すのにはしばらく時間がかかりそうだ。
――――――――――
「いやー、全然噂もないね」
「そうですね……あ、SNSを使えば……。いえ、なんでもありません」
「SNS?いい考え!」
「え、いや、やっぱりやめておいた方が……」
「え?どうして?」
ひめのの脳に焼き付いているオトギカースとの戦闘の記憶。下手に呼び寄せて、現れるのがオトギカース、または彼女に勝るとも劣らないような実力の魔法少女が来てしまったら。そういった考えよりもたらされる恐怖が、彼女の頭の中を支配している。
「ひめのちゃん?」
「……はっ!」
「やっぱりやめとこっか」
頷きかけた。……でも、それじゃいけない。それじゃいけません!!
「いえ、やりましょう。SNSは不慣れですが、私に任せてください」
「あ、いいの?」
「はい!」
スマートフォンを取り出すと素早く画面をタッチ&スワイプ。テテテテーと文字を打ち込んでいくと満足気な顔で腕組み。
「とりあえず、少し離れたところの公園に魔法少女アリ!なんて書いてみましたわ。情報収集は続けつつ、そこへ向かってみましょう」
「はいはい」
立ち止まっていた2人は再び歩き始める。しばらく歩いていると、後ろから前へ向かって上空を何かが飛んで行った。
「んん?」
違和感を覚えた。まざるが前方の空を見ると、妙な人型の何かが空を飛んでいる。
「ねぇひめのちゃん、あれ――」
「鳥じゃないですわ!向かっていった方向……あれはきっと、魔法少女ですっ!」
「効果アリ!?よっしゃ、急ごう!」
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(魔法少女を全部倒せ、かぁ。そんなの言われても……と思ったけど、SNSで検索してみたら目撃情報あるもんなんだなぁ……)
休日だってのに子供のいない公園。小さいとも大きいとも言えないそこそこの大きさの公園に、魔法少女が1人。
「しかし、飛べるって便利なもんだなぁ」
オトギウィング。背中に大きな鳥のような翼を持ったライムグリーン色をした魔法少女。衣装にはところどころ羽根の装飾がデザインされている。
「でも魔法少女なんていないなぁ。……私のスピードを持ってしても遅れてしまったのかな?……キリッ!」
「あっ、いたーっ!!」
到着するなり、まざるが指をさして言った。声が大きかった。ウィングの耳にもそれが届いて、彼女がまざるを見た。
「あ、ちょっと待った!……もしかしてファン?困ったな、サインの練習なんてしてないのに……」
「ええ、そうなのです!……って、そんなわけがないでしょう!私はあなたを倒す者、オトギテッセン!」
「そ、それとオトギジャムだよ!」
出会って早々宣戦布告。2人は変身して、ビシッと決めポーズ。
「あなたも変な女に魔法少女を倒せと言われたのですか?」
「目的は一緒か……。じゃあ倒してあげよう!」
「出来るもんならやってみろーっ!」
ジャムが拳に電流を纏わせ、ウィングへ突進。彼女は少し踏ん張ると、跳躍とともに飛行の姿勢。遊具から遊具、柵から柵など、様々なルートを高速で舞う。
「《ウィングフェザー》!」
それと同時に放たれる羽根のような形をした細長いエネルギー弾。前後左右、そして様々な高さから放たれるそれを、ジャムがバリアで受け止める。
「す、凄い……全部無効化しています!」
ドーム状のバリアは向かってくるウィングフェザーを無力化、消滅させていく。傷の1つもつかないバリア。ウィングは痺れを切らして、空から勢いをつけて突進する。
「それを待ってた!」
バリア展開中は動きにくい。ウィングの突進攻撃はジャムにとっても好都合だった。赤や緑色のオーラを纏ってこちらへ向かってくるウィング。迎撃してやる。
「《ウィングダイブ》!」
「《ジャムランページ》!」
2つの打撃は拮抗して、2人は顔を見合せた。
「むむむむ……!」
ジャムが踏ん張って、ウィングの攻撃を受け止める。その隙に、テッセンが動いた。
「そいりゃあ!」
横から不意打ち気味のアッパーカット。ウィングの体が上へ吹っ飛んで、まざるもコテンと後ろへ転ぶ。
「ジャム!大丈夫ですか?」
「大丈夫大丈夫……。しかしあの子、めっちゃ強いよ!」
ジャムたちが空を見る。こちらを見下ろすウィングと目が合った。
「結構やるじゃん……なら、これはどうかな!」
残像が見えるほどの速いスピード。姿が見えなくなったかと思うと、目の前を彼女が通り過ぎた。
バシュ!と音が鳴る。攻撃された。前方の次は右、後ろ、左。黄緑色をした光が様々なルートで攻撃を仕掛けてくる。
《ストラクチャー・ウィングラッシュ》。ウィングはそう名付けている。公園のようなほどよく
防御の姿勢が取れないまま、ジャムとテッセンは何度も攻撃を受けて吹っ飛ぶ。ウィングは攻撃をやめて、膝に手をついた。
「はぁ、はぁ……どうだ、参ったか。でも悪く思わないでよ、あの子のためなんだから」
「いや……まだまだだよ」
なんとか立ち上がった2人。ボロボロになり、砂で体を汚しながらも、その目に曇りはなくウィングを見ていた。
「……。本気出す!」
翼の羽根を1本触る。それが引き抜かれると、その形状が変化し剣のようになった。恐らく斬れ味はそこまで高くない。だが、攻撃力が上昇するのは確かだろう。
「あなたの攻撃パターン、大体把握できました。ですよね?ジャム!」
「うん!……なんか、一緒に戦ってくれてるのがテッセンで本当に嬉しいかも」
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